国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2022年・208通常国会 の中の 予算委員会(ロシアのウクライナ侵略と自民党の「核共有」議論)

予算委員会(ロシアのウクライナ侵略と自民党の「核共有」議論)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 ロシアによるウクライナへの侵略で民間人を含む多くの犠牲者が出ております。ロシアは、キエフを包囲し、中心部への攻撃も行う構えであります。断固糾弾し、撤退を求めます。ロシアの行為は、主権の尊重、領土の保全、そして武力行使の禁止などを義務付けた国連憲章に違反することは明々白々な侵略行為と言わなければなりません。
 昨日の衆議院に続いて、今日、参議院本会議でも、ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議を採択しました。国連総会の緊急特別会合でもロシアの侵略を非難する声が続いております。世界の多数の声として明確な決議を示す必要があります。そのために、日本は今どう対応し、どのような演説を行われたんでしょうか。

○外務大臣(林芳正君) 昨日から、日本時間では三月一日でございますが、国連総会において緊急特別会合が開会中でございます。これは、ロシアのウクライナ侵略とそれを非難する安保理決議がロシアの拒否権で否決をされたと、このことを受けて開催されたものでございます。
 我が国も、国連代表部の石兼大使がステートメントの中で、ロシアのウクライナ侵略は、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害し、国際法に違反し、国連憲章にも反するものであり、国際秩序の根幹を揺るがすものであると強く非難するなど、政府の立場を表明をいたしました。
 我が国としては、引き続き、国連を含む外交の場において、今回のロシアによる侵略は決して認められないとの立場を発信してまいります。

○井上哲士君 このロシアの侵略は国連憲章に基づく戦後の平和秩序そのものを壊すものであり、決して許されません。
 今、世界でも、そして日本でもロシア国内でも抗議の声が広がっております。ドイツでの十万人、チェコでの八万人集会を始め、世界各国で集会や行動が行われています。ロシア国内でも、当局の弾圧に抗して少なくとも五十の都市で抗議行動が行われました。日本でも先日、渋谷に、在日ウクライナ人、市民など、ウクライナ人や市民など約二千人が抗議集会を行って、全国で行動が行われております。
 昨日までに、九の県府議会、被爆地広島、長崎の市議会、キエフと日本で唯一の姉妹都市である京都市の市議会を始め、次々とロシアの侵略を非難する地方議会の決議が上げられております。
 国際社会が協調して実効性のある経済政策を行う、制裁を行うことは当然必要ですが、一番大事なことは、世界の多くの国々と市民が、侵略やめよ、国連憲章を守れと、この一点で声を上げて力を合わせることだと思います。各国の政府や議会の声明、決議を広げて、市民社会からの更なる声を上げることが必要であります。
 今日、参議院が上げた決議では、日本国憲法前文にある、全世界の国民が持つ、恐怖と欠乏から免れ、平和の生存する、平和の、平和に生存する決意を侵害するものだと、こう言ってロシアの侵略を非難をいたしました。
 国際世論を広げる上で、この憲法に基づいて日本がどういう役割を果たすべきなのか、総理、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、今委員御指摘がありました、あの憲法前文の「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」との文言は、全世界の国民は基本的人権が維持され保障されるための条件である平和を享受する権利を有している、こういったことを述べたものと解しており、この全世界の国民には当然ウクライナ国民も含まれると理解をしています。
 国民の命と平和な暮らしを守ることは政治の最大の責務です。いわゆる、いかなる事態においても国民に対する責任を全うしなければならないと認識をしております。そして、外交面においても国際社会の安定と繁栄に資する外交を推進する必要があると認識をしています。
 今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難いたします。日本国憲法の前文に示されている理念にものっとり、引き続きロシアによるウクライナ侵略を厳しく、あっ、侵略に厳しく対処してまいります。

○井上哲士君 まさに憲法前文に従って大いに役割を果たしていただきたいわけでありますが。
 日本は国際社会とともにロシアに制裁措置をとっております。その中で、イギリスの石油大手シェルは、ロシア極東の石油開発事業サハリン2から撤退する方針を発表いたしました。ロシアのウクライナ侵攻を厳しく批判して、事業を続けるのは困難だと判断しております。この事業には日本の企業も出資し参加をしているわけでありますが、政府としてはこの事業をどう今後対応を考えているのか。
 そして、日本は、二〇一六年の日ロ首脳会談において日本から提案した協力プランに基づいて経済協力を進めております。国土交通省だけでもシベリア鉄道の利用促進の取組とかハバロフスク空港の運営など、そして北方領土における経済協力もあるわけですね。こうした経済協力もこの制裁措置の中で見直すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今回のロシアによるウクライナ侵略、これは国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、明白な国際法違反であり、厳しく非難をいたします。こうしたこの思いを毅然と行動で示さなければならないと思っています。
 国際社会はロシアの侵略によりロシアとの関係をこれまでどおりにしていくことはもはやできないと考えており、我が国としてもロシアとの関係で新たな経済分野の協力を進めていく状況にはないと考えております。我が国としては、まずはG7各国、国際社会とともにロシアに対して強い制裁措置をとってまいります。
 その上で、ロシアとの経済分野の協力に関する政府事業については、当分見合わせることを基本に、国際的な議論も踏まえて、エネルギー安定供給や人道上の配慮に留意しつつ対応してまいります。

○井上哲士君 昨日の夕方の、昨日の発表だったんですけどね、サハリン2についてはどうお考えでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) サハリン2には日本の民間企業が参加をしています。まずはその民間企業として今後の状況に、状況を注視しながら自らの対応を考えていかなければならないと思いますが、政府としましても、制裁措置など政府の取組の影響等も鑑みながら、民間の対応に相談に乗り、協力すべきところは協力する、こうした方針で臨んでいきたいと考えます。

○井上哲士君 この侵略行為をしている限り未来はないということをはっきり示す必要が私はあると思っております。
 とりわけ許し難いのは、プーチン大統領が、ロシアが核保有大国であることを誇示をして、攻撃されれば先制核兵器で応えると公言したことであります。まさにこの核先制使用で恫喝をすると。さらに、プーチン大統領は、核戦力を特別態勢に移行させるように命じて、軍は戦闘態勢に入ったと報告をしております。
 国連の中満泉事務次長は、この特別任務体制宣言は大惨事につながる誤算のリスクを更に増大させるにすぎない、核兵器による勝者はいない、皆が犠牲者となるとツイートされました。
 昨日、広島、長崎の市長が連名で抗議文を出しております。この行為は世界中の誰にも二度と同じ体験をさせてはならないと懸命に訴えてきた被爆者の切なる思いを踏みにじるものであり、強い憤りを感じている、広島、長崎に続く第三の戦争被爆地を生むことは絶対あってはならないとしています。
 総理、この被爆地の叫びをどう受け止められるでしょうか。核兵器の使用も威嚇も許されないということを強く世界に訴えてほしいと思いますが、どうでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、二月二十八日付けで、松井広島市長と田上長崎市長が連名で、この強い憤りを表明しつつ、第三の戦争被爆地を、失礼、戦争被爆地を生むことは絶対にあってはならない、こうした表明をされたということを承知をしております。
 ロシアが核抑止力部隊の態勢を引き上げたことについては、情勢の更なる不安定化につながりかねない危険な行為だと認識をしております。唯一の戦争被爆国であり、また私自身、被爆地広島出身の総理大臣として、核兵器による威嚇も、ましてはこの使用もあってはならない、こうしたことを強く訴え続けていきたいと考えます。

○井上哲士君 今回の事態は、この核兵器の先制使用を振りかざして威嚇することによって無法な侵略行為を進めるという姿でありまして、核兵器の害悪がいよいよ浮き彫りになっていると思います。
 その中で、朝から問題になっている安倍元総理のテレビ番組の発言、米国の核兵器を日本に配備し、共有するというニュークリアシェアリングについて、非核三原則があるとしつつ、議論していくことをタブー視してはならないと述べました。
 今日も総理は、このニュークリアシェアリングは非核三原則と相入れないと答弁されました。ところが、自民党の総務会長が議論を回避するべきでないと発言するなど、日本への核配備、共有を容認する声が自民党内から続いております。
 しかし、これ、非核三原則というのは岸田政権が守ればいいという問題じゃないんですね。個々の政権の政策じゃないんです。広島、長崎の叫びを受けて、衆参の本会議で議決を踏まえて、国是としてつなげてきたんですね。
 元総理がその核配備を容認するような発言をしたり、与党内で私は議論、検討すること自体が国是ということからはあり得ないと思います。
 総理、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、自民党の中、そして自民党の外にも、そして今、日本の社会において、核、核共有について様々な意見があることは承知をしています。だからこそ、政府としての考え方をしっかりと明らかにしなければいけない、強く表明しなければいけない、このように認識をしております。
 午前中から申し上げておりますように、平素から自国の領土内に米国の核兵器を置いて、有事には自国の戦闘機等に核兵器を搭載運用可能な体制を保持することによって自国の防衛のために米国の核抑止力を共有する、こうした枠組みをこの核共有ということにおいて想定しているというのであるならば、非核三原則を堅持する立場からも、また我が国における原子力の平和利用を前提とする原子力基本法を始めとする法体系からしても、こうしたこの考え方は認められないという考え方をしっかり明らかにさせていただいております。

○井上哲士君 是非与党にも明らかにしていただきたいんですが、本当に政権内での議論がないのかと。
 アメリカの憂慮する科学者同盟という団体の二〇一三年十一月のレポートに、当時の外務省北米局審議官で、その後外務事務次官を務めた秋葉ツヨシ氏、秋葉氏の語ったことが掲載をされております。
 私は、インタビューした科学者に直接お話聞いて、二〇一八年三月二十六日の当委員会でただしました。レポートでは、秋葉氏の考えとして、日本にとって唯一の効果的な核抑止のオプションはニュークリアシェアリングだと、そうなれば、中国及び北朝鮮は、使用を決定するのはアメリカの役目ではなくて日本の役目になることを知る必要があると、こう述べているんですね。日本が共同管理して使用を決定すると。まさに核の威嚇ですよ。このことを当時語って、そしてその後外務次官を経て、今、国家安全保障局長ですよ。ずっとこの分野の中心でいた人がこういうことを語っている。
 実際にはアメリカとの協議などが行われてきたんじゃないですか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 少なくとも私は、そうした核共有の議論が行われたということは承知をしておりません。そして、重ねて申し上げますが、私の考え方、そして政府の立場については先ほど申し上げたとおりであります。

○井上哲士君 危機に乗じて核兵器を保有、配備するような議論は絶対許すことができません。
 日本はまさに核兵器のない世界をつくるためにこそ先頭に立つべきだと、このことを強く申し上げまして、質問を終わります。

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