○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
日印ACSAについては討論で述べたいと思います。
深刻な事態となっているパレスチナ情勢と中山防衛副大臣のツイートの問題についてお聞きいたします。
イスラエルによる空爆で、五月十六日にはガザ地区で子供十人を含む四十二人が死亡しました。昨日の時事通信の報道によりますと、十日以降、ガザ地区でのパレスチナ人の死者は百九十二人に上り、イスラエルとハマスの交戦による死者の総数は二百人を超えたとされております。十五日には、報道機関が入るビルまで攻撃をされました。一般市民に多数の犠牲が出ているにもかかわらず、イスラエルは攻撃を継続する意思を示しており、極めて憂慮すべき情勢であります。
まず外務大臣にお聞きしますけど、政府としてこの事態をどう認識をしているのか、そして、この双方の武力攻撃の停止に向けた国際社会と日本政府の対応の現状はどうなっているのか、お答えください。
○外務大臣(茂木敏充君) パレスチナの武装勢力によります攻撃とイスラエル軍によります地上攻撃を含みます反撃によりまして情勢は日々悪化をしておりまして、私も、あのガザ地区、既に行ったこともありますし、あの危険な状況もよく分かっておりますが、特に双方の民間人に多数の死傷者が生じていること、遺憾でありまして、我が国はこうした暴力行為を強く非難をいたします。
我が国は、イスラエル、パレスチナ両当事者の抱える問題は暴力によって解決されるものでは決してなく、当事者間の交渉と相互の信頼を築く努力によってのみ解決されると確信をいたしております。こうした我が国の立場を踏まえ、我が国として、イスラエル、パレスチナ双方に対して在京及び本国ベースで最大限の自制を働きかけております。
ここに来まして、エジプト、そしてアメリカと、仲介努力が行われておりまして、これらの動きも注視をしながら、日本として引き続き国際社会としっかり連携をして、外交的な取組、継続していきたいと考えております。
○井上哲士君 グテレス国連事務総長は、報道官を通じて、メディアや民間人を無差別に標的とするのは国際法違反だと批判をしております。
この問題の根本には、やはりイスラエル政府がエルサレムやその周辺での入植活動をエスカレートさせているという問題があります。
イスラエルは、今年の一月の十八日に、ヨルダン川西岸での約八百棟の入植地計画を、建設計画を承認しました。イスラエル当局は、パレスチナ住民を追い出して、代わりに入植者を居住させるべく、民家への破壊行為や強制退去を精力的に行っています。パレスチナ人の慣習的な集まりを禁止したり、モスクへの入場を妨害し、入植者によるモスク襲撃を警官隊に援護させるまでしていると現地の訴えが届いております。
こういうイスラエルのこの入植地建設計画の推進についての政府の見解がどうなのか、それから、こうした不法な入植のエスカレーションとパレスチナの人々に対する人権侵害や弾圧が続いていることが双方の対立の激化の背景にあると考えますけれども、見解いかがでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) この中東エルサレムの地、なかなか有史以来難しいところでありまして、御案内のとおり、様々な民族、そしてまた宗教的な対立が続いております。
中世の時代におきましても、十一世紀の末の十字軍の時代から二百年近くキリスト教、そしてまたイスラム教の対立が続くと。その間一番長い停戦だったのが、一一九二年、第三次十字軍のリチャード一世と当時のイスラムの雄でありましたサラディンの間の二十六年の講和ということになるわけでありますけど、なかなか、失礼、済みません、短くします。
先般の東エルサレムにおけます五百四十棟の入植地建設計画の承認を含めて、イスラエル政府によります占領地における入植活動、これは国際法違反でありまして、このような入植地建設計画の推進は二国家解決の実現を損なうことから、我が国は決定の撤回及び入植活動の完全凍結を求めているところであります。
今般の情勢悪化につきましては、東エルサレムのパレスチナ住民に対する強制立ち退き命令の可能性など様々な背景があると考えられますが、いずれにせよ、我が国として、イスラエル、パレスチナ双方に対して、最大限の自制、これを呼びかけていきたいと思っております。
○井上哲士君 入植活動は国際法違反だと、明確な政府の立場であります。
今、この武力攻撃で双方死者が出る中で、あろうことか中山防衛副大臣がツイッターで、イスラエルにはテロリストから自国を守る権利があります、私たちの心はイスラエルとともにありますなどと発言をされました。これ、イスラエルによる攻撃を正当化するものであり、断じて認められません。なぜ、この武力の衝突の停止を呼びかけずに、わざわざイスラエルを擁護する発言をしたんですか。
○防衛副大臣(中山泰秀君) 御質問ありがとうございます。
五月十二日に発信した御指摘のツイッターに関しましては、あくまでも一政治家としての見解を申し述べさせていただいたものでありまして、公安調査庁の国際テロリズム要覧で国際テロ組織に挙げられており、我が国がテロリスト等に対する資産凍結等の措置の対象としているハマスが攻撃を行ったとの声明を発出したことを踏まえまして、こうした暴力行為は行うべきではないという趣旨で発信をしたものであります。
いずれにしましても、私は、双方の民間人に多数の死傷者が出ており、こうした暴力行為はいかなる理由によっても正当化できないと、かように考えてございます。また、イスラエル、パレスチナ両当事者の抱える問題は暴力によって解決されるものでは決してなく、全ての関係者が最大限の自制を持って事態の更なるエスカレーションを回避すべきと、かように考えてございます。
私からは以上でございます。
○井上哲士君 あなたのツイッターのプロフィールのトップは、わざわざ英語でミニスター・オブ・ディフェンスとしているんですね。そして、防衛副大臣と明記しているんですよ。ツイッターの中身を見ても、最近でいえば、コロナワクチンの大規模接種を始め、防衛副大臣の活動や見解ばっかりですよ。なぜこれが一政治家の個人的な見解と言えるんですか。このツイートだけがそうだと言うんであれば、こんなの通用しませんし、通用すると認識しているんならば、私は政治家としての見識が問われると思います。
そして、日本政府と同じだと言いましたけど、先ほど大臣の答弁もありましたけど、このイスラエルの攻撃について自制を求めても、あなたのように自国を守る権利があるなどと擁護はしていないんです。そして、先ほど答弁の中で、詳細な事実関係は承知していないというふうに言われました。しかし、小西議員が配られたあのブログを見ましても、なぜこの世界の報道機関がイスラエルでこのミサイルの当たる瞬間を撮影することができるのかと。イスラエルは、テロリストのいるビルに対してここを砲撃するということをあらかじめ言っていると、そこにテロリストがいることを認識していてピンポイントでやっているんだと、それをこの人間の、人の盾で巻き添えにしているのはほかならずハマスじゃないかと、こういうふうに言っているんですね。詳細知らないと言いながら、詳しくあなたは語っているんですよ。
この間の報道機関のビルの破壊に対しても、AP通信はこれに対して、ハマスの活動が、していたという根拠を示せと、こう求めているんですね。あなたは詳細知らないと言いながら、結局イスラエルが言っていることをそのままオウム返しに言って擁護しているじゃありませんか。全く政府の立場と違っていますよ。撤回をすべきじゃないですか、ツイッター。
○副大臣(中山泰秀君) 御指摘の点につきましては、詳細な事実関係を十分把握する立場にはないことから、政府として確定的なことを申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
いずれにしましても、双方の民間人に多数の死傷者が生じていることは大変遺憾であり、我が国としてこうした暴力行為を強く非難をしています。私としても、先ほど来の政府見解と同じ認識でありますと同時に、SNSに関しても個人として行わせていただいているという認識でございます。
○井上哲士君 あなた、全くイスラエルの攻撃、非難していませんよ。
先ほど申し上げたように、このブログの中の見解の中で、全くイスラエルの言い分をうのみにして、むしろハマスが人を盾にしているから悪いんだと、こう言っているじゃありませんか。
既にこのツイッターは国際的な反応を引き起こす大問題になっております。パレスチナの駐日常駐代表は十四日の会見で、あなたの発言について、人種差別的だと、殺害された罪なきパレスチナ人への敬意を欠いていると非難をしております。一方、イスラエルの大使は、勇気付けられるなど述べております。安保理の緊急会合では、パレスチナ自治政府のマリキ外相が、外国の指導者がイスラエルの自衛の権利を語るたびにイスラエルは勇気付けられて、寝ている家族全員を殺し続けていると、こう訴えているんですよ。
防衛副大臣でありながらこういうツイートをしたことがイスラエルの行為を正当化する、こういうツイートをしたことが日本の立場をゆがめて問題の解決につながらないと、こういう事態になっていることをあなたはどう認識しているんですか。
○副大臣(中山泰秀君) やはり双方の民間人に多数の死傷者が生じているということは、私は本当に遺憾だと思っております。また、いかなる暴力行為もこれは許されない、正当化できないというふうに考えています。
イスラエル、パレスチナ、この両当事者の抱える問題はこれ暴力によって解決されるものでは決してないと、そういうふうに考えております。全ての関係者が最大限の自制を持って事態の更なるエスカレーションを回避すべきだと、そのように考えております。
○井上哲士君 いやいや、あなたはね、いいですか、イスラエルはちゃんと予告してやっていますと、それを一般の人を盾で巻き添えにしているのはハマスなんだと、こう言っているんですよ。全然双方の問題にしていませんよ。全くイスラエルの立場で言っている。そのことが国際問題にもなっていると先ほど紹介しました。そのことへの責任、そのことへの自覚はどうなのかということを聞いているんです。ちゃんと答えてください。
○副大臣(中山泰秀君) 政府としましては、御指摘の外務報道官談話にも先ほど来ありますように、東エルサレムにおける衝突、それから暴力、ガザ地区からのロケット弾発射を含め、イスラエル、パレスチナをめぐる最近の諸情勢について深刻な憂慮を示しております。私も同じ認識であります。
また、イスラエル、パレスチナ両当事者の抱える問題は、先ほど来申し上げておりますように、暴力によってのみ解決されるものでは決してなく、全ての関係者が最大限の自制を持って事態の更なるエスカレーションを回避すべきと、かように考えてございます。
しっかりとこの政府の考えを認識して今後も対応していきたい、そういうふうに考えております。
○井上哲士君 今述べられた政府の見解とあなたのツイートは全く違うんですよ。政府の見解にも、パレスチナ問題の平和的な解決を目指す国際的努力にも、人権擁護にも全く反しているんです。改めて撤回を求めますし、撤回できないようであれば防衛副大臣としての資格が問われると、そのことを強く申し上げまして、時間ですので終わります。
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○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、日印物品役務相互提供協定、ACSAの承認に反対の立場から討論を行います。
本協定は、日米、日豪及び日英等のACSAと同様に、多国間の軍事協力の推進強化を明記した日米ガイドラインの下で軍事体制を強めるものであります。平時の活動から集団的自衛権の行使を可能とする存立危機事態に至るまで、日印間で相互に行う物品、役務の支援を対象とすることを定めています。他国の武力行使と一体化した後方支援をも担保するものであることから、憲法九条に反することは明らかであり、容認できません。
日印両国は、特別戦略的グローバルパートナーシップを宣言して、軍事協力の拡大、深化に取り組んできており、ACSAの締結はその一環です。自衛隊とインド軍による二国間及び多国間の共同訓練・演習は、過去十年間で既に四十二回実施されており、ACSAの締結は、こうした共同訓練やその活動における協力の基盤の強化を図るものです。日印間の物品、役務の提供について地理的な限定はないことから、ジブチの海外拠点やインド洋地域にあるインドの拠点を通じた協力も排除されません。今後の自衛隊による海外活動の一層の拡大強化につながるものにほかなりません。
米国のインド太平洋戦略は、中国の海洋進出・軍事的プレゼンスの拡大への対処のために、従来の二国間関係を多国間の枠組みで増強し、ネットワーク化させた構造へ進化させていくとしているものであるところ、今回の日印ACSAの締結や日米豪印による四か国安全保障対話の取組はまさにその一環に位置付けられるものです。
米国を中心とする軍事協力の強化が軍事対軍事のエスカレーションを招いて、地域の緊張を一層高めることがあってはなりません。政府には、特定の国々との軍事協力の追求ではなくて、アジア太平洋地域を始めとする地域の平和と安定のための外交努力にこそ力を尽くすよう求めるものであります。
以上述べて、討論を終わります。