○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
ミャンマー情勢が悪化の一途をたどっております。市民の犠牲者は七百人を超えました。先日は軍事法廷で十九人の市民に死刑判決が下されております。国軍の報道官は、木が成長するためには雑草を取り除かなければならないと正当化して、機関銃や自動小銃を使えば数時間で五百人を殺せると述べて、国軍側が対応を自重しているかのように述べました。これから一層エスカレートするおそれがあります。
そういう中で、政府の一層明確な対応が求められると思います。政府は、二月一日以降、新規のODAは行わないなど対応を取りながら、事態の鎮静化や民主的体制の回復へどのような対応が効果的か検討していきたいと繰り返し答弁をしてまいりました。しかし、ここまで深刻化して、国軍がそれを正当化し、更に強めようとしているというときに、国軍の利益になるようなことは一切行わないと、ミャンマーの市民の立場に立つということをより明確に明らかにする必要があるときだと思うんです。
まず、防衛省にお聞きしますけれども、ミャンマー国軍との協力、交流について、この間の能力構築支援の人数、予算など実績及び現在の実施状況をお答えください。
○防衛省 防衛政策局長(岡真臣君) ミャンマーに対しますいわゆる能力構築支援事業でございますけれども、平成二十六年度から、潜水医学、航空気象、人道支援・災害救援、国際航空法及び日本語教育環境整備の各事業を実施しているところでございます。
こうした事業を実施するため日本からミャンマーへ派遣した人数でございますけれども、延べ九十二名、ミャンマーからの招聘者数は延べ五十名でございます。また、予算でございますが、平成二十六年度以降のミャンマー向けの能力構築支援事業の予算額は全体で約二・一億円となっているところでございます。
現在の状況でございますけれども、現在は、新型コロナウイルス感染症の影響もございまして、能力構築支援事業としては日本語教育環境整備支援のみ実施しているところでございます。
○井上哲士君 ミャンマー国軍からの留学生も受入れしていると思いますけれども、その人数や予算など、これまでの実績及び現在の在籍状況はいかがでしょうか。
○防衛省 人事教育局長(川崎方啓君) お答えいたします。
防衛省・自衛隊におきましては、自衛隊法第百条の二に規定する教育訓練の受託という枠組みの下で、ミャンマー政府からの依頼を受けて、二〇一五年以降、防衛大学校などにおいてこれまでに延べ二十六名の留学生を受け入れております。現在は防衛大学校に六名が在学中でございます。
また、ミャンマーを含む開発途上国からの留学生に対しまして、教育履修期間中に必要となる学習・生活費用の不足を補うための給付金を支給しておりますが、このうちミャンマーからの留学生を対象とした給付金に係る予算額は、平成二十七年度以降で合計約五千八百万円でございます。
○井上哲士君 先日の決算委員会でも岸大臣から答弁ありましたけれども、今ありましたように、この能力構築支援についてはコロナの影響で日本語教育の環境整備支援のみだとした上で、今後の防衛協力・交流については、今後の事態を、更なる推移を注意して、検討したいという答弁でありました。
しかし、もう検討の段階ではないんじゃないかと私は思うんですね。国軍がこの弾圧、殺害を合理化をしております。そして、更に拡大の姿勢も示している。先日、バゴーで八十人以上が殺害をされましたけれども、重火器も使用されたと言われております。住民の声として、まるでジェノサイドだと、こういうことも報道されました。
およそもう協力、交流の対象ではないと思うんですね。もはや検討の段階ではなくて、明確に中止をするという決断をすべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○防衛大臣(岸信夫君) ミャンマーの情勢です。
国際社会の度重なる呼びかけにもかかわらず、ミャンマー国軍、警察の市民に対する実力行使が続いております。多数の死傷者が発生している状況を強く非難をいたします。
その上で申し上げますと、防衛省・自衛隊によるミャンマーに対する能力構築支援につきましては、現在、日本語教育環境整備支援のみを実施をしておりますが、これはミャンマー国軍の能力を向上させるための支援ではなくて、教育機関等との中長期的な人的関係の構築、民主主義下における軍の在り方を示す効果、ミャンマー国軍とのチャンネルの維持といった観点から継続をしているものであります。
防衛省・自衛隊におけます留学生の受入れについても、発展途上国からの留学生に対しまして、民主主義国家である日本における厳格なシビリアンコントロールの下で運用される実力組織の在り方を示す、隊員と留学生との人的関係を構築し、我が国と派遣国との相互理解、信頼関係を増進する等の意義があることから、今後も継続をしていく考えであります。
以上です。
○井上哲士君 今、最後、信頼関係を増強していくと言われましたけど、そういう対象ではもう今ないということだと思うんですよ。
月曜日の衆議院の決算行政監視委員会で、菅総理は、今ミャンマー軍が世界からどう見られているのか日本として真っ正面からミャンマー軍に説明をして、即時やめるように強く言う国として日本が役割を果たすと言われました。これまで協力をしてきた日本がそれも中止をするという姿勢を示して、強く言ってこそ私は効果あると思うんですね。
もう二月一日から相当たって、繰り返しますけれども、一層の激化されようとしているときにそういう姿勢を日本が明確に示すということが必要だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) 先ほども申しましたけれども、現在のミャンマー国軍、警察の行動につきましては強く非難をしているところでございます。
三月二十八日に、我が国は、米国を含む十二か国の参謀長の連名によって、ミャンマー国軍に対して共同声明が発出をされたところでございます。本声明は、関係国の防衛当局が結束して、ミャンマー国軍及び関連する治安機関による民間人に対する軍事力の行使を非難するとともに、ミャンマー国軍に対して暴力の停止を求めるということでございます。
我が国の立場として、このミャンマー国軍の行動に対してはしっかり非難をするということでございます。
○井上哲士君 ですから、一方で非難をしながら、一方で協力、交流を続けていくというのでは、本当にその非難の声が伝わらないんじゃないかと。民主的体制が再建されたら、必要とあらばまたやったらいいんであって、今やっぱりその立場を明確にすることが必要だということを強く申し上げたいと思います。
一方で、経済支援の問題ですが、日本の対ミャンマーODAについて、先日の質疑では、二月一日以降は新規のODA案件はないという答弁でありました。
現在継続中のODA案件について、その数と総額はどうなっているでしょうか。
○外務省 国際協力局長(植野篤志君) お答え申し上げます。
ミャンマーにおいて既に交換公文を締結し、実施中の案件は、円借款が三十四件、七千三百九十六億円、無償資金協力が二十六件、五百八十五億円でございます。また、二十二件の技術協力プロジェクトを実施中でございます。
○井上哲士君 ですから、新規案件はありませんが、相当額の継続中があるわけですね。
三月三十一日の加藤官房長官の会見では、実施中の案件についても、目的、内容、性質、現地情勢などを総合的に勘案し、具体的な対応を考えると述べられました。実施中のものも停止も検討というふうに報じられたわけですね。総合的に勘案して具体的な対応を考えると言いますが、どういう立場で検討し対応するかが問われていると思います。
ミャンマー軍は、国家予算とともに、自らが所有、経営する企業のビジネスを資金としております。ミャンマー・エコノミクス・ホールディング・リミテッド、MEHLと、ミャンマー経済公社、MECの二つで、両社は傘下に宝石業や銀行、通信、運輸など幅広い分野で計百以上の子会社を有して収益を上げていると言われております。この二つとその関連企業が日本のODAにも参加をして利益を上げているわけですね。
私は、今後の具体的な対応を考えるというのであれば、日本の公的資金によって国軍が利益を得るということを断つという立場で、継続中のODAに対応することが必要だと考えますけれども、大臣の認識、いかがでしょうか。
○外務大臣(茂木敏充君) まず、明確にしたいと思いますのは、ミャンマーにおけるクーデターを日本として正当化することはありません。
その上で、日本のこれまでの経済協力、これはミャンマーの国民の生活向上や経済発展に貢献して、また人道的なニーズにも対応することを目的に実施をしておりまして、そもそもミャンマー国軍の利益を目的として実施しているものではありませんし、この方針に変更はありません。また、人道上の支援につきましては、各国も継続の意向だと考えております。
その上で、対ミャンマー経済協力の今後の対応については、ミャンマーにおける事態の鎮静化であったり、民主的な体制の早期回復に向けてどのような対応が効果的か、総合的に検討していきたいと思っております。
日本のODAもありますけれど、例えばティラワの特区であったりとかダウェーの特区、あれだけ広い地域でありまして、これ、経済支援でできる話じゃないんですね。民間の企業が相当出ていかないと、国家プロジェクト、これが成り立たなくなってくると。こういったことも含めて、今の事態のままだったらばそういうお金は企業は出ませんよと。こういったことも含めて、事態鎮静化に向けて、また民主的な体制の回復に向けて働きかけをすると、説得をする、これが日本にとって重要な役割だと、このように考えております。
○井上哲士君 民間企業の問題は後でお聞きしますけれども、国軍が利益を得ることが目的ではないと、こうおっしゃいました。それはそうだと思いますし、これはNLDの政権のときに契約されたものなわけですね。
一方で、しかし、現実には、こういう軍が所有、経営する企業があって、一年間に上げる利益の合計がミャンマーの年間国防費の約二千五百億円を上回るというふうに言われております。株主には国防省のほか国軍の上級将校らがおって、莫大な配当金を得ていると、こういう事態があるわけですね。
ですから、結果として流れてきたし、今後、こういう事態の下で日本のやはり公的資金の在り方の問題が問われるわけですけれども、これが流れていくこと、そういうことの認識はお持ちじゃないんでしょうか。
○政府参考人(植野篤志君) 先ほど大臣からもありましたとおり、日本のODAの目的自体はあくまでも、現地の人々の生活向上、それから人道上のニーズ、それからミャンマーの経済発展ということでありまして、私どものODAの資金が国軍に流れるということを想定したものではないということは改めて申し上げたいと思います。
○井上哲士君 先日もお聞きしましたけれども、日本の対ミャンマー経済支援の基本方針は、民主化に向けて改革勢力を後押しするために支援するとなっているんです。その事態が全く変わっているものとして今お聞きしているんですね。
例えばバゴー橋の建設事業ですけれども、日本の二つの企業が建設を共同、JVが建設受注しておりますけれども、ここにMECの子会社が橋梁用の鉄骨の製造を行っていて、約三分の二を提供する、その結果、MECが莫大な利益を上げることになっているというふうに現地でも指摘をされております。
決算委員会でのJICAの北岡理事長の答弁では、バゴー橋については、プロジェクトを開始するときに、こういう会社しかなかったのでここと契約して仕事を進めているが、二月一日以前の明らかに支払義務があるものは支払うが、それ以外は何も決めていないという答弁をされました。
二月一日以前のものであっても、支払の凍結であるとか、国軍の企業を通さないやり方であるとか、結果として国軍に資金が流れないようにすると、そういうことをする必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) まず、こういったプロジェクトを組成をしましたときに、クーデターが起こるということを前提にして行っているとは思っておりません。そして、我が国として、ミャンマーとそれから主契約者、これの契約については確認をしておりますけれど、基本的には、ODAの事業等々、その下でどういうふうにやるのが一番効率的で工事がうまくいくか等々を含めて、下請等々の契約については、基本的には主契約者、この裁量の中で行われると、このように考えております。
そこの中で、クーデター発生を受けた今後の今御指摘の対応につきましては主契約者におきまして検討中であると、こういう報告を受けておりまして、政府、JICAとして適切な形で処理されるように相談に応じていきたいと思っております。
○井上哲士君 検討中であり、政府として相談に応じていきたいということでありました。
結果として、日本の税金が今虐殺を続けている国軍の利益になるようなことが絶対にないように対応していただきたいと強く申し上げて、質問を終わります。