○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
宮城、福島での地震で被災された皆さんにお悔やみとお見舞いを申し上げ、政府に万全の対策を求めるものです。
会派を代表して、在日米軍駐留経費負担特別協定について質問します。
ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵略をまず満腔の怒りを持って非難し、侵略の即時中止と撤退を求めます。
ロシアの行為は、国連憲章違反の侵略行為であることはもとより、市民への無差別攻撃は国際人道法で、病院への攻撃はジュネーブ文民条約で、原発への攻撃はジュネーブ条約追加議定書で禁じられている国際法違反の蛮行であり、決して許されません。政府も同じ認識ですか。
ロシア国内でも、侵略反対の市民の声や行動が、政府の弾圧の中でも広がっています。国際社会と連携した経済制裁とともに、侵略をやめさせる一番の力は、ロシア国内の声と連帯し、世界の国々と市民が侵略やめよ、国連憲章、国際人道法守れの一点で声を上げ、力を合わせることです。
国連総会緊急特別会合でのロシアのウクライナ侵略への非難決議は、国連加盟国の七割を超える百四十一か国の賛成で採択されました。一方、棄権は三十五か国、退席した国が十二か国ありました。
この四十七か国に対し、侵略を非難して軍事行動の中止を求める立場に立つように働きかけていく外交活動を政府に強く求めます。
総理が明日から訪問するインドもこの決議に棄権しています。インドに対しても強く働きかけていただきたい。以上、外務大臣、いかがですか。
ウクライナ国内外で、約五百万人の市民が避難しています。食料、物資、医療などが緊急に求められています。これら非軍事の人道支援に全力を挙げることを政府に強く求めます。
現在審議中の来年度予算案には、安倍元総理とプーチン大統領の合意に基づくロシアとの八項目二十一億円の経済協力関係予算が計上されています。ロシアがウクライナを侵略している下で、国際的にも国民的にも全く納得は得られません。松野官房長官も会見で、日ロ経済協力について当面見合わせると述べられました。この予算は削減すべきです。答弁を求めます。
二十世紀の初頭まで、戦争は国家の合法的な権利として認められていましたが、第一次世界大戦の惨禍を経て不戦条約が制定されました。しかし、第二次世界大戦を防げなかった。その教訓から、戦争一般でなく、武力行使も武力による威嚇も禁じたのが国連憲章であり、力の論理を否定して世界の平和の秩序をつくってきました。日本国憲法はそれを発展させたものです。
今脅かされているのは、ウクライナの主権だけではなく、世界の平和の秩序そのものです。国連憲章は無力だなどとして、ロシアの力の論理で、力で対抗しようとすることは、世界を十九世紀まで逆行させるものです。
国連憲章に基づく世界の平和の秩序の回復の重要性と、憲法九条を持つ日本の役割について、外務大臣の答弁を求めます。
次に、核共有議論の問題です。
プーチン政権が核の使用で世界を恫喝しながら侵略を進めていることは言語道断です。この危機に乗じて、元首相などの核共有を議論すべきという動きは看過できません。
岸田総理は、二日の予算委員会での私の質問に、様々な意見があるとした上で、だからこそ、政府としての考え方をしっかりと明らかにし、強く表明しなければいけないと述べ、非核三原則を堅持する立場からも、原子力の平和利用を前提とする原子力基本法を始めとする法体系からしても、こうした考えは認められないと答弁しました。官房長官も同じ考えですか。
ところが、自民党の茂木幹事長は七日の記者会見で、核共有は概念上、非核三原則に直ちに反するものとも言えない、中長期的な抑止力確保の観点で位置付けられるべきなどと述べました。
しかし、核共有とは、米軍の核戦力の日本配備を認めることです。国是である非核三原則を投げ捨てるものであり、断じて認められません。国是をめぐり、政権党の幹事長が総理答弁を覆すような発言をする、まさに異常な事態というほかありません。政府は、将来にわたって核共有などあり得ないと明言すべきです。官房長官、いかがですか。
在日米軍駐留経費、思いやり予算特別協定について伺います。
本協定は、在日米軍の駐留経費について、日本が二〇二二年度からの五年間に総額一兆五百五十一億円を負担することを約束し、二〇一六年度からの五年間の協定で示した負担総額を一一%も増額させるものです。これまで日本が負担した在日米軍駐留経費の総額と来年度予算案の計上額の合計額を、防衛大臣、お答えください。
日米地位協定二十四条は、在日米軍の維持経費は日本国に負担を掛けずに合衆国が負担すると定めており、日本に負担義務はありません。昨年の現行協定延長の際の審議で当時の外務大臣は、日本の負担について、我が国の厳しい財政状況を考慮するとしていましたが、しかし、本協定を見れば、コロナ禍が続く中、更に厳しくなった財政状況を考慮したことを示す形跡はどこにも見当たりません。
米インド太平洋軍司令官は三月九日の米議会で、注目すべきこととして、日本が過去二十年で最大の増額を約束したと評価しました。実際には、米国の負担増の要求にどう応えるのかという増額ありきの交渉だったのではないですか。外務大臣の答弁を求めます。
本協定では、訓練資機材調達費として、米軍が訓練で使用する最新鋭の資機材調達を支援する新たな費目が設けられました。LVCシステムを始め調達が予定される資機材は、米軍が訓練環境の向上と費用の抑制を図ることを目的として、専ら米軍が使用するために導入するものです。機材は米国の所有となります。どこを見ても、日本がこの経費を負担する理由は全くないではありませんか。防衛大臣、いかがですか。
また、林外務大臣は衆議院で、訓練資機材調達費の上限に関して、協定の規定を挙げ、日本側の意に反して経費の負担を強いられることはありませんと答弁されました。しかし、近年の米国製兵器の爆買いやイージス・アショア導入決定までの経過を見れば、政府が米国の要求をきっぱり断ると信じる国民がどれほどいるでしょうか。納税者にとっては、何の歯止めにもならないではありませんか。
さらに、本協定では、訓練移転費に関して、アラスカを米軍機の訓練移転先の対象に追加するとしています。米軍は、アラスカに、陸、海、空、宇宙、サイバーの軍事訓練に利用する環境を網羅する統合太平洋アラスカ訓練場を始めとした軍事施設を保有しています。ここには、沖縄やグアムなど他の太平洋地域のどこにもない広大で優れた訓練環境があるとされています。
在日米軍が訓練の必要上、自国の優れた訓練場を選ぶのは全く米軍の都合によるものであり、日本が経費を負担する理由はどこにあるというのですか。沖縄の負担軽減を費用負担の口実にすることは、筋の通らない負担を日本に負わせるための方便とも言うべきものではないですか。
今回、政府は、通称を同盟強靱化予算と変えましたが、実際は、日本に何ら負担義務がない経費の肩代わりを更に広げ、自衛隊と米軍との一体化を一層進めながら軍事力を強化しようとするものにほかならないのではありませんか。
以上、外務大臣の答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
○外務大臣(林芳正君) 井上議員にお答えをいたします。
ロシアによる侵略行為と国際人道法との関係についてお尋ねがありました。
ジュネーブ諸条約及び同第一追加議定書を含む国際人道法上、軍事行動は軍事目標に限定して行うこととされ、この軍事目標主義に反する攻撃は、国際人道法に違反するものであり、決して許されません。
今般のロシアによる軍事行動は、国連憲章第二条四が禁ずる違法な武力の行使であり、国際法違反です。我が国としては、国際社会と連携し、ロシアによる侵略を強く非難するとともに、ロシアに対し、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう、引き続き強く求めていきます。
次に、ロシアによるウクライナ侵略に関する国連総会決議についてお尋ねがありました。
現地時間三月二日、国連総会の緊急特別会合は、ロシアによるウクライナの侵略を最も強い言葉で遺憾とし、ロシア軍の即時完全無条件の撤退を求めること等を内容とする決議を、百四十一か国という多数の賛成によって採択しました。我が国は、できる限り多数の国々がこの決議案に賛成し共同提案国入りするよう、多くの国々に働きかけました。
インドとの関係では、二月十一日の日米豪印外相会合、また、三月三日の日米豪印首脳テレビ会議において、現下のウクライナをめぐる情勢について率直な意見交換を行いました。今後も、総理のインド訪問も含む様々な機会を捉え、意思疎通を行っていきたいと考えています。
いずれにせよ、我が国としては、一刻も早くロシアの侵略をやめさせ、ロシア軍を撤退させるために、G7を始めとする国際社会が結束して対応することが重要と考えており、棄権した国を含め、各国に対して様々な機会を捉えて粘り強い外交努力を続けていきたいと考えています。
次に、国連憲章の重要性及び憲法九条を持つ日本の役割についてお尋ねがありました。
国連憲章においては、例えば、第二条三において、全ての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならないと定められており、同条四において、武力による威嚇又は武力の行使を禁止しています。
今回のロシアによるウクライナ侵略は、国連憲章第二条四が禁ずる違法な武力の行使であり、明確な国際法違反であって、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。断じて許容できず、厳しく非難します。
国際の平和と安全の維持を目的としている国連憲章の考え方は、我が国の平和主義の理念とも軌を一にし、国際秩序の基礎となる重要なものです。
我が国は、憲法九条及び前文に示されている平和主義の理念の下、平和国家として国際社会の平和と安定に貢献してまいりました。この取組は高く評価されています。
今後とも、こうした取組を続けながら、平和国家としての歩みを続けていきたいと考えます。
次に、特別協定交渉の経緯についてお尋ねがありました。
本特別協定は、政府として、厳しい財政状況を踏まえつつ、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、在日米軍の安定的なプレゼンスを支えるとともに、日米同盟の抑止力、対処力をより一層効果的に強化していくことが必要であるとの認識の下、主張すべきは主張しつつ、協議を重ね、今回合意に至ったものであり、増額ありきの交渉だったとの御指摘は当たりません。
次に、訓練資機材調達費の負担上限についてお尋ねがありました。
日本側が負担する経費については、協定上、日本国政府が、相互に適当と判断する経費を負担するとの通告を米国政府に対して行う場合に限る旨規定しています。したがって、日本側の意に反して経費の負担を強いられることはありません。
加えて、本特別協定期間の五年間で最大二百億円を負担することとしたものでございますが、これは概算要求のための全ての必要な手続を完了することを条件とした額であることについて日米間で一致をしており、日本が際限なく負担することになるとの指摘は当たりません。
次に、訓練移転費を負担する理由及び沖縄の負担軽減についてお尋ねがありました。
訓練移転は、在日米軍の抑止力の維持向上と在日米軍施設・区域周辺における訓練活動の影響を軽減する観点から大きな意義を有しており、政府としても積極的に取り組んできています。
特に、沖縄の負担軽減は政府の最重要課題であり、例えば、嘉手納飛行場等に所属する航空機の訓練移転に取り組むことにより、嘉手納飛行場等の周辺の住民に対する騒音の影響が一定程度軽減される効果があるものと認識をしております。
かかる観点から協議を行った結果、航空機の訓練移転について、米軍による訓練の日本国外への移転を一層促進するため、広大な空域など恵まれた訓練環境を有するアラスカを訓練移転先の対象とすることについて、日米間で一致をいたしました。
これにより、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄を始めとする地元の負担軽減を図るための訓練移転を更に促進することが可能になると考えており、筋の通らない負担を日本に負わせるための方便との御指摘は当たりません。
次に、在日米軍駐留経費負担の通称についてお尋ねがありました。
政府としては、今回の交渉の結果、在日米軍の円滑かつ効果的な運用を支えるだけではなく、自衛隊を含む日米同盟の抑止力、対処力をより一層効果的に強化していくことに資する、また、厳しい財政状況を踏まえ、めり張りを付けた経費負担の合意を得ることができたと考えています。
このように、これまでは在日米軍の駐留を支援することに重きを置いた経費負担でしたが、今回の合意により、本件経費を用いて日米同盟を一層強化する基盤を構築することで一致をいたしました。
このような経費負担の内容の変化を踏まえ、今回の合意に基づく在日米軍駐留経費負担の性質を端的に示すものとして、その通称を同盟強靱化予算とすることとしたものです。(拍手)
○内閣官房長官(松野博一君) 井上議員にお答えをいたします。
八項目の協力プラン関係予算についてお尋ねがありました。
現下のウクライナ情勢を踏まえれば、ロシアとの関係で新たな経済分野の協力を進めていく状況にはないと考えております。ロシアとの経済分野の協力に関する政府事業については、当面見合わせることを基本に、国際的な議論も踏まえて、エネルギー安全保障や人道上の配慮に留意しつつ対応してまいります。
今後のウクライナ情勢や国際的議論の展望を正確に見通すことは困難であり、今後、個々の予算の執行の段階で、その時点での最新の情報を踏まえて、適切に判断をしてまいります。このため、予算案を削減する必要があるとは考えておりません。
核共有についてお尋ねがありました。
核共有は、平素から自国の領土に米国の核兵器を置き、有事には自国の戦闘機等に核兵器を搭載することなどによって自国の防衛のために米国の核抑止を共有するといった枠組みと考えられますが、我が国については、非核三原則を国是として堅持していることから、このような枠組みは認められないと考えます。(拍手)
○防衛大臣(岸信夫君) 井上哲士議員にお答えをいたします。
まず、在日米軍駐留経費負担の総額についてお尋ねがありました。
在日米軍駐留経費負担について、昭和五十三年度から令和三年度までの当初予算額の総額と令和四年度予算案の額は合計で八兆七百二十五億円であります。
最後に、訓練資機材調達費についてお尋ねがありました。
我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、自衛隊と在日米軍の双方が各種の高度な訓練の実施等を通じ即応性を向上させていく必要があるとの観点から協議した結果、新たに訓練資機材調達費の項目を設けることとしました。
米側が調達する訓練資機材の、資機材を日本、日米共同訓練などにも活用することにより、日米双方の即応性向上や相互運用性の強化に資することとなり、本経費の新設は適切と考えています。(拍手)