国会質問議事録

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予算委員会(平和外交の姿を変える武器輸出の拡大)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 総理、ウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談をされました。今、ロシアの侵略の中止と撤退を求める国際的な取組の強化、そして、日本のウクライナ支援は憲法九条に基づいた非軍事の人道支援に徹するべきだと申し上げたいと思います。
 総理は、会談でNATOの信託基金に三千万ドルを、約四十億円を拠出し、殺傷能力のない装備品の支援を表明をされました。その中身、やり方はまだ明らかになっておりませんが、NATOを通じての支援で殺傷能力のない装備品に限るということがどのように担保されるのでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今般拠出を行うNATOの信託基金については、拠出国が使途の指定を行うことができるとされています。我が国の拠出を通じた支援に関しても、NATOを通じたウクライナへの殺傷性のない装備品の供与に使途を指定した上で、今後、細部を調整する予定であると承知をしております。
○井上哲士君 過去の日本のNATOの信託基金への拠出金の実績、成果を見ますと、例えば二〇一八年では、六百四十九万六千円でヨルダン軍における女性軍人支援プロジェクトやイラン軍への訓練支援なども成果に挙げられております。今回、軍の支援などには使われないのか。殺傷能力のあるなしではなくて、やはり非軍事の人道支援に徹することが求められていると重ねて申し上げたいと思うんですね。
 重大なのは、このウクライナ支援を契機、口実に、武器輸出の制限を一層取り払おうという動きであります。
 国家安全保障戦略には、武器輸出について、力による一方的な現状変更を抑止し、日本にとって望ましい安全保障環境の創出になると盛り込まれました。しかし、元々日本には、憲法の平和主義の原則にのっとった、国際紛争を助長することを回避するために武器の輸出を禁じた武器輸出三原則がありました。これを安倍政権が撤廃をして防衛装備移転三原則へと大転換をして、武器輸出に道を開いたわけです。その上、今、自民党からは、この三原則の運用方針を見直して、殺傷能力のある武器を輸出を可能にするように求める声が上がっています。先日、防衛大臣も前向きの答弁をされました。
 殺傷能力のある武器を輸出することが我が国にとって望ましい安全保障環境をつくることに、総理、なるんでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 防衛装備品の海外移転については、まず、委員御指摘のように、この新たな国家安全保障戦略の中で、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑制し、抑止して、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略や武力の行使又は武力による威嚇を受けている国への支援等のための重要な政策的な手段となる、このように記載されています。
 防衛装備移転三原則あるいは運用指針を始めとする制度の見直しは、こうした観点から結論を出していかなければならない課題だと認識をしています。この見直しの議論はこれから行われるわけですが、今申し上げた方針に基づいて結論を出していく、こうした課題であると承知をしております。
○井上哲士君 殺傷能力のある装備品の輸出問題についてはまともな答弁がございませんでした。こういう支援をすれば一層国際紛争の助長になるということを申し上げたいと思うんですね。
 そして、今、この武器輸出の拡大が防衛産業の強化と一体とされているということが重大です。
 安保三文書に向けた有識者会議の報告書は、民間の防衛産業をより積極的に育成、強化を図っていく必要があるとして、海外に市場を広げ、国内企業が成長産業として防衛部門に積極的に投資する環境をつくるとしました。これも国の姿を変えるものであります。
 外務省の発行する「日本の軍縮・不拡散外交」の二〇〇八年版は、小型武器問題で果たしてきた日本の役割に触れております。紛争で主な武器として使用され、毎年最低五十万人が殺傷されているのが小型武器であって、事実上の大量破壊兵器と言われております。(資料提示)
 こう書いています。日本は、小型武器問題が国際社会に提起されて以来、国連を中心とする枠組みを通じて、この問題について主導的役割を果たしてきた。外為法及び武器輸出三原則等に基づき原則として武器輸出を行っておらず、輸出を前提とした軍需産業もないことから、国際社会をリードできる立場にあると、こうあるんですね。
 ところが、この記述はその後なくなりました。武器輸出が緩和された結果、国際社会をリードする立場がなくなったからですよ。その上さらに、輸出ルールを改定をして、輸出を前提した軍需産業を育成、強化するという。
 総理、海外で武力紛争が発生すれば利益につながると、そういう国が果たして平和国家と言えるんでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 小型武器対策でございますが、日本は一九九五年以来、毎年、小型武器の非合法取引に関する決議案、これを他国と共同で国連総会に提出しまして、毎年採択されてきております。また、世界各地において武器回収、廃棄、研修などの小型武器対策事業を支援してきておりまして、例えば二〇一九年には、グテーレス国連事務総長が提唱されました軍縮アジェンダに基づき設立されました小型武器対策メカニズムに対し二百万米ドルを拠出するなどしてきております。
 このように、我が国は、小型武器対策に関しては今日においても積極的な役割を果たしておりまして、引き続き、国際社会への取組に積極的に貢献してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 私、聞いていますのは、原則として武器輸出を行っておらず、輸出を前提とした軍需産業もない、だから国際社会をリードできると言っていたのに、それを、軍需産業を育成、強化するということであれば、まさに平和国家とはもう言えないんじゃないかと、これ、総理に聞いているんです。どうでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国の平和国家としての基本的な姿勢、これは全く変わっておりません。それを国際社会にしっかり理解をいただくことが重要であると思います。そして、その際に、この安全保障、国際社会における平和と安定において、日本自らがその責任をしっかり果たしていく、こういった姿勢も信頼を得るために重要であると思います。
 複雑化する国際環境の中で、日本として国際社会の平和と安定を維持するためにどのような責任を果たしていくのか、これが我が国の外交、安全保障の中で問われていく、具体的にそうした信頼に応えるべく努力を続けていきたいと思っています。
○井上哲士君 政府自身が、輸出につながる軍需産業がないから国際社会をリードできると言っていたんですよ。それを今、さらに根底から覆そうとしていることを問題にしているんです。
 さらに、経済援助をも軍事的に変質させる動きも重大です。
 日本は、途上国への政府開発援助、ODA、これまで基本的に非軍事に限ってきました。ところが、安保三文書にはこう書かれました。ODAとは別に、同志国の安全保障上の能力、抑止力の向上を目的として、同志国に対して、装備品、物資の提供やインフラ整備等を行う、軍等が裨益者となる新たな協力の枠組みを設ける。(資料提示)
 これに基づいて、来年度予算には、同志国の安全保障協力強化資金二十億円が計上をされております。これ、対象となる同志国とは一体どこなのか。先日の院内集会で外務省は、大部分が軍事的用途の支援になると述べましたけれども、外務大臣、そういうことですか。
○国務大臣(林芳正君) この同志国という用語でございますが、一般に、ある外交課題において目的を共にする国、これを指す言葉として用いられると承知しておりまして、いずれの国が同志国に当たるかについては、日本と目的を共にするかという観点から個別に判断をしております。
 その上で、本支援、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出する観点から、支援の意義のある国を対象とする考えでございます。
 内容でございますが、法の支配に基づく平和、安定、安全の確保のための能力向上に資する活動、人道目的の活動、国際平和協力活動等の国際紛争との直接の関連が想定し難く、本支援の目的の達成にとって意義のある分野に限定して、資機材の供与、インフラ整備等の支援、こうしたものを行う考えでございます。
○井上哲士君 限定しているかのように言われますけれども、これまでODAでは対象でなかった他国軍が対象になるんですね。そして、レーダーなどが想定されていると言われますが、この警戒監視活動、それはもう軍事活動と一体ですよ、そのものですよ。そして、今まさに、このODAと別枠なら軍事援助でもいいという問題ではありません。日本の国際貢献の在り方の根本的な転換になる問題です。
 今のODAについて、政府開発協力大綱ではこう述べております。(資料提示)非軍事的協力によって、世界の平和と繁栄に貢献してきた我が国の開発協力は、戦後一貫して平和国家としての道を歩んできた我が国に最もふさわしい国際貢献の一つだと、そして、国際社会の高い評価を得てきたと、こう述べているんですね。我が国のこの在り方の問題だと言っているんですよ。
 私は、ODAと別枠であれ、軍の装備品への無償援助というのは、これはここで言っている平和国家としての日本の国際貢献の在り方としては真っ向から反すと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、ODAと、そして御指摘のこの支援との比較でありますが、この軍事的用途への使用の回避原則、これ、開発途上国の経済社会開発を目的とするODAに関する実施上の原則であり、これは今後も堅持をしていきます。
 そして、同志国の安全保障能力、抑止力の強化を目的とする本支援については、我が国の平和国家としての歩みを引き続き堅持しつつ、同志国の安全保障上のニーズに応えていくことを大前提としており、そのための実施方針を別途定める考えです。
 具体的には、防衛装備移転三原則及び同運用指針の枠内で支援を行うこと、国際紛争との直接の関連が想定し難い分野に限定して支援を実施すること、そして国連憲章の目的及び原則との適合性、これを確保すること、こうしたことについて定めていく考えであります。
○井上哲士君 先ほど言いましたように、我が国のこの国際貢献の在り方の問題だと、この開発協力大綱でも言っているわけですよ。これはそのままだと言いますけど、別枠をつくって、そして軍を対象にした支援をするというのは、やっぱり我が国の在り方自身が問われるわけですね。国際紛争との直接の関与が想定し難い分野だと強調されますけど、そういう問題ではないんですね。
 紛争地やODAの現場に行って活動しているNGOの日本国際ボランティアセンターは、昨年末に安保三文書の撤回を求める声明を出してこう述べています。(資料提示)非軍事の国際協力を行う日本に対して多くの国から寄せられた信頼は、日本のNGOにとって現地の活動における支えとなってきましたと、これが、安保三文書による軍事大国化と国際協力の在り方の転換で日本の信頼を大きく損ねることになると、こう述べているんですね。
 私は、国際協力の現場で活動している皆さんからの、日本への信頼を大きく損ねるという重要な指摘だと思います。これ、正面から受け止めるべきだと考えますが、総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 国際社会の信頼を得るために、我が国として国際社会の平和と安定に責任を果たしていく、こうした姿勢は大事だと思っています。
 御指摘の、この国際紛争との直接の関連が想定し難い分野についても、平和国家としての歩みを引き続き堅持する観点から、日本が本支援をもって紛争に直接介入したり、あるいは武力の行使を後押ししたりするわけではなく、例えば、領海における警戒監視能力を向上させることで地域における抑止力を高めるといった、国際紛争そのものとは関係ない分野に限定して国際の平和、安定、安全の維持のための支援を行う、こういった方向性について述べたものであると認識をしております。
○井上哲士君 平和国家としての歩みを変えないと言葉だけは言われますけれども、実際には、専守防衛投げ捨てて敵基地攻撃能力を保有する、これまで非軍事で行ってきた経済支援も相手の軍に対して行う、武器輸出を大幅に解禁して軍事輸出で栄えるような国にする、全く私は国の在り方を変えるものだと思います。
 撤回を強く求めて、質問を終わります。

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