○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
法案は、昨年六月の新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議の報告書で、次の感染症危機に対する政府の体制づくりとして、一元的に感染対策を指揮する司令塔組織を整備するとしたことを踏まえたものとされております。
この報告書では、この間の政府の取組を振り返って、次のように述べております。新型インフルエンザ対策総括会議報告書二〇一〇年等の提言があるにもかかわらず、新型インフルエンザの流行後に取られた対応が、平時に危機意識が薄れたことや初動からの保健医療提供体制の構築について現場レベルのオペレーションに落とし込まれていなかったことなどから、不十分だったと言わざるを得ないとしております。
この指摘を、大臣、どのように受け止めておられるか、不十分だったというふうに、同じ認識でよろしいですか。
○国務大臣(後藤茂之君) 今、井上委員御指摘の新型インフルエンザ対策総括会議報告書、これは平成二十二年六月のものでございますけれども、平成二十一年四月に発生した新型インフルエンザA/H1N1の対策における課題を改善するため、実効性のある政府行動計画の策定、改定を行うこと等について、厚生労働省に対して提言がなされたものと承知をいたしております。
その後、政府においては、平成二十四年に新型インフルエンザ等対策特別措置法を制定し、政府行動計画を同法に基づく新型インフルエンザ等の対策に係る計画として位置付け、各府省や各都道府県における対策の推進を図ってきたところでありますけれども、今般のコロナ対策に係る有権者会議の報告書では、平時に危機意識が薄れたことや初動からの保健医療提供体制の構築について現場レベルのオペレーションに落とし込まれていなかったことなどから、不十分だったと言わざるを得ないとの指摘がなされています。
そういう意味では、政府の有識者会議の指摘でございますので、今般の新型コロナウイルス感染症への対応も踏まえまして、政府としては、平時の準備、初動対応、そして対策本部の事務等に係る司令塔機能を一元的に行使する内閣感染症危機管理統括庁を設置するとともに、有事に機能するようなPDCAをサイクルを回しながら、しっかりと迅速、的確に対応できる体制を構築するためにしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○井上哲士君 今も読み上げられましたけれども、この保健医療提供体制の構築ということを特に言っているんですね。
二〇一〇年の報告書は具体的にどういう内容だったかと。感染症危機管理に関わる体制の強化として、国立感染症研究所、検疫所、地方自治体の保健所や地方衛生研究所といった感染症対策に関わる危機管理を専門に担う組織や人員体制の大幅な強化、人材の育成を提言をしております。
そこで聞きますが、二〇一〇年度とコロナ禍が始まった二〇二〇年度で国立感染症研究所の研究者、職員数はどうなっているか、また、保健所の箇所数は一九九〇年度と二〇二〇年度ではどういうふうに変わっているでしょうか。
○政府参考人(浅沼一成君) お答えいたします。
国立感染症研究所につきましては、二〇一〇年度、平成二十二年度の職員数は三百八十五人、そのうち研究者は三百二十五人、二〇二〇年度、令和二年度の職員数は三百六十二人、そのうち研究者は三百八人となっております。
また、保健所の設置数につきましては、一九九〇年度、平成二年度は八百五十か所、二〇二〇年度、令和二年度は四百六十九か所となっております。
○井上哲士君 ですから、こういう指摘があったにもかかわらず、国立感染症研究所の研究者、職員数は、二〇一〇年度から二〇二〇年度で二十三人逆に減っております。しかも、そのうち十七人が研究者なんですね。保健所の箇所数は、一九九〇年から半減をしておりますし、コロナ禍の下でも減少して、二三年度は四百六十八か所になっております。
これ、二〇一〇年の報告書は、この結びで、新型インフルエンザ発生時の危機管理対策は、発生後に対応すればよいものではなく、発生前の段階からの準備、とりわけ、新型インフルエンザを含む感染症対策に関わる人員対策や予算の拡充なくして抜本的な改善は実現不可能であると、ここまで述べているわけですね。ところが、実際に今答弁のあった数は、この提言が発生後に対応すればよいものではないといさめていたことをやってきたのが政府の対応だったと言わざるを得ないんですね。
こういう、この二〇一〇年後コロナ発生時までの対応が、コロナの検査の遅れであるとか保健所の深刻な逼迫をつくり出したということに対してどう反省されているか、政務官いかがでしょうか。
○大臣政務官(本田顕子君) 井上委員にお答え申し上げます。
先ほど大臣から事前の十分な対応ができなかったものというところの御答弁がありましたが、そこの部分は繰り返しになりますので控えさせていただきますが、今般の新型コロナ対応を踏まえ、改めて平時からの感染症危機管理の重要性が浮き彫りとなりましたので、昨年十二月に感染症法等を改正し、検査体制や保健所体制に関する数値目標を盛り込んだ予防計画を都道府県等が作成することとしております。
具体的には、地方衛生研究所において、特に発生初期の検査体制を確保すること、都道府県等と民間検査機関等の間で協定を締結することにより感染症発生時の検査の実態能力の確保に努めること、保健所については、流行開始と同時に感染症有事体制に移行できるように必要な業務量に十分対応な人員体制を構築すること、この保健所の人員につきましては、令和三年において百五十名増員をしておりまして、令和五年も更に百五十名増員するということをしております。
こうした対応をすることに平時からの備えを推進することとし、こうした取組によって感染症危機の発生時に迅速かつ的確な対応を行うことが可能となるものと考えて、次の感染症危機にしっかり備えてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 保健所の人員体制の若干の増加はありました。我々も求めてきましたけれども。この間、やはり削られた保健所に僅かな保健師の増員ということでは感染症対応に見合ったものとは到底言えないわけですが。
今のは去年の法改正でどうするかというお話でありますが、私聞いたのは、結局、二〇一〇年の提言がありながらそれが実行されてこなかった結果、今回のコロナの対策の中で様々な深刻な医療の逼迫等をつくり出したと、その責任についてどうお考えかということをお聞きしているんです。
○大臣政務官(本田顕子君) 新型コロナ対応におきましては、平時の備えが十分でなかったことから、委員が先ほど申し上げられましたインフルエンザのときの反省のものも、総括もあったところではございますけれども、発生初期の段階において、検査能力の確保や保健所体制の整備に課題があり、十分な対応ができなかったと認識をしているというところでございます。
○井上哲士君 発生初期に十分な対応ができなかったと言われました。初期だけではなくて、その後の医療逼迫状況ができているわけでありまして、本当に真剣に反省するならば、保健所の数を元に戻して保健師を大幅に増やすことであるとか、この間のベッド削減など、これをやめるべきだということを改めて強く申し上げたいと思います。
次に、この間のコロナ対策に関する政府の意思決定の在り方がどうだったかについてお聞きします。
政府の対策は、専門家の助言を踏まえた上で、最終的には政府が意思決定を行うべきものであります。政府と専門家の間に当然意見の違いは出てくるわけですし、政府が専門家の助言と異なる判断を行う場合もあり得るとは思います。だからこそ、この専門家の意見を受け入れなかったのであれば、その理由も含めてしっかりとした説明を国民に対して行うことが求められております。
昨年の有識者会議の報告書は、この点でもこう述べております。専門家との関係を含めた意思決定プロセスが明確だったか、科学的知見に基づく評価、分析は十分だったかなどの点において問題がなかったとは言えないと述べております。
大臣、この指摘をどのように受け止めていらっしゃるか、どういう問題があったとお考えでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) 新型コロナウイルスはその性状を急激に変化させることなどから、状況に応じて感染拡大防止と社会経済活動のバランスが取れた効果的な対策を講じることが重要でありまして、このためには幅広い分野の専門家の科学的知見やエビデンスに基づく検討が極めて重要であります。
このため、これまでも、コロナ対策分科会を始め様々な場面において、感染症や経済などそれぞれの専門的立場から知見を伺った上で、それらを踏まえて政府として必要な判断をし、責任を持って対策を講じてきたというふうに考えております。
一方、今御指摘のありました昨年六月の有識者会議報告書においては、専門家との関係を含めた意思決定プロセスが明確だったか、科学的知見に基づく評価、分析は十分だったかなどの点において問題がなかったとは言えないと指摘をされております。
このような指摘を踏まえまして、新たに設置する国立健康危機管理研究機構が常日頃から政策ニーズに沿った科学的知見を統括庁に提供することとするとともに、政府全体の方針立案や各省庁間の総合調整機能を統括庁のラインに集約することにより、より明確な意思決定プロセスの下で科学的知見に基づく政策が推進できる体制をしっかりと整備してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 すぐ今後の話にされるんですけど、やっぱりこれ問題がなかったとは言えないと述べているわけですから、何が問題だったのかということを明確にしなければ、私は、新しい方針、対応も正しいものにならないと思うんですよ。
先ほどもアベノマスクの問題が出ていましたけど、衆議院の質疑では、安倍、菅政権のときの全国一斉休校、それから、いわゆるアベノマスク、GoToトラベルキャンペーンの延長など、いずれもコロナウイルス感染症対策専門家会議や対策分科会の意見を事前に聞かずに政府が決定したことを大臣もお認めになりました。
そして、次、岸田政権では、昨年七月に濃厚接触者の待機期間短縮が発表されましたけれども、この決定の前にもこの対策分科会には何も相談なかったわけですね。こうした対応が問題では、問題だったという認識はないんですか。
○国務大臣(後藤茂之君) 個別の御指摘については、分科会の尾身座長からもそうした御指摘もありました。
それぞれの局面において、例えば濃厚接触者の期間短縮等につきましては、本当に医療現場が大変な逼迫の中にある中で、アドバイザリーボードや、あるいは今おっしゃった専門家の先生方が個別にもグループでも提言をなされている中で、ちょっとでも早くということで、アドバイザリーボード、厚生労働省としての段取りを取りつつ、分科会での報告が事後になったということは誠に申し訳なかったというふうに思っておりますし、それぞれ、いろいろな課題につきまして、反省すべき点はしっかりと反省をしながら、しっかりと科学的知見に従って一つずつ決めていくということが必要だというふうに思っております。
保健所、自宅療養で療養する方の健康観察や医療などの危機時に弱いところに負荷が掛かっているという、そういう指摘等も、先ほど先生の御指摘ということからいえば、我々深く受け止めなければならないことだというふうに思っております。
反省は十分しつつ、そして過去の問題点については、それを踏まえた上で、それをどうやって今後、有事の際に対応していけるか、そのことに全力を挙げさせていただきたいと思います。
○井上哲士君 アドバイザリーボードなど、専門家の意見いろいろ聞いたと言いますが、専門家会議や対策推進本部、分科会は、これ法律に位置付けられたところでありまして、それがやっぱり重要な決定の際に開かれてないというのが大変重要な問題であります。
そこで、更に聞きますけども、七日の本会議のときに、この専門家の意見を聞くことなく感染対策を緩和してきたことが昨年夏以降の感染拡大と死亡者の急増につながったのではないかと総理に質問いたしました。総理は、昨年秋以降、ウイズコロナに向けた段階的な取組を進めてきましたが、その際には、専門家の意見をしっかり踏まえて、科学的知見に基づき取組を進めてきたと答弁をされたんですね。
実際どうかといいますと、昨年の九月の八日に総理がウイズコロナに向けた政策の考え方を発表して、コロナ対策を高齢者、重症化リスクのある者に対する適切な医療の提供を中心とする考え方に転換をいたしました。しかし、それ以降、高齢者を中心に死亡者が急増して、過去最高を記録する最悪の事態を招きました。
一方、分科会ですね、対策分科会は、七月十四日に行われて以降、このウイズコロナ方針の発表前には行われませんでした。次に行われたのは、方針発表後の九月十六日だったわけですね。
そういう中、この方針発表がされる一か月、私は、一か月前の八月の二日にこの新型コロナ対策の専門家有志が記者会見を行って、「「感染拡大抑制の取り組み」と「柔軟かつ効率的な保健医療体制への移行」についての提言」を発表いたしました。それは、この人流が活発化するお盆前に感染拡大抑制のための方針を明らかにしておかなきゃならないという専門家の皆さんの危機感だったわけですね。
会見の場で当時の尾身茂会長が、なぜ今提言なのか、新型コロナウイルス感染症分科会として議論するのが筋ではないかと問われますと、尾身さんは、分科会開催は政府が決める、場がないので今日この場で示したと述べたと報じられております。
このウイズコロナへの転換もこうした分科会も開かないまま行われたと。これ、問題ではありませんか。
○政府参考人(菊池善信君) 御指摘のウイズコロナに向けた政策の考え方につきましては、オミクロン株の特性を踏まえまして、感染症法に基づく全数届出の見直しや陽性者の自宅療養期間の短縮等について政府対策本部で決定したものであります。
これらの事項につきましては、厚生労働省のアドバイザリーボードや、法令に基づき設置された厚生科学審議会感染症部会など、専門家による議論を経て、さらに、新型インフル特措法に基づく、これコロナ分科会ではございませんが、基本的対処方針分科会でも意見を聞いた上で決定をさせていただいたものでございます。
○井上哲士君 基本的対処方針分科会が開かれたのは、発表の当日なんですね。同じ日なんですよ。
そのときの議事録を読みますと、この政府の方針に様々な意見が出されております。このウイズコロナに転換、政策転換する議論は、基本的対処方針の分科会ではなくて新型コロナウイルス感染症対策分科会の方で議論するべきだと、こういう意見も出されておりますし、このウイズコロナという言葉がそもそも非常に曖昧だと、こういう意見、それから、コロナ対策がどう転換されてきたのか、国の考えがよく分からないと、こういう意見がこの対処方針の分科会で出されているわけなんですね。ですから、そもそもやはり専門家はこの転換について納得していたとは到底思えません。
ここでありますように、本来この対策分科会で議論すべきだったという声がここも上がりました。ここでお聞きしますけれども、この新型インフルエンザ特措法第七十条の二にこの新型インフルエンザ等対策推進会議が置かれ、同分科会はその下に置かれております。第七十条の三第二号では、新型インフルエンザ対策推進会議は、必要があると認めるときは総理に意見を述べることとされておりますけれども、これらの推進会議に関する規定は二〇二一年の改正で盛り込まれたと思いますが、どういう趣旨からこういう改定が盛り込まれたんでしょうか。
○政府参考人(柳樂晃洋君) お答え申し上げます。
令和三年の法改正前の時期のお話でございますが、新型コロナウイルス感染症対策につきましては、当時、随時、新型インフルエンザ等対策有識者会議、これ去年の六月に報告書をまとめた有識者会議とは全く別物の専門家の助言組織でございますが、そういった新型インフルエンザ等対策有識者会議から医学的見地からの助言を得ていたところでございますが、感染状況について議論をする際には、感染者個人や具体的な施設が特定され得る事柄について議論されることも多く、会議の構成員に対して守秘義務を掛ける必要性が生じていたところでございます。
このような実態を踏まえまして、その新型インフルエンザ等対策有識者会議を新型インフルエンザ等対策推進会議、これは今あるものでございますが、推進会議として特措法上に法的に正式に位置付けまして、これにより、委員に国家公務員と同様の守秘義務が課されるようにしたものでございます。
○井上哲士君 そういう経緯の下で法的に位置付けられたんですね。
確認しますけれども、この意見を述べる、必要があると認めるときは総理に意見を述べるという規定は、これは当然分科会にも当てはまるということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(柳樂晃洋君) お答え申し上げます。
法七十条の三第二項におきまして、新型インフルエンザ等対策推進会議、親会議のことでございますが、その推進会議は、新型インフルエンザ等対策について調査審議し、必要があると認めるときは内閣総理大臣又は政府対策本部長に意見を述べることができるということとされております。また、その推進会議に関する政令、新型インフルエンザ等対策推進会議令におきましては、新型インフルエンザ等対策推進会議は、その定めるところにより、分科会の議決をもって推進会議の議決とすることができると、こういうふうに規定をされております。
これらのことから、各分科会につきましては、新型インフルエンザ等対策推進会議令に規定する所掌事務に関して、法七十条の三第二項の規定に基づきまして、内閣総理大臣又は政府対策本部長に意見を述べることができるものでございます。
○井上哲士君 ところが、衆議院の質疑では、この第七十条三第二項に基づくこの推進会議から総理に対する意見は一度も出されていないということが明らかにされました。法の趣旨が生かされていないというのが現状だと思うんですね。
そもそも、こういう意見を述べるためにその内容を検討するこの推進会議や分科会の開催、招集、この権限というのはどこにあるんでしょうか。
○政府参考人(菊池善信君) 新型インフルエンザ等対策推進会議や各分科会は、内閣から独立した行政委員会ではなくて、内閣法第十二条第四項に基づき、内閣の事務を助けていただくために置かれた機関でございます。
一方で、感染症法に基づく感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する重要事項については厚生科学審議会の感染症部会で調査審議すると、することとされているように、専門家による調査審議機関はそれぞれ所掌が定められております。
内閣総理大臣は、こうした調査審議機関の所掌を踏まえ、内閣として、推進会議や分科会の調査審議事項を調整することができると考えております。このため、推進会議やコロナ分科会の開催権限は、一義的には議長又は分科会長にあると考えられますが、事務局である内閣官房と調整した上で開催をしているところでございます。
○井上哲士君 一義的には議長と言われましたけど、先ほどの尾身さんの会見がありますように、実際には政府が決めると、場がないので会見をしたということになっているわけですね。専門家が必要に応じて政府に対策を提案したり助言するような仕組みでなければ、専門家の知見を効果的に政策に反映することができないのではないかと思うんですね。
今後、この内閣感染症危機管理統括庁ができた下で、こうした推進会議や分科会との関係がどうなるのかと。必要があると認めるときは総理に意見を述べるというこの規定が生かされるような、この分科会や専門家、推進会議が開催を申し出た場合には会議を開催すると明確なルールを作ることが必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) 新型インフルエンザ等対策推進会議は、特措法に基づき、政府行動計画や基本的対処方針の策定等に当たって内閣総理大臣又は政府対策本部長に意見を述べることのほか、御指摘のように、新型インフルエンザ等対策について調査審議し、必要があると認めるときは内閣総理大臣等に意見を述べることとされています。具体的な推進会議の運営方法については、同会議が自ら運営規則を定めており、この運営規則上、議長が定めるとされているものと承知はしております。
御指摘のように、どのような機会に会議を開催し総理に意見を述べることとするかについては、運営規則の運用の在り方等について、推進会議の事務局を担う内閣感染症危機管理統括庁と推進会議との間で十分相談、調整し、特措法の規定の趣旨を損なうことがないようにしてまいりたいと思います。
○井上哲士君 現実には開かれてこなかったわけですね、物が言いたくても。ここを現実に改善する必要があると思いますが、司令塔機能を幾ら強化するといっても、これまでのようにこの専門家の知見を感染症対策に反映する上で問題があれば、これは本当に意味がないと思います。
日本学術会議が二〇二〇年の七月に、感染症の予防と制御を目指した常設組織の創設についてという提言を発表をしております。この感染症の専門家から成る委員会を常設して、平時に学術的な知見から感染症対策を立案し、必要な体制整備を助言する体制を構築するべきであると。この委員会の助言に基づいて政府が感染症対策行動計画を策定するとしております。
昨年十一月には、尾身茂結核予防会理事長が議長を務める日経・FT感染症会議が東京感染症ステートメント二〇二二を採択しておりますけれども、これもやはり、この専門家組織が対策や戦略を統括庁に提案、助言すると、こういう位置付けを求めているわけですね。
政務官、お聞きしますけれども、こういうこの専門家組織がむしろ政府側に提案、助言すると、こういうような問題意識に今度のこの法案が応えているのか、その点いかがでしょうか。
○大臣政務官(本田顕子君) お答え申し上げます。
先日の四月七日の本会議におきましても、委員がこれまでの政府の取組についての徹底した研究と科学的知見に基づく対策の強化ということを御質問されておりましたけれども、まさに今回立ち上げますこの国立健康危機管理研究機構法案は、新たな感染症危機に対応するに当たり、分析、研究によって得られた質の高い科学的知見を統括庁や厚生労働省に提供する役割を果たすとともに、政府対策本部長の求めがあれば、政府対策本部の会議に出席し、意見を述べることができるというふうにしております。また、機構側からの能動的な意見の表明については、機構が行った分析、研究に係る政策提言を行うことを機構の業務として法案に規定しております。
その上で、統括庁や厚生労働省においては、こうした機構から提供された知見を踏まえて政策を立案し、新型インフルエンザ等対策推進会議や感染症部会などの専門家から意見を伺った上で政策を決定し、対策を講じていくこととしており、こうしたプロセスを得ることで科学的知見と根拠に基づく政策決定は担保されるものと考えております。
○井上哲士君 この研究機構法案では、研究機構が業務の実施状況を総理及び厚生労働大臣に報告するということになっているだけで、今も言われましたように、政府の対策本部長が必要があると認めるときは、その対策本部の会議にこの研究機構の長や役員を出席させ、意見を述べさせることができるとしているんですね。
ですから、今の分科会の方は意見を述べるとなっているのに、今度のやつは、主語は政府の対策本部長で、意見を述べさせることができるとなっているんですよ。現行より私これ後退しちゃうと思うんですね。やっぱり研究機構が自ら問題意識を持って総理に対して意見を述べると、そのことを明確に法律に更に示すべきではないでしょうか。
○大臣政務官(本田顕子君) 繰り返しになりますけれども、機構側からの能動的な意見の表明については、機構が行った分析、研究に係る政策提言を行うことを機構の業務として法案に規定しております。
それで、常設、日本版CDCは常設の機関となりますので、その役割が科学的知見を提供するものでありまして、厚生科学感染審議会感染症部会やアドバイザリーボードは専門家をメンバーとする会議体でございまして、ここは厚労省が立案した政策について意見を聞くものであり、ちょっとそこのすみ分けがあるということでございます。
○委員長(古賀友一郎君) 時間となりましたので、まとめてください。
○井上哲士君 終わりますが、結局、この機構がいろいろこれ発表するとありますけど、それをやっぱりきちっと政府が会議の場で反映させるということをやっぱり私は法的に担保されていないと思います。しっかりやっぱり科学的知見に基づいて進めていくという点で、この点を改めて強く指摘をしまして、質問を終わります。
内閣委員会(インフル特措法改定案ー専門家が政府に提案・助言できる仕組みを)
2023年4月11日(火)