○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は国際女性デーなんですが、予算委員会の公聴会に女性委員の方が出られたこともありまして、先ほど来、ここにいる委員、政府側、全部男性でありまして、大変残念だなと思っております。お互いに課題として取り組む必要があるなと冒頭申し上げておきたいと思います。
ロシアによるウクライナの侵攻、侵略が続いております。民間人の被害は一層深刻でありまして、そして世界全体に深刻な被害をもたらす危険のある原発への攻撃に加えて、北部ハリコフの核研究施設の攻撃、まさに言語道断と言わなければなりません。国際社会と連携した経済制裁とともに、世界と市民社会が、侵略やめよ、国連憲章を守れという一点で声を上げて力を合わせることが必要であります。ロシア国内でも、世界各地でも、日本国内でもその声が広がっておりますし、国連総会では百四十一か国の賛成で非難決議が行われました。さらに、様々な国際機関でロシアの行動を非難し、中止を求めることなど、あらゆる外交努力が必要だと思います。
そこで、まず外務大臣にお聞きしますが、国連人権理事会は、四日、ロシアによる攻撃は人権侵害であり国際人道法違反だと強く非難し、現地の人権状況を調査する独立の委員会を設置する決議案が、日本を含む賛成多数で採択をされております。理事会での議論と決議案の内容、そして日本としてこの人権侵害をどう考え、理事会でどのような対応をしてきたのか、お願いします。
○外務大臣(林芳正君) 三月の三日と四日でございますが、ジュネーブの人権理事会におきまして、ウクライナ人権状況に関する緊急討論が開催され、ロシアの侵略に起因するウクライナ人権状況に関する決議が採択をされました。この決議は、ロシアによるウクライナへの侵略の結果として生じた人権侵害及び国際人道法違反を最も強い言葉で非難するとともに、ロシアに対してウクライナにおける人権侵害及び国際人道法の違反を直ちに終わらせるよう求め、専門家によって構成された独立した国際調査委員会を設置するものでございます。こうした決議の方向性は我が国の立場と軌を一にするものであることを踏まえ、共同提案国入りした上で、賛成票を投じております。
また、我が国は、緊急討論におきましてステートメントを実施し、ロシアによるウクライナへの侵略はウクライナの主権と領土の一体性を侵害するものであり、このような力による一方的な現状変更の試みは、欧州及び世界の隅々で国際秩序の根幹を揺るがすものであって、国際法と国連憲章への明白な違反である旨を述べ、ロシアの侵略を最も強い言葉で非難いたしました。さらに、全ての国際人道法違反及び人権侵害を非難するとともに、ロシアに対して、国際人権法及び国際人道法を含む国際法上の義務を厳格に遵守するように求めました。この決議が多くの支持を得て採択されたことは、今回のロシアによる侵略に対する国際社会の強い意思が改めて確認されたものと受け止めております。
我が国として、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携して、国連における人権理事会に関する議論に積極的に貢献したいと考えております。
○井上哲士君 明確な人権侵害が行われているということでありますが、さらに、国際刑事裁判所、ICCのカリム・カーン主任検察官が、二日、ロシアがウクライナ侵攻で戦争犯罪を犯した疑いについて捜査を開始したと発表しました。カーン氏は声明で、ウクライナの状況の初期調査で、この裁判所の管轄権が及ぶ犯罪があったと信じるに十分な根拠を得たと、更に根拠となり得る事案を確認したとしております。英国のジョンソン首相は同日、ロシア軍の行動を強く非難し、この捜査開始を支持をいたしました。
日本政府としてはどういう見解でしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 今委員からお話がありましたように、このウクライナに対するロシアの軍事行動に関して、三月八日までに四十か国がウクライナの事態を国際刑事裁判所に付託したと承知をしております。我が国としても、かねてからICCをめぐる動向を注視してきております。
四日のG7外相会合で発出した共同声明では、我が国を含むG7外相は、一般市民に対する武器の無差別使用を含む戦争犯罪について責任を問うとともに、国際刑事裁判所検察官によるものを含む継続的な調査及び証拠収集を歓迎する旨表明をしてきております。
事柄の重要性にも鑑みまして、我が国の対応について予断をすることは差し控えたいというふうに思います。
○井上哲士君 国際社会と連携をして、さらに、このプーチン政権を包囲をして侵略を中止させる必要があります。そして今、国内外の難民が百五十万人に達しております。難民を始めウクライナ人の人々の生活と命を助ける支援物資を送ることも急務であります。食料品、防寒着、テント、衣料品、衛生用品などを、民間の力も借りて早急に届けることを求めたいと思います。同時に、憲法九条を持つ日本が、明白な紛争当事国のウクライナに自衛隊の防衛装備品を供与することには反対です。避難された方々の受入れも含めて、非軍事の支援に徹して更に強めるということを求めておきたいと思います。
さて、この状況の中で、これまでにあった核の共有や米国の中距離ミサイルの日本配備を進めるべきだという主張が、この機に乗じた形で一部で強まっております。二〇一九年八月にINF条約が失効して以来、アメリカ国内でアジアに配備する構想が様々議論されてきました。
お手元の資料の一枚目の下段ですね、アメリカのインド太平洋軍は、二一年の二月から三月に米議会に提出した書面において、アジア太平洋地域での米軍の戦力の増強を図る太平洋抑止イニシアチブの一環として、第一列島線に沿って射程五百キロを超える地上発射型ミサイルの配備を要求しました。中国との対峙を念頭に置いた米軍増強であり、米国の行動や死活的に重要な航路及び空域へのアクセスの自由を確保するための措置だとされております。【220308配付資料①.pdf】
具体的には、資料にありますように、中国の接近阻止、領域拒否に対して第一列島線沿いに長距離兵器を伴った地上部隊を配置して、米インド太平洋軍は局地的な航空及び海上優勢の時間帯を一時的に作り出すことにより軍事行動が可能になるとしております。
外務大臣にお聞きしますが、第一列島線沿いということは、日本もこの中距離ミサイルの配備検討の対象範囲になっております。アメリカからの配備について協議があったのではないか、どういう対応をしてきたのでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 我が国は、米国と日頃から様々な安全保障上の課題について緊密に意思疎通を行っております。米国は、二〇一九年、中距離射程で通常弾頭を搭載し、地上発射型のミサイルの開発に向けて前進する旨発表をしておるところでございます。
その上で、これまでアメリカから、地上発射型中距離ミサイルについては通常弾頭の開発試験の段階にあると、こういう説明を受けております。いずれにしても、これについて直ちに配備する状況になく、また、具体的な配備先について検討は行っていないと、こういう旨説明を受けているところでございます。
○井上哲士君 一年前も大体茂木大臣がそういう答弁だったんですね。ただ、このINF条約失効後、日本への配備をめぐって日米が水面下で協議しておるということを様々報道をされてきました。
例えば、朝日、一九年四月七日付けは、国家安全保障局は一九年三月末に、この問題について有識者を招いて意見交換し、中距離ミサイルの日本配備も含め積極的に検討していくべきだという意見も出たという、という報道が行われております。
こうした議論が様々な形で行われてきたんではないんですか。
○国務大臣(林芳正君) 先ほどの繰り返しになって恐縮でございますが、この米側からは、直ちに配備する状況になく、また具体的な配備先について検討を行っていないと、こういう旨の説明を受けているところでございます。
○井上哲士君 その上で様々なこういう水面下の議論が行われているんではないかと多くのマスコミが指摘をしております。
そして、この米国の中距離ミサイル配備は、昨年の自民党総裁選挙でも議論になりました。
九月二十日のテレビ討論で高市早苗氏が、必要で、積極的にお願いしたい話だと、こう明言をされました。岸防衛大臣は、総裁選挙でこの高市氏を支持をしただけではなくて、わざわざこのテレビのその日のツイートで、お手元にありますように、「米「中距離ミサイル」の日本配備、高市氏「必要」総裁選四候補でただ一人」、こうして高市さんの発言を持ち上げて、ツイートで拡散をしました。
岸大臣も、高市氏と同様に配備が必要だと、こういうお考えでしょうか。
○防衛大臣(岸信夫君) まず、ただいまの件につきましては、外務大臣からも御答弁がございましたけれども、地上発射型の中距離ミサイルについては、米国から直ちに配備する状況にはなく、具体的な配備先について検討は行われず、また、どの同盟国等に対してもその受入れや配備に関して打診を行っていない旨の説明を受けております。このため、米国からの要請は、あった場合の議論については、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
私の御指摘のツイッターにつきましては、自民党議員として、自民党総裁選における議論を国民の皆様に広く知っていただきたいとの趣旨で発信したものであります。
いずれにいたしましても、御質問に対するお答えは今申し上げたとおりであります。
○井上哲士君 この政権党のトップ、つまり、次の総理を事実上決める選挙に関する現職の防衛大臣のツイートなんですね。
そこにありますように、自己紹介には、防衛大臣と最初に明記をされております。そして、このツイッター見ますと、防衛大臣として様々活動などを発信をされているんですよ。そういう大臣のツイートというのは非常に重いと思うんですね。
アメリカから打診がないと言われますけど、打診がないにもかかわらず日本政府は配備を求めていると、必要だと、そういうふうに考えられる、大臣の見解だと思われると、そういうことは思われなかったんですか。
○国務大臣(岸信夫君) 繰り返しになりますけれども、御指摘の私のツイッターについては、私の、防衛大臣としての私が個人的に作っているものでございます。当時行われていた総裁選での議論を自民党、国民の皆様に広く知っていただきたいという趣旨で発信をしていたものでございます。
○井上哲士君 先ほど言いましたように、ツイッターの自己紹介は、まず防衛大臣と書いているんですね。
これは、実は去年も大問題になりました。中山防衛副大臣が政府の立場とは全く異なるイスラエルを擁護したツイートをしたことが問題になったんですね。当委員会で私や野党議員からの追及もありました。そのときにも、一政治家としての発信だと、こういう答弁がありましたけれども、実際プロフィールには防衛副大臣と書いてあって、そして防衛副大臣としての発信をしてきたと、そんな言い訳通用しないという厳しい批判がここであったんですよ。横で聞いておられたと思うんですね。そのときに、こういうことはやるべきでないと、防衛大臣として、そういうふうに思われなかったんですか。
○国務大臣(岸信夫君) 繰り返しになりますけれども、この私のツイッターのアカウント、これは防衛大臣としての私のアカウントでございますけれども、一方で、議員としてのツイッターであります。その中で、自民党総裁選の候補者がどのような主張をしているか、そういうことを主張することはおかしくないことだと思っております。
○井上哲士君 防衛大臣としての自分のアカウントだと言われましたよね。つまり、自分は区別したとはおっしゃいますけど、アメリカなどから、またいろんなところから、これは防衛大臣としてのそういうことを表明していることと思われても仕方がないと、そういうことはあの中山氏の議論などを通じて大臣として思われなかったのかと、そうであれば本当に私は見識問われると思いますよ。
やっぱり、この結果としてそういうことになっているということについてははっきりさせていただきたいと思いますが、いかがですか。
○国務大臣(岸信夫君) このことは、私の個人のアカウントとしてやっておりますけれども、そのことは、私が防衛大臣であるということの認識は皆さんもお持ちだということをベースに発信をしておるわけでございます。
その上で、当時行われていた総裁選挙の四候補の中で高市氏がこのような主張をしていたということを私が紹介をしたものでございます。
○井上哲士君 アメリカ国内からは更に新しい動きが出ております。
資料二でありますけど、米議会の諮問機関、米中経済安全保障調査委員会は昨年十一月に報告書を発表しております。その中で、議会に対して、核抑止及び兵器管理に関する包括的な外交戦略として、同盟国及びパートナー国に対して、中国政府に武器管理協議に参加するよう外交的な圧力を掛けることを説得し、また、それらの国に米国の中距離ミサイルやその他の米国のアセットを受け入れる意思があるか調査するための協議に資金拠出を求めるよう、認めるよう勧告したとしているんですね。【220308配付資料②.pdf】
この大臣のツイートはこの報告書の前なわけですけれども、アメリカのサイドで、アメリカの中距離ミサイルを受け入れる意思があるかどうか調査するための協議が言われているときに、受入れに関する同盟国、つまりその意思に関心を向けているときに、結果としてその前に防衛大臣のツイッターでこういうことを発信されたというのは、やはり日本が受入れの意思がありと発信していると結果的に思われると、こうなったんじゃないですか。そう思われませんか。
○国務大臣(岸信夫君) 私はただ純粋にこの総裁選挙のそれぞれの候補者の主張について発信をしたということでございます。
○井上哲士君 それがそうは見られないということを繰り返し言っているんです。
沖縄の玉城デニー知事は、一九年にINF廃棄条約が失効した際に、大変残念として、冷戦時代への回帰に強い懸念を持っていると指摘されました。仮に沖縄への配備があれば更なる米軍基地の強化につながるもので、到底認められないと表明をされております。
玉城知事が同年訪米した際に、アメリカ側が知事に対して、配備計画、今のところないと答えたことを明らかにされておりますが、しかし、その後もアメリカ側は地上発射型ミサイル開発を継続して、今紹介したような動きになっているわけですね。
沖縄への配備となりますと、政府の公約にも反する沖縄の基地負担増強になることはもとより、本土も含めて国内が候補地になれば、米中の紛争に巻き込まれて攻撃の脅威にもさらされることになると、こう思います。
外務、防衛副大臣、それぞれこの点についての認識をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) 今委員が資料でお配りになりました、この米議会の諮問機関の米中経済安全保障調査委員会の報告書の勧告でございますが、これについては承知をしておりますけれども、実際の要請というものは受けておりませんので、仮定の質問にお答えすることは差し控えたいと思います。米側とのやり取りについては先ほど答弁したとおりでございます。
○国務大臣(岸信夫君) 今、林大臣からもお答えがございましたけれども、中距離ミサイルについて、米国から直ちに配備する状況にはなく、具体的な配備先について検討は行っておりません。さらに、同盟国等に対しても、その受入れや配備に関して打診を行っていない旨の説明を受けておるところでございます。
○井上哲士君 仮定の話には答えられないということでありましたけど、先ほど来紹介していますように、アメリカ国内では着々と様々な議論が進められて、そして同盟国の意向調査であるとか、こういうことが言われているわけですね。そういうときに、防衛大臣がああいうツイッターの発信をされたこと自体が問題でありますし、この配備は軍備対軍備の悪循環を広げて、日本は米中の紛争に巻き込まれ、攻撃の脅威にもさらすことになると。
行うべきではないということを強く申し上げまして、質問を終わります。