○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
衆議院の審議を通じて、立法事実がないことは明らかでありますし、参議院の本会議と一昨日の委員会審議の中で、市民監視の対象や範囲、期間は幅広くて、事実上、法文上ですね、限定がないということも政府は認めました。
私、まず対象区域の公表についてお聞きいたします。
政府は、自衛隊や米軍、海上保安庁の施設について、特定注視区域や注視区域の要件に該当する施設の候補リストを安全保障上の懸念を理由に公にしておりません。
本会議で、法案の、この官報による告示としていることとの矛盾を問われますと、指定に当たり、周囲からの機能阻害行為を防止し得るだけでなく、一覧性のある施設の公表にならないように配慮するなど適切に対応との答弁でありました。
周辺に居住する住民にとって、私有財産や日常生活に重大な影響を与える問題であります。周辺にある施設が指定されているのかどうかが住民に明確に分かるように公表するのは当然だと思いますが、具体的にどのように公示をされるんでしょうか。
○防衛大臣(岸信夫君) 防衛省として、特に守りたいと考えます施設の周辺、周囲が本法案に基づく調査の対象となり、機能阻害行為を防止することが可能になることは重要であると考えております。一方で、特に守りたいと考える施設について、一覧性を持って公表することについて懸念があるということも事実であります。
このため、区域指定を行うに当たっては、周囲からの機能阻害行為を防止する、し得るだけではなくて、一覧性のある公表にならないようにするため、例えば一度の公示にて特定の地域に所在する自衛隊施設の全てを網羅的に区域指定したり、あるいは、特定の共通の機能を有する自衛隊の施設の全てを網羅的に区域指定することに対しては慎重に対応することと考えております。
○井上哲士君 それで住民の皆さんが分かるんでしょうかね。政府の都合によって、配慮配慮と言いますけど、住民への配慮がないんじゃないでしょうか。
さらに、何が機能阻害行為に当たるのかという問題です。
本会議では、安全保障をめぐる内外情勢や施設の特性等に応じて様々な態様が想定されることから、どのような行為が機能阻害行為に当たるかを一概に申し上げることは困難という答弁が行われております。
しかし、どのような行為が刑罰の対象になる機能阻害行為に当たるかというのは法案の核心的部分であります。これが明示をされなければ、例えば、有害物質のPFOSを垂れ流したり、夜間訓練や低空訓練、飛行訓練など、周辺に被害を与えている米軍や自衛隊の基地を監視する行動などにも適用されて、いきなり機能阻害行為とされるんではないかと、こういう懸念も広がっております。防衛大臣として、何が自衛隊への機能阻害行為と考えているのか明らかにしていただきたいと思います。
○国務大臣(岸信夫君) 本法案におけます機能阻害行為につきましては、安全保障をめぐる内外の諸情勢、また施設の特性等に応じて様々な態様が考えられるわけでございますが、一概にお示しすることは困難でございます。その上で例示をさせていただきますと、防衛関係施設の通信能力に支障を来すような電波妨害等が想定され得ると考えております。
電波妨害が発生した場合の対応について、一般論として申し上げますと、妨害等の態様により対応は異なりますが、例えば、レーダーへの妨害であれば使用するレーダー波の周波数を変更するといった対応が考えられているところでございます。
○井上哲士君 今、電波妨害の例示がございました。
小此木大臣にちょっと追加してお聞きしますけど、予見可能性の確保のために、閣議決定する基本方針で可能な限り具体的に例示すると答弁をしてこられました。そうしますと、例示されていないものは予見可能性がないわけですね。そういうものについてはこの機能阻害行為には当たらないということでよろしいですか。
○内閣官房 土地調査検討室長(中尾睦君) お答え申し上げます。
機能阻害行為について具体的に想定している行為については、様々な態様が想定されるために、特定の行為を普遍的、代表的な機能阻害行為として例示することは困難であろうと思っております。
その上で、大臣の方からも、予見可能性を高めるために、確保するために基本方針においてなるだけ具体的な例示をしたいというふうに御答弁申し上げてきておりまして、そのとおりだと思いますが、ただ、例示したといたしましても、それ以外のものが、じゃ機能阻害行為でないかというと、必ずしもそうも断定できないところもございますので、その辺も含めてしっかりと基本方針の方では書かさせていただきたいというふうに思っております。
○井上哲士君 結局、曖昧なんですよ。ですから、住民にとっては、例示されていないものがどうなるかというのは全く予見ができないという状況なんですね。
この問題で小此木大臣は、命令を行う前に勧告をすることになっているので、その際に明示的に示されたことになると、こういうふうに答弁されました。しかし、勧告に従わなければ罰則付きの命令が行われるわけですよ。勧告されるまで何が機能阻害行為になるか分からないということでは、住民は全く予見できないんじゃないでしょうか。
○内閣府 国土強靭化・領土問題担当大臣(小此木八郎君) 本法案の運用に際してですが、政府の恣意性を徹底して排除をすること、そして国民の皆様に対して運用の透明性を確保していくことが必要不可欠であると考えております。この観点から、勧告の前提となる機能阻害行為については、本法案施行後に閣議決定する基本方針において、想定される行為の類型を分かりやすく例示することとしております。
また、勧告を行うに先立っては、利用者に状況を説明をして、御理解を得た上で速やかに当該利用について是正していただき、勧告を発動しないことも運用上はあり得ます。それでもなお当該土地等の利用が是正されない場合において、対象となる個々の行為について法律の要件や基本方針の内容に照らして適切に評価するとともに、土地等利用状況審議会、これらの意見を伺い、その要否、内容等について慎重に判断して、その上で勧告を行うこととなります。
○井上哲士君 結局、だから勧告されるまで分からないことがあるんですよ。
そして、基本方針で定めると言いますけれども、元々、安全保障をめぐる内外情勢などが様々想定されると言っていますから、そのことを理由にして可能な限りどんどん拡大をしていくと、広がり得ると、結局歯止めがないということだと思うんですね。
私、そのことを先取りとも言える事件が沖縄で起きたということを指摘したいと思うんですが、お手元に地元紙の報道を配付をしております。【配付資料210610①.pdf 配付資料210610②.pdf】
沖縄のチョウ類研究者の宮城秋乃さんが米軍の北部訓練所のメーンゲートで通行を妨害したとして、威力業務妨害の疑いで自宅を家宅捜索されました。宮城さんは、このやんばるの森でチョウの研究者として調査を続けてきました。米軍から返還された北部訓練所跡地に調査に入ると、空包とか空き缶など米軍が放置した廃棄物を発見したと。火薬入りの爆弾があったんですね、弾丸もあったと。これ、でも通報しても県警は回収に来なかったというんですよ。その中で、米軍への抗議の意味を込めて、発見した廃棄物の一部を米軍に戻したと。それを威力業務妨害として家宅捜索まで行ったんですね。
本来、これ返還するときに原状回復の責任が米軍にあるはずなのに、地位協定でこれ負わせていないんですね。そうであれば、自衛隊の責任ですよ。ところが、そうなっていないと。現実に大量の廃棄物がこの北部訓練所跡地にあるということ、それへの認識と防衛省としての対応はいかがでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) 沖縄県におけます米軍施設・区域の返還に際しましては、跡地利用特措法の規定に基づき、返還地の有効かつ適切な利用が図られるように、防衛省においても、返還地の土地所有者等に引き渡す前に土壌汚染調査等の支障除去措置を講じています。
その上で、北部訓練場の返還地においても、平成二十九年の土地所有者への引渡し前に、全域を対象とした資料等調査を行い、支障除去措置の範囲や内容を特定した上で、土地所有者や関係機関に説明した後に、土地汚染調査や、土壌汚染調査や廃棄物処理等を実施をいたしました。さらに、土地引渡し後も、新たに廃棄物等が確認された場合には、土地所有者や関係機関と調整の上、防衛省において回収し適切に処分してきたところであります。
防衛省としても、世界遺産、世界自然遺産への登録の動向も踏まえつつ、北部訓練場の返還地の環境保全について、関係機関と連携の上、引き続き適切に対処してまいります。
○井上哲士君 適切に対処しながら、何で残っているのかと。秋乃さんは、二千発以上の空包や手投げ弾、放射性物質コバルト60を含む電子部品など、見てこられたんですね。このやんばるの森は、今ありましたように、世界遺産の登録が七月にも正式決定される予定になっています。秋乃さんは、こんな廃棄物が大量に残されている状態で世界遺産に推薦するのはおかしいという思いで、チョウの調査の時間を割いて回収作業を行ってこられたんですね。これまでも廃棄物を米軍に戻す行為はやってこられました。
今回、なぜ、女性一人が運べるものを置くという、そういう量の行為に対して、なぜ大々的に家宅捜索までして、タブレット端末やパソコン、ビデオカメラなどを押収したのか。警察庁、これで適切な捜査と言えるんでしょうか。
○警察庁 警備局長(大石吉彦君) お尋ねの件につきましては、沖縄県警察において、北部訓練場のゲート前で業務妨害をした容疑につきまして所要の捜査を行っているものと承知をしております。
現在捜査中でございますことから、その内容についてはお答えを差し控えたいと思いますが、警察は法と証拠に基づいて捜査を行っているということでございます。
○井上哲士君 秋乃さんは、透明でないごみ袋に米軍の廃棄物を保管していたと、これが容疑だと思うので、この中に、あの袋の中に廃棄物が入っていますと捜査官に言ったら、中身も見ずに、そして写真だけ撮って帰ったというんですよ。その一方で、パソコンやビデオカメラを押収したというんですよ。おかしいじゃないですか。だからこそ、捜査の嫌疑とは別の目的があるように思えてならないと言われていますよ。これでも適切と言えるんですか。
そして、アメリカから、米軍側から警察に対して被害届や調査依頼があったんですか、捜査依頼があったんですか。二つお答えください。
○政府参考人(大石吉彦君) 警察におきましては、沖縄県警察におきましては、犯罪の容疑があるということで所要の捜査を行っているものでございまして、捜査につきましては法と証拠に基づいて適切に行っていると承知をしております。(発言する者あり)捜査の中身につきましては答弁を差し控えさせていただきます。
○井上哲士君 これ管理区域内の話ですから、米軍の要請がなければ捜査はないんじゃないかと思うんですが、結局、この廃棄物を置いていったと言いながら、その物があっても、中も見ずに押収もしなかったと、パソコンだけ何台か押収していったと。
私、秋乃さんは、世界自然遺産登録が目前になる中、廃棄物や騒音の被害を政府は明るみにしたくないんだろうと言われております。こういうふうに、現行法でも、基地に対する抗議行動に対して封じ込めと情報収集を狙ったような捜査が現に行われているわけですよ。
そこで、こういう本法案で基地周辺を注視区域に指定をして、機能阻害行為のおそれがないかと住民を監視することが可能になれば、住民の監視活動などの市民運動がその対象とされるんじゃないか、運動の萎縮や弾圧に使われるんではないか、こういう危険性が一層広がっておりますが、これに対する歯止めは、小此木大臣、何かあるんでしょうか。
○政府参考人(中尾睦君) お答えいたします。
本法案は、注視区域内にある土地等の利用の状況についての調査を行うものとしてございますので、ただいま委員がお触れになりましたような、単なる基地等の反対運動等々を調査の対象とするものではございません。
○井上哲士君 しかし、現にその基地周辺のところ、そしてこの北部訓練跡地、今の訓練地域の周辺ですよね、こういうことでこういうことを行ったということでやることはあるんじゃないですか。
○政府参考人(中尾睦君) お答え申し上げます。
繰り返しの答弁で恐縮でございますけれども、本法案はあくまで土地等の利用の状況を調査するものでございますので、それ以外の観点からの調査を行うものではないということでございます。
○井上哲士君 現にやっている中で、おそれとかいろんな形でやるんじゃないかという懸念は払拭できないわけであります。
さらに、個人情報の対象や取扱いについてお聞きをいたします。
内閣総理大臣から情報提供の求めを受けた関係地方公共団体等には情報提供が義務付けられるわけでありますが、これ、自治体等が提出する個人情報について、目的外利用を行わないことを確約している、こういう情報も調査対象とするのか、それから、求めに応じて個人情報が提供された場合に、そのことは本人に連絡をされるのか、この点どうでしょうか。
○政府参考人(中尾睦君) お答え申し上げます。
委員御指摘の、地方公共団体が目的外利用を行わないことを確約している情報との趣旨はちょっと必ずしも明らかではございませんけれども、地方公共団体が保有する個人情報については、各地方公共団体が定める個人情報保護条例に基づき管理されており、一般的に、個人情報保護条例では、法令に基づく場合等でなければ個人情報を外部に提供することができないこととされていると承知しております。
このことを踏まえ、本法案第七条は、内閣総理大臣が地方公共団体等の保有する個人情報の提供を受けられるようにするための根拠規定として措置したものでございまして、第七条第二項には応諾義務を定めておるというものでございます。
○井上哲士君 つまり、法に基づくということで、目的外利用を行わないと住民に言っているような情報も対象になるということですが、もう一点、今聞きましたけど、その場合、個人情報が、あなたの個人情報が提供されましたよということは本人に連絡行くんでしょうか。
○政府参考人(中尾睦君) 御質問は、内閣総理大臣から地方公共団体が情報提供を受けるときに、地方公共団体から本人にその旨が通知されるかどうかという御質問かと存じます。
地方公共団体が保有する個人情報については、各地方公共団体が定める個人情報保護条例に基づき管理されております。そのため、地方公共団体が保有する個人情報を内閣総理大臣に提供する場合に、地方公共団体から本人にその旨が通知されるかどうかは地方公共団体ごとの取扱いによるものと考えております。
○井上哲士君 知らないうちに提供されていることになるわけですね。
この収集した個人情報は、内閣府に新設する部局が管理をし、データベース化すると先ほど来答弁がありました。関係行政機関等の協力を得つつ所要の分析を行うこともあり得るというふうにされておりますが、この新設される部局の規模、それから、この協力をする、所要の分析を協力してやる関係行政機関というのはどこでしょうか。自衛隊や警察、公安調査庁は含むのか、そしてその際に、このデータベースを共有するということはあるんでしょうか。
○政府参考人(中尾睦君) お答え申し上げます。
内閣府に新設する部局の組織規模につきましては、今後所要の予算措置等が必要になりますので、現段階では未定でございます。今後検討してまいります。
また、御指摘のデータベースについては、内閣府に新設する部局が不動産登記簿等の公簿等の収集を行った上でデータベースを構築し、一元的に管理する予定でございまして、他機関と共有することはございません。
それから、本法案第二十二条において、内閣総理大臣が関係機関の長等に対し必要な協力を求めることができる旨の規定の対象機関についての御質問でございます。
一般論といたしまして、内閣総理大臣は、本法案の目的を達成するために必要があると判断した場合には、本法案に基づき収集した土地等の利用者等に関する情報について、関係行政機関等の協力を得つつ、所要の分析を行うこともあり得ます。本法案に基づき収集した情報について、関係省庁の協力を得つつ分析を行う場合には、必要な限度で関係行政機関等と情報の共有をすることもあり得るものと考えております。もっとも、情報の分析に際していかなる機関にいかなる協力を求めるかは個別具体の事情により異なると考えられることから、一概にお答えすることは困難でございます。
○井上哲士君 分析に当たって情報を共有することはあり得ると。結局、データベース共有することになるんじゃないですか。
○政府参考人(中尾睦君) 重ねて答弁で恐縮でございますが、データベースは内閣府に新設する予定の新しい組織が一元的に管理をいたします。それを全て関係機関と共有することは考えておらないということは先ほど申し上げたとおりでございます。
○井上哲士君 つまり、一部は共有するということを認められました。
結局、本人の知らないうちに個人情報が集められて、それがどのように分析をされて他の省庁と共有されていくのか、何も分からないわけですね。勧告を受けて初めて法の対象になったということを知る場合もあるんです。
こういう法律は認められないことを強調しまして、質問を終わります。