国会質問議事録

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外交防衛委員会(ミャンマー国軍からの留学生受入れ/「国家安全保障戦略」への自民党提言)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 まず、ミャンマーの国軍からの留学生の受入れについてお聞きします。
 三月十六日に当委員会で質問いたしました。文民統制を踏みにじって軍事クーデターを行った国軍からの留学生の受入れは、ミャンマーの国民からも日本の国民からも国際社会からも信頼を失うと指摘をして、中止を求めました。ところが、驚くことに、一昨日、岸大臣は今年度も受入れを明らかにいたしました。どういう受入れをするのか、このことによって日本がミャンマー軍政を容認していると取られる、そのことについてはどう考えますか。
○国務大臣(岸信夫君) 防衛省・自衛隊では、自衛隊法の規定に基づいて、平成二十七年からミャンマー留学生を防衛大学校あるいは各自衛隊の教育機関等に受入れをしているところです。令和四年度においては、防衛大学校の本科で二名、研究科で一名、航空自衛隊幹部候補生学校で一名のミャンマー人留学生を受け入れることとしております。
 ミャンマー情勢について申し上げますと、政府としては、国際社会から度重なる呼びかけにもかかわらず、暴力によって多くの死者が出ている状況を強く非難しています。その上で、ミャンマーは我が国にとっても戦略的に重要な地域である東南アジアに位置しており、ミャンマー人留学生の受入れは、留学生が厳格な文民統制の下で運用される自衛隊の中に身を置くことにより、実力組織の在り方について様々な視点から考えるといった過程を経て、将来的に民主主義や文民統制について正しい認識を持った人材として成長することという効果があると考えています。こうした意義を踏まえて、令和四年度においてもミャンマー人留学生を受け入れることとしておるところでございます。
 留学生の受入れを含む今後のミャンマーとの防衛交流については、引き続きその意義や今後の状況の推移等を踏まえて適切に判断してまいります。
○井上哲士君 将来的効果とおっしゃいましたけど、今、軍政がやられているんですよ。今、市民が殺されているんですよ。それに対してどうなのかということだと思うんですね。
 昨日、超党派のミャンマーの民主化を支援する議員連盟とミャンマーの民主派の国民統一政府、NUGとの第五回のオンライン会議を行いました。閣僚から、国軍による市民への弾圧が続く状況や、市民の暮らしの状況などをお聞きしました。その中で、日本政府が国軍寄りだと厳しい批判の声も出されましたよ。その上、今回の新たな受入れなんですね。
 私、クーデター後の去年の受入れも、昨年度の受入れも問題だと思いますけど、今回は昨年六月に参議院として決議をした後なんですよ。全会一致で国軍による残虐行為や、そして不当な拘束を非難をして、早期の民政回復を求める決議を全会一致で上げたんですよ。その後にまたこういう受入れをするというのは全くこれにも反するものだと厳しく批判して、受入れの中止を強く求めます。
 その上で、自民党が昨日、国家安全保障戦略など三文書改定に向けた提言を政府に提出いたしました。極めて重大な中身でありますが、その主な内容の一つが、敵基地攻撃能力の名称を反撃能力とした上で保有して、その対象をミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含むとしたことであります。
 防衛省に、防衛大臣、一般論で聞きますけれども、これまで防衛省としては、この軍事上の指揮統制機能というのはどういうものが当てはまると考えてきたんでしょうか。
○国務大臣(岸信夫君) 防衛省として、一般的に指揮統制機能とは、軍事上のオペレーション等において、上位部隊が隷下部隊に対し指揮命令の伝達や情報共有を行うための機能であると考えております。
○井上哲士君 昨日の衆議院の外務委員会で、我が党穀田議員の質問に鬼木防衛副大臣は、日本の防衛省の本省に設置された中央指揮所は自衛隊の指揮通信に必要不可欠と認めました。そして、中央指揮システムとは防衛大臣が指揮統制を行うシステムであり、官邸、関係省庁、在日米軍と連結しているとの指摘に、そのとおりだとも答えられました。
 となりますと、先ほど、今の大臣の答弁と重ねますと、指揮統制機能ということになりますと、相手国の軍の司令部や政治中枢に対する攻撃も排除をされないということになるんじゃないですか。
○国務大臣(岸信夫君) 政府として、急速なスピードで変化、進化しているミサイルなどの技術に対しても、国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのか、こうした観点から、いわゆる敵基地攻撃能力も含めて、いわゆるあらゆる選択肢を排除せずに現実的に検討しているところでございます。
 検討中でございますので、内容等のお答えをできる段階にはございませんけれども、国家安保戦略を策定していく過程において、憲法、国際法の範囲内で検討を進めてまいります。
○井上哲士君 もう一回確認しますけれども、検討と言われましたけれども、指揮統制機能も対象だということになれば、相手国の軍の司令部や政治中枢に対する攻撃も排除をされないということで確認できますね。
○国務大臣(岸信夫君) 政府としては、従来から、誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとることは、例えば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他の手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、憲法上、法理的には自衛の範囲内に含まれて、可能と考えておるところでございます。
 その上で、ここで言う誘導弾等の基地については、他国の領域における武力の行使が憲法上許容される場合の例示の中で言及されているものであり、法理上は、その対象を攻撃することが誘導弾等による攻撃を防ぐのに万やむを得ないか否かという観点から個別具体的な状況に即して判断されるものと考えております。
○井上哲士君 そうなりますと、時の政府が相手の国の軍の司令部や政治中枢に対する攻撃も万やむを得ない必要最小限度の措置と判断をすれば、攻撃ができるというのが今の答弁ですね。
○国務大臣(岸信夫君) 先ほども申し上げましたけれども、政府としては、現在、国家安全保障戦略等の策定をしていく過程において、憲法及び国際法の範囲内でしっかり検討してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 結局、否定されませんでした。結局、時の政府の判断次第でどんどんどんどん拡大をしていくと。
 誘導弾等の基地というのは、六十五年前に答弁をされて、言わば極めて限定的に言われたものですよ。それを時の政権の判断で幾らでも広げれる、そして、その場合に相手国の軍の司令部や政治中枢に対する攻撃も否定をされませんでした。まさに全面戦争の道ですよ。しかも、これ大軍拡そのものなんですね。
 政府は、これまで、平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところでないと、こういう明確に答弁をしてまいりました。岸大臣も三月二日の予算委員会で、この憲法解釈は変えていないと、これも明確に答弁をされました。
 しかし、日本が反撃能力、敵基地攻撃能力の保有を掲げて、相手国の指揮統制機能まで攻撃するような装備を持つということになれば、明らかに他国に攻撃的な脅威を与えることになるんじゃないですか。
○国務大臣(岸信夫君) 先ほどからも申しておるとおりでございますけれども、政府は、従来から、憲法九条の下で我が国が保有、保持することが禁じられている戦力の中に、自衛のための必要最小限度の実力を超えるものを指すと解されております。
 これに当たるか否かは、我が国が保持する全体の実力についての問題である一方で、個々の兵器のうちでも、性能上専ら相手国の国土のせん滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器を保有することは、これにより直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることになるので、いかなる場合においても許されないと考えてきているところでありまして、この一貫した見解については変更する考えはございません。
○井上哲士君 いつもそっちの答弁使われるんですけど、今私が読み上げた、平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは憲法の趣旨とするところでないと、この答弁もずっと維持されてきているんです。三月二日に大臣も認められました。
 日本が反撃能力、敵基地能力の保有を掲げて相手国の指揮統制機能まで攻撃すると、そういう装備、兵器を持つことは相手国に脅威を与えるんじゃないですかと、この答弁に反しないですかということを聞いています。
○国務大臣(岸信夫君) 個々の兵器についても、攻撃的な兵器を保有することは直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えるという場合においては、いかなる場合においても許されるものではないということは、これまでも一貫した考えであります。
 自民党の提言の内容の一つ一つについて政府として申し上げる立場にはございませんけれども、万やむを得ない必要最小限度の措置か否かという観点で個別具体的に判断をされるものでございます。
 先ほど委員からございましたけれども、歯止めがないという御指摘は、この万やむを得ない必要最小限度の措置と申し上げているとおり、御指摘には当たらないものであります。
○井上哲士君 いや、その万やむを得ないをですよね、結局そのときの政府の判断ですることになれば、歯止めがないわけですよ。
 この自民党の提言でも、そして政府も、専守防衛は維持をすると、こう言っています。だけど、実際には、防衛白書では、専守防衛とは、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限ると言ってきましたけどね、実際には、その判断が時の政権になってしまえば、まさに私は歯止めがなくなっていくと。敵基地攻撃能力を反撃能力に変えると、名前だけ変えても、実際には、行使の態様も保持しようとする防衛力もこれまでの政府の憲法解釈を大きく踏み越えたものになっているんじゃありませんか。いかがですか。
○政府参考人(増田和夫君) お答え申し上げます。
 いわゆる敵基地攻撃と憲法の関係につきましては、政府は従来から、誘導弾等による攻撃を行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限の措置をとること、例えば誘導弾等による攻撃を防御するのにほかに手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であると解してきております。
 このような見解と、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう専守防衛の考え方は整合するものと考えております。
 いずれにしましても、専守防衛は憲法の精神にのっとった我が国防衛の基本方針でございまして、今後ともこれを堅持してまいります。
○委員長(馬場成志君) おまとめください。
○井上哲士君 まとめますが、相手国の指揮統制機能まで対象とし、それをするための装備を持つということは全く反すると思います。今後も追及してまいります。
 以上、終わります。

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