国会質問議事録

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倫理選挙特別委員会(2018年改定公選法の条文の誤り放置)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 参議院の選挙制度に党利党略のこの比例特定枠が持ち込まれた二〇一八年の公選法改正の条文に誤りがあって、指摘されながら二年間、二年半も放置をされていた重大な問題であります。それによって、公選法第百四十二条四の七項に対する罰則規定がなくなっていたということでありますが、この同項で選挙運動用メール送信に当たって送信者連絡先等の表示を義務付けて、それの違反に対して罰則を付けたという理由は何だったでしょうか。まず、総務省お願いします。

○総務省 自治行政局選挙部長(森源二君) お答えをいたします。
 選挙運動用電子メールの表示義務を設けた趣旨につきましては、これらの情報を表示させることにより、自らの頒布する文書図画の記載の内容に責任を持たせ、反論等の場合の連絡先を明らかにすることで誹謗中傷や成り済ましを一定程度抑止しようとすることや、送信拒否の通知先について受信者が容易に確認できるようにすることであると承知をしておりまして、こうした趣旨等を総合的に勘案して選挙運動用電子メールの表示義務違反に罰則を科したものというふうに承知をしているところでございます。

○井上哲士君 ネット選挙を解禁するに当たって、文書図画中心だった選挙にネット選挙を入れると、フェイスブックとかツイッターじゃなくて、メールのように自由に発信できるものができたときに、いろんな問題があるんじゃないかというかんかんがくがくの議論をした上で付けた罰則なんですよね。極めて重要な、選挙の公正性を保って有権者に迷惑を掛けない大事な罰則だったわけであります。
 本当にあってはならないことなんですが、これは、一八年十二月に総務省から誤りについて法制局が指摘をされながら、当該部署にとどめて局内で報告されず、二年半にわたり過ちが是正をされなかったと、罰則に穴が開く状況が続いたわけであります。
 今回、報道によりますと、大阪の弁護士さんが、この参議院、一九年の参議院選挙での同項違反を告発しようとして、法改正に伴って罰則、罰則の規定がなくなっているということに気付いたと。この方は、候補者側は違反しても罪に問われないと考えるかもしれないと、その記事で述べられております。
 当初、法制局が私たちに説明に来た文書は、条文の不整合というタイトルだったんですね。言葉の問題じゃないんですよ、これ。罰則の適用は困難になるという実害が現に出ていると、そういう事態だということの認識が果たして法制局にあったのかということを、まずお聞きしたいと思います。

○参議院 法制局長(川崎政司君) お答え申し上げます。
 まず、条文の不整合という用語でございますが、何か意図があって使ったものではございませんで、しかしながら、先生方からの御指摘、御批判を受け、その後は条文の誤りとして御説明してきているところでございます。申し訳ございませんでした。
 その上で、本件の誤りによる罰則の適用につきましては、条項の引用が異なっていることから、罪刑法定主義の観点から疑義が、適用について疑義がある状態になっているということだろうというふうに考えております。私ども、誤った対応によりましてそういう疑義がある状態を継続させてしまったことにつきましては、誠に申し訳なく、心よりおわび申し上げます。

○井上哲士君 さらに、総務省からの指摘後、二〇二〇年の二月に朝日新聞社から電話取材があって、そのときに初めて局長にまで報告が上がり、既に相当時間が経過していることから官報正誤では対応できないと判断をして、他の公選法改正と一緒に法改正できないかタイミングを探している中、今日に至ったと、こういう説明が行われました。つまり、総務省から指摘を受けて、そして朝日の電話取材までの一年余りは、その法制局の担当者のところでは、当該部署は、報告もしなければ誤りを是正するための対応も何もしていなかったということなわけですよね、なぜこんなことになったのか。
 先ほど来、非常に政治的大問題になった法案だったということからのプレッシャーがあったんじゃないかとか、そういう指摘がありました。ヒアリングではそういうことはなかったと言われましたけど、私、これだけ複数の皆さんから、そういうことがある以上、改めてそういうヒアリングもして、なぜそういうことが起きたかということを深く明らかにする必要があると思いますけれども、どうでしょうか。

○法制局長(川崎政司君) 誤りの指摘を受けてからの担当部での対応につきまして、いろいろとこれまでにも調査、原因分析をしてきたところでございます。
 一言で言えば、やはり職員あるいは管理職としての責任感、使命感の欠如ということをやはり指摘せざるを得ないというふうには思っているところでございますが、先生方からもいろいろただいま御指摘等をいただいておりますので、もう一度きちんと再調査をするということもしようということで考えておりますので、その辺もいろいろともう一度確認をしながら原因分析に努めてまいりたいと、そして、それを再発防止策に生かしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

○井上哲士君 この朝日の取材後に過去の公選法改正を含めた誤りの点検が行われて、その結果、二〇一五年改正でも誤りが判明をして、三月三日に初めて局長に報告されたというのが説明であります。
 そこから再発防止のための内部体制の整備が行われておりますけれども、具体的にどういう整備をされてきたんでしょうか。

○法制局長(川崎政司君) お答え申し上げます。
 ただいま先生から御指摘があった、その二月、二〇二〇年の二月に法制局長まで報告があり組織として把握した後は、再発防止策として、誤り防止のためのチェック体制の強化と、当局の立案を担当した制定法律の誤りを把握した場合の報告対応体制についての内規の整備を行っているところでございます。
 チェック体制の強化としましては、法案の誤り防止のためのチェック項目のリスト化、担当課以外の立案課による法案のクロスチェックの実施といったようなことを義務付けるようにしてございます。
 また、報告対応体制につきましては、内規において、職員が誤りを把握した場合の迅速な報告や対応について規定をし、その内容の周知を図ったところでございます。

○井上哲士君 最後の話は、参議院議員提出法案に係る法律上の不整合が発覚した場合の対応についてという文書だと思うんですが、先ほどその中で、法改正などについてめどが付いた場合には議員に報告すると、付いた上で報告するという内容があることについて、それはあくまでも一例だと、何かすぐに報告しなくていいような誤解が生じたというような答弁が最初の段階であったんですけど、しかし、この文書に基づいて当時局長などが対応した中身が結局議員に報告していなかったわけですよ。
 つまり、何か誤解を生じたんじゃなくて、やっぱりこのときのこの対応の文書自身が極めて間違った中身になっているんじゃないかと私は思うんですね。その点、いかがですか。

○法制局長(川崎政司君) お答え申し上げます。
 私ども議院法制局はあくまでも議員の補佐機関でございますので、誤りが確認できた場合には関係議員の先生方に速やかに報告することが私どもの責務であるというふうに考えております。
 そのような点からいたしますと、御指摘のありました内規については不十分、不適切なところが幾つかあるというふうに考えておりまして、現在、見直し作業を進めているところでございます。

○井上哲士君 局で共有した後に、この公選法改正と一緒にできないかタイミングを計っていたと、こういう説明もされてきたんですが、これ二〇年の二月に局として把握をした以降、例えばその年の通常国会で町村議会議員選挙に供託金制度を導入する公選法の改正が行われております、これも議員立法でありましたけれども。例えば、なぜその際にこの誤りの是正を盛り込まなかったんですか。

○法制局長(川崎政司君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、二〇二〇年の二月以降で、衆議院議員の議員立法で公選法の改正案が国会にて衆議院に提出され、可決、国会において成立しているところでございます。
 私ども、誤りの情報が組織として共有されて以降、各種情報収集等を行うとともに、その結果、この法改正の動きがあることは把握いたしました。しかしながら、その段階では既に法文がもう固まっていて政党の手続が進行していると、誤りを訂正をお願いすることは困難であるというふうに組織として独自に判断をしたところでございます。しかしながら、自らの組織のみで情報収集を図り、そのような判断をしたこと自体がやはり問題があったというふうに考えております。
 そういう意味でいいますと、組織としての誤りの把握後、関係議員にやはり速やかに報告するようにすべきであったと深く反省をしているところでございます。

○井上哲士君 ですから、まさに議員であるとかいろんなところに情報共有を、ちゃんと最初に報告をしておけば、こういう議員立法の動きも、最初の段階からこういうことをやろうじゃないかということができたわけですよ。本当に、私はこの報告をしなかったという、こういう誤りがずるずるとこういう事態を拡大をしてきていると思うんですね。
 私たちは参議院の法制局を信頼をして、再考の府であるこの参議院の役割を発揮するために、その専門性を発揮してもらってきたわけですね。これからももっと仕事してもらわなくちゃいけないんです、一緒に。だからこそ残念でありますし、信頼回復に向けて経緯や教訓をはっきり明らかにしてほしいと思うんですけど。
 議運の議論の中で報告書を出すというふうにお聞きしていますけれども、どういうやり方で、いつ出されることになっているんでしょうか。

○法制局長(川崎政司君) この間、先生方から様々な御指摘、御批判をいただいておりまして、それを踏まえまして昨年にも再発防止策は講じているところでございますが、不十分なところが多々あるとともに、再発防止のためには、先ほど申し上げましたように、職員の意識改革であるとかガバナンス体制の強化といったようなことも必要であるというふうに考えております。
 現在、それに向けて鋭意準備を進めているところでございまして、できるだけ速やかに御報告できるようにしたいとは思っておりますが、その一方で、これだけ御迷惑をお掛けをしているところでございますので、拙速は避けて、きちんとした対策を講じるべきだというような御示唆もいただいております。
 拙速にはならないようにしながら、きちんとした再発防止策をできる限り早めに先生方の方に御報告するよう努力してまいりたいと存じます。

○井上哲士君 強く求めておきたいと思います。
 次に提案者にお聞きしますけれども、今国会でも条文や資料の間違いが多発をしております。背景の一つに、安倍、菅政権と続いた資料の隠蔽や虚偽答弁など国会軽視がある、そして非常に無理な法案作成の日程があるという指摘もされております。今回の条文ミスも、この一八年の非常に乱暴な選挙制度の改定による中で生じたわけですね。
 二〇一七年から一年間掛けて、参議院改革協の下につくられた選挙制度専門委員会で十七回の議論をした。私もこれにずっと参加をしておりました。先ほど来、各会派間の隔たりが大きくて各論併記の報告書になったと、こういうことを言われていますけど、一番隔たりが大きかったのは何かといいますと、憲法改正をしなければできないような提案をした自民党の案だったんですよ。ほかの会派は全部、現行憲法の下での案を出したんですね。ところが、最後までこの改憲が必要な案に固執をした。つまり、第一会派としてこの合意形成に関する責任を全く果たさなかったというのがあのときの協議会なんですね。
 そして、この報告書ができた後に、一切提示のなかった案を突然提示をしたと。私たちは、これは専門委員会で議論していない案だから更なる協議を求めたわけですけれども、これを背を向けてごり押しをしたと。その内容は、合区によって外れた自民党の議員や候補者を救済するための比例特別枠をつくるものであったわけですね。
 こういうやり方の中でこの法文に誤りが生じたと、そういうことについて提案者の認識はいかがでしょう。

○公選法一部改正案発議者 石井正弘君 お答えいたします。
 先ほど御質問でもいただきましたけれども、選挙制度専門委員会で十七回にわたって議論が行われたところでありますけれども、各会派の意見の隔たりというものは大きなものがあったということでございます。
 結果的に、平成三十年五月七日に各論併記の報告書、これが取りまとめられたところでありますけれども、令和元年の選挙に向けてもう残された時間が少なくなりつつあると、こういう認識の下に、各党が合意する案を得られないけれども、さりとて最大会派である自民党といたしまして何も出さずに選挙制度を改革できないということがあってはならないと、このように考えて立案しようとするに至ったところであります。
 最後に、議長の方から、具体案のある会派は法律案を提出し、国会審議の場で議論するようにと、こういう話があったところから六月十四日に法案を提出したと、このような経緯があったところでございます。
 ただ、どのような経緯があったにせよ、提案者といたしまして、条文案に誤りがあったということにつきましては大変申し訳ないことであると、このように思っているところでございます。
 今回の件を受けまして、今後、会派として法案を提出する際には、法案提出の責めは発議者が負うということを改めて肝に銘じまして、所属議員自らがこれまで以上に条文に誤りがないことを念には念を入れてしっかりと確認をした後に提出をすることといたしたいと、このように考えております。

○井上哲士君 専門委員会で全くその合意形成に努力をしなかったということに対する反省の声は残念ながら聞けませんでした。
 これは法案の出し方じゃないんですね。審議においても徹底審議を私たち野党は求めましたけれども、それを背を向ける強引なやり方が行われました。ですから、最後、委員長の解任動議が出されたわけでありますが、これを数を頼んで解任動議を否決した後に、自民党から審議終結、採決の動議が出されて、それを採決をして、委員会の反対討論も封じてやられたんですね。
 私、この法案が成立すれば、今後改革協を設置をしてもう一回選挙制度の議論をするという流れでありますけど、そうであるからこそ、あのようなやり方は間違いだったと、その反省の言葉をまずこの場で述べていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○石井正弘君 お答えいたします。
 当時の議事録を読み返しておりましても、今、井上議員御指摘のとおり、我が会派の森屋議員の方から質疑終局、討論省略、直ちに採決すると動議が提出をされ、同時に羽田議員から文書によって委員長不信任の動議が提出をされたということでありました。
 この不信任動議に対しまして、自民党の方から反対討論、そして共産、希望の会、立憲民主、沖縄の風から賛成討論がなされました後に、採決にて否決されたということでありました。森屋議員からの動議について採決をいたしまして、その後、法案への採決、附帯決議への採決と続きまして、法案に対する先ほどのお話の反対討論というものがなされなかったということは事実であろうかと承知をしているところでございます。
 しかしながら、当時の状況は先ほど御答弁申し上げましたとおりでございまして、各会派の考え方をまとめるには至らず、結果的に努力が実らなかったということでございますが、我が会派としては最大限の努力をしたということにつきましても是非御理解をいただきたいと思っております。
 いずれにせよ、今後開催される参議院改革協議会におきましては、当時の対応に対しまして、今御指摘のような御意見があったということにつきましては留意をいたしまして、意見の一致を見出すべく、各会派の協力をいただきながら、最大会派としての責任を果たしていかなければならないと、このように考えているところでございます。

○井上哲士君 いや、反省という言葉がない、極めて残念であります。
 これから選挙制度のまた議論をしていくわけでありますけど、改めて猛省を求めておきたいと思います。
 最後、総務省にお聞きしますけれども、指摘をしながらその後改善がされていないことを放置をしてきたということが繰り返し今指摘をされてまいりました。
 最初に指摘をされて、第一義的に法制局の責任だ、それはそうなんですよ。その後、ずうっとそうなっていることに対して、この法律を所管をして公正な選挙の執行に責任を持つ役所として、それがずうっと放置されていたことは問題ないと考えていたんですか、当時。そして、今もそれは問題ないと思っているんですか。そうであれば、私は本当に責任問われると思いますけれども、最後、いかがでしょうか。

○政府参考人(森源二君) 本当に繰り返しになって恐縮でございますけれども、参議院法制局において対応を検討し、対応されるものと考えていたところでございますけれども、十分意を用いまして、しっかりとした対応を常に心掛けてまいりたいというふうに思っております。

○井上哲士君 いや、それはしっかりした対応がされてこなかったんですよ。そのことをもう一回肝に銘じていただきたいと思います。
 終わります。

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