○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
条約については討論で述べます。
まず、SDGs達成のための革新的資金調達について聞きます。
コロナ禍の下でSDGsの保健福祉分野で掲げられた感染症対策や途上国支援、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成、ますます重要になっております。一方、SDGsの目標達成には年間約二・五億ドルが不足する、そのために革新的資金調達として国際連帯税が議論をされてきました。私、昨年の質疑でも推進を求めました。
ところが、十一年間連続して外務省の税制改正要望に盛り込まれているにもかかわらず、今年度分については取り下げられました。大変遺憾でありますけれども、なぜ取り下げたんでしょうか。
○外務大臣(茂木敏充君) 途上国、SDGsを達成するために、井上議員がおっしゃるように、少なくとも年間二・五兆ドルの資金ギャップがありまして、これを埋めていかなければならないということで、外務省として、一昨年七月、SDGs達成のための新たな資金を考える有識者懇談会を設置をして議論してまいりました。
〔委員長退席、理事三宅伸吾君着席〕
そこの中で、国際連帯税については、有識者懇談会から提出された報告書の中で、新型コロナ感染症の流行により日本経済全体が大きな打撃を受けている状況下での新税の導入が現実的と言えるか、こういった指摘もいただいておりまして、この提言を踏まえて二〇二〇年度については税制改正要望の提出は見送ったところであります。
恐らく、その大きな資金ギャップを埋めるということになりますと、税もありますが、民間資金の動員と、これが私は不可欠だと考えておりまして、例えばODA、これを呼び水にしました民間資金動員なども考えられると思っておりまして、引き続き、新型コロナによる現下の経済状況、これがどうなっていくか、こういったことも見極めながら、適切な資金調達の在り方、検討していきたいと思っております。
○井上哲士君 資金不足、億ドルでなく兆ドルでして、間違えておりまして......(発言する者あり)私が間違えていました、済みません。
有識者会議の委員にグローバル連帯税フォーラムの田中徹二さんが入っておられましたけど、最後、辞退されたんですね。ブログで、率直に言って九月に外務大臣替わる前後から懇談会の性格が変わったと。そして、自民党税制調査会の幹部から税制に対する圧力もあって、外務省がこれに抵抗できない面もありましたということを言われております。
これ、もちろん大変難しい問題であることは分かっているんです。だけど、今、この間の決算委員会の答弁でも、コロナ禍の下で資金不足は特に途上国で拡大するという答弁がありました。コロナ禍を理由にしたら、ますます資金不足になるんですね。元々資金調達に困難があるからこそ、従来のやり方ではない革新的な資金調達が求められてきたわけですから、私はむしろ、今こそしっかり旗を掲げることが必要だと思うんです。
先ほど、今年度に限ってはというお話でありましたけれども、今後、しっかりこの問題を進めていただきたいと思いますけれども、改めて、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 有識者懇談会につきまして、私の方から、どのように運営してほしい、こういうお話をしたことはございません。
その上で、今後でありますが、まずは日本経済がどうなっていくかと、税収であったりとか経済の動きというのはなかなかまだ不透明なところあります。そういった中の状況を見極めながら検討を進めていきたいと考えております。
○井上哲士君 改めて、進めていただきたいと、実現に、外務省としても再び掲げていただきたいということを強く求めておきたいと思います。
〔理事三宅伸吾君退席、委員長着席〕
続いて、経済のデジタル化に伴う国際課税上の対応についてお聞きいたします。
コロナ禍の下で、GAFAにマイクロソフトを加えた五社の売上げが二〇年の十月から十二月で合計約三十九兆円、純利益は約六・七兆円ということになっておりますけれども、こういう国境を越えた活動で膨大な利益を上げながら市場国は課税をできないと、タックスヘイブン等を使った課税逃れも問題になってまいりました。昨年も指摘しましたけれども、このコロナの財源からでも大変待ったなしの課題だと思っております。
一つ目の柱のいわゆるデジタル課税について、PEの有無によらず市場国に公平に分配する国際的な合意が進んできましたけれども、トランプ政権がこれを企業の選択にする、合意を骨抜きにするようなセーフハーバー提案をいたしまして停滞していましたけど、バイデン政権の下でこの提案を撤回をして、さらに対象企業を簡素にする提案がアメリカから行われております。
この提案の中身、それに対する日本の評価及び国際的な評価と今後の見通しについて、財務省、いかがでしょうか。
○財務省 主税局国際租税総括官(武藤功哉君) お答え申し上げます。
経済のデジタル化に伴う国際課税制度の見直しにつきましては、OECDやG20を中心に約百四十か国が参加する枠組みで議論されておりまして、昨年十月に二つの柱から成る青写真が公表されたところでございます。
委員御指摘の第一の柱につきましては、御指摘のとおり、米国バイデン政権が前向きな姿勢を示し、合意に向けた機運が高まっていることは前進であると考えております。
現在交渉中ですので、各種報道内容の中身についてはコメントを差し控えたいと思いますが、日本としましては、制度の円滑な運用確保のために対象企業の数を限定することが重要であると考えており、そうした主張をしつつ、合意形成を目指しているところでございます。
いずれにしましても、本年半ばまでの合意を目指して関係国間で精力的な議論が行われておりますので、日本としては引き続き積極的に合意形成に貢献してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 あのアメリカの提案は、売上高より利益率の大きいグローバル企業を分野にかかわらず百社を対象にするということのようですので、今の日本の対応と基本的に一致をしているんだろうと思います。
これまでの議論で、課税方法としては合算課税というやり方がおおむね合意されていると承知しておりますけれども、課税に当たっては、企業の母国が有利になって先取りしてしまうようなことがないようにしなくちゃいけないと思っておりますけれども、この合算課税、どういうやり方か、日本への影響はどうなるか、いかがでしょうか。
○政府参考人(武藤功哉君) お答え申し上げます。
第二の柱、いわゆるグローバルミニマム課税におきましては、例えば、軽課税国に子会社を有する法人について軽課税国で計算された実効税率が合意された最低税率に達していない場合、その差分について、親会社所在地国において親会社の所得に合算して課税することを可能とする所得合算ルールが検討されているところでございます。
我が国の税収への影響につきましては、現時点では最低税率の水準が決まっておらず、また、合意されたとしても、第二の柱導入によって軽課税国の税率や企業行動に変化が出ることも予測されるため、一定の税収増は見込まれますが、推計は困難であると考えているところでございます。
○井上哲士君 今、二つ目の柱で、この軽課税国への利益移転を解消するという問題がありました。このために、法人税の国際的な税率の引上げというのが議論になっております。
イエレン米財務長官は、四月のG20の蔵相会議に先立って、法人税率の世界的な底辺への競争を終わらせるとして、公正な税負担につながる国際的な最低税率の導入を訴えました。二十一日には一五%を下限とするということを提案をしておりますけれども、この提案の背景、そして日本としての評価はいかがでしょうか。
○政府参考人(武藤功哉君) お答えいたします。
国際的に合意された最低税率による課税を実質的に確保するルール、第二の柱は、企業間の公平な競争条件を確保し、法人税の引下げ競争に歯止めを掛けるものと考えております。今回の米国の提案はこうした考え方に沿ったものであり、日本としても支持できるものと考えております。
今後、米国提案も含めて、第二の柱、それから先ほどの第一の柱と併せて関係国間で合意形成に向けて議論に積極的に貢献してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 トランプ政権の下で連邦法人税が三一%から二一%に引き下げられて、バイデン政権はこれを二八%に戻すということを掲げているわけですね。
新自由主義の下で、各国で法人税減税競争があって、OECD加盟国の平均法人税率は一九八一年の四八パーから二〇二〇年の二三%まで下がりました。その下で、所得再配分機能が弱まって格差が拡大したり、大企業の利益は雇用や賃上げにつながらないと、国家財政の悪化ということもありました。そこから転換する大きな流れだと思うんですね。イギリスは五十年ぶりに法人税を引上げをするということであります。
この間、日本もこの競争の中で、例えば法人実効税率は安倍前政権の下で三七パーから二九・七四パーまで下がっております。今、こういう大きな世界の流れの中で、日本もこういうやり方を転換をするべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(武藤功哉君) お答え申し上げます。
いわゆるタックスヘイブンなどの軽課税国への利益移転に対して、国際的に合意された最低税率による課税を実質的に確保するルールの導入により、企業間の公平な競争条件を確保し、法人税の引下げ競争に歯止めを掛けることは日本としても重要だと考えております。
日本の今後の法人税の在り方につきましては、経済社会情勢の変化や国際的な動向等も踏まえつつ検討する必要があるというふうに考えております。
○井上哲士君 このコロナ禍の下でも利益を上げ、内部留保を増やしているという状況があるわけでありますから、是非ここに、しっかり引上げに向けて、そして庶民減税ということで取り組んでいただきたいと強調しまして、質問を終わります。
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○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、日本・セルビア、日本・ジョージアの二つの租税条約及び日本・ジョージア投資協定に反対の立場から討論を行います。
二つの租税条約は、投資所得に対する源泉地国での課税限度税率を軽減又は免除する措置を講じています。これは、日本の大企業とその海外子会社が、当該国での外資優遇税制の利益を十二分に受けつつ、さらに外国税額控除制度や外国子会社配当益金不算入制度によって源泉地国での課税が劇的に軽くなるなど、税制優遇措置を二重三重に享受することを可能とするものです。
日本・ジョージア投資協定は、日本の多国籍企業の海外転換を促すために、相手国との間で投資環境の整備を図るものです。本協定に盛り込まれたISDS条項は、進出先の国の制度や政策の変更によって損害を受けたと主張する多国籍企業がその国の政府を相手取り損害賠償を求めて提訴できる取決めです。これは、一企業が国家を訴え、国の主権を脅かすことにつながりかねません。
以上を述べ、反対討論とします。