国会質問議事録

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外交防衛委員会(敵基地攻撃能力の保有検討/国家安保戦略等の改定に向けた有識者懇談会)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 先ほど、宇都理事より、我が党の志位委員長の自衛隊問題の発言について多少言及がありました。これは世界に誇る憲法九条を将来にわたって守り生かすことと国民の生命と主権を守る政治の責任を果たすということを統一的に追求をするという私どもの方針であります。
 何か、今までと言っていることが違うと述べられました元防衛大臣もいらっしゃいますが、これはもう二〇〇〇年の二十二回党大会で決め、二〇〇四年の綱領改定にも反映をさせておりますので、我が党のホームページでいつでも御覧いただけますので、是非御覧いただきたいと思います。
 その上で、防衛省設置法の改正案の審議でありますが、防衛省・自衛隊の在り方の根幹に関わる敵基地攻撃能力の保有に関する議論について質問をいたします。
 政府は、この間、国家安全保障戦略などに敵基地攻撃能力の保有を盛り込むことをめぐって有識者ヒアリングを行ってきました。三月八日までに七回開かれて十五人が招かれております。このヒアリングでは、敵基地攻撃能力の保有について、保有が大勢、明確な反対なしと報道されております。それもそのはずで、メンバーを見ますと、過去の防衛省・自衛隊の幹部や安倍政権の下で憲法違反の安保法制を強行することに関与した皆さんがずらり並んでいるわけですね。
 官房副長官、お聞きしますけれども、このヒアリング、結局賛成ありきの意見聴取になっているんでないでしょうか。

○内閣官房副長官(磯崎仁彦君) お答えをさせていただきたいと思います。
 政府としましては、新たな国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の策定に向けまして、政府外の有識者から幅広い知見を伺う観点から、政府事務レベル関係者が毎回異なる有識者と意見交換を実施しているところでございます。
 これまで、現在及び将来における我が国の置かれた戦略的環境、安全保障分野より注目すべき新しい技術、宇宙、サイバー、こういった様々なテーマにつきまして、知見を有する方々とこれまで八回、二十八名から意見交換、二十八名と意見交換を行っているところでございます。
 そのため、委員言われるように、過去の防衛省・自衛隊の幹部からも意見を伺っているわけでございますが、それに限られず、学術界、研究所、独立行政法人等の様々な所属の方と意見交換を行い、今後の我が国の安全保障の在り方について忌憚のない率直な議論を重ねてきているものであり、賛成ありきとの御指摘は当たらないというふうに考えております。

○井上哲士君 ヒアリングが一回増えているようであります。
 今いろいろ言われましたけど、少なくともこの敵基地攻撃能力の問題について言えば、およそ幅広い方から意見を伺っているということで私はないと思うんですね。しかも議事録はありません。議事概要も非公開だと、先日も問題になりました。
 その際に、このヒアリングが一区切り付いた段階で限定的な形で、このヒアリングの重立った内容をまとめた文書を公表することを検討すると、こういう旨の答弁はありました。しかし、それでは結局、敵基地攻撃能力保有賛成ありきというヒアリングになっていても、国会も国民もそれを知って是正を求めることも困難だと思うんですね。やはりきちっと毎回の議事内容を明らかにすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○内閣官房副長官(磯崎仁彦君) 今申し上げましたように、様々なテーマについて知見を有する方々と意見交換を行っているわけでございますが、この意見交換に際しましては、現下の安全保障環境や多岐にわたる新たな課題の出現等を踏まえまして、有識者の方には、事前に政府側から有識者の発言を開示することはしないので忌憚なく意見を開陳してほしい旨を伝達をいたしております。
 このため、有識者との信頼関係維持等の観点から、現時点において、政府側から意見交換の内容を公表することは差し控えさせていただきたいというふうに思っております。ただ、先ほど委員からお話ございましたように、継続的に実施しているヒアリングが一区切り付いた時点で、発言者の同意が得られることを前提に、発言者と発言内容をリンクさせない形でヒアリングの重立った内容をまとめた文書を公表することを政府内では検討しているところでございます。

○井上哲士君 政府の理屈でありまして、国民の側から見れば、これでは到底納得がいかない中身だと思うんですよ。しかも、これ、まとめてからが遅いんですね。有識者の顔ぶれを見ますと、この重要な論点である憲法との関係が果たしてきちんと議論をされるのかという問題です。
 あの安保法制の際は、集団的自衛権は憲法で禁じられているという過去の政府の憲法解釈が閣議決定で覆されました。これに対して圧倒的多数の憲法学者や歴代内閣法制局長官から、集団的自衛権は、行使は憲法違反だという批判の声が上がりましたけれども、政府は強行したわけであります。今回の敵基地攻撃能力の保有も、憲法に関わる過去の政府の答弁が厳しく問われるわけですね。
 岸大臣は、専守防衛は憲法の精神にのっとった我が国防衛の基本方針であり、今後ともこれを堅持すると答弁をしております。にもかかわらず、この論点整理だと言いながら、これまで憲法遵守の立場の憲法学者はヒアリングの対象にすらなっていないと思うんですね。これで、大臣が答弁で述べたような専守防衛を堅持するということが果たして担保されるんでしょうか。

○防衛大臣(岸信夫君) 今行われている有識者との意見交換につきましては、官房副長官から答弁があったとおりだと思います。
 いずれにいたしましても、政府としては、新たな国家安全保障戦略の策定に当たっては、国民の命と暮らしを守るため、いわゆる敵基地攻撃能力も含めて、あらゆる選択肢を排除せず、検討しているところであります。
 これまでも、この検討は憲法及び国際法の範囲内で専守防衛の考え方を維持しつつ行われるものと述べてきておるとおり、政府としては、今後とも専守防衛を堅持するとの考えに変更はありません。

○井上哲士君 いや、その大臣の答弁が担保されるような有識者の顔ぶれになっていないんじゃないかということを私は質問しているんですね。
 一方で、じゃ、どういう人が招かれているのかと。第三回目のヒアリングには、折木良一元自衛隊統合幕僚長と、黒江哲郎元防衛事務次官がそろって招かれております。このお二人は昨年十一月に、国家安全保障戦略研究会という会の座長、副座長として、陸海空自衛隊の元将官らとともに、新たな国家安全保障戦略に求められるものと題する提言をまとめております。その中で、敵基地攻撃能力を反撃能力という言葉に言い換えた上で、専守防衛の見直しで反撃能力を持つべしと提言をしています。これについて、この座長の折木氏は、一月十二日の日経で、反撃能力とは相手の基地に限らず、指揮統制施設や通信施設への攻撃も含むと、こう指摘をされております。
 先ほども述べられました、憲法にのっとった専守防衛は堅持するという大臣の答弁と、専守防衛そのものを見直して基地に限らず攻撃するということを提言しているような人物を有識者として招いてヒアリングをするということは、私は相入れないと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸信夫君) 意見交換会の人選については先ほど答弁のあったとおりでございますけれども、幅広く学識経験者、独立法人等の方々など、有識者と意見交換を行っているところでございますので、御指摘は当たらないと考えております。
 いずれにいたしましても、専守防衛の考え方に基づいて議論を続けてまいります。

○井上哲士君 憲法学者とか法律の専門家には意見聞かないけれども、専守防衛さえ見直すということを主張する人には意見を聞くと。これ、幅広いどころか非常に狭いヒアリングになっていると思うんですね。
 安倍元総理が昨年十一月の講演で、抑止力として相手をせん滅するような打撃力を持たねば日米同盟が危機に直面するというふうに述べられました。これについて国会で問われた岸田総理は、敵基地攻撃能力の保有の議論について、相手国をせん滅できる軍事力を持つことは全く考えているものではないと、こう答弁をされました。
 そこで聞きますけれども、安倍元総理は、先日、山口県での講演で、この敵基地攻撃能力に関して、基地に限定をする必要はないわけですと、向こうの中枢を攻撃するということも含むべきだと述べました。折木氏らの提言と軌を一にするものでありますが、このような相手の中枢を攻撃するということも今回の検討の対象に含まれているということになるのでしょうか。

○国務大臣(岸信夫君) 政府として、急速なスピードで変化をしていますこのミサイルなどの技術に対して、国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのか、あらゆる選択肢を排除せずに現実的に検討しているところでございます。
 このため、具体的な内容等をお答えできる段階にはございませんけれども、今後新たな国家安保戦略等を策定していく過程の中で、憲法と国際法の範囲内で検討を進めてまいります。

○井上哲士君 安倍総理が述べたような相手をせん滅するような打撃力を持つべきことについては、総理は明確に否定したんですね。今、中枢を攻撃するということについては否定をされませんでした。これも対象になるということなのか。
 実際、安倍発言を受けて、昨日の自民党の安全保障調査会の会合で、相手国の指揮統制機能を含む敵基地攻撃能力の保有案が示されたと、これまではミサイル早期迎撃に主眼を置いた議論だったが、日本への攻撃を指揮する中枢などを含む考えを追加したと今朝大きく報道をされております。これは、まさに政府が言う専守防衛をも超えるような、こういう中枢への攻撃、本格的な打撃力、これも検討の対象に排除されないというのが今の大臣の答弁でよろしいですか。

○国務大臣(岸信夫君) 発言における中枢という意味は、基地という、誘導弾等の基地という意味だと解釈されます。
 その上で、御質問の点について一般論で申し上げますと、昭和三十一年の政府答弁においては、誘導弾等の基地とは、必要最小限度の措置の例示の中で述べられているものであります。法理上は、その対象を攻撃することが誘導弾などによる攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置か否かという観点から個別具体的に判断されるものであります。

○井上哲士君 いやいや、そういう従来の言わばピンポイントの狭いことだけではなくて、中枢というのは、先ほどの折木氏でいえば、指揮統制施設や通信施設への攻撃も含むと、反撃能力ですね、そして安倍総理自身も、基地に限定する必要はないと幅広く言っているんですよ。本格的な打撃力ではないかということなんですね。
 しかも、今、この危機に乗じて防衛力を強めている声が上がっておりますけど、この間、防衛予算では、スタンドオフ防衛能力の強化が位置付けられてきました。F35Aに搭載可能なスタンドオフミサイルの取得が行われました。
 先日、防衛省は、自民党安全保障調査会の主催した非公開の会合で、敵基地攻撃能力への転用も可能なSSM改良型の早期実用化に向けた予算確保などを求め、現在は九百キロ程度の射程を更に延ばすことも想定していると、こういうふうに報道されましたけれども、これ事実でしょうか。そして、こういうスタンドオフミサイル、この所有というのは、敵基地攻撃能力の保有の先取りということではないのでしょうか。

○国務大臣(岸信夫君) 現行の防衛大綱、中期防においては、各国の早期警戒管制能力や各種ミサイルの性能が著しく向上していく中で、自衛隊員の安全を確保しつつ、相手の脅威圏の外から対処を行う必要があります。従来より射程の長いスタンドオフ防衛能力の強化をすることとされておるところでございます。
 このため、いわゆる一二式の地対艦誘導弾の能力向上型については、令和三年度から開発に着手しており、現時点において、地発型については令和七年度まで、艦発型については令和八年度まで、そして空発型については令和十年度までに開発を実施する計画を進めているところでございます。
 自民党の安全保障調査会の勉強会については、党による非公開を前提とした会合と承知をしており、やり取りの詳細についてはお答えは差し控えたいと思います。
 いずれにせよ、次年度以降の予算要求等の方向性について、現時点で何ら決まっているものではございません。
 一二式地対艦誘導弾能力向上型を含む各種のスタンドオフミサイルは、あくまで自衛隊の安全を確保しつつ相手の脅威圏外から対処を行うために強化しているものであって、いわゆる敵基地攻撃能力、敵基地攻撃を目的としたものではありません。

○井上哲士君 長々と答えられましたけど、安倍元総理は先ほど紹介した十一月の講演で、安倍内閣においてスタンドオフミサイルという形で具体的な能力については保有しましたと、この能力を打撃力、反撃能力としても行使していくことが求められていると、こうはっきり言っているんですね。敵基地攻撃能力には違うと淡々と答弁されましたけど、実際はこうだということを、本音述べられているんですよ。
 こういう言葉は注視をし、現在の検討もやめるべきだということを申し上げまして、質問を終わります。

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