国会質問議事録

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倫理選挙特別委員会(視覚障害者への選挙情報の提供と投票環境の整備)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 私、超党派で障害者の情報アクセシビリティー推進議連というのに参加しておりますが、この度、議連として障害者情報コミュニケーション法案がまとまって、今国会での成立を目指しております。この情報に接近する権利というのは選挙でこそ求められております。
 まず、総務大臣にお聞きしますが、視覚障害を持つ有権者への政党や候補者の氏名、経歴、政見等の選挙情報の提供、投票環境の改善の重要性について、まず所見をお伺いしたいと思います。

○総務大臣(金子恭之君) お答え申し上げます。
 障害のある方を含め、有権者の方々に候補者情報を提供することは大変重要なことと考えております。視力に障害のある有権者に対しては、全ての都道府県において点字又は音声による選挙のお知らせ版を作成をし、配布をしていただいているところでございます。また、音声読み上げデータの各選挙管理委員会のホームページへの掲載も行われております。
 総務省としては、全国の選挙管理委員会に対し、投票所等のアクセシビリティーの向上やバリアフリー化として、点字器や点字による候補者名簿などの準備、スロープの設置や人的介助などによる段差の解消などの取組を要請をし、また、これらに要する経費について措置をしております。
 引き続き、障害のある有権者の方々が円滑に投票することができるように、必要な取組を推進してまいりたいと思います。

○井上哲士君 様々行われてきたけれども、引き続き推進していきたいという答弁でありました。
 視覚障害者の団体で、選挙公報の点字版、音声版、拡大文字版の作成に取り組んでいる社会福祉法人日本盲人福祉委員会が発行する「点字版選挙公報製作必携」という本があります。この冒頭に竹下義樹理事長の文章がありまして、こう述べているんですね。公職選挙法は、日本国憲法の要請を受けて、国政選挙等において公職の候補者の氏名、経歴、政見等を掲載した選挙公報の発行を義務付けている。その結果、国民は一票を投ずるに当たって、候補者の政策等を選挙公報によって知ることができるようになった。しかし、視覚障害を有する有権者は、選挙公報が点字や音声等の媒体によって発行がされてこなかったため知る権利が奪われ、投票に当たって十分な情報は与えられないまま一票を投じるしかなかったと述べた上で、障害者権利条約が批准され、障害者差別解消法が制定され、障害者に対する合理的配慮が義務化された今日においては、選挙情報の保障は法的根拠を持った当然の要件になったと。本当に、障害者の皆さん、長年の声と運動があってここまで前進をしてきたんだろうと思います。
 今述べたこの障害者権利条約を批准するための国内法整備の一環として、二〇一一年の三月に総務省は障がい者に係る投票環境向上に関する検討会を設置をして、政見放送や選挙情報、投票環境、それぞれの改善について報告書を取りまとめておりますが、これを受けて総務省は通知を出しています。点字及び音声による選挙情報の提供に関してはどういう内容か、そしてそれは、実施状況、今どうなっているでしょうか。

○総務省 自治行政局選挙部長(森源二君) お答えをいたします。
 総務省では、平成二十三年三月の障がい者に係る投票環境向上に関する検討会報告書を受け、視力に障害のある有権者に対する点字及び音声による選挙のお知らせ版について、選挙公報全文とするとともに、視力に障害のある方の意向に沿うよう、点字版だけではなく、カセットテープ版、コンパクトディスク版、拡大文字版等を必要数準備することなどを通知をしております。
 昨年の総選挙においては全都道府県において点字版及び音声版が配布をされているところであり、作成数については、小選挙区選挙では点字版が約三万部、音声版が約二万八千部、拡大文字版は約四千部、比例代表選挙では点字版が約二万七千部、音声版が約二万三千部、拡大文字版は約三千部であったと承知をしております。

○井上哲士君 お手元に昨年の総選挙の資料を配付をしております。【220330倫選特 配布資料.pdf】今ありましたように、全ての都道府県で選挙のお知らせ版という形で選挙公報の点字版や何らかの音声版が作成をされております。
 ただ、一番右側見ていただきますと、拡大文字版を作成していない県があるんですね。これ弱視の方にとっては非常に大事なんですけれども、なぜ拡大文字版が作成されていない県があるんでしょうか。

○政府参考人(森源二君) お答えをいたします。
 総務省においては、国政選挙や統一地方選挙の際、選挙のお知らせ版について、視力に障害のある方の意向に沿うよう、点字版だけではなく拡大文字版も含めて必要数準備するよう要請をしているところでございます。
 都道府県の選挙管理委員会への聞き取りによりますと、障害者団体などに要望を聞いた結果、拡大・点字版について特段の要望がなかったとか、音声版で対応しているなどの理由により、拡大・点字版を作成していない都道府県もあるものと、拡大文字版を作成していない都道府県もあるものと承知をしております。
 引き続き、視覚に障害がある方に的確に候補者情報を提供できるように、各選挙管理委員会に対して必要な要請を行ってまいりたいと存じます。

○井上哲士君 弱視の方のために非常に重要なんですね。
 先ほどのあの通知でも、障害者団体未加盟の方でも分かるように広報や周知をするという項目があります。障害者団体にいろんな聞き取りするのは大事ですけど、いろんなやっぱりニーズがあると思いますので、更に聞いていただきたいと思うんですね。
 もう一つ、衆議院選挙の場合は最高裁裁判官国民審査の審査公報があるわけですけど、この点字版国民審査のお知らせ版という作成、配布状況はどうなっているでしょうか。

○政府参考人(森源二君) お答えをいたします。
 国民審査のお知らせ版につきましても、総務省として、その内容を審査公報専門とするとともに、視力に障害のある方の意向に沿うよう、点字版だけではなく、カセットテープ版、コンパクトディスク版、拡大文字版等を必要数準備することを通知をしておるところでございます。
 国民審査のお知らせ版の作成、配布状況といたしましては、各都道府県の選挙管理委員会に聞き取りを行った範囲では、全ての都道府県で作成をしているものというふうには承知をしているところでございます。

○井上哲士君 この数字では出てこないわけでありますけど、先ほど紹介した日本盲人福祉委員会の方々にお話聞きますと、大体、国民審査のお知らせ、点字版、音声版も、各県から選挙のお知らせとほぼ同数が注文があるということでありました。
 私、やっぱり全ての視覚障害者の方にきちっと情報を届ける上で、今申し上げたような拡大文字版であるとか、審査のお知らせについてもやっぱり正確な情報をつかんでいただくことが大変大事だと思うんです。
 その上で、次にお聞きしますが、選挙執行経費の基準に選挙公報という経費種目があるわけですが、視覚障害者向けのこのお知らせ版の形の選挙公報、審査公報というのはこの種目には当てはまらないということでありますが、では、どの経費種目から支出をされているのか、その基準額の推移、そして直近の費用の総額はどうなっているでしょうか。

○政府参考人(森源二君) お答えをいたします。
 点字等による選挙のお知らせ版、また国民審査のお知らせ版の作成に要する経費は、執行経費の委託費の使途状況において、多くの団体は選挙啓発に要する経費として事務費に分類し、経費支出をされているものと承知をしております。
 このような点字等による選挙のお知らせ版等の作成については、現行の執行経費基準法において事務費の基準額には積算はしておりませんが、基準額全体の中から支出をすることができ、また当該基準額では執行できないものは調整費により支出をされているものでございます。
 各選挙管理委員会から委託費の使途状況として点字、音声のお知らせ版等に要した経費として報告を受けた額は、衆議院議員総選挙では、平成二十六年衆議院選約三・〇億円、平成二十九年衆院選約二・四億円でございます。参議院議員通常選挙につきましては、平成二十八年参議院選では約一・七億円、令和元年参議院選では約一・八億円となっております。

○井上哲士君 先ほど数分かんなかったわけですけど、今ありましたように、衆議院の方が金額が多いのは、やっぱり審査版の作成費用がかなり含まれているんだろうと思うんです。
 私、やっぱりこれきちっと位置付ける上でも、一般的事務費ではなくて、こういうものもきちっと種目に位置付けるということも御検討いただきたいんですが、今の現状は表や答弁のとおりでありますけど、通知を出してから十年たっているわけですね。総務省としては、この視覚障害を持つ有権者がどのぐらいいると承知しているのか、そして今の状況から見てそれに十分に行き渡っていると考えているのか、できるだけ多くの障害者に配布、普及するための責任を今後更に発揮する上でどのようにお考えか、まとめてお願いします。

○政府参考人(森源二君) お答えをいたします。
 十八歳以上の視覚障害者数は、厚生労働省の資料によると、令和二年度末時点で約三十二万人であったと承知をしております。
 選挙のお知らせ版や国民審査のお知らせ版の配布に当たりましては、個人情報の保護に十分留意した上で、障害者団体等に配布を依頼する、あるいはこれらの団体に対し必要とされる方のリストの提供を依頼して配布する、あるいは障害者団体に属していない方が連絡できるよう、ホームページや広報誌に連絡先を掲載するなど、必要とされる方に行き渡るよう十分に配慮することを依頼しているところでございます。
 各選挙管理委員会においては、それぞれこうした通知を踏まえて対応いただいているものと認識をしておりますが、引き続き、関係機関と連携を密にしながら、必要とされる方に確実に行き渡るように取り組むことについて要請をしてまいりたいと存じます。

○井上哲士君 約三十万人ということで、数的には合うような、見えるんですけど、実際には選管とか選挙所に置かれているものがあります。それから、日本眼科医会の研究班の二〇〇九年の報告では、視覚障害者というのは百六十三万七千人、人口の一・三%と言われているんですね。そうしますと、やっぱりまだまだ足りないというのが実態だと思います。
 そこで、総務大臣、もう一個お聞きしますが、選挙執行経費の中での基準額をしっかり定めて、人的体制や必要な予算も確保して、よりこの視覚障害の皆さんに情報が届くようにするべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(金子恭之君) 井上委員にお答え申し上げます。
 国政選挙の管理執行については、執行経費基準法において経費の基準額が定められております。また、特別の事情によって基準額では執行することができないものについては調整費の追加交付がされることとなっております。点字等による選挙のお知らせ版等の作成に要する経費は全てこの調整費の対象となることを各選挙管理委員会に周知の上、国費により措置をしているところでございます。
 視力に障害のある有権者に対する選挙や国民審査の情報の提供は有効な取組であると考えておりまして、総務省としては引き続きしっかりと必要な財政措置を行ってまいります。

○井上哲士君 実態しっかりつかんだ上で、必要な措置をお願いをしたいと思います。
 次に、開票所の経費等についてお聞きしますが、まず総務省お聞きしますが、投票用紙の交付ミスとか不在者投票の運用の誤りなど、いわゆる管理執行上問題となった行為、いわゆる選挙事務ミスについて、二〇〇四年参議院選挙と一九年参議院選挙におけるそれぞれ数はどうなっているでしょうか。

○政府参考人(森源二君) お答えをいたします。
 総務省では、国政選挙や統一地方選挙の際、各都道府県選管より管理執行上問題となった事項について御報告をいただいているところでございますが、御指摘の平成十六年、二〇〇四年及び令和元年、二〇一九年の参議院議員通常選挙において管理執行上問題となった事項として報告のあった件数は、二〇〇四年が六十三件、二〇一九年が二百件でございました。

○井上哲士君 十五年間で三倍にも増えているんですね。なぜこういう開票不正や選挙ミスがなくならないのかと。一五年五月に衆議院で我が党塩川議員が質問した際に、当時の高市大臣は、選挙への信頼を揺るがしかねないゆゆしき事態だと述べて、しっかり注意喚起していくという答弁がありましたし、同じく塩川議員に一九年に当時の石田大臣が、改めて通知を発出し、研修に選管OBを派遣するなど措置をとったと、こういう答弁もあったんですね。
 しかし、一九年参議院選挙でも選挙ミスは減っておりませんし、直近の二〇二一年の総選挙でも選挙事務のミスが報道されております。これなくなっていないということをどう大臣はお考えでしょうか。

○国務大臣(金子恭之君) 井上委員御指摘のとおり、この選挙ミスというのは本当にゆゆしきことであり、あってはならないことだと認識をしております。
 総務省では、国政選挙や統一地方選挙の際、選挙事務のミスなど管理執行上問題となった事項について、今後の事務の改善につなげていくため、その取りまとめを行っております。これまでの選挙における内容を見ますと、個別のミスの原因として、投票用紙の交付誤りや本人確認を十分に行わないまま投票用紙の交付を行うことなど、多くは単純ミスや思い込み等によるものであると考えております。総務省としては、このようなミスの発生を避けるためにも、各選挙管理委員会において、研修の実施等により、個々の事務の目的や必要性について十分に確認いただくことが重要と考えております。
 総務省といたしましても、今後、全国の担当者会議においてその徹底を要請するとともに、実務に精通した者等を派遣する管理執行アドバイザー制度や各選挙管理委員会における研修の徹底などを通じて、今後とも選挙の厳正な管理執行に万全を期すように取り組んでまいりたいと思います。

○井上哲士君 二〇一〇年代の国政選挙において、この選挙管理委員会の幹部も関わる開票不正が三回も起きました。二〇一七年の総選挙では、甲賀市の選管の三人の幹部が、投票総数より開票した票数が少なかったために、約四百票もの白票を水増ししてつじつまを合わせたという事件が起きたんですね。昨年十月二十七日の毎日新聞に、この事件で投票用紙を焼却した元総務課長のインタビューが出ていますが、なぜやったかと。国政選挙では職員のプレッシャーが大きい、他市町の開票状況も気になると、正確さは当たり前で、速さが問われると、こう答えているんですね。こういうプレッシャーがあったと思います。
 今、開票所の経費の基本額を決める上で前提となる開票事務に要する作業時間は四・五時間としていると思うんですけれども、二〇〇四年までは、この開票事務に関する時間は、参議院は六・五時間、衆議院は六時間でした。それが五時間に短縮され、四時間に減らされ、二〇一六年に三十分戻し四・五時間になったのでありますが、現在四・五時間と。
 一九年の参議院選挙において、現行の基準の四・五時間以内で開票を終了した開票所の数と割合はどうなっているでしょうか。

○政府参考人(森源二君) お答えをいたします。
 令和元年の参議院議員通常選挙において四・五時間以内に開票を終了した開票所は、全開票所千八百九十九か所のうち九百十六か所であり、その割合は約四八%でございます。

○井上哲士君 半分以下なんですね。
 同じ二〇一九年の参議院選挙で、以前の基準の六・五時間以内で開票を終了した開票所で見ると、八六・三%、大体九割なんですよ。
 ですから、今のやっぱり四・五時間というのは相当実態と懸け離れているんじゃないかと。短時間開票のプレッシャーは強まる一方で、開票所の事務従業員数は減少しております。総務省の実態を見ても、基準の人数では足りない開票所があると。
 ところが、今回、この開票所の経費が減るんですね。現行と改正案で、一開票所当たりの基本額というのはどうなるでしょうか。

○政府参考人(森源二君) お答えを申し上げます。
 例えば、投票が休日に行われる場合において、投票の当日に開票を行う選挙人の数が三万人以上の開票区の開票所経費、この基本額は、地方財政計画における一般職員の給料の単価の変動を反映をいたしまして、現行法の百三十一万八千五百一円から五千百二十四円、〇・四%減の百三十一万三千三百七十七円としておるものでございます。

○井上哲士君 十八歳選挙権も始まって、参議院でも合区があり、小選挙区の区割りは複雑化と。選挙執行義務、業務は非常に膨大になっているわけですね。それだけに、非常に選挙管理委員会の役割は大きいし、職員の、数が足りないという問題も深刻な中で先ほどのようなミスが起きています。
 あってはならないことですけれども、しかし、こういうやっぱり経費も削減をするということは、むしろ私は逆行するんじゃないかと思います。しっかりした予算手当てをすることも必要だということも求めまして、質問を終わります。

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