○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
国際的なマネロン対策として本法案がFATF勧告の指摘を踏まえて暗号資産などを没収可能な財産の対象とする措置や資産凍結の強化などを措置していることは、現状を踏まえたものであり、必要な措置であると思います。
一方、本法案が、FATF勧告から指摘されたとしてマネロン罪の法定刑を大幅に引き上げた上で共謀罪の対象を拡大をするということは、大きな問題があると考えます。
まず、確認しますけれども、一般的にマネロン罪と言われておりますけれども、法律上の定義はどういうことなんでしょうか。
○政府参考人(保坂和人君) いわゆるマネーロンダリング罪という用語、言葉が我が国の法律において用いられているわけではないと承知しておりますが、FATFの関係でいいますと、マネーロンダリングというのは、麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約及び国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約にのっとり犯罪化されなければならないとされておりまして、今の例でいいますと、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約につきましては、その犯罪収益の洗浄として、財産が犯罪収益であることを認識しながら、犯罪収益である財産の真の性質、出所、出どころですね、所在、処分、移動若しくは所有権又は当該財産に係る権利を隠匿し又は偽装することなどと条約においては規定されております。
我が国におきましては、こうした国際的なマネーロンダリングの犯罪化の要請、条約の要請に対応して、その麻薬特例法や組織的犯罪処罰法において条約も踏まえて規定していると、構成要件を規定していると、こういうことでございます。
○井上哲士君 国内的規定がはっきりしない中使われているなと、言葉が、思うんですね。
法定刑の引上げを議論した法制審議会では、このマネロン罪の有罪判決の内容を見ると、三年以下の懲役刑が六五%、五年の懲役は四%にすぎないことなど、現状における処罰状況からはマネロン罪の重罰化の立法事実は認められないという指摘がなされております。
大臣はこういう指摘をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(谷公一君) マネーロンダリング罪の法定刑の引上げにつきましては、法制審議会の諮問の際の総会において、一名の委員から、現状における処罰状況からマネーロンダリング罪の重罰化の立法事実は認められないとの御意見があったものと承知しております。
その後、法制審議会から、その下の部会においてこうした御意見を紹介した上で審議が行われ、FATFの勧告や最近のマネーロンダリングの状況を踏まえると法定刑の引上げを行う必要があるとの御意見が多くの委員から述べられ、採決の結果、賛成七名、反対一名の賛成多数により法定刑の引上げを行うべきであるとの決定がなされたものと承知しております。
その後の法制審議会、また部会から法制審議会の総会に戻ったわけでございますが、一名の委員が派遣した、棄権したものの、採決に加わった委員十六名全員の賛成により、本法律案と同じく法定刑の引上げを行うことが相当である旨の答申が決定されたものと承知しております。
今回の法定刑の引上げは法制審議会の答申のとおりの内容であり、審議会、法制審議会の審議結果を踏まえて立案された適切な内容のものであると考えているところでございます。
○井上哲士君 あの法制審の中では、このFATFからの勧告を契機として、より一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して強力に抑止、防止することが必要だと、こういうことが法務省から言われております。
確かにマネロンの防止、抑止の強化は必要です。しかし、現実に指摘されているように、実際の有罪判決の内容を見れば、この重罰化の立法事実が認めないという下で厳罰化を進めるのが適切なのかと思うんですね。
刑罰というのは、やはり、一方で人権侵害を機能する、あっ、行うという機能に変じる可能性があることを考えれば、本来、私は抑制的であるべきだと思います。その点、大臣、お考えいかがでしょうか。
○政府参考人(保坂和人君) 委員の御指摘は、実際の処罰における量刑状況が法定刑の枠外といいますか、法定刑の例えば上に張り付いているような場合にこそ改正をすべきではないかと、こういう御趣旨だと理解しましたが、必ずしも、そういうような場合もございますが、必ずしもそうではなくて、その犯罪の多発化、悪質化に適切に対処するために立法を行うというケースもございます。
今般のマネーロンダリングの法定刑の引上げにつきましては、FATFの勧告における指摘、あるいは諸外国の法定刑の状況、我が国の組織犯罪の実態、そういった動向を踏まえまして、より一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示すための必要性、合理性があるものと考えておるところでございます。
○井上哲士君 私、今の繰り返しになりますけれども、全体で抑止、防止は必要ですけれども、厳罰化、こういうことについては抑制的であるべきだと考えております。
その上で、お聞きしますけれども、今回、法定刑が引き上げられる犯罪の対象は組織的犯罪集団が関与したものに限定をされているんでしょうか。
○政府参考人(保坂和人君) お尋ねの前提が、マネーロンダリング罪、法定刑の引上げをお願いしておるわけですが、その構成要件として御指摘のような限定が付されているかという趣旨であれば、そういった要件というのは付されておりません。
他方で、御指摘の、お尋ねの趣旨というのが、法定刑を引き上げることにしているマネーロンダリング罪について、その組織的な犯罪集団が関与することが現実的に想定されますかということであれば、例えばマネーロンダリング罪につきましては、暴力団組織が犯罪、様々な犯罪収益を獲得してそれを隠匿したり、上納させて収受したりするという意味では、そういう関与が現実的に想定される罪ではあろうというふうに考えております。
○井上哲士君 関与は想定はされるけれども限定はされていないという答弁でありました。
このことも法制審や同法制審の刑事法部会でも議論になりました。マネーロンダリング罪の規定がいずれも処罰範囲が広いために、当罰性のない、あるいは当罰性が低い行為が処罰対象とされる危険があるという懸念が表明をされました。そして、量刑の相当性を確保するために組織的犯罪が前提となっていない場合や、単発的なセルフロンダリングの場合などの量刑の基準を明確にするべきではないかという指摘がなされましたけれども、この指摘については、法務省としてはどう対応したんでしょうか。
○政府参考人(保坂和人君) マネーロンダリング罪の法定刑の引上げにつきまして、今御指摘をいただいたように、法制審で答申をいただいた際の総会におきまして、一名の委員の方からマネーロンダリング罪の処罰根拠が明確になりにくい、あるいは処罰範囲が広範囲になるとの懸念が指摘されているですとか、あるいは量刑の基準を明確にすべきであるという御意見が述べられたことはそのとおりでございます。
その上で、この御意見について法務省としてどのように考えるかということを申し上げますと、まず、マネーロンダリング罪というのは、犯罪組織の維持拡大、将来の犯罪への再投資、合法的な経済活動への悪影響などを生じ得るとともに、国際組織犯罪防止条約の定める犯罪収益の洗浄化の犯罪化という義務も実施することを処罰根拠とするものでございまして、その構成要件ですとか処罰範囲というのは明確に限定されたものであるというふうに考えております。
それから、量刑の基準を明確にするという、そういう御指摘でございますが、個別具体的な事案でどのような量刑がなされるかというのは、これは裁判所において、犯罪事実や情状を踏まえて判断されるものでございますので、法務当局として何かの基準を定める、そういう事柄ではないんだろうというふうに考えております。
法務当局といたしましては、今回の法律案が成立いたしまして法定刑が引き上げられることになりますれば、マネーロンダリング罪に対して、より一層厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して、強力に抑止、防止することが必要であるという、そういう立法意思、立法者の意思が示されるということになりますので、それを前提として、引き上げられた法定刑の範囲内で個別の事案における量刑判断がなされるということを考えておりまして、そのような法改正の趣旨も併せて今後周知してまいりたいというふうに考えております。
○井上哲士君 そういうのは、やっぱり現場の実務家の方が、当罰性がないあるいは低い行為が処罰対象とされる危険がある、このような懸念を持っていらっしゃるということは重く受け止めるべきだということを指摘をしたいと思います。
その上で、次に、共謀罪、テロ等準備罪の対象拡大についてお聞きいたします。
我が国の刑法は、犯罪の既遂を処罰することを原則としております。重大犯罪については未遂罪として、さらに、未遂にも至らないけれども、他人の権利、財産などへの侵害する結果の発生など危険性がある予備行為を例外的に処罰をしております。
ところが、共謀罪はその更に前の段階で、計画、共謀、話合いですね、合意、下見、こういう準備行為などの結果など、この結果発生の危険性がいまだに具現化しないこの曖昧な段階で処罰をするもので、処罰の範囲を飛躍的に拡大をさせて、我が国の法体系と相入れないものだとして大きな反対運動が巻き起こりました。
当時、参議院では中間報告という禁じ手まで使って強行したわけでありますが、成立後においても、市民や人権団体からは、引き続き廃止を求める声が出続けております。今日においても、その問題性が指摘が続いています。
まず聞きますけれども、今回の法定刑の引上げで新たにこのテロ等準備罪、共謀罪の対象となる犯罪は何でしょうか。
○政府参考人(保坂和人君) 前提といたしまして、お尋ねのテロ等準備罪の対象となる罪といいますのは、国際組織犯罪防止条約が定める犯罪化義務を実施するためでございますが、法定刑として死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪であって、かつ組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるもの、これを対象にすることが義務付けられているところでございます。
今回の法律案におきましては、先ほど言及もございました組織的犯罪処罰法の犯罪収益等収受罪や麻薬特例法の薬物犯罪等収受罪の法定刑の懲役の法定刑の上限を三年から七年に引き上げることに伴いまして、組織的犯罪処罰法の別表第四というのを改正して、こういったこれらの罪をテロ等準備罪の対象に加えることといたしております。
今申し上げた罪などは、法定刑として長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪でございますし、かつ、その組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される犯罪でございますので、法定刑の引上げに伴ってこれをテロ等準備罪の対象犯罪にするということは、これは締結済みの国際組織犯罪防止条約の犯罪化義務を実施する上で不可欠であるというふうに考えておるところでございます。
○井上哲士君 この共謀罪の適用拡大について、このFATF勧告では言及をしておりません。そして、法制審議会でも諮問されておらず、一切議論をされておりません。そのことを確認したい。そして、にもかかわらず法案に盛り込まれているということは、手続として問題じゃないですか。
○政府参考人(保坂和人君) 今回のFATFの勧告におきまして、テロ等準備罪の対象犯罪の拡大について言及がされているところではないのは御指摘のとおりでございますが、先ほど申し上げました我が国が締結済みの国際組織犯罪防止条約における犯罪化義務を実施する上で、テロ等準備罪の対象犯罪にするということが条約上の義務として不可欠であるというふうに考えております。
それから、法制審議会の諮問との関係で申し上げますと、元々テロ等準備罪というのは、平成十四年に法制審議会に諮問をして十五年に答申をいただいた組織的な犯罪の共謀の罪、これを創設する答申を踏まえて立案されたものでございますが、その平成十四年の諮問の際には、対象とする罪について議論がされまして、その結果、答申の内容といいますのは、対象とする犯罪については個別に列挙していくのではなくて、法定刑として死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪の全てを対象とすると、こういう答申でございました。
したがいまして、この答申のとおりの法整備を仮に行うといたしましたら、新設又は改正によりまして法定刑がこのカテゴリー、つまり長期四年以上の懲役、禁錮の罪になったものについては特段の手当てをしないといいますか、言わば自動的に対象犯罪になるということが前提でございますので、そういった答申がある以上は、法制審議会との関係では、その新設や改正によって法定刑が今申し上げたカテゴリーに入った罰則について対象に加えるかどうかということを諮問する必要はないと考えるところでございます。
今般の犯罪、あっ、今般の犯罪収益等に、あっ、収受罪につきまして、法定刑が引き上げられて長期四年以上の懲役、禁錮となることについてでございますが、これもテロ等準備罪の対象とすることを特に法制審議会にその法定刑の引上げの際に諮問したわけではございませんが、これは、先ほど申し上げた既にいただいている法制審議会の答申の内容に即したものであるというふうに考えております。
○井上哲士君 政府は、共謀罪の創設はTOC条約の締結に不可欠だと当時説明しました。しかし、法案審議の中で、TOC条約は各国国内法の原則に従って法整備をすればよいとしておって、日本は予備罪で対応できるということも明らかにされました。
今、平成十五年の答申を言われたわけですが、法制審のこれ答申は、おっしゃったように長期四年以上の犯罪六百七十六全てを共謀罪の対象としたわけですね。ところが、反対の声が大きく広がって、与党内からも異論が出て、政府は法案提出前に犯罪、対象犯罪を二百七十七に絞り込んだんですよ。ですから、答申どおりの法整備を行っておりません。答申どおりだと国民にも国会にも理解を得られないということを政府自身が認めたわけですね。そうした経過を見ても、平成十五年答申にあるから法制審への諮問の必要はないと、もう議論をする必要がないというのは、私は通用はしないと思います。
私たちは共謀罪廃止する立場でありますけれども、こういう対象拡大が何ら議論なしに行われるということは手続としても大問題だということは指摘をしておきたいと思います。
当時、対象二百七十七にした下で、このいわゆる共謀罪の対象になる行為に関して別表三、別表四と区別をしました。どういう基準で二百七十七に絞って、それをどういう考えでこの別表で分類をしたんでしょうか。
○政府参考人(保坂和人君) 別表第三と別表第四というのがございますが、まず別表第三の方は、国際組織犯罪防止条約が、二条におきまして組織的な犯罪集団というのを定義しておりますが、その集団が目的とする犯罪、これは重大な犯罪及び条約に従って定められる犯罪というふうに規定されております。
別表第四の方は、条約の第五条が、組織的な犯罪集団への参加の犯罪化という条がございますが、その対象とすべき犯罪、これは重大な犯罪と定めておりますが、それに対応して別表第三、第四という形で上げているものでございます。
具体的にいいますと、別表第三は、この組織犯罪処罰法における組織的犯罪集団の結合の目的となる罪を上げたものでございまして、具体的には死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役、禁錮に当たる罪及び別表第一に掲げる罪、これは国際組織犯罪防止条約が、その条約に従って定められる犯罪というのをその組織的な犯罪集団の定義としておりますので、それを、それのうち、組織的犯罪集団の結合の目的となることが現実的に想定されるものを掲げているところでございます。
それから、別表の第四の方につきましては、今申し上げた条約が、締約国に対して重大な犯罪、具体的には長期四年以上の自由刑又はこれより重い罪が法定刑である犯罪、これをその参加罪、あっ、組織的犯罪集団への参加の罪の対象犯罪とすることを求めつつ、留保、留保というか、求めつつも、国内法上求められるときには組織的な犯罪集団が関与するものという付加要件を付けることを認めていることを踏まえまして、今申し上げた法定刑が定められているもののうち、組織的犯罪集団が実行を計画することが現実的に想定される罪、これを別表の第四に挙げているということでございます。
○井上哲士君 当時、政府は絞り込んだと言ったわけでありますけれども、実態は、例えば保安林でのキノコ狩り等を要件とする森林法違反など、国際的なテロ対策と言えないようなものも含まれておりますし、何が犯罪となって処罰対象になるか、これ曖昧なまま、計画や準備行為の捜査だとして人々の話合いや内心に踏み込んで捜査し、処罰するということで、その危険性が指摘をされました。
このことは国際的にも指摘されているんですね。お手元に、国連自由権規約委員会が十一月の三日に日本の第七回定期報告に関する総括所見を公表したものを配っております【配付資料】。その中で、共謀罪が、テロリズムや組織的犯罪とは一見無関係な犯罪を含む二百七十七の行為を犯罪の成立する範囲として広く指定していること、表現の自由、平和的集会の権利、結社の自由といった、規約に規定された基本的権利を不当に制限し、自由と安全に対する権利及び公正な裁判を受ける権利の侵害につながる可能性があるということに懸念を表明しております。
大臣は、この指摘をどう受け止めていらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(谷公一君) 今般、国連の自由、自由、自由、自由権、自由権規約委員会が我が国が提出した第七回政府報告に対する総括所見を公表し、その中で、テロ等準備罪に関し、井上委員御指摘のような点について懸念が示されたことは承知しております。
テロ等準備罪については、国連の国際組織犯罪防止条約で定められた犯罪化の義務を実施するために設けられた罰則であり、その処罰範囲は明確かつ限定的なものであり、また国民の基本的人権を不当に制約するものではないと承知しております。
いずれにいたしましても、この国連の総括所見につきましては、今後その内容を精査し、我が国の実情等を踏まえ、関係省庁が連携して適切に対処するものと承知しております。
○井上哲士君 今大臣が言われたようなことを法案審議の中で答弁をし、そしてこの国連の委員会でも政府は説明をしているんですよ。その上でこういう懸念が表明されているわけですね。そのことを重く受け止めるべきだと思うんです。
そして、その上で、この総括所見は、テロリズムや組織犯罪と無関係な行為の犯罪化を排除するために、共謀罪法を改正することを検討するべきであると、また、共謀罪法の適用が規約上の権利を不当に制限しないことを確保するために、適切な保障措置及び防護措置を採用すべきであると、ここまで言っているわけですね。
で、この勧告にもかかわらず、そもそも組織的犯罪集団が関与しない一般市民の行為、いわゆるセルフロンダリング、これも処罰の対象となり得るこの二つの犯罪を新たに共謀罪の対象に加えるというのは、私、本当、言語道断だと思うんですね。
少なくとも、こういう指摘が国連自由権規約からされているということを考えるならば、別表四から削除をすることをやめて、先ほど関係省庁で対応すると言いましたけれども、まずその議論をするべきじゃないですか。いかがですか。
○国務大臣(谷公一君) 自由、自由権規約委員会が公表した総括所見についての受け止め方、関係省庁で今後検討していくということは先ほど答弁したとおりであります。
一方、テロ等準備罪につきましては、国際組織犯罪防止条約を定める犯罪化の義務を実施するため、死刑又は無期若しくは長期四年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪であって、組織的犯罪集団が関与することが現実的に想定されるものが対象犯罪とされているものと承知しております。
今回の法案ではマネーロンダリング罪の法定刑の引上げを行うこととしており、犯罪収益等収受罪及び薬物犯罪収益等収受罪について、その懲役刑の上限を三年から七年に引き上げることに伴い、テロ等準備罪の対象犯罪を定める別表を改正することによって、対象犯罪を加えることとして、対象犯罪に加えることとしております。これらの罪は、例えば暴力団組織が様々な犯罪によって獲得した収益を上納させて収受する場合など、組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される犯罪であることから、法定刑の引上げに伴い、これらの罪をテロ等準備罪の対象犯罪とすることは、我が国が既に締結している国際犯罪組織防止条約の定める犯罪化義務に、義務を実施する上で不可欠であると承知しております。
○井上哲士君 政府はそういう説明を法案のときもしましたし、今もしているわけでありますけども、そういうことを説明しても、国際自由権規約委員会が幅広い市民の権利を侵害する可能性があると、こういう指摘をしているということをもっと強く、重く受け止めていただきたいと思います。改めて、共謀罪の対象拡大をやめるべきだと強く申し上げたいと思います。
最後に、旧姓の通称使用とマネーロンダリングの問題、午前中も議論になりましたけども、質問したいと思います。
この間、金融機関に対して旧姓での口座開設についてどのような要請を政府としては行ってきたんでしょうか。
○政府参考人(岡田恵子君) お答え申し上げます。
政府といたしましては、婚姻等によりまして戸籍上の氏が変わった場合でも希望する方が職場等で旧姓を通称として使い続けられるようにするため、女性活躍推進の取組の一環として旧姓の通称使用の拡大に取り組んでまいりました。
その取組の一つとして、金融機関の業界団体に対しまして旧姓名義によります銀行口座の開設等に関する要請を行いました。具体的には、内閣府男女共同参画局から全国銀行協会等の各業界団体に対し平成二十九年七月と令和元年十二月の二度要請文を発出し、口座開設の申込みを行う方等が希望した場合には、各金融機関の実情に応じて可能な限り円滑に旧姓による口座の開設等が行えるよう、傘下の金融機関への周知を要請いたしました。
○井上哲士君 二〇二一年の男女共同参画局の会議では、金融機関への働きかけの中で、二つの名前を悪用してマネーロンダリングなどのリスクがあるのではないかという声もございましたと、こういうふうに述べられております。
実際、これは単なるリスクじゃなかったわけですね。これも午前中議論になりました。改めて確認しますけども、二〇二一年十二月に公表された国家公安委員会の調査では現実に悪用されていると事例が紹介されていますけども、具体的にどういうことでしょうか。
○政府参考人(猪原誠司君) お答えいたします。
お尋ねの令和三年犯罪収益移転危険度調査書掲載の事案につきましては、暴力団員が登録を受けないで七回にわたり四名に対し合計三百二十五万円の貸付けを行い貸金業を営んでいたところ、その返済口座として妻が結婚前に旧姓で開設した口座を使用したものとして平成三十年に検挙した事案であります。
○井上哲士君 元々開設されていた口座でありますけども、新たに開設すること、それによってマネロンに使用される可能性を広げることになると思うんですね。
午前中にも紹介されましたけども、金融機関へのアンケートでは、この旧姓使用に対応していない一番の理由が、このマネーロンダリングやテロ資金供与防止対応に懸念が生じると、こういうことになっておるわけであります。
選択的夫婦別姓の世論が広がる一方で、それを進めるんではなくて通称使用の拡大で済ませようという動きが強められてきました。しかし、このマネロン問題など、通称使用の拡大には様々な限界や問題点指摘されていましたし、そもそも名前は個人の尊厳やアイデンティティー、人権に関わる問題ですから、これで解決しないんですね。ですから、別姓が選択できるようにしようと。これが選択的夫婦別姓であります。もちろん同姓を選択している人もいると。その他に様々な不自由が、通称使用を続けた上で不便がないように改善することあり得ると思うんですけども、一方で、やっぱりマネロン対策を言いながらその抜け穴のリスクを拡大をする、こういう金融機関での旧姓使用の拡大を進めるということ、私は矛盾していると思うんですね。
同時に、こうした問題を抱える通称使用の拡大だけではなくて、選択的夫婦別姓こそ私は進めるべきだと思いますけども、こうしたマネロンと通称使用の問題と、大臣の御見解を最後にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(谷公一君) 銀行等の金融機関におきましては、本人確認や取引目的等の確認が求められており、本人確認に当たっては公的証明書による確認が義務付けられております。また、旧姓を通称使用する場合であっても、旧姓が併記された本人確認書類を用いて、例えば運転免許証などでございますが、本人かどうかを確実に確認することを求めているところであります。このように、旧姓を通称使用したいという顧客のニーズがあることは確かでございますし、そのニーズに対応する一方で、マネロン対策上必要な本人確認を行った上で対応しているものと認識しております。
なお、選択的夫婦別姓制度についてお尋ねがございましたが、私はその所管大臣ではございませんので、お答えは差し控えさせていただきます。
○委員長(古賀友一郎君) 時間が参りました。おまとめください。
○井上哲士君 政府全体として是非この選択的夫婦別姓実現の声に応えるべきだということは最後強く申し上げまして、質問を終わります。
内閣委員会(FATF(金融活動作業部)勧告対応法案・共謀罪の対象を犯罪収益等収受罪等に拡大)
2022年11月24日(木)