国会質問議事録

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倫理選挙特別委員会(特例郵便投票)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 全ての有権者に投票権を保障することは極めて重要であり、コロナ感染者の方々に感染リスクを減らしながら投票権を保障するにはどうしたらいいのかが問われております。入院の方にはその病院での不在者投票があります。それから、宿泊療養者は宿泊療養施設での期日前投票や不在者投票が現に行われております。自宅療養者も一時的に宿泊療養施設に入れば投票は可能だと、そのことを我が党は主張してまいりました。
 これ、ちょっと順番を変えて質問をいたします。
 まず、総務省にお聞きしますが、新型コロナ対応として総務省からの事務連絡が行われました。宿泊療養施設での期日前投票所や不在者投票の記載台の、記載場所の設置、その際の留意事項も丁寧に連絡をされております。衆議院での答弁で、従事者への感染の懸念など宿泊療養施設での対応が困難という一部選管の声を紹介をして、宿泊療養施設でも特定郵便投票が適用されることを説明し、そちらにシフトしていくのではないかと、こういう答弁でありました。
 現場での不安、よく分かるんです。しかし、だからこそ、総務省の事務連絡では選管事務の従事者は宿泊療養施設の現地スタッフの併任も可能だと、こうしているわけですね。こうした併任も含めて、総務省の事務連絡に基づく実施状況及びその検証というのはどうなっているでしょうか。

○総務省 自治行政局選挙部長(森源二君) 新型コロナウイルス感染症の感染者の投票につきましては、本年三月に、宿泊療養施設に期日前投票所等を設けた場合には投票が可能である旨を通知をし、さらに四月、具体的な留意事項等について通知をしたところでございます。その結果、四月二十五日に国政選挙の補欠選挙、再選挙を執行した北海道、長野、広島県において、計九か所に期日前投票所等を設置をし、計二十二名の方が投票を行ったものと承知をしております。他方、五月二十三日に執行されたさいたま市長選挙では、宿泊療養施設二か所に期日前投票所等を設置し、投票を行った方はいなかったものと聞いております。
 宿泊療養施設における期日前投票所の運営に当たっては、宿泊療養施設の運用を受託する民間の事業者の職員に立会人を依頼した例もあり、各選管において工夫して取り組んでいただいたと承知をしておりますが、看護師等の併任というものは特になかったというふうに聞いておるところでございます。
 また、感染防止対策の観点から、感染者の投票を時間的に分離する、いわゆるレッドゾーンに投票記載台を設け、立会人がグリーンシート等で隔てたグリーンゾーンから確認する、投票記載台を屋外に設けるなどの取組も行っていただいたところでございます。
 宿泊療養施設に期日前投票所等を設置した団体からは、先ほど御指摘のとおり、従事者等の感染の懸念のほか、総選挙などの大規模な選挙が行われる場合の、これまで以上の数の有権者や投票に対応することは困難であるとの声も上がっておりまして、地域の一部の選管から郵便等投票の導入要望が届いていたと、こうした事情が考慮されまして、本法案においては、自宅療養者と同様、宿泊療養者についても特例郵便等投票の対象とすることがされていると理解をしております。
 繰り返しになりますが、今後、本法案が成立した場合には、各選管の判断によりまして宿泊療養施設への期日前投票所等の設置も可能でありますが、宿泊療養者の対応は特例郵便等投票により対応されるのではないかと考えております。
 特例郵便等投票が行われることになりますれば、その施行状況を見つつ、選挙における新型コロナウイルス感染症対策全般の実施要項について現場の選管のお声を聞き、選挙人の投票機会確保の在り方を考えてまいりたいと存じます。

○井上哲士君 従業者への感染の懸念ということの対応としてこの宿泊療養者の現地スタッフの併任というのがあったのに、今行われなかったという答弁でしたけど、これ、なぜ行われなかったんですか。

○政府参考人(森源二君) 特段の理由という形では聞いてはおりませんけれども、それぞれの施設の運営を受託する民間の事業者と選管との関係においてそういった形になっていったのではないかというふうに考えております。

○井上哲士君 郵便投票は手続上、請求期限は投票日の四日前になるわけですね。ですから、投票日直前に感染した場合には間に合わないわけです。一方、宿泊療養所では投票日ぎりぎりに設置をすることで直前に感染した方も投票可能になりますし、点字投票とか障害者の代理記載も可能なわけで、私はより投票権の保障が可能になると思うんですよ。
 ですから、今、なぜ併任がされなかったか、つかんでいらっしゃらないようですけど、やっぱり事務連絡に基づいてきちんとそこを検証して、問題があれば人やお金の手当ても含めて改善するということを私やるべきだと思うんですね。それもやらずに、事実上、宿泊療養者でも郵便投票だけになれば、今の投票機会のむしろ後退になるということを指摘をしなくちゃいけません。
 続いて、提案者にお聞きしますけど、郵便投票制度は過去に不正の横行が問題となって、一九五二年に一旦廃止をされました。で、七四年に一定の重度障害者に限定して再び導入されて、その後、要介護五の方も対象に加えられましたけれども、極めて限定的にし、かつ不正防止のための厳正な運用がされております。
 共同通信が今回の特例郵便投票の導入に対して全国都道府県の選挙管理委員会に尋ねたら、六割弱の二十七が賛意を示す一方で、複数の選管から成り済ましなどの不正についての懸念が示されたと、こう報道されました。私、現場からの懸念は非常に重いと思うんですね。
 郵便投票において公正が確保されることへの認識、及び本法案ではどのように担保されているのか、いかがでしょうか。

○発議者 衆議院議員(浦野靖人君) お答えいたします。
 委員御指摘のとおり、特に公平、公正確保に留意することが重要と我々も考えております。
 特例郵便等投票の手続においては、公平確保のために、公正確保のため、自書主義を取るとともに、投票用紙等の請求時及び投票の記載時の各段階で本人の署名を求め、第三者による不正投票を防止する、投票用紙等を同居の親族等の第三者に交付せず、郵便等によって本人に送付する、投票行為に対する干渉や氏名を詐称する等、詐偽の方法による投票について、投票干渉罪や詐偽投票罪などの罰則を整備するといった措置を講ずることとしております。

○井上哲士君 先ほど、従来の郵便投票と今回は基本的に同じスキームだという答弁もありました。今のお話も、今の郵便投票制度で行われていることなんですね。それであっても、公正性担保するために極めて限定的にしているんですよ。今回は、しかも前提が違います。現行の郵便投票は、重度障害者や要介護五の方として、該当者はあらかじめ特定されている。ですから、事前に該当者である書類を添付して申請を行って郵便投票証明書の交付を受ける、この証明書を提示して投票用紙、封筒を請求するという、複雑で厳格な手続で公正性を確保しています。
 ところが、コロナ感染者については、新規感染するのも回復するのも、性質上、日時は特定できません。ですから、本案では事前の証明書の交付は必要ないとしております。そのため、選管は特例郵便投票者が誰であるか請求が来るまでは判明しないという、大きく前提が違うと思うんですね。そうであれば、例えば外出自粛証明書の偽造への規制がこの特例法で手当てをされるべきだと思いますが、こうなっていないと。そういう点で、私はやはり不正ということの疑念が拭えないということを指摘をしておきたいと思います。
 それから、この制度では投票用紙の請求と投票、二度のポストの投函が必要ですけれども、誰が投函するのかというのは必ずしも明確ではありません。結局、本人が投函をするということが生じるおそれもあると思うんですけれども、これ、いかがでしょうか。

○衆議院議員(浦野靖人君) お答えいたします。
 自宅療養者は患者であることから、感染症法上、感染拡大防止、病状急変リスクの観点からポストまでであっても外出しないことを求められており、自宅療養者の投票については、感染防止策を講じた上で同居人や知人等に依頼してポストまで投函してもらうことを考えております。
 なお、該当同居人が濃厚接触者である場合であっても、ポストへの投函は不要不急の外出に当たらず、感染防止策を講じた上で可能と考えております。
 独居の自宅療養者は、同居人に投票してもらうことができないため、家族、知人などに依頼して投函してもらうことが考えられております。家族、知人などに依頼して投函をしてもらう際には、封筒をドアの前に置いてもらうなど、自宅療養者と接触せず受渡しを行うこと、依頼された者は、マスクの着用とともに、作業前後で手洗い等の手指衛生を行うことが必要であり、さらに使い捨て手袋の着用が望ましいと考えており、その旨の周知を徹底していただくことにしております。
 また、宿泊療養者については、宿泊療養施設の職員に代わりに投函していただくよう、都道府県の保健福祉部局等と選挙管理委員会との間で調整をお願いをする予定であります。

○井上哲士君 本当に独り暮らしの自宅療養者の方が今言われたようなことができるんだろうかと、投函が可能なのかと、担保がないままだと思うんですね。
 もう一点、施行期日が余りにも短いんじゃないかと。刑罰を伴う法律で五日後というのは、過去、入場法の改正法案があったという説明されていますけど、これは、それまで地方税だったのを国税に変えたというものだけでありますから、実際上の現場の事態は変わらないわけですね。しかも、対象者が極めて限定をされておりまして、今回とは全く違うと思います。十八歳選挙権の際は周知期間は一年でした。洋上投票の場合は約九か月でした。
 今回、やはり周知すべき対象者の規模として格段に短いと、都議選ありきになっているのではないかという指摘もありますが、あらかじめ投票対象者が特定できる従来の郵便投票制度と違って、突如患者等になった場合、この制度を知らなければ投票できないということになるわけで、知っている人のみ得をすると、こういう制度になってしまうんじゃないかという懸念がありますけれども、その点いかがでしょうか。

○発議者衆議院議員(佐藤茂樹君) 井上先生の御質問にお答えをいたします。
 今御指摘のとおり、十八歳選挙権の際の法律の公布の日から施行期日までの間に比べると、本法案というのは、施行期日が、御指摘のとおり、公布の日から起算して五日を経過した日とされておりまして、具体的適用は六月二十五日告示の都議選以降の選挙を想定しているため、短い期間となっております。その中でも、特例郵便等投票という新しい制度を創設する以上、特例郵便等投票を利用しようとする人が円滑にその手続を進められるよう、関係機関が連携して可能な限り選挙人に周知していくことを提案者としては期待をしているところでございます。
 具体的には、選挙管理委員会と保健所が連携して、特例郵便等投票の対象者に対しまして外出自粛要請の書面を交付する際に制度や手続の周知チラシ等を活用した啓発の実施、さらに宿泊療養施設への特例郵便等投票の周知チラシの配置、さらには各都道府県の宿泊・自宅療養者向けのホームページや選挙の案内に関するホームページにおける周知などの対応により周知を図るものと、そのように考えております。
 また、特例郵便等投票の対象者のみならず、住民に広く特例郵便等投票制度について周知するため、選挙管理委員会や保健所においてホームページなどの各種媒体を活用し周知啓発に努めていただきたいと、そのように考えているところです。

○井上哲士君 終わります。

ーーー


○井上哲士君 私は、日本共産党を代表し、特定患者等の郵便等を用いて行う投票方法の特例に関する法律案に反対の討論を行います。
 選挙権の保障は憲法上の要請であり、新型コロナ患者、感染者を含め、全ての有権者の投票権が確保されなければなりません。新型コロナ感染症の拡大のリスクを減らしつつ、公正な選挙と投票機会の確保を図っていくことが必要です。
 しかし、法案には問題が多々あります。
 まず、特例郵便投票制度の問題です。
 郵便投票が宿泊療養施設で療養するコロナ感染者にも拡大されることから、現在、各地の選挙管理委員会が取り組んでいる現行制度の下での宿泊療養施設での期日前投票所、不在者投票記載場所、移動期日前投票所、屋外テント投票所など、投票権を確保するための取組がストップし、特例郵便投票の普及しか取り組まれなくなるおそれがあります。
 特例郵便投票は、選挙人からの請求期間が投票日の四日前であり、感染が投票日に近いほど投票ができなくなります。期日前不在者投票所であれば、投票日の前日まで投票を呼びかけることができ、その場にいれば投票ができます。点字投票や代理記載も可能です。特例郵便投票のみ普及が進めば、コロナ患者の投票機会の確保が後退します。
 さらに、現行の郵便投票制度とは前提が異なり、突然の感染により対象者となるため、あらかじめ対象者を特定できないのが特例郵便制度です。投票用紙の請求と郵便投票の二回のポスト投函を誰が行うのか明確になっておらず、外出自粛要請証明書の偽造など、不正のおそれも払拭できません。
 次に、保健所への影響です。
 外出自粛証明書の発行若しくは選挙管理委員会の感染者の情報提供により、逼迫している保健所に更なる負担を強いるのは問題です。
 最後に、周知期間の問題です。
 法案の施行日が公布の日から五日間となっており、新しい制度の周知期間として短過ぎて問題です。十一日後に告示が予定されている東京都議選において、知らなくて投票できなかったという現象も生じかねません。
 以上、反対理由を述べて、討論を終わります。

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