○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
ミャンマーでの軍事クーデターから一年余りが過ぎました。国際的批判とミャンマー国民の抵抗が粘り強く続く中でも国軍が軍事独裁を強めております。
人権団体の集計では、平和的デモに対する銃撃や拷問などで殺された市民は千五百人を超え、逮捕者は累計で一万人を超えている。
NLDなど民主派と少数民族政党が国民統一政府、NUGを結成して、二月にはその日本代表部も開設をされました。
私も参加する超党派の議員連盟は、このNUGのドゥワ・ラシー・ラ大統領代行ら幹部とオンラインでの会議を重ねて、在日ミャンマー人の皆さんの声や要望もお聞きしてきました。
一周年に当たって、私も議連のメンバーとともに官邸を訪問をして、NGOや市民の皆さんとの政府への共同要請文を提出をいたしました。ミャンマー国民への暴力の中止、アウン・サン・スー・チー氏を始め不当に逮捕、拘禁されている全ての人の解放、それからNUGを国民の代表たる政府として認め、日本代表部との協力、助言を行うこと、避難民への人道支援、国軍を利する経済支援の中止などを求めております。改めて政府に求めたいと思います。
その上で、外務大臣にお聞きしますが、昨年の六月十一日に参議院本会議で、ミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める決議を採択しました。ミャンマーの現状に対する政府の認識と、この決議に基づいた取組はどうなっているでしょうか。
○外務大臣(林芳正君) 昨年二月一日のクーデター発生から一年を超えるわけでございますが、ミャンマーで今なお事態の改善に向けた動きが見られないということに懸念を有しております。
日本は、改めてミャンマー国軍に対しまして、一つ目、暴力の即時停止、二つ目、拘束された関係者の解放、三つ目、民主的な政治体制の早期回復について具体的な行動を取るよう強く求めておるところでございます。
引き続き、ASEAN諸国を含む国際社会と緊密に連携しながら、事態の改善に向けて最大限努力をしております。
また、困難に直面するミャンマーの人々に寄り添うために、人道支援も積極的に実施をしているところでございます。
こうした日本の取組でございますが、今委員からお触れになっていただきました昨年六月の参議院本会議で採択されましたミャンマーにおける軍事クーデターを非難し、民主的な政治体制の早期回復を求める決議、この内容に合致するものと考えておりまして、引き続き政府として取り組んでまいりたいと考えております。
○井上哲士君 国際社会のこと触れられましたけど、やはり現状打開にはこの国軍を外交的に包囲することが必要であります。欧米諸国は、国軍の資金源となっている国営企業との取引停止や資産凍結など、経済制裁を加えております。日本は、新規のODAは停止をしました。
その上で、昨年五月には、茂木外相、外務大臣が、当時、このままの状況が続けばODAを見直さざるを得ないとし、そのことはミャンマー側にも伝えてあると、こう述べられました。一方、実施中のODAについては、どのような対応が効果的か総合的に検討していくという、言わば様子見の答弁を繰り返してきたわけです。
一年以上たってもいまだに事態は打開されておりません。当時、茂木大臣が言われたこのままの状態が続いているわけですね。この状況において、やはりODAを見直して、国軍の資金につながるものは中止をしていくことに踏み出すときだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 昨年の二月のクーデターを受けまして、同国に対するODAに関して、国軍主導の現政権、これ政権は括弧付きでございますが、政権との間で二国間の国際約束を伴うODAについて直ちに行わなければならない案件はないという立場を表明する一方で、国際機関やNGOを通じる人道支援については積極的に実施をしてきておるところでございます。
昨年五月に、当時の茂木外務大臣が、ミャンマー情勢に改善が見られなければODAを見直さざるを得ない可能性があると述べたのは今委員から御指摘があったとおりでございます。我が国やASEANを含む国際社会が引き続き事態の改善に向けて努力している中で、今申し上げた対ミャンマー経済協力の方針を直ちに見直すべきとは考えておらず、今後とも我が国や国際社会による取組の状況を見ながら、どうした対応が効果的か、総合的に検討してまいりたいと思います。
これまでの経済協力でございますが、ミャンマー国民の生活向上や経済発展に貢献し、また人道的なニーズにも対応することを目的として実施しておりまして、ミャンマー国軍の利益を目的として実施しているものではないというふうに承知をしております。
○井上哲士君 もちろん出発はそういう目的だったと思うんですね。それが、今の事態の下で国軍の資金につながるじゃないかと。一年たって、この事態の下で、私は見直しを踏み込むべきだと思います。
続いて、防衛大臣にお聞きしますが、昨年四月十五日の質問で、ミャンマー国軍との協力、交流を中止するように求めました。まず、能力構築支援でありますが、これまで潜水医学、航空気象、人道支援・災害救助、国際航空法及び日本語教育環境整備の各事業を実施をしてきたと、しかし、現在実施しているのは日本語教育環境整備支援のみだというのが答弁でありました。そして、その理由はコロナウイルス感染症の影響もありということだったんですね。
そうなりますと、コロナの影響が収まれば他の事業を再開するということになるんでしょうか。それは、私は国軍支援に直接つながりますからあってはならないと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○防衛大臣(岸信夫君) まず、防衛省・自衛隊によるミャンマーに対する能力構築支援事業については、今委員のおっしゃったとおり、現在、新型コロナウイルス感染症の影響によって日本語教育環境整備支援事業のみを実施をしております。
ミャンマーに対する今後の能力構築支援事業については、今後の事態の更なる推移を注視しつつ、適切に対応してまいりたいと思います。
○井上哲士君 このプログラムは、事態解決まで凍結をして、現在実施中のものも中止をするように求めるものであります。
続いて、ミャンマー国軍から留学生の受入れについてお聞きします。
昨年質問した際は、二〇一五年以降の延べ受入れ人数が三十人で、その質問の時点では防衛大学校で受け入れている六人のみとの答弁でありました。しかし、直近の資料をいただきますと、現在は防衛大学校に八人、陸自教育訓練研究本部に一人、空自幹部学校に一人の十人が在籍をしている。つまり、昨年の質問以来、つまり軍事クーデター以降に新たに四人を留学生として受け入れたことになるんですね。
これによってミャンマーからの留学生に支給されている給付金の合計がどうなるか。この防大、陸自、空自でどのようなクラスの留学生を受け入れて教育訓練を行っているんでしょうか。
○防衛省 人事教育局長(川崎方啓君) お答えいたします。
防衛省・自衛隊におきましては、自衛隊法の規定に基づいて、平成二十七年からミャンマー人の留学生を防衛大学校や各自衛隊の教育機関等に受け入れております。
令和三年度におきましては、防衛大学校に二名、陸上自衛隊教育訓練研究本部及び航空自衛隊幹部学校にそれぞれ一名、計四名のミャンマー人留学生を受け入れており、現時点ではミャンマー人留学生は計十名となっております。
ミャンマーを含む開発途上国からの留学生に対しては、自衛隊法の規定に基づき、教育期間中に必要となる学習・生活費用の不足を補うための給付金を支給しておりまして、このうちミャンマー人留学生に対する給付金につきましては、支給を開始した平成二十七年度から令和三年度までの金額の合計は約六千八百万でございます。六千八百万円でございます。
また、防衛大学校で受け入れている留学生につきましては、いわゆる士官候補生という位置付けでございまして、一方、各自衛隊の教育機関等で受け入れている留学生については、帰国後に主として部隊の指揮官や幕僚などの任務に就くことが想定されているものと承知しております。
○井上哲士君 金額は昨年の質問から一千万円増えているわけですね。
この間、防衛大学校はミャンマーから毎年二人の留学生を受け入れておりますけれども、こういう事態の下で、私は来年度の受入れはあり得ないと考えますけれども、どうでしょうか。
○政府参考人(川崎方啓君) 防衛省・自衛隊におけるミャンマー人留学生の受入れにつきましては、将来ミャンマー国内の組織の幹部となる者への教育を我が国において行うことで人的関係を構築する意義があると考えております。また、留学生に対して、民主主義国家である我が国における厳格な文民統制の下で運用される実力組織の在り方を示す効果もあると考えております。
令和四年度におけるミャンマー人留学生の受入れにつきましては、現時点では決まっておりませんが、いずれにせよ、受入れにつきましてはこうした意義などを踏まえて適切に対応してまいります。
○井上哲士君 現時点では決まっていないそうであります。これはやめるべきだと思います。
今、留学生受入れの意義について答弁がありました。昨年も岸大臣からあったんですが、その際は、発展途上国からの留学生受入れに対しましてと冒頭言われて意義を述べられました。しかし、一般の発展途上国と今のミャンマーというのは、国軍の問題というのは違うと思うんです、当てはまらないと思うんですね。
軍事クーデターを行った国の軍隊から留学生を受け入れていると、こういうことがミャンマー以外にあるでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) 防衛省・自衛隊において、これまで三十五の国から留学生を受け入れております。現時点で、これらの国々の全てについて過去におけるクーデターの有無を確認できているわけではございません。
その上で申し上げますと、例えば、タイについては一九五八年から現在に至るまで継続的に留学生を受け入れておりますが、同国においては二〇〇六年及び二〇一四年にクーデターが発生したものと承知をしております。
○井上哲士君 今幾つか言われましたけど、まさにミャンマーの国軍がやっていることは、我々が国会決議を上げ、そして政府も国際社会も厳しく批判をしているわけですね。何をやっているかと。まさにこのシビリアンコントロールを踏みにじる軍事クーデターであって、国民への暴力なんですよ。
先ほど意義として挙げられましたけど、シビリアンコントロールの下で運用される実力組織の在り方を示すと、そのために留学生を受け入れるということと現に国軍がやっていること、全く矛盾するじゃないですか。なぜこういうことを受けることができるのかと。
政府は軍事クーデター非難をしてきましたし、さらに、昨年三月二十八日に、米国など十二か国の参謀長等の連名で、共同声明で国軍を非難をしております。ところが、その後、新たに四人を受け入れたと。これでは非難は届きません。それどころか、日本はこの軍事クーデターと暴力を容認していると国際社会やミャンマーの国民から思われても仕方がない事態だと思うんですね。そう思われませんか。
○国務大臣(岸信夫君) 政府としては、ミャンマーの情勢に関し、国際社会からの度重なる呼びかけにもかかわらず、暴力によって多くの死者が発生している状況を強く非難しています。
その上で、防衛省・自衛隊におけるミャンマー人留学生の受入れについては、将来ミャンマー国内の組織の幹部となる者への教育を我が国において行うことで人的関係を構築する意義があると考えています。また、留学生に対して、民主主義国家である我が国における厳格な文民統制の下で運用されている実力組織の在り方を示す効果もあると考えております。
令和三年度には、令和三年度におけるミャンマー人留学生四人の受入れについては、こうした意義を踏まえた上で行ったものであります。
○井上哲士君 その厳格なシビリアンコントロールを我が国が示すと言いましたけど、その皆さん帰ったら、まさに軍事クーデターと、軍政と市民への暴力をやっているんですよ。それを続けるというのは意味があるのかと。
意義の中で、我が国と派遣国との相互理解、信頼関係を増進するという言葉もありました。しかし、この国軍とどういう信頼関係を結んで、どういう、どう理解をするというんですか。ミャンマーの国軍からすればですよ、これだけ国際社会から批判しているのに、日本は自分たちのことを理解し受け入れてくれると、こういう信頼感を向こうは持つかもしれませんよ。それ、どんな意味があるんですか、それに。その結果、ミャンマーや日本の国民からも国際社会からも日本は信頼を失いますよ。
そういうものとして、私はこれは中止をすべきだと思いますけれども、改めていかがでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) ミャンマーを含む各国からの留学生には、厳格な文民統制の下で運用されている自衛隊の中に身を置くことによって、実力組織の在り方について様々な視点から考えるといった過程を得て、将来、民主主義や文民統制について正しい認識を持った人材として成長することが期待されています。
いずれにいたしましても、防衛省・自衛隊において学んだ人材がミャンマー国内の組織における、おいて活躍することはミャンマーの将来につながる、ミャンマーの将来につながり得るものであることを踏まえた上で、引き続き適切に対応してまいりたいと考えています。
○井上哲士君 現にこれだけの国際批判があっても、クーデターも軍政もやっていないんです。余りにも私は今の答弁は違うと思うんですね。
○委員長(馬場成志君) 時間が参っておりますので、おまとめください。
○井上哲士君 やめさせるために国際社会とも連帯するべきだし、そのためにも、こうした研修プログラムなど、留学などを直ちに中止するべきだと改めて強く申し上げまして、質問を終わります。