国会質問議事録

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内閣委員会(インフル特措法改定案ー高齢者施設でのコロナ感染者の施設内療養)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 全国の高齢者施設でコロナ感染したにもかかわらず、入院できず施設内療養となった入所者が第六波以降急増した問題についてお聞きします。
 衆議院での答弁では、第五波感染拡大以降の全国の高齢者施設でのクラスター発生件数は、いわゆる第五波二百七十六件、第六波三千二百四十四件、第七波六千六百六十二件、第八波八千九百二十三件となっております。
 そして、感染しても入院できずに施設に留め置かれた人数は、高齢者施設や障害者施設等を加えた社会福祉施設の数字として、ピーク時で、第五波百九十七人、第六波六千百十人、第七波一万五千七百二十五人、第八波一万六千五百九人とのことであります。八十倍以上に増えております。
 新型インフル特措法改正に当たっての二〇二一年二月三日の厚労省健康局長の通知でも、六十五歳以上の感染者は入院措置の対象とされております。にもかかわらず、なぜ高齢者の施設内療養がこれほどまでに多発をしたんでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) 今委員の御指摘のありました、この令和三年、二〇二一年二月三日付けの通知でございますが、これ、入院勧告・措置の対象として六十五歳以上の者も対象にすることができると、つまり都道府県知事が必要があれば入院勧告・措置の対象にできますという通知でございます。
 しかしながら、感染の拡大に伴いまして医療への負荷が高まった際に、病床確保、また都道府県全体の入院調整、ここに最大限努力した上で、それでもなお病床が逼迫するような場合には、高齢者などのうち、医師が入院の必要がないと判断した場合は、宿泊療養、また施設での療養としても差し支えないという通知を令和三年十月二十五日付けで出させていただいているところでございます。
○井上哲士君 今、十月二十五日付けの通知のことが言われましたけど、副大臣述べられたように、あくまでも医師が入院が必要がないと判断した場合なんですね。ところが、医師が入院が必要と判断しても施設に留め置きになったのが実態なんです。
 このことにちょっと追加して問いますけれども、先日の参考人質疑で井上ひろみ参考人が意見を述べられました。21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会の事務局長でありますが、この連絡会が行ったアンケートで、回答のあった三百四十施設中五三%、百七十九施設でクラスターが発生した、陽性入居者合計が三千六百九十六人、そのうち八七・四%、三千二百三十人が施設内療養を強いられて、職員が治療と看病に当たったとのことでありました。
 井上参考人は、更に京都の保険医協会や東京の老人福祉協議会が行った調査でも陽性者の八割以上が施設内療養だったことを示して、もはや原則入院ではなくて、原則施設内療養であったというのが現場の実態ですと述べられました。
 副大臣、原則施設内療養に実際はなっていたんじゃないですか。
○副大臣(伊佐進一君) この新型コロナの対応の中では、医療資源にはまず限りがあるという中で、その時々のウイルスの性状、また通常医療とのバランスに配慮しながら様々な判断をさせていただいたのがまず前提でございます。
 その上で、高齢者施設で実際に療養をそのまま続けざるを得ないと、医師の判断により、そうなった場合につきましては、しっかりとした支援体制の充実をこれまでも行ってまいりました。
 具体的には、その施設における感染対策の徹底に対する財政支援も当然ここに加えまして、施設から連絡をいただければ、これに対して感染制御、また業務継続支援チームを派遣できる体制の整備でありますとか、また医師や看護師による施設への往診、派遣というものが可能というような医療機関の事前確保について、こうしたものについても必要な財政措置も行いまして、進めてきたところでございます。
○井上哲士君 いや、あくまでも施設側の医師は入院が必要だと言っているんですよ。それなのに入院ができていないと。
 土台には、この間繰り返してきたように、歴代政権による医療費抑制の下で医師や看護師の数が抑制をされ、平時に余裕のない医療体制になってしまって感染症の拡大に対応できなかったことがあります。抜本拡充が必要でありますが、同時に、高齢者施設の感染者に対して適切な対応が果たしてされたのかということも問わなければなりません。
 参考人にお聞きしますが、高齢者施設での感染者について、どこが入院を判断をしていたのか。全国の都道府県で入院調整を一元的に管理をしていた都道府県はどれだけの数でしょうか。
○政府参考人(鳥井陽一君) お答え申し上げます。
 入院調整は基本的に保健所で実施するわけでございますけれども、この度のコロナの下において入院調整を一元的に実施している都道府県もございまして、その数は令和四年四月時点で四十四都道府県と承知をいたしております。
○井上哲士君 ですから、基本的に保健所と言われましたけど、四十七のうち四十四、実に九四%が都道府県が一元的に管理していたんです、その時点で。
 どういう調整が、では行われたのかと。本会議でも紹介しましたけれども、京都府の保険医協会の調査では、施設内治療を行った施設の四七%が入院が必要と判断したができなかったと回答しております。そのうち二六%は京都府の入院コントロールセンターが入院不可だと言っていると伝えられたと、こう言っているんですね。
 京都ではこういう例があります。心肺停止時の蘇生措置拒否の意思表示をしていることを理由に入院拒否をされたという例が報告されているんですね。現場の医師からは、これはパンデミックトリアージが始まったと。幾ら心肺停止時の蘇生措置を拒否をしている、その意思表示をした人であっても、心肺停止に至るまで積極的に治療するのが医師の使命だと。この蘇生措置拒否の意思表示をしているからといって入院させないというのは医師の倫理原則に反していると、こういう声も上がっているんですね。
 こんな理由で選別をするということは、入院拒否をするということは、これ認められるんですか。
○副大臣(伊佐進一君) このお尋ねの事案につきましては、詳細を承知していないために一概にお答えすることは困難でありますが、一般的に申し上げれば、医師法には医師の応招義務というものを規定をしております。そこには、医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ診療を拒んではならないというふうになっております。
○井上哲士君 ですから、それと違うことが公然と行われたんですよ。
 この例は、先日、井上参考人からもお話がありました。高齢者施設での陽性者がこの蘇生措置拒否の意思表示をしていること等を理由に入院を拒否されたと。その後、拒否されて施設の中で容体が悪化をして、救急車を呼んで、救急車が来たけれども、それでも拒否されたと。何とか説得をして、交渉の末、何とか入院できたけど、この人は治療を受けて、その後入所、再び入所をされて、もう穏やかに生活されていると。施設の職員の人は、もうその人の元気な姿を見るたびに、もうあのとき諦めていたらどうなったと、胸が苦しくなるという話をしているということを先日、参考人もお話がありました。
 命のトリアージが行われて、助かる命が見捨てられている事態、これが多数発生したんじゃないかというのがこの間の事態だと思うんですね。
 そして、感染しながら多くの高齢者が施設に留め置かれた下でどうなったかと。京都府によりますと、第六波から第八波の府内のコロナの死者数千三百四十人のうち一六・五%の二百二十一人が高齢者施設内で亡くなっているんですね。大半が、診察した医師が入院が必要と判断したにもかかわらず入院ができなかったという方と思われます。
 これも厚労省副大臣にお聞きしますけれども、全国の高齢者施設において施設内で亡くなったコロナ感染者の人数は何人で、何施設だったのか。これ、参考人で結構です。施設数と人数、いかがでしょうか。
○政府参考人(三田一博君) お答えいたします。
 厚生労働省の人口動態統計では、新型コロナウイルス感染症等による死亡者がいる高齢者施設の数は把握しておりませんが、死亡数は、令和二年では、介護医療院、介護老人保健施設が五十三人、老人ホームが四十一人、令和三年では、介護医療院、介護老人保健施設が二百三十九人、老人ホームが四百七十九人であり、二年間の合計は八百十二人となっております。
○井上哲士君 コロナ禍における高齢者施設の中でのこの死亡者の数というのは、もう過去に例のないような、私、危機的な状況だったと思うんですね。にもかかわらず、基本的にその実態をつかんでいないわけですよ。入院拒否をされて留め置きになった人がいて、その中で何人が亡くなったのかと。私、これをつかまずに次の対策ができるのかと。もちろん、第八波の真っ最中につかむの大変だったでしょう。だけど、今収まっているんですから。今このときにつかまなくて、いつつかむのかという話だと思うんですよ。
 そこで、後藤大臣にお聞きしますけれども、井上ひろみ参考人は、原則入院ではなくて原則施設内療養という実態があったにもかかわらず、当時、政府の担当者や知事が、入院の必要がある方は入院できていると、全く実態とは違うことを述べていたということを指摘をされました。連絡会として調査をされたわけですけれども、政府としてこの全国的な施設の実態や亡くなった方の経緯や詳細を検証することなしにこの問題の解決はないと、参考人は言わば現場の声を代表して主張されたわけです。高齢者施設での多数の感染者や死亡者が出た実態とその原因、それから入院調整の実態、その背景にあるこの医療体制の問題を把握せずに、私は次の対策などできないと思うんですね。
 是非、政府として、全国的なこの高齢者施設、社会福祉施設などの実態調査をして、施設内で亡くなった方の、どういう実態だったのか、検証すべきだと思いますけれども、後藤大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) 今本当に、高齢者施設を含む施設入所者等に関する課題について、これは有識者会議の報告書においても、外来医療や訪問診療の領域で個々の医療機関が果たすべき役割が具体化されていなかったことや、クラスター発生時や病床逼迫時に感染症等が高齢者施設の施設内で療養せざるを得ないケースにおいて医療支援がスムーズにいかなかったことがあったと、そういったことが指摘をされています。
 医療提供体制についても、しっかりと確実に危機時に実行されるような仕組みづくりや外来医療や訪問診療等を受診できるような仕組みづくりが必要であるという指摘も受けて、感染症法の改正、また今回は危機管理庁において、厚生労働省と連携しながら、医療提供体制確保に向けた取組の状況の確認とか、政府行動計画や都道府県行動計画の内容を抜本的に見直した上で医療提供体制の確保を始めとする感染症危機対応の強化に取り組むことといたしております。
 今、先生から更なる検証を行うべきではないかというお尋ねもありましたけれども、医療、今般の新型コロナ対応における医療提供体制の確保状況や高齢者施設での対応の状況についても、次の感染症危機に備える観点から、今後、政府行動計画の見直しを行う際にできる限り必要な検証を行った上で対策の改善を図っていかなければならないと思っております。
○井上哲士君 検証のためにも是非調査をしてほしいんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) まずは、厚生労働省において高齢者施設等を所管しておりますので、所管の役所においてまずは実態の把握に努めた上で、我々としても一緒になって力を貸して対応してまいりたいと思います。
○井上哲士君 是非、厚労省やっていただきたいんですが、更に支援するべきなのは、井上参考人が述べられた、この施設内療養を受け入れた高齢者、障害者施設の問題です。高齢者を、感染者を施設内療養とする場合に、例えば四人部屋から分離をしてデイサービスのフロアを空けて感染者の療養場所にします。そうしますと、デイサービスやショートステイの利用者からは感染者が出ていなくても、この業務は休止、休業を余儀なくされるんですね。大幅な減収が出ると。感染者が発生した事業者で、事業所で、清掃や消毒の費用、労働者への割増し賃金など業務を継続するために新たに増えた費用、掛かり増し費用への補助はサービス継続支援事業の対象として一定行われています。だけど、こういう事業継続ではなくて、施設内療養に伴って事業を休止、休業、デイサービスなど、こういう減収に対する補助や支援はないんですよ。
 実際どうかと、お手元に資料配っていますけれども、これは、障害者施設を運営する社会福祉法人がコロナ病棟化したと、こういう実態報じたテレビ番組の一部であります。この施設では、感染者の療養のために施設を療養所として利用しました。その結果、デイサービスやショートステイを休止せざるを得なかったんですね。六千四百万円の減収になっているんです。二回の補助金申請と自治体を通じた国との協議を行いましたけれども、その下の画面の右側ですね、これは、他の業務を続けるための残業・危険手当とか、防護服、これは二千百万円対象になりました。で、一千万円の補助金が出ましたけれども、左側ですよ、これは、療養者を受け入れるために事業を中止したんです、施設を感染者の療養所として利用するために。この部分については何の補償になっていないということなんですね。
 先ほど政務官が、何か減収分を補償しているかのようなごまかし答弁されましたけど、こうした業務の中止、休止による減収額については、補助も支援も全くないですね。それ認めてください。その上で、これでは経営成り立ちませんから支援すべきだと思いますけれども、いかがでしょう。
○副大臣(伊佐進一君) 委員の御指摘いただきましたとおり、その消毒、清掃あるいは緊急時の人材確保に係る掛かり増し経費への補助というものはございます。これに加えまして、例えば介護施設で施設内療養を行う介護施設への補助と、これ一人当たり最大三十万円の補助というものもございまして、これも五類への見直し後も当面継続させていただくということになっております。
 さらには、通所介護事業所については、利用者が減った月の実績が前年度の平均延べ利用者数から比べて一定以上減少している場合、このスポットの減少に対して基本報酬に一定の加算を行うという取扱いも実施をしております。
 引き続き、必要なサービスが安定的、継続的に提供されるように、様々な支援組み合わせてまいりたいというふうに思っております。
○井上哲士君 今のもごまかしなんですよ。それは、事業が、人数が減っても事業を継続している場合の支援。今言っているのは、事業を休止、中止をせざるを得なかった場合の支援がないということを言っているんですよ。
 この問題は、社会福祉経営全国会議の皆さんが政府に繰り返し要望されています。その要望事項には、高齢者施設や障害者施設利用者が医療逼迫を理由として留め置かれた、施設内で一部事業を閉鎖してゾーニングして療養に当たるケースが急増した、こういう背景から生じた損失は掛かり増し経費とは性格が異なる損失であって、何らかの補償がされるべきだと、こう言われているんですね。
 本来は医療若しくは公衆衛生で対応すべきことなのに、それが福祉施設に転嫁されているんですよ。その結果、もう継続できない、休業している。これには何の補償もない。
 日本重症心身障害者福祉協会、この要望書を見ますと、全国百三十八の施設のうちで、短期入所を中止せざるを得なくなって、令和三年度だけで三十四の施設が年間二千万以上の減収になっているんです。一億円以上の減収になった施設もあるんですよ。こういうところに支援絶対すべきだと思うんですよ。
 業務を中止を余儀なくされた、医療の肩代わりをした結果、そういうことに対する補償を是非やってほしいと思いますが、改めていかがでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) 今、委員の御指摘は、恐らく、その施設でこの療養、陽性者を受け入れて、そこの、それによってデイサービスあるいはショートステイ、こういったものを閉鎖せざるを得なくなったという点だというふうに思います。
 そういう点につきましては、先ほども答弁させていただきましたとおり、施設内で療養を行う方に対して一名当たり最大三十万の補助を行うというものがございます。それ以外にも、今回コロナ禍、また物価高騰対策下の現状でもそうでございますが、地方創生臨時交付金、これは、各自治体の判断によりまして、こうしたその公的な診療報酬、また介護報酬によって成り立っているようなところに対してもしっかりとした支援をしていただきたいというふうに国からも使い方の例を示させていただいているところでございますので、こういうようなところも是非御活用いただきたいというふうに思っております。
○委員長(古賀友一郎君) 時間となったので、おまとめください。
○井上哲士君 はい、終わりますが、一人三十万円と言われましたけど、それをはるかに上回る減収が出ているんです。こういう施設の皆さんは、目の前にいる人をどうしても助けたいと、減収顧みずに必死でやるんですよ。終わったら何の支援もないと、こんなこと二度も三度もできませんよ。是非見直していただきたい。
 質問を終わります。

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