○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
四月の質疑で、継続中のミャンマーへのODAについて、一旦停止して総点検をして、国軍に資金が流れるものは中止するよう求めました。外務省からは、国軍の利益を目的として実施している事業はないという答弁でしたけど、そんな事業があったら大変なわけであります。
そして、この間、国軍の利益につながっていっていることは指摘をされてきたんですね。ミャンマーの国軍は、国家予算とともに、自らが所有、経営する企業のビジネスを資金としています。その中心がミャンマー・エコノミック・ホールディング・リミテッド、MEHL、そしてミャンマー経済公社、MECの二つです。
国連人権理事会のミャンマーに関する事実調査団が二〇一九年に報告書を出しております。ミャンマー国軍の経済的利益についての報告書、これによりますと、MEHLは国軍幹部が経営に深く関与しており、株も全て現役及び退役の将校、連隊や部隊、退役軍人が所有している、また、MECは防衛省が全面的に所有、支配しているとされています。そして、MEHLやMECと両社の子会社が生み出す膨大な収入の大半は政府の公式予算に取り込まれず、人道に対する罪を犯している可能性が高いとされる国軍の資金となっていると指摘をしているんですね。
この二〇一九年の報告を受けて、日本の経済支援は見直さなかったんですか。
○外務省 大臣官房審議官(岡田恵子君) お答え申し上げます。
御指摘の国連人権理事会の報告書におきます記述は承知してございます。
いずれにいたしましても、我が国のこれまでの経済協力は、ミャンマー国民の生活向上や経済発展に貢献し、また人道的なニーズにも対応することを目的として実施してきてございます。ミャンマー国軍の利益を目的として実施しているのではないということでございます。
○井上哲士君 いや、目的としてなんて言っていないんですよ。目的としていないのに、結果としてこうなっていると、こういう指摘がされているということに対応しなかったのかということを聞いているんですね。
逆に、この報告書の直後、一九年の十月にミン・アウン・フライン国軍総司令官が来日をして、茂木外務大臣とも会見されておりますし、安倍総理とも表敬訪問をされて、経済援助の拡大を要請をしているわけですね。私は、やっぱりこういうときに見直しが図られるべきだと思うんですが、そのまま続きました。そういう中で今回の軍事クーデターです。
外務大臣は先週金曜日の記者会見で、このままの事態が続けばODAを見直さざるを得ない可能性があると考えておりますとして、その考えを実際に伝達してきておりますと述べました。マスコミはODA停止示唆と報道もしたわけでありますが、いつ、誰に対して具体的にどういう内容を伝えたのか、このままの事態が続けばというのはどういうことなのか、大臣、いかがでしょうか。
○外務大臣(茂木敏充君) まず、ミャンマーに対するODAでありますが、昨年、私、秋にミャンマー、実際に訪問しております。その際にアウン・サン・スー・チー国家最高顧問ともお会いをしておりまして、日本がミャンマーにおいて行っているODA、海外開発援助、さらには民間投資、これはアウン・サン・スー・チー最高顧問、さらにはNLD、こういったところからも要請を受け、高く評価をされてきたものであると。決して国軍だけの要請によって行ってきたと、こういうものではないということを是非御理解いただきたいと思っております。
その上で、先日のG7の外相会談におきましても、ミャンマー情勢につきまして、このような状態が続けば更なる措置をとる必要があると、これがG7外相の一致した見解でありまして、それを声明に盛り込んだところであります。
日本としても、今、ミャンマー国民も、国際社会も、このままの事態ではいけないと、こういう強い認識を持っているわけでありまして、事態の改善に向けて、このままであったら日本としてもODAを見直さざるを得ない、さらには、民間についても、日本からの投資、これまでかなりな規模があったわけでありまして、今後も期待をされるんですけど、民間の投資も恐らくそのような形にはならない、こういった懸念についてはミャンマー側にしっかりと伝えております。
ただ、これは今後の対応もあることでありますから、誰が誰に伝えたと、こういったことについては控えさせていただきたいと思います。
○井上哲士君 軍事クーデターから三か月半たって、市民の粘り強い不服従運動が行政や経済社会の多くを機能不全にしております。
国軍は、この不服従運動に対する弾圧、取締りを強化をして、そしてさらに国軍に指名された新たな選挙管理委員会が二十一日、不正選挙を行ったとしてNLDを解党処分にすると、こういう方針示しているんですね。ですから、国際社会の批判に全く耳を貸さない、事態を更に悪化をさせようとしているときでありますから、私は、こういう悪化に政府の方針が対応できていないんじゃないかと、もはやODAの中止を決断をすべきときだということを強く申し上げておきたいと思います。
その上で、次に、途上国の新型コロナのワクチン支援についてお聞きします。
パンデミックの克服には、日本はもとより途上国への医療、ワクチン供給の支援が必要ですが、二十四日のWHOの総会でテドロス事務局長は、世界のワクチン接種の七五%が僅か十か国に集中していると述べております。
日本はCOVAXファシリティーに取り組んできましたけど、今年中に途上国人口の三〇%に当たる十八億回分のワクチンを供給する目標に対して、必要となる資金八十三億ドルに対し、十七億ドルが不足をしていると言われております。
菅総理が十八日の夜に、アフリカの経済支援のための首脳会合へのビデオメッセージで、COVAXファシリティーに対して、既に拠出した二億ドルに加えて、できる限りの貢献を行うという考えを示したけど、七億ドル程度を新たに拠出する方向で調整中という報道もあります。実際どういう規模の貢献をするおつもりでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 新型コロナ、各国でこれが収束に向かっても、世界のどこかにウイルスが残っていれば感染再拡大の危険性というのは残るわけでありまして、そのためには、ワクチンの生産だけではなくて、世界全体でワクチンへの公平なアクセスの確保であったりとか普及を加速していくことが極めて重要だと考えておりまして、こういった考え方に基づいて、我が国は、COVAXファシリティー、これ昨年の六月に創設をされたわけでありますが、この設立当初から制度設計の議論に積極的に貢献してきておりまして、資金面でも、これは大きなCOVAX全体のあれがあるんですが、そこの中でも、途上国向けの枠組みに既に合計二億ドル拠出をしているところであります。そして、来週六月の二日にはGaviと共催でCOVAXワクチンサミット、開催する予定であります。
途上国の人口の三〇%をカバーすると、金額的に二〇二一年、本年末までに八十三億ドルが必要とされておりまして、資金ギャップが十七億ドル現在あるわけでありまして、この資金目標を達成すると、もちろん、その上できちんと調達をして分配すると、こういったことも必要になってくるわけでありますが、途上国に安全性、有効性、品質が保証されたワクチンを公平に、より多く届けていくと、このことが重要だと考えておりまして、我が国として、これ共催をするわけですから、十七億ドルの中で、額が決まっているわけではありませんけれど、しっかりほかの国にも是非これに対してプレッジをしてほしい、拠出をしてほしい、お願いをする立場にふさわしいようなプレッジができるように調整していきたいと考えております。
○井上哲士君 途上国へのアクセスの確保のために日本が役割を果たそうとしている、大変重要なことだと思います。
同時に、やはり、供給とともに、生産が足りないという問題があるんですね。昨年十月に、WTOの知的財産権理事会、TRIPS理事会で、インドと南アフリカが、新型コロナウイルスに関するワクチン、医療用品に係る四つの知的財産権、特許、意匠、著作権、開示されていない情報の保護を感染拡大中は一時的に免除するという提案をいたしました。
現在まで、途上国や新興国を中心に百か国が賛同しておりますが、この間、TRIPS理事会で賛同国とアメリカやEUなどの反対国の間で議論が続けられてきましたけれども、膠着状態であります。
両者が対立している論点は何か、そして日本はどういう対応をしてきたのか、いかがでしょうか。
○外務省 経済局長(四方敬之君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、二〇二〇年十月にインドと南アフリカが提案し、ワクチンの特許権などの保護義務の一時免除や、その他の措置がどのような形であればワクチンの国際的な生産拡大及び公平なアクセス確保につながるか、国際的な議論が続いているところでございます。
インドと南アフリカは、コロナ対策として医療品への手頃な価格と迅速なアクセスの実現を目的として、WTO協定の一部の規定の履行義務の免除を主張し、知的財産がそのような目的の障害となっていると主張しております。
一方、反対国からは、知的財産がそのような障害となっている事実は確認されないこと、知的財産の保護義務を免除しても国際的なワクチン等の生産拡大や公平なアクセス確保につながらないこと、知的財産の保護を前提とした先発製薬企業からのノウハウの提供や技術移転といった企業の自発的な協力がなければ生産拡大に資さないという意見も出ております。
我が国としましては、現在続いておりますこのような議論に、WTOのTRIPS理事会等の場で積極的に参加をしてきておるところでございます。
○井上哲士君 そういう中で、これまで反対してきた米国のバイデン政権が、五月五日にこのワクチンの特許の免除に賛成の意向を示して、今後のWTOでのテキストベースの交渉にも積極的に参加すると述べました。大変大きな一歩だと思います。WHOのテドロス事務局長は、新型コロナとの闘いで歴史的価値のある瞬間だと歓迎をし、EUの中でも態度が軟化しているなどの動きが見られます。
こういう米国の認識の変化及び国際的な世論の変化についてどう受け止めているのか、そして、今積極的に議論に参加をしてきたと言われましたけれども、六月にはTRIPS理事会の公式会合が行われます。日本はどのようなこの問題で態度表明をするおつもりでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 今、インド始め多くの国で感染の拡大、若干収まっているといいましても、一日二十万人近いその感染者が出ると、また死者も増えると、こういう状況にあって、これは、ワクチンの技術を持つ国も含めて世界全体で取り組んでいかなきゃならない、こういった観点から、バイデン政権も保護義務の一部の免除についてこれを支持すると、こういう方針を出したわけでありまして、テキストベースの交渉にも参加をすると。日本としてもこの交渉には参加をしていきたいということは既に申し上げているところであります。
その上で、そういったことを進めながら、先ほど四方局長の方からもありましたように、実際にどういう形を取れば国際的な生産が増えるかとか公平なアクセスにつながるかということが重要でありまして、この特許の問題もありますが、ノウハウとか技術移転、実際にそれが進まないと駄目だという問題であったり、生産設備、一部の部材が不足をしている、こういう問題もあるわけでありまして、一つ一つボトルネックを解消していくと。
さらには、国に届いても、そこから本当に接種の現場まで持っていく、ここでなかなか、特にファイザーであったりとかモデルナ等々につきましては、低温で貯蔵、保管をしなきゃいけないという問題もあるわけでありまして、コールドチェーンの整備であったりとか様々な課題があるわけでありまして、そういったことを一つ一つ乗り越えていくことが必要ではないかなと、こんなふうに考えております。
○井上哲士君 様々言われましたけど、日本としては、この生産拡大のための特許権の放棄自体は反対するものではないということでよろしいですか。
○国務大臣(茂木敏充君) どういった形の特許権の放棄の具体的な内容、こういったものにもよると思っておりますけれど、日本として、ほかの国がこういったことに前向きに取り組む中で日本だけ待ったを掛けると、そういうことをするつもりはありません。
○井上哲士君 これ、ワクチン特許免除を主導しているのは南アフリカなんですね。背後には、あのエイズ禍で庶民に治療薬が十分届かずに多数の死者を出したと、こういう教訓がありまして、二〇〇〇年代前半のピーク時には毎年五十万人以上が感染をして、三十万人近くが死亡するという深刻な事態があった、そういう教訓から今回も強く主張されています。
米国のUSTRのタイ代表は、この特許免除を支持する声明で、これはグローバルな衛生の危機であり、新型コロナウイルスのパンデミックという非常事態には非常手段が求められると、こう強調しているんですね。
まさに、こういうエイズのときの教訓、そして、今非常事態だという下であれば、それにふさわしく、特許免除というやっぱり特別の対応に私は大いに賛成し、推進をすべきだと思いますけれども、改めていかがでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 先ほど申し上げているように、日本としてもそういう立場でありますし、キャサリン・タイUSTR代表とも、私、直接話をこういったことも含めしておりますけれど、もちろん、そういう問題やるのと同時に、何がボトルネックになるかと、このことは常々このコロナの対策をする上では考えなくちゃいけないと思っておりまして、例えば、日本国内を見ましても、私、昨年の夏ぐらいから絶対にワクチンだと言っていたんですよ、もうワクチンが鍵を握ると。なかなかそうはならなかった。今年になって、このワクチンとなったときに、まずは調達が遅れてしまう、この量を確保しなくちゃならないと、これでどうにか量を確保した。私もEUとは相当話をしました、遅れずに日本に入ってくるようにということで。
今度は、どちらかというと、先ほどの大塚委員の発言じゃありませんけれど、打ち手が足りないわけですよ。だから、考えりゃいいんだと思うんですね。そういったことを、いろんな、例えば看護師の方でも、免許を持っていながら、一旦、何というか、結婚してお辞めになった方だっているわけですし、いろんなアイデアというのはあるんじゃないかなと思っておりまして、どこかでスレッシュホールドを超えると。これが完全に集団免疫になる七五とかその数字じゃなくても、ある程度のスレッシュホールドになるとかなり状況というのは変わってくるわけですから、そういうものを日本でもつくっていくこと必要でありますけれど、国際的にもどうやったらその様々なボトルネックを解消できるのかと、こういう観点から議論していきたいと思っています。
○井上哲士君 皆が、みんなが安全になるまで誰も安全でもないということを、立場で是非推進をしていただきたいと思います。
終わります。