国会質問議事録

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外交防衛委員会(バングラデシュ・インドネシアODA石炭火力発電所計画)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 ロシアによるウクライナでの無差別の攻撃と非人道的虐殺行為、許すことができません。話合いで解決するという国連憲章に基づく国際秩序そのものが壊されているわけでありますから、私は、国際的世論を広げて侵略を中止させて、そして戦争犯罪を裁く、そのための外交努力、そして非軍事の人道支援を更に強めることをまず政府に求めておきたいと思います。
 その上で、今日はODAによる石炭火力発電所の輸出支援について聞きます。
 昨年のODA特でも質問しましたが、政府は一昨年の十二月に新たな火力発電輸出支援の厳格化を行いました。しかし、進行中の案件には適用せず支援を続けていることが抜け穴になっていると指摘をしました。
 これ以来、気候変動の取組は世界で更に進んでおります。
 先日、五日ですね、国連の気候変動に関する政府間パネル、IPCCの第三作業部会が新しい報告書を公表をしております。地球の平均気温上昇を産業革命前から一・五度に抑えるためには、二〇二五年までに温室効果ガスを増加から減少に転じさせることが必要だと強調をしました。削減政策を強めなければ今世紀末までに三・二度の温暖化をもたらすと警告をしております。そして、大量に温室効果ガスを排出する化石燃料については使用全般の大幅削減、それから低排出エネルギー源の導入などの大規模な転換を必要とすると述べております。
 一方、G7の中で唯一石炭火力発電輸出を進める日本に国際的な批判が続いております。IPCCの今回のこの報告、そして日本への国際的な批判を、外務大臣、どう受け止めていらっしゃるでしょうか。

○外務大臣(林芳正君) 今委員から御指摘のありましたこのIPCCの報告書でございますが、各国の現在の気候変動対策では二十一世紀中に温暖化が一・五度を超える可能性が高いと、こういう見通しも示され、各国の更なる取組が呼びかけられていると承知をしております。
 石炭火力発電の輸出につきましては、我が国は二〇二一年六月のG7首脳会合におけるコミットメント、これに基づきまして、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の支援を昨年で終了をしたところでございます。
 引き続き、パリ協定を含む国際ルールとの整合性を確保しつつ、相手国の実情に応じた対応を通じて、世界の実効的な脱炭素化に積極的に貢献をしてまいりたいと考えております。

○井上哲士君 国連のグテーレス事務総長は、この報告書を受けて、温室効果ガスの大量排出を続けている政府と企業について、より安価で再生可能な解決策がグリーンジョブ、エネルギー安全保障、一層の価格安定をもたらすにもかかわらず、彼らは化石燃料の既得権益と過去の投資のために地球を窒息させつつあると、こういう指摘をしております。
 新規案件には中止をしたと言われましたけれども、先ほども言いましたように進行中の案件が続いていることが抜け穴になっていると、相手国の事情ということを言われましたけれども、やはり国際社会が取り組む温暖化に逆行する事業を進めることは相手国の立場にもならないと、こう思うんですよね。
 そこでまず、日本がODAで支援しているバングラデシュのマタバリ火力発電所について聞きます。
 現在、フェーズ1の工事が進んでおり、住友商事が請負業者として参加をしております。この拡張案件としてフェーズ2の準備が進んでいます。住友商事は、昨年、気候変動に対する方針を発表して、新規の石炭火力発電には参加しないことを表明しながら、マタバリ2については例外としておりました。ところが、二月二十八日にこの方針を見直して、この例外事項を削除したと発表しました。これによって、マタバリ2への取組を断念をすることになるわけですが、同社がこの方針を転換した理由を外務省はどう承知されているでしょうか。

○外務省 国際協力局長(植野篤志君) お答え申し上げます。
 今委員御指摘のとおり、本年二月二十八日に住友商事が同社の気候変動問題に対する方針というのを改定されて、実質的にマタバリの石炭火力発電計画のフェーズ2に参画しないという旨を明らかにされたことは承知しておりますけれども、個別の企業のその方針転換の理由について政府として御説明する立場にはないんですが、脱炭素化への国際的な潮流等を踏まえてそういう決定をされたものと理解をしております。

○井上哲士君 方針見直しに大きな影響を与えたのが投資家の動きだったんですね。
 昨年、オーストリアの環境金融NGOのマーケットフォースが、パリ協定の一・五度目標に沿った経営を行う事業戦略を盛り込んだ計画の策定を求める株主議案を提出をしました。この提案は総会では採択されませんでしたけれども、投資家からは二〇%の賛同を得たと。その下での方針転換なんですね。昨年のCOP26で国際的に一・五度目標を目指す合意をしたことも踏まえて、マタバリ事業はこれ以上の推進には無理があると判断したと見られると、こういうふうにも指摘をされております。
 今、ダイベストメントなど一・五度目標に沿った経営を求めるこうした投資家の動きというのは更に広がると思いますけれども、外務省はどういう認識でしょうか。

○政府参考人(渡邊健君) IPCC報告書では、エネルギー部門全体を通しての温室効果ガス排出量の削減に向け、化石燃料使用を含め更なる取組が呼びかけられているものと承知しております。
 気候変動問題への危機意識の高まりから、投資家や金融機関の間で化石燃料への投資からの引揚げの動きが出ていることは承知しておりますけれども、今回のIPCCの報告書が更なる引揚げにつながるかについては、予断を持ってお答えすることは控えたいと存じます。
 世界の持続的な経済成長と気候変動への対応を両立させるためには、単に化石燃料への投資を引き揚げることだけではなく、再生可能エネルギーの導入拡大に加え、引き続き、多くの国々が依存せざるを得ない化石燃料の環境負荷を低減するための技術開発を促進し普及していくことも必要と認識しております。
 また、今回のロシアによるウクライナ侵略を契機とするエネルギー情勢がエネルギー安定供給の重要性を再認識させる中、石油、天然ガスのほぼ全量を海外に依存する我が国として、再エネや原子力を含めたエネルギー多様化に加え、上流開発投資を通じたエネルギー供給源の多角化を図ってまいることも必要と考えております。

○井上哲士君 ダイベストメントを含む世界の動き、更に広がっています。
 今、この石炭火力などの問題と同時に再エネのことを言われましたけど、アメリカのシンクタンク、エネルギー経済財政分析研究所、IEEFAはこのほど、このマタバリ石炭火力のプロジェクトを中止して再エネを柱とした電力マスタープランへの移行を提言する報告書をまとめております。この中では国営の電源開発公社の財務状況の悪化を指摘し、その原因として、現在建設中の発電容量が供給過剰になって、大部分が輸入化石燃料であることが電源開発公社の財務状況を圧迫することなどを指摘して、JICAの支援をやめるように求めております。
 一方、バングラデシュの英字紙、デーリー・スターの三月十日付けはこの住友商事のフェーズ2からの撤退を報じておりますけど、その記事の中で同国のエネルギー大臣のコメントがあります。こう言っているんですね。バングラデシュ政府として、石炭火力のフェーズ2を継続しない可能性があり、もしそうなら液化天然ガスをベースにした発電計画になるだろうと述べております。私、政府の大臣自身がこのフェーズ2を継続しない可能性があったという発言、大変重要だと思っています。
 これ、ちょっと通告していませんが、この発言については、外務省、認識されていますか。

○政府参考人(植野篤志君) そういう報道があったということは承知しておりますけれども、マタバリのフェーズ2については今後どういう対応をしていくかということをまだ正式に決定しておりませんで、バングラデシュ側と引き続き協議をしているという段階でございます。

○井上哲士君 こういう大きな世界的動き、そしてバングラデシュの政府でもこういう動きがある。そうであれば、まだ始まっていないマタバリ2にしがみつくんじゃなくて、この再エネを中心にした支援シフトに変えていくと、それこそ日本の国際貢献だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) このマタバリの超超臨界圧石炭火力発電計画は、今委員からも御指摘がありましたように、フェーズ1とフェーズ2があるわけでございます。フェーズ1については、二〇一四年の五月から円借款を供与してこの建設工事が進められており、同事業は二〇二四年をめどに完工ということでございます。フェーズ2については、今政府参考人からも答弁をさせていただきましたが、日本政府として支援するか否かについては現時点で未定でございます。この昨今の石炭火力発電をめぐる国際的な議論、今委員からも御指摘があったようないろんな潮流等踏まえつつ、バングラデシュ側と緊密に議論をしてまいりたいというふうに思います。
 中長期的にやはりバングラデシュに対する再生エネルギー分野での支援、これ重要だというふうに認識をしておりまして、この具体的な支援内容については、現在日本の支援により実施中の総合エネルギー・電力マスタープラン策定プロジェクト、この結果を踏まえつつバングラデシュ側と協議をしていきたいと考えております。

○井上哲士君 是非再エネ支援へと大きく転換を改めて求めたいと思うんですが、もう一点、インドネシアのインドラマユ石炭火力発電という点もお聞きいたします。
 これも度々国会でも取り上げてまいりましたけれども、既にエンジニアリング・サービス借款行われてきました。一方で、様々な問題が起きております。この事業の本借款についてはインドネシア政府からの正式要請はまだないとお聞きしておりますが、当初、この石炭火力は二〇一九年から運転開始予定だったのが延期を繰り返してきまして、昨年十月に発表された二〇二一年から二〇三〇年のインドネシア電力供給総合計画では運転開始が二〇三一年以降と、こう変わっております。
 当初のこの電力需要計画が大きく変わっているのではないかと思いますけれども、認識いかがでしょうか。

○政府参考人(植野篤志君) お答え申し上げます。
 今委員がおっしゃられたとおり、インドラマユの火力発電事業に関しては、昨年十月にインドネシア政府が発表した電力供給事業計画二〇二一から二〇三〇において、その二〇一九年からの運転開始予定を二〇三一年以降に延期というふうになっておりまして、この延期に関しては、系統内の需要による調整というふうに記載されていると承知しております。

○井上哲士君 昨年のグテレス国連事務総長の発言では、OECD加盟国は二〇三〇年まで、それ以外の国は二〇四〇年までに火力発電を段階的廃止するよう求めております。二〇三一年から運転開始になりますと、十年しかないわけですね。それ以上続けますとパリ協定と整合いたしません。そこでやめれば資金回収ができずに座礁資産になると。
 ですから、相手国のためにとっても、こういうものについてはもう支援しないということを日本からむしろ表明をして様々な再エネ支援などに転換するということこそが私は日本がやるべき国際協力だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) この昨年の、あっ、二〇二一年六月G7首脳会合におけるコミットメントに基づきまして、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への政府による新規の支援を既に終了いたしました。
 バングラデシュのマタバリ、またインドネシアのインドラマユでは、いずれもこのコミットの前からの支援を検討しているわけでございますので、政府が直接支援を行わないとしておる新規の案件には含まれないわけでございますが、同時に、これまで申し上げてきたとおり、いずれの計画についても、今後の対応については石炭火力をめぐる国際的な議論の潮流、これを踏まえつつ、それぞれバングラデシュ政府とインドネシア政府と協議の上で検討することとしておるところでございます。
 再生可能エネルギーの導入を始めとする脱炭素化社会に向けた支援について、エネルギーをめぐる状況、その国その国で千差万別でございますので、各国の固有の事情をしっかりと踏まえて着実に推進してまいりたいと考えております。

○井上哲士君 気候危機という国際的課題に対する責任、それからパリ協定に違反して座礁資産になって結果的に相手国の負担になるような事業を続けるのかどうかと、私、姿勢が問われていると思います。
 石炭火力輸出は中止をして再エネ支援などに転換するということを改めて強く求めまして、質問終わります。

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