国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2023年・211通常国会 の中の 内閣委員会(放課後等デイサービス事業所への実態を踏まえた報酬を)

内閣委員会(放課後等デイサービス事業所への実態を踏まえた報酬を)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 四月一日にスタートするこども家庭庁の所掌事務に、困難な状況にある子供支援として、障害児への支援があります。その中に、学校へ通う障害を持つ子供たちに仲間とともに生活や遊びを通じて豊かな放課後や休日を保障する放課後等デイサービス事業があります。この事業は、関係者の粘り強い運動で二〇一二年に創設をし、子供たちや親、家族から歓迎をされております。当初三千弱だった事業所数は、昨年十一月時点で一万九千四百二十四へと大きく増加をしております。
 一方で、様々な課題があります。まず、報酬の問題です。二〇一八年度、二一年度と、これまで二回の報酬改定が行われる中で、コロナ禍による利用者控えも加わって、少なくない事業所が運営困難な状況に陥っております。
 お手元の資料一は、障害のある子どもの放課後保障全国連絡会、略称全国放課後連の二〇二二年度事業所収支状況調査でありますが、これによりますと、二〇二二年度の単年度で百万円以上の赤字という事業所が四一・四%、調査に回答した施設全体を平均すると、年間百四十万円強の赤字という厳しい状況となっております。
 現時点はこれは厚労省の所管ですので、事務方来ていただいていますが、こういう現状をどのように認識をされているでしょうか。
○政府参考人(辺見聡君) お答え申し上げます。
 放課後等デイサービスにつきまして、ただいま御質問にありました障害のある子どもの放課後保障全国連絡会の方からは、収支が赤字で厳しい状況にある事業所が多いといった旨の声があるということは承知をしているところでございます。
 厚生労働省といたしましては、次期障害福祉サービス等報酬改定に向けまして放課後等デイサービスも含めた障害福祉サービス事業所等の経営実態等を把握することとしておりまして、その結果を踏まえながら検討を進めてまいります。
○井上哲士君 この調査で、赤字の理由で最も多かったのが、二〇二一年度の報酬改定によって基本報酬の単価が減少したというものなんですね。
 資料二を見ていただきますけれども、基本単価の減少に加えて、児童指導員加配の加算の単価の減少などなど、赤字の理由として挙げられております。この二〇一八年度の改定で、一定の指標に該当する障害児の数が五割以上である場合を区分一、五割未満を区分二と、二段階に設定しましたけども、二〇二一年度改定ではこの区分が廃止をされました。それと一緒に人員配置の基本報酬単価が切り下げられたわけですが、どのような理由でこのときの報酬単価の切下げを行ったんでしょうか。
○政府参考人(辺見聡君) お答え申し上げます。
 令和三年度の障害福祉サービス等報酬改定におきましては、令和二年障害福祉サービス等経営実態調査を踏まえて行ったところでございますけれども、この調査の結果におきましては、障害福祉サービス全体の平均収支差率がプラス五・〇%であったのに対しまして、放課後等デイサービスにつきましては平均でプラス一〇・七〇%と大幅に全体平均を上回る水準であったことなどを踏まえまして、限られた財源の中で効果的なサービス提供を促す、促進するという観点から、基本報酬を引き下げ、一定の適正化を図ったところでございます。
 一方で、その上で、手厚い支援が必要な子供への支援についてより適切に評価をする観点から、理学療法士など専門職による支援を評価する加算の創設、著しく重度及び行動上の課題があるなどケアニーズが高い障害児や虐待等のリスクがある障害児を受け入れて支援したときの加算、こうしたものを創設するなど報酬の充実も図っているところでございまして、放課後等デイサービスにおいては、こうした加算も活用して、様々な支援ニーズに対応しながら支援を行っていただきたいと考えているところでございます。
○井上哲士君 収支差率が放課後デイは高いと言われましたけども、この放課後デイの収入は、子供が通ってこないと報酬が入らないという日払い方式のために、インフルエンザなどで通所率が下がったときの減少分の補填に使われているような実態もありますし、前の厚労省の支援室長も、放課後連との懇談で、利潤追求タイプの事業者は、どういう改定やっても人件費を下げると、結局下がった報酬で黒字が出てしまうという発言もされています。問題は、この利潤追求主義ではなくて、子供たちのために質の高い支援を行っている事業者が赤字になっているということだと思うんですね。そういう実態をしっかり把握をしていただきたいと思うんです。
 先ほどもありましたけれども、この春から二〇二四年度の報酬改定に向けた議論が開始されます。次期報酬改定に当たっては、放課後連の皆さんを始めとして、現場の声を十分に聞いて、これまでの報酬改定が事業所の経営に与えた影響はしっかり総括をしてその上に立って検討するべきと考えますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(辺見聡君) お答え申し上げます。
 放課後等デイサービスは、障害のある就学児に対して放課後等に自立支援のための活動や交流の機会の提供等を行うものであり、障害のある子供の発達支援を担う重要なサービスであると認識をしております。
 次期報酬改定に向けましては、前回の報酬改定の効果ですとか事業所の経営実態なども踏まえて、有識者も参画している報酬改定検討チームにおいて関係者からの声もお伺いしながら丁寧に検討を進めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 しっかり声を聞いて、実態把握をしてやっていただきたいと思います。
 先日、この全国放課後連の皆さんからお話を伺う機会がありました。皆さんの要望書については資料の三ページに付いておりますが、昨年の八月に厚労省の障害児通所支援に関する検討会のヒアリングにこの全国放課後連の方が呼ばれて、放課後等デイサービスの意義や役割についてこのように発言をされています。
 子供たちは学校で頑張っています。それに対して放課後とは、課業から離れた時間、空間ですよね。そこには、子供の集団があり、遊びと生活を中心とした自由で主体的な活動が展開されています。集団の中で人と関わり、思い切り遊び切るという当たり前の子供期を過ごすことが大切で、その子供期を十分に子供らしく生きることこそが、子供が育つということではないでしょうかと、こう言われています。
 放課後連の皆さんは、こうしたこの生活、遊び、集団、仲間、ここにこそ放課後デイサービスの価値があると強調をされているんですね。この要望の一番上にありますように、こうした放課後デイサービスの価値をしっかりガイドライン等に取り入れてほしいと言われています。
 厚労省は、こうしたこの放課後デイサービスの価値についてどのように考えるのか、今後政省令やガイドライン等できちっと示すことが必要と考えますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(辺見聡君) お答え申し上げます。
 放課後等デイサービスにつきましては、厚生労働省が定めております放課後等デイサービスガイドラインにおきまして、放課後等デイサービスの基本姿勢や基本活動を既に規定をしているところでございます。
 具体的には、他者との信頼関係の形成を経験していくことが重要であるといった基本姿勢ですとか、これを踏まえた基本的活動、基本活動といたしまして、子供一人一人の放課後等デイサービスの計画に沿って自立支援と日常生活の充実のための活動、また、地域交流の機会の提供や余暇活動の提供など、こういったことを行うことを求めているというところでございます。
 こうしたガイドラインの趣旨につきまして、適切に周知やまた運用等に今後とも努めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 一部に、利潤追求中心の事業者が、子供を集めてテレビだけ見せているとか、こういう質の低い事業を行っていることが問題になってきているんです。
 ですから、先ほど述べたような、やっぱり放課後デイサービスの価値ということをより明確にガイドラインにも示して、事業者の中でもそういうことを共有をしていくということが非常に大事だと思うんですね。是非検討いただきたいと思うんですが。
 こうした放課後デイサービス、等デイサービスの質について、この間の報酬改定や厚労省の検討会で課題とされて、先ほどありましたように、理学療法などの有資格者の配置が専門性の基準として議論もされてきましたけれども、私、実態とちょっとかみ合ってないんじゃないかなと思うんですね。
 先ほど述べたようなこのデイサービスの価値からいいますと、求められる専門性とは一体どういうものなのかと。先ほどの検討会のヒアリングでは、放課後連の方は放課後デイの職員の専門性について、どれだけ職員集団で子供のことが語れるのかということや、どんなときでも一人一人の子供を理解し、寄り添って、その場その場で子供の意見や声なき声を聞いて、いろんな遊びが提案できて、昨日、今日、明日と連続したシーンにつなげることができるかと、そんな子供の内面を理解した上で遊びを展開する力こそが私たちの専門性ではないかと語っておられます。
 それは大変大事な話だと思うんですね。ですから、やっぱりこういう専門性を発揮をしようと思えば、現代の子供を十人に職員二人以上という配置基準はいかにも少な過ぎると。放課後連の皆さんは、自分たちの加盟事業所の実態からも子供十人に六人以上の職員を提案をされております。
 また、この児童発達支援事業では、五年以上児童福祉事業に従事した経験のある保育士、児童指導員を専門的支援加算の対象にしていますけれども、放課後デイにおいても同様にするべきでないかと要望書にも述べられておりますけれども、この点、厚労省、いかがでしょうか。
○政府参考人(辺見聡君) お答え申し上げます。
 放課後等デイサービスにつきましては、人員基準として、児童指導員又は保育士を児童十人に対して二人以上、その上で児童発達支援管理責任者を一人以上配置することを求めております。その上で、更に基準の人員を満たした上でこの基準を超える職員を配置した場合ですとか、理学療法士や作業療法士などの専門職を配置した場合には、それぞれ加算として報酬上の評価をしているところでございます。こうした加算を活用して、職員体制や支援の充実を図ることを可能としているものでございます。
 また、御指摘いただきました児童発達支援の専門的支援加算につきましては、令和三年度に創設されたものでございますが、主に未就学児が利用する児童発達支援においては就学生活への適応や他者との関係性の構築のために経験に基づく専門的な支援が特に必要であるということから、児童福祉事業について五年以上経験のある保育士、児童指導員等について専門職の対象に含めるとされたところでございます。
 放課後等デイサービスの専門的支援加算の取扱いにつきましては、児童発達支援との対象者の特性の違い等を踏まえて慎重に考える必要があると考えております。
○井上哲士君 今も言われましたが、この児童発達支援の専門的加算の対象になっている理由は、集団生活への適応や他者との関係性の構築のために専門的で個別的な支援が必要だからとされておりますけど、これは私は就学児も全く変わらないと思いますよ。こういう理由でこの児童発達支援だけを対象にする、こういう理由はないんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○政府参考人(辺見聡君) お答え申し上げます。
 放課後等デイサービスのガイドラインにおきまして、先ほど御答弁申し上げましたように、関係性の構築等についての重要性を述べているところでございまして、関係性の構築につきまして、放課後等デイサービス、児童発達支援に共通する要素であるということについては御指摘のとおりかと思いますけれども、報酬上の評価という観点から、児童発達支援についてその対象者の特性に着目し、特に評価が必要であると考えているところでございます。
○井上哲士君 よく関係者の声や実態を聞いて、私は改善をしていただきたいと思います。
 それから、コロナ禍の利用自粛によって、この日割り出来高払の報酬制度が多くの事業所の運営を困難な状況に追い込んできました。報酬制度自体を事業所の安定的な運営を保障するものに見直す必要があると思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
○政府参考人(辺見聡君) 障害児の支援を含めまして、障害福祉サービスは、利用者が日ごとに複数のサービスを組み合わせて利用することができるように、日々の利用実績に応じた日払い方式により報酬が支払われる仕組みとしております。これは、医療保険制度や介護保険制度でも同様でございます。一方、急な欠席ですとか、入院などによる影響については、それぞれに対応する加算などを設けることによって一定の対応を行ってきているところでございます。
 利用者がそのニーズに合ったサービスを選択できるようにするためには、この日払い方式を維持すべきと考えているところでございます。
○井上哲士君 実際には、指定事業所は必要な人の確保をしなくちゃいけないんですよね。やっぱり、私はこれ実態に合っていないと思います。
 それから、現下の物価高騰、燃料費の高騰が多くの事業者を一層追い詰めております。報酬改定を待たずに、緊急にこうしたコスト高に対する支援を検討するべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(辺見聡君) お答え申し上げます。
 物価高騰に対する支援策として創設をされました、電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金におきましては、自治体に対して、推奨事業の一つとして、障害福祉サービス事業所などの福祉施設等に対する支援が示されているところでございます。昨年来、自治体に対して積極的な活用を促してきた結果、多くの自治体で物価高騰等に対する支援を実施していただいているところでございます。
 こうした交付金の活用により地域の実情に応じたきめ細かい支援が行き渡るよう自治体の後押しを行うとともに、次期障害福祉サービス等報酬の改定に向けた議論を行っていく中で、物価の動向や障害福祉サービス事業所等の収支の状況も注視してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 実態に合った支援をお願いをしたいと思います。
 実は、私の秘書は元保育士だったんですね。こんな体験話しておりました。自分が担任していたクラスに自閉症の子供が入園してきた。それまで家庭で親と一対一で育ってきたために友達と関わることが全くなくて、一日中、水道の蛇口から流れる水に手をかざしているという状況だったと。ところが、そんな子供が、遊びや、お昼の給食を食べたりお昼寝をしたりといった生活を友達と一緒に過ごす中で、友達とも自分から関わりを持とうとするなど、もう見違えるように変わったと言われていました。
 こういうところに、生活、遊び、集団、仲間、この持つ価値が示されていると思うんです。これにふさわしい職員配置や報酬制度などを求めたいんですが、大臣、この所管はこども家庭庁に四月から移されます。これまでの議論を聞いて、こうした事業の意義や役割についてどのように認識をされ、そして、障害を持つ子供たちに豊かな放課後や休日を保障するために、どう今述べてきたような課題に取り組んでいかれるか、その認識と決意をお願いしたいと思います。
○国務大臣(小倉將信君) まず、放課後等デイサービスについての認識はということでございますが、本日御指摘のあった生活、遊び、集団という視点も含めて、発達支援を行うとともに、学校や家庭とは異なるその子らしく過ごせる場所として、障害のある子供とその家族を支える重要なサービスと認識をしております。
 また、放課後等デイサービスを含め、障害児支援につきましては、来月発足をするこども家庭庁に移管をその事務がされることになります。令和六年、来年四月には障害福祉サービス等報酬改定も予定されておりまして、厚労省からも答弁がありましたように、関係者の声をよく聞き、経営実態を踏まえつつ検討を進めるということでありますので、来月以降、こども家庭庁といたしましては、厚労省のこれまでの歩み、これをしっかりと引き継ぎながら検討を進めてまいりたいと思っております。
 最後に、全体的な話ということでございますが、全ての国民が障害の有無にかかわらず互いに尊重し合い共に生きていく共生社会の実現に向けて、障害児の地域社会への参加、インクルージョン、これを推進する観点に立って、障害や発達に課題のある子供たちへの支援をしっかり進めてまいりたいと思っております。
○井上哲士君 かつては、障害のある子供は就学免除とかという形で学校にも行かない状況だったのが、学校行くようになってきた。そして、今度は、放課後も含めて、休日も含めて保障しようという大きな運動と世論があったわけですね。その事業が今様々な課題を抱えている中で、今大臣がおっしゃったような観点ですね、しっかり支援を強めていただきたいと思います。
 質問を終わります。

ページ最上部へ戻る