国会質問議事録

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内閣委員会(読書バリアフリーの促進を)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 障害者権利条約に基づく日本政府の取組について、国連の権利委員会がこの夏初めて審査しました。総括所見では、障害関連の国内法及び政策が条約に含まれる障害の人権モデルと調和していないこと、法律や規制、実践にわたる障害の医学モデルの永続化に懸念を表明をしております。
 共生社会の担当大臣としてのこの総括所見への認識及び政府の対応をまず求めたいと思います。
○国務大臣(小倉將信君) お答えさせていただきます。
 先般公表されました総括所見の中では、情報アクセシビリティー、差別解消、バリアフリー、雇用促進及び文化芸術活動などの障害者の権利を促進する法律やガイドラインなどの幅広い施策の取組が肯定的な側面として挙げられました。他方で、残念ながら、意思決定、地域社会での自立した生活、インクルーシブ教育、精神障害者の入院などに関する事項に関し、障害者権利委員会としての見解及び勧告が示されたものと承知しております。
 委員御指摘の内容も含め、この総括所見は法的拘束力を有するものではありませんが、今般示された障害者権利委員会の勧告などについては、関係府省庁において内容を十分に検討していくものと考えております。
 また、次期障害者基本計画案について、これまで障害者政策委員会で幅広く議論を積み重ねていただき、御指摘の総括所見も踏まえながら議論も行われております。
 私ども内閣府といたしましては、引き続きこの次期障害者基本計画の策定に向けて必要な対応を行ってまいりたいと考えております。
○井上哲士君 障害者の権利に関して、視覚障害者等の読書バリアフリーの促進についてお聞きします。
 二〇一八年に、視覚障害者等による著作物の利用機会促進マラケシュ条約が締結をされ、関連して著作権法の改正が行われました。そして、翌一九年に、関係者の粘り強い運動と世論の中で、議員立法で読書バリアフリー法が制定をされました。以来、四年になります。
 私、読書バリアフリーの促進のために、特に二つのことが重要だと思うんですね。一つは、視覚障害者等が利用できる点字や音声化されたアクセシブル図書の数を、購入する場合も借りる場合も量、質共に充実させること。二つ目は、そうしたアクセシブルな図書を利用できる施設を増やすとともに、インターネットによる検索や入手などを拡充する連携、ネットワーク化の促進が必要だと思います。
 まず、このアクセシブルな図書の充実についてお聞きします。
 図書の点字化、音声化を進める上でテキストデータがあると非常に便利で、その提供が現場から切望されております。マケラシュ条約の質問の際に、販売されている図書のごく一部だけれども、視覚障害者向けにテキストデータの引換券が付いているものがあるということを紹介をして、出版社からのテキストデータ提供の取組の推進を求めました。
 その後、経産省を中心に検討会も行われておりますが、現在、出版数の二割が電子書籍になっているという変化もあります。点字、音声化のためのテキストデータの提供促進について、この間の取組や現状、課題はどうなっているか、経産省、お願いします。
○政府参考人(藤田清太郎君) お答えいたします。
 読書バリアフリー環境整備のためには、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍の普及を進めるとともに、出版社からのテキストデータの提供の促進が重要であると認識しております。
 経済産業省では、令和元年六月に成立した視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律に基づき、出版社からのテキストデータの提供における課題の洗い出しやその解決方策について、以来検討を進めてきているところです。テキストデータの提供の促進に向けては、出版社やレイアウトの違いによりテキストデータの抽出方法が異なるなどの課題があり、今後はより具体的なテキストデータの提供方法に関する基準の設定等について議論を進めていることが必要であると認識しております。
 経済産業省としましては、引き続き、視覚障害者等の御意見なども踏まえながら、関係省庁と連携し、出版業界によるテキストデータの提供を促してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 電子図書、書籍化が進んでいるというような条件も生かして、視覚障害者の意見をよく聞いて前に進めていただきたいと思います。
 視覚障害者がアクセシブルな図書を購入できるようにすることについては今の答弁なんですが、既に所蔵されている図書をアクセシブルにするということやネットワーク化をして誰でも借りれるようにする上で図書館の役割が非常に大きいわけです。
 全国の点字図書館の所蔵データや音声図書の検索、ダウンロードができるネットワークシステムサービスがサピエ図書館でありますが、個人会員、団体会員で成り立って、ボランティア等による点字・音声図書の製作の支援も行っています。マラケシュ条約で質問した際に、厚労省に対して、この財源が脆弱で運営に苦労されているサピエ図書館への支援の強化、それから、全国の公共図書館のうち五%程度しか加入していないという下で加入促進を働きかけを求めましたけども、その後、現状はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(斎須朋之君) お答え申し上げます。
 視覚障害者情報総合ネットワーク、サピエの経費につきましては、令和元年度からシステム管理費に加えて運営費を予算措置するなど、サピエの安定的な運営に取り組んでいるところでございます。
 サピエに加入している公共図書館につきましては、令和四年三月時点で二百三十四施設と承知しております。
 引き続き、文科省や関係団体と連携いたしまして、リーフレットやPR動画の作成などを通じて周知、広報に取り組んでまいりたいと考えております。
○井上哲士君 一定の前進や支援があるわけですけども、まだまだ課題は多いと思うんですね。
 全国には、公共図書館、大学図書館、学校図書館、関係施設で三千三百十六あるわけでありまして、今、二〇一八年のときには百六十一館でありましたから七十三館増えてはおりますけども、まだ一部にとどまっているわけで、更に促進を求めたいと思います。
 そして、その上で国立国会図書館の果たす役割も大変重要だと思います。今日は図書館長においでいただいておりますけども、読書バリアフリーの推進の意義を国会図書館としてどう捉えて、点字化や音声化、またデジタルデータ化など、国会図書館のこの間の取組、今後の計画について、いかがでしょうか。
○国立国会図書館長(吉永元信君) 障害の有無にかかわらず、全ての国民がひとしく読書を通じて豊かな文字・活字文化を享受することができる社会の実現は、極めて重要なことであると考えております。
 国立国会図書館では、昭和五十年以降、書籍等の録音図書、音声データの製作を行ってきました。令和三年度からは、新たな取組としてテキストデータの製作を行っています。テキストデータは、利用者の引用のニーズに応えることが可能である上、音声自動読み上げも可能であり、録音図書、音声データとは異なる利点を持ち得るものであると考えています。
 また、原本からの製作とは別に、国立国会図書館が昭和四十三年までに受け入れた図書等約二百四十七万点をデジタル化した画像データから、OCR、すなわち光学的文字認識の処理により作成したテキストデータを今後提供することを予定しております。
 以上です。
○井上哲士君 過去の様々な書籍、資料も含めて、テキストデータ化など推進をしていただいています。更に求めたいと思います。
 このサピエ図書館と国立国会図書館が連携をして、お互いが収蔵する視覚障害者向けの図書データの検索、提供ができるようにネットワーク化をされております。条約の質問の際にもその促進を求めました。
 国会図書館がインターネット上で提供している視覚障害者向けの図書資料数は四年前と比較してどうなっているのか、また、全国の図書館とのネットワーク化の進捗状況、特に全国三千三百十六か所ある公共図書館等とのネットワーク化の進捗状況、その都道府県ごとの特徴というのはどうなっているでしょうか。
○国立国会図書館長(吉永元信君) お答えします。
 国立国会図書館が提供する視覚障害者等向けデータは、サピエ図書館との連携による分を合わせ、四年前は約二十八万件でしたが、現在は約三十八万件です。そのうち、三万七千件が当館が製作、収集、提供する視覚障害者等用データ送信サービスのデータです。
 視覚障害者等用データ送信サービスは、公共図書館、大学図書館等を含む計二百六十六館が参加するネットワークとなっています。現在、三十六の都道府県においては、いずれかの公共図書館が加入しています。また、三十の都道府県では都道府県立図書館も加入しています。
 まだ加入していない館に対しては、地域ごとの事情を踏まえつつ、引き続き働きかけをしていきたいと考えております。
○井上哲士君 お手元に資料【配付資料①】がありますけれども、今ありましたように、こういうネットワークにいまだ一館の加入館がない県が十一県あるんですね。そして、都道府県において障害者サービスをリードする立場にある都道府県立図書館でも、加入していないのが十七館もあるということなんですね。今、様々な事情の中で更に促進をしていくということでありました。是非、一層の努力をお願いをしたいと思うんですね。
 今、こうやって都道府県ごとの特徴も述べていただいたんですが、視覚障害者らが実際にアクセシブルな図書を活用する上で、身近な地方自治体の取組、非常に重要だと思います。バリアフリー法に基づいて国が基本計画を作成をしました。これを勘案した地方自治体の計画策定のために、文科省は、二〇二〇年に、都道府県、政令市、中核市の百二十九自治体に対して、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画についてという通知を出しておりますけれども、主な内容をお述べいただきたいと思います。
○政府参考人(里見朋香君) お答えいたします。
 読書バリアフリー法の第七条第一項におきまして、文部科学大臣及び厚生労働大臣は、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画を定めなければならないとされております。同条に基づきまして、関係行政機関との協議及び関係者協議会において関係者から聴取した意見を踏まえまして、令和二年七月に視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画、いわゆる読書バリアフリー基本計画を策定いたしました。
 御指摘の令和二年七月の通知は、この基本計画の内容を周知するものでございまして、アクセシブルな電子書籍等の普及及びアクセシブルな書籍の継続的な提供など三つの基本的な方針、視覚障害者等による図書館の利用に関する体制の整備等など八つの施策の方向性のほか、地方公共団体において国の基本計画を勘案した計画を策定し、関連施策を推進するよう求められたい等の留意事項を記載しているところでございます。
○井上哲士君 読書バリアフリーは自治体全体で取り組む課題でありますから、関係する部局にまたがるような連絡会等の開催とか、そしてやっぱり計画を策定をするということは地方自治体全体で取り組む上で非常に重要だと思います。
 もう一度お手元の資料の方を見ていただきたいんですが、都道府県の読書バリアフリー計画、既に、今年二月時点でありますけれども、百二十九自治体のうち、計画策定済みまた策定作業中というのは二十五自治体で一九%にとどまっております。検討中は四十二自治体で三三%、予定がないのは六十二自治体で四九%であります。
 国会図書館の先ほどの答弁にありました、都道府県立図書館がネットワークに未加入だという十七都府県、資料の真ん中のところになりますが、このうち、この計画策定が検討中にとどまるのが九、予定がないのが五なんですね。ですから、都道府県の図書館が、ネットワークに未加入のうち十四が策定作業にも入っていないということになっているわけで、やはりしっかり計画を持つということが諸課題を促進する上で重要であることを、私、これは示していると思います。
 全体で百二十九自治体のうち、計画の策定及び策定中が一九%、とどまっているというのは、何が障害になっているのか。そして、数値目標なども設定をして諸課題を促進を図ることが必要かと思いますけれども、文科省、いかがでしょうか。
○政府参考人(里見朋香君) お答えいたします。
 読書バリアフリー法第八条におきまして、地方公共団体は、国の基本計画を勘案して計画を策定するように努めなければならないとされているところでございます。
 令和三年度における都道府県、指定都市及び中核市の計画策定状況でございますが、既に策定済みと現在策定作業中を合わせまして二十五自治体、御指摘のとおり全体の一九%であると承知しております。他方、策定に向けて検討中は四十二自治体、全体の三二%となっているところでございます。
 未策定の自治体の中には、他の障害者支援に係る計画等を策定済みであったり、計画の策定に当たって県の計画を参考にするため策定が遅れているとする指定都市、中核市があったりいたしますけれども、いずれにせよ、法律の趣旨を踏まえまして、引き続き、未策定の地方公共団体に対し計画策定を促してまいります。
 また、現在の令和二年度から六年度を対象期間とする政府の読書バリアフリー基本計画においては、数値目標を定めずにその方向性を示しているところでございますが、次期基本計画の策定に際しまして、更なる環境整備の促進について検討してまいります。
○井上哲士君 今の計画は数値目標などないということでありますけど、いろんな課題も明確になってきておりますので、是非その辺も明確にしてしっかり促進をしていただきたいと思うんですが。
 バリアフリー法には、関連諸施策促進に当たり、国は必要な財源の確保に努めることが明記をされております。日本図書館協会は、今年八月、総務大臣に対して、従前措置されている公立図書館経費に加えて、アクセシブルな書籍、電子書籍の拡充を図るための図書費の拡充とともに、DAISYプレーヤー等の読書支援機器の購入費、障害者サービス担当職員の人件費や研修のための旅費等の新設等々を求めております。
 読書バリアフリー法の制定以降の地方交付税における公立図書館経費の推移がどうなっているのか、また、日本図書館協会が求めているこうした費用の拡充、新設について積極的に応えるべきと思いますけれども、認識はいかがでしょうか。
○政府参考人(的井宏樹君) お答えいたします。
 公立図書館の運営に要する経費につきましては、普通交付税措置を講じているところでございます。
 このうち、委員お尋ねのいわゆる読書バリアフリー法、その制定以降の図書館費の推移についてでございますが、人口百七十万人規模の道府県の標準団体ベースで、令和二年度は二億一千六百一万五千円、令和三年度は二億一千六百一万五千円、令和四年度は二億一千二百八十一万四千円となっているところでございます。また、人口十万人規模の市町村の標準団体ベースでございますが、令和二年度は八千六百八十九万七千円、令和三年度は八千六百六十一万七千円、令和四年度は八千四百六十六万一千円となっているところでございます。
 また、委員お尋ねいただきました公立図書館における視覚障害者等の読書環境整備の推進等につきましては、まずは公立図書館を所管する文部科学省において御検討いただく必要があるものと考えておりまして、総務省といたしましては所管省庁のお考えをよく伺ってまいりたいと、このように考えているところでございます。
 以上でございます。
○井上哲士君 これ、むしろ減っているんですよね、これ、二枚目の表にあります【配付資料②】。是非増やしていただきたい。
 そして、今文科省の意向に沿ってという答弁がありました。是非、文科省、積極的に予算要求してほしいと思うんですけど、追加でいかがでしょうか。
○政府参考人(里見朋香君) 先ほど、お答えいたします。
 公立図書館の図書館資料の購入費を含めた図書館費につきましては、財政措置が講じられているということでございます。
 公立図書館の運営等については、設置者である各地方公共団体が地域の実情に応じて適切に御対応いただくことを基本としておりますけれども、文部科学省といたしましても、読書バリアフリー法の趣旨などを踏まえまして、視覚障害者等の読書環境の整備が推進されるよう、各種会議等の場を通じて各地方公共団体関係者へ働きかけをしてまいります。
○委員長(古賀友一郎君) 時間が来ておりますので、おまとめください。
○井上哲士君 時間ですので要望にとどめますが、これ全体にやはり関わる問題でありますから、是非、共生社会担当大臣として大臣のお力を是非発揮していただきたいということを強く求めまして、質問を終わります。

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