○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
まず、日英原子力協定に関連してお聞きします。
安倍前政権は、インフラシステム輸出戦略で、福島原発事故前に三千億円だった原発の海外受注を二〇二〇年に二兆円にするとして、財界、関連企業を伴ってトップセールスを進めました。しかし、英国では日立が計画撤退、トルコでは三菱重工が断念、ベトナムでは三菱重工と東電が撤退、米国では東芝子会社が撤退、アラブ首長国連邦で韓国勢に敗退、そしてインドではロシア国営企業が受注と。唯一残るのがポーランドの高温ガス炉でありますが、研究段階なんですね。
その結果、原子力分野の海外受注額の最新実績、二〇一八年はゼロになっておりますが、経産省、お聞きしますけれども、全く戦略どおりに進んでいないその理由はどういうことでしょうか。
○資源エネルギー庁 電力・ガス事業部長(松山泰浩君) お答え申し上げます。
今委員御指摘ございました二〇二〇年の原発の海外受注額二兆円という数字、こちらは二〇一三年に策定いたしましたインフラシステム輸出戦略といたしまして、将来の市場動向等を踏まえて、二〇二〇年単年で約三十兆円のインフラシステム輸出受注を成果目標として設定したものでございまして、そのうち原子力分野については約二兆円程度と推計したものでございます。
これまで官民一体となりまして原子力分野の輸出に取り組んできたわけでございますけれども、何分これは受注、取引が成立するかどうかということでございます。競争相手との競合条件、この条件がどうなっていくか、またその上で輸出先の相手国の中の状況というのがございます。輸出先の政府によるエネルギー政策が安定的にサポートされたものとなり続けていけるかどうか、また先方政府のファイナンス支援等の資金調達環境が整うかどうか、様々な要因が絡むところでございます。
今、例示いただきました中でも、例えばイギリスのホライズン原発ですとかベトナムのニントゥアン原発等々、かなり交渉、調整というのは進んでいたわけでございますが、様々な金融環境若しくは相手国政府の中における政策の方針といったことがございまして、現状においては、受注額についてはこの受注が得られていないという状況に至っていると認識してございます。
○井上哲士君 いろいろ言われましたけど、そういうことを含めて本来戦略を作っているはずなんですね。
安全面でも経済面でも問われていると思うんですよ。経団連の会長でもあった日立の中西会長が、この英国への原発輸出プロジェクトからの撤退の際の会見で、経済的な見通しが厳しくなったと述べました。福島第一原発事故を受けて原発の安全対策強化で費用が高騰したというのが一つの要因でありますが、リトアニアではこれ国民投票で計画が否決です。ベトナムでも安全への懸念と財政難から政府が計画を断念したと。さらに、国際的に再生可能エネルギーのコストも大きく下がっているということもあるわけですね。
原発が安全面でも経済面でも成り立たなくなっていると、こういうことではないんでしょうか。
○政府参考人(松山泰浩君) お答え申し上げます。
原子力事業というものは、初期の段階で建設を始めて非常に大きな巨額の投資を必要とするものでございます。その上で、長期間にわたりまして電気を安定的に供給していくと、非常に長い運転期間を通じまして収入を得て経済性を高めていくと、こういう性格を持った事業でございます。もちろん、様々な安全面に対する対策の重要性等々がありまして、状況は変化しているところではございます。個別の事業性についてお答えすることは難しいわけでございますが、事業がどう進んでいくかということについては個別に判断されていくことだと思います。
なお、ほかの電源との比較ということについて申し上げますと、政府といたしましても二〇一五年に、当時のエネルギー基本計画の策定に合わせた形で電源別の発電コストの試算を行ってございます。その中では、原子力の発電コストというものはキロワットアワー当たり十・一円以上という結果を得ているわけでございますけれども、その際には、この試算の中におきまして、様々な関連追加費用ということも併せ追加試算してございます。例えば福島事故の関連費用、追加安全対策費用、さらには核燃料サイクル費用、それぞれのものが増加した場合の感度分析というのを行っているわけでございますが、この試算の中では、全て反映した場合に当たってもキロワットアワー当たり〇・八から一円程度の上昇というふうに試算しているところでございます。
いずれにしましても、現在、エネルギー基本計画の改めての検討をしているところでございますけれども、近年の様々な状況の変化を踏まえた試算、検討というのを進めていきたいと考えてございます。
○井上哲士君 当時の政府の試算も、四十年間の安定稼働を前提にしているなど、現実と乖離しているという批判が行われました。
世界の再生可能エネルギーによる発電量と発電量シェアは増え続けて、ついに二〇一九年は原発を上回ったんですね。これ発表した国際チームは、原発の発電コストは高く、世界のエネルギー市場で競争力を完全に失っていると、こういう指摘をいたしました。そういう中で原発輸出を経済成長の柱に据えたこと自身、私は破綻しているんじゃないかと思うんです。
そういう中でのこの協定でありますが、対象に原子力関連技術が新たに盛り込まれました。協定に署名する八日前に、第九回日英原子力年次対話がありますが、その中で小型モジュール炉や高温ガス炉の共同研究開発についても議論をされております。
外務大臣は衆議院で、特定のプロジェクトを想定したものではないと、この議定書はという答弁をされておりますが、こうした小型モジュール炉、高温ガス炉の共同開発、これがこの協定に基づく協力から排除をされていないということはよろしいですか。
○外務大臣(茂木敏充君) この改正議定書、これは、英国がユーラトム脱退ということで、これを受けて英国において適用される保障措置が変更されること等を踏まえまして、日英両国間におけます原子力の平和利用を確保するための適切な法的枠組み引き続き確保すると、これを目的に作成されたものでありまして、衆議院でも答弁させていただいたように、特定のプロジェクトを想定して作成されたものではありませんし、また、特定のプロジェクトの受注を約束したりその実施を義務付けたりするものではありません。
また、御指摘のありました第九回の日英原子力年次対話と、ここでは原子力政策、廃炉、環境回復、原子力研究開発等に関する意見交換行われたわけでありますが、個別のプロジェクトについては両国企業の活動を通じて具体化していくと、このように考えております。
○井上哲士君 排除されるとは言われませんでした。
これ、議定書の署名直後に発表された二〇五〇カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略、ここには、小型モジュール炉の分野でアメリカ、イギリス、カナダとの海外プロジェクトに参加する日本企業を積極的に支援するということも書かれているわけですね。
大臣は、さらに、衆議院での答弁で、福島第一事故に関する経験と教訓を世界と共有することによって世界の原子力安全の向上に貢献していくことは我が国の責務だと述べられました。しかし、今見ますと、この間の東電の柏崎刈羽原発のテロ対策装置が長期間にわたって故障したことが発覚をして、原発を運転する資格自体が問われて運転停止命令も受けたんですね。そして、福島第一の廃炉作業も大幅に遅れて、いまだにデブリの固さも成分も、どこにどれだけあるかも分かっていないという状況があります。
国内の責任もまともに果たしていない下で、日本の世界への責任ということが言えるんだろうかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(茂木敏充君) 柏崎刈羽原発の事案であったり、また東電福島第一原発の廃炉作業の状況については、所管省庁、ちょうど私が経産大臣時代の秘書官、松山秘書官が今部長をやっておりますので、そちらにお聞きいただければと、こんなふうに思いますが。
我が国としては、東電の福島第一原発の廃炉作業、これは、これまでにない様々な困難を伴う作業でありますし、様々な技術の開発、こういったものも必要になってまいります。これに全力で取り組み、その上で得られる経験であったりとか知見、技術、こういったものを世界と共有して、原子力の安全の向上に今後とも貢献していきたいと考えております。
○井上哲士君 やはり日本国内の事態を見れば、そんな世界に対する責務だというような資格はないんじゃないかと思います。
マグロの議定書についてもお聞きいたしますが、大西洋では、クロマグロについて二〇〇〇年代にICCATが総漁獲可能量の設定など様々取り組んだ結果、近年資源量の回復見られますが、メバチマグロの悪化が問題になっております。メバチマグロについて、日本の漁獲枠、TACとどう変化をしていくのか。それから、FAD操業が原因だと指摘をされておりますけれども、どのような規制が行われて、そして今後、更に強化について日本としてはどういう提案をしていくのか、いかがでしょうか。
○水産庁 審議官(高瀬美和子君) お答え申し上げます。
大西洋のメバチにつきましては、二〇〇五年に九万トンの漁獲可能量、TACが導入されておりまして、その後資源の悪化を受けまして、二〇一〇年には八万五千トン、二〇一六年には六万五千トン、二〇二〇年には六万二千五百トンと削減をされております。その中で、日本の漁獲枠につきましては、二〇〇五年に二万七千トン、それから二〇一六年に一万七千六百九十六トン、二〇二〇年には一万三千九百八十トンに削減をされております。
我が国は、メバチの資源を維持回復すべく、ICCATにおきまして、小型魚を多く漁獲することが懸念をされております巻き網の操業規制の強化を主張をしてきておりまして、この結果、集魚装置、これFADsというふうに呼んでおります、FADsを用いた操業につきまして、FADsの設置個数の制限、それからFADsを使用した操業の禁止期間を設定するなどの措置が導入をされております。
我が国としましては、巻き網について更なる規制の強化が必要と考えており、集魚装置の年間使用回数の上限設定などを検討しているところでありまして、より効果的な保存管理措置の導入を働きかけてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 ありがとうございました。
今回の予防的措置のとられた経緯とか意義とかも外務省にお聞きしようと思ったんですが、時間になりましたので、これで終わります。
ありがとうございました。
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○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、日英原子力協定改正議定書に反対の立場から討論を行います。
本改正議定書は、英国のEU及び欧州原子力共同体脱退に伴い、これまで日英間で実施されてきた原子力の平和利用のための法的枠組みを引き続き確保するための措置にとどまらない重大な問題があります。
本改正議定書によって現行協定に新たに追加される技術とは、資材、核物質又は設備の開発、生産又は使用のために必要とされる特定の情報であり、この特定の情報には、技術援助としての指導、技能の養成、訓練、実用的な知識の提供及び諮問サービスが含まれています。技術が協定の対象になることで、日英相互の原子力関連技術の輸出入が一層進められることになります。
政府は、二〇五〇年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の原子力産業として、小型モジュール炉や高温ガス炉の推進を温暖化対策として打ち出しています。
これは、米国や英国、カナダ等の海外で既に進んでいる次世代革新炉の開発に日本の原子力関連企業が参画することへの政府の支援策であり、グリーン成長の名の下に原発を最大限活用するものです。
第九回日英原子力対話では、小型モジュール炉や高温ガス炉などの共同研究開発が議題となっており、今回新たに追加される技術は、こうした日英が共同で次世代革新炉の開発研究を進めるための根拠となり得るものであります。安全面でも経済面でも破綻をした原発輸出を進めることは到底認められません。
以上を述べ、反対討論とします。