国会質問議事録

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内閣委員会(インフル特措法改定案ーリスクコミュニケーション、5類移行後の高齢者施設支援)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 まず、リスクコミュニケーションに関してお聞きします。
 十三日の参考人質疑で、昭和大学医学部客員教授の二木参考人は、政府方針の発信の在り方に関して、次のように述べられました。
 オミクロン株による第六波以降も、政府対策本部で決定された取組の全体像は国民に明確にされることがなく、第七波、第八波での対応が行われました。この間、水際対策や行動制限、営業自粛、マスクの着用などの規制緩和が次々と行われましたが、それぞれの担当大臣や官房長官からは方針の公表はあるものの、メッセージとしては弱かったと。経済優先にかじを切った結果、感染者数と死者数が増加することは当然の結果だったと思います、その説明が欠落していたと、こう述べられたわけであります。
 この発言は、どんなリスクが国民に及ぶのか、何を留意して社会活動を行うべきなのかについて、政府の国民への説明が欠けていたという指摘であります。この指摘を、大臣、どのように受け止めていらっしゃるでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) これまでも、政府対策本部の開催ごと、重要な政策決定を行うたびに総理や担当大臣が記者会見を行うなど、政府から国民の皆様に対して、政策の決定内容について、できる限り丁寧に分かりやすく発信するよう努力してきたところであります。二木参考人からの、メッセージとして弱かったという御指摘については、これは真摯に受け止めたいというふうに思っております。
 統括庁においては、司令塔機能を発揮しながら、新たに専門家組織として設置される国立健康危機管理研究機構から提供された科学的知見を踏まえて決定した政策について丁寧に説明を行うなど、政府の方針に基づいて明確な情報発信に取り組んでいきたいと思っております。
○井上哲士君 二木さんは、方針の公表はあってもメッセージが弱かったということを言われているんですね。
 例えば、五類移行を決めた一月二十七日の厚生科学審議会感染症部会、新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けについてではこう述べています。国民の間で、今後感染対策を行わなくてもよいといった誤解や分断が起きないよう丁寧なリスクコミュニケーションが必要だと、こう指摘したんですね。
 この日に大臣も会見をされておりますが、大臣は、この点について国民にどのようなメッセージを発せられたのでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) 御指摘の一月二十七日の私の記者会見において、同日の厚生科学審議会感染症部会の議論の取りまとめを受けて、新型コロナの感染症法上の位置付けの見直しに関する対応方針を政府対策本部で決定したことから、その決定の内容について説明を行ったものでございます。
 この記者会見においては、五類感染症への移行後の感染対策については、具体的に基本的な感染対策が全て不要となるものではなく、政府対策本部決定においても手洗いや換気などに積極的に取り組んでいただくこととなっていることや、感染症部会の取りまとめにおいて、位置付けの変更により新型コロナウイルス感染症の特徴が変わるわけでないことから、今後も感染拡大が生じることを想定して、高齢者や基礎疾患のある者など、重症化リスクの高い者を守ることも念頭に必要な感染対策は講じていくべきとされていることなどを説明いたしております。
 感染症危機においては、国民の皆様に向けて科学的知見に基づいた正確な情報を迅速かつ分かりやすく提供するリスクコミュニケーションが、委員御指摘のとおり重要と認識しておりまして、今後とも節目節目で国民の皆様の理解と共感、また科学的知見をしっかりとお示しするような形でしっかりと発信、説明に努めていきたいと思います。
○井上哲士君 私も当時の会見を読み返しましたけど、およそ強いメッセージが出されたというものではないですよ。リスクコミュニケーションというには余りにもお粗末なものだったと思うんですね。
 昨年から今年にかけての第八波では、高齢者を中心に、一日の死者数、それから高齢者施設でのクラスターの発生、救急搬送困難など、軒並み過去最高を記録するなど、医療逼迫が極めて深刻な状況になりました。この間、大臣は何度か会見を行っていますけれども、こういう医療逼迫の状況には一言も触れられていないんですね。
 当時、医療関係者からは、政府が医療逼迫の現状を積極的に国民に伝えていないことに、第八波ほど医療現場と社会の乖離を感じたことはないと、こういう痛切な声が寄せられました。私は、やはり、二木参考人が指摘したように、方針を公表し説明するだけで、どういうリスクが国民に及ぶのか、国民が何をするべきなのか明確に示されなかったということが感染拡大と医療逼迫を招いた要因の一つだと指摘をせざるを得ないと思います。
 そのことを指摘した上で、この五類移行に関わって、高齢者施設への支援について厚労副大臣にお聞きをいたします。
 前回の質問で、施設内療養を受け入れた結果の減収に対する高齢者施設への支援が全くないということを指摘をした私の質問に、副大臣は、高齢者施設が施設内療養を行った場合の療養者一人当たり最大三十万円の補助金は継続をするので活用してほしいと答弁をされました。そもそも減収を補填するものではありませんが、本当にこれ、今までと同じように使えるのかという問題です。
 厚労省は三月十七日付けの事務連絡で、この補助金について、五類移行後に支援を受ける場合は、連携医療機関の確保、感染症予防等の職員の研修及び訓練の実施、希望する利用者へのワクチン接種の実施という新たな要件を付け加えております。そして、これは四月末まで、もう目前でありますけれども、満たさなければ補助金を出さないとしているんですね。
 これに対して、もう介護の現場から困惑や怒りの声が上がっております。そもそも、医療逼迫で入院すべき人が入院できずに施設内療養となっているのに、今の支援さえも継続せずに新たな要件を付けるとは全く納得できない。本来、保健所の調整機能を高齢者施設に丸投げするなど問題だ。施設への支援を逆手に取って責任を丸投げするひどい制度だと。私、当然の声だと思うんですね。
 そもそも施設内療養を引き続き前提にしていること自体が本末転倒ではありませんかね。やむを得ず施設内療養が必要となった場合の支援は、新たな余計な要件を付けずに、これまでと同じように続けるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) 医療資源が限られています中で高齢者施設等に療養する場合もあるということで、この高齢者施設等に対する医療支援の充実が重要だというふうに思っております。
 先ほど委員のおっしゃっていただいた施設内療養が前提になっているのではないかという点に関しましては、これは我々としては、入院が必要な高齢者が適切、また確実に入院できる体制を確保するのが前提だというふうに思っております。
 その上で、療養、高齢者施設で療養される、それに該当せずに療養される場合については、これまでの医療機関との連携含めた各種措置を当面継続させていただいて、そして必要な医療を提供できる体制を高齢者施設においても構築していくことが重要だというふうに思っております。
 このため、この高齢者の皆様の命を守る取組をより一層強化するという観点から、以前からもお願いしております高齢者施設が医療機関と連携体制を組んでいくと、こういうところを確認をさせていただきたいと、そしてまた平時からの感染対策でありますとかワクチン接種を行っていただいていると、多くのところはやっていただいていると思いますが、こういう要件を設けさせていただいたということでございます。
○井上哲士君 一層強化するというんなら、新たな要件を付けるべきでないと思うんですね。
 副大臣、現場がどうなっているのか知っているのかという問題ですよ。
 全国の施設から様々な声が寄せられております。連携医療機関の確保ではどうか。そもそも、医療機関に協力要請したが、多くの介護事業者から要請があり、応えられるか検討中と、返事をもらえなかったと、こういう施設があります。それから、オンライン診療を含む施設への往診という要件について、オンライン診療に対応できる医療機関がほとんどなく現実的に難しいと、こういう実態も寄せられております。
 昨日、福岡県のある社会福祉法人の事務局長からこんな声が寄せられました。
 一年ほど前に、連携医療機関を確保しているかについて県からの調査があったが、その結果は、県全体の施設で確保できているのは六割程度だったと。もちろん、高齢者施設としては日常的に連携医療機関を確保していくことが必要だし、その努力もしている、しかし、一般の診療所などはそもそもコロナ患者を受け入れてこなかったところが多くて、そんなところが感染者のいる高齢者施設に往診に来るわけがないと、こういう声ですよ。
 副大臣、全国からこんな様々な、今回の新たな要件を加えることについて声が寄せられているのは御存じでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) 今御指摘していただいたようなお声、例えばその高齢者施設と医療機関の連携につきましても、これもコロナの前から、高齢者施設の運営基準におきまして協力医療機関を定めておくということになっております。これは、五類移行した後は応招義務を厚労省としても明確化を、更に明確化をさせていただいておりますので、是非ここは連携をしていただきたいというふうに思っております。また、都道府県に対しても、昨年の四月以降、医師また看護師による往診、派遣が可能な医療機関の事前確保について、累次の要請を都道府県に対してもしてまいりました。
 そしてまた、二つ目の要件の研修あるいは訓練につきましても、令和三年度の介護報酬改定によりまして努力義務と既になっておりますほか、また三つ目、ワクチン接種、これ、入所者の皆さんの、希望される入所者の皆さんのワクチン接種についても、これまでも接種体制の構築、繰り返し取り組んで既にいただいているというふうに認識をしておりまして、こうした要件、これまでもお願いした取組でございますので、まず入院が必要な高齢者の皆さんが適切、確実に入院できる体制が確保されるということが大事だというふうに思っておりますので、要件を満たしていただきたいというふうに思っております。
○井上哲士君 前から言っていると言われていますけど、必死でやっているんですよ。たくさんの高齢者の感染者が出て、その中でできていないいろんな条件があるんです。
 しかも、先ほどの福岡県の社会福祉法人の事務局長はこういったことも言っているんですね。
 連携医療機関は、施設としてではなくて入所者一人一人に対して確保しろと言われていると。高齢者は一人一人通っている病院や診療所が異なって、その中には往診できないというところも当然あると。しかし、入所者の中に一人でも往診ができないなど要件を満たさない医療機関に通っている人がいると、その施設全体が補助金の対象にならないということになっているんですね。補助金もらうためには、入所者の希望と異なる医療機関に通ってもらわざるを得ないけれども、どの診療所や病院を選ぶかは入所者の当然の権利だと、それを侵害しろと言うのかと。補助対象施設の有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などは、入居に際してかかりつけ医を変更しなくてもいいということを売りにしているところもあるんですよ。そういうところは、今月末までに入居者全員に要件を満たす医療機関を見付けられるのかと、とてもできやしないと言っているんですよ。
 少なくとも、こういう、この補助金をもらうために入居者の権利を奪うことを施設に強いるような、一人でも要件を満たさなければその施設全体を補助対象にしないと、これやめること。それから、今月末までに要件を満たせないそういう施設であっても、期限以降要件を満たした場合は順次申請を受け付けると、こういうふうに改善をするべきではありませんか。
○副大臣(伊佐進一君) 高齢者施設におきまして、この高齢者の皆様の安全をしっかり守っていくという取組を、これをしっかりと強化してまいりたいという観点で、様々な関係者いらっしゃると思いますので、しっかりと様々お声を聞きながら進めてまいりたいというふうに思っております。
 今の申し上げた三つの要件につきましては、従前からもお願いしておりました。その中で、もし、様々困難があるとか問題があるとかということであれば、厚労省としても丁寧に対応していきたいと、様々相談にも乗ってまいりたいというふうに思っておりますので、引き続き対応をお願いしたいというふうに思っております。
○井上哲士君 いや、もう四月末目前なんですよ。これまでにできなかったところは、五月八日以降は受け付けないとも言っているんです、認めないと言っているんです。少なくとも、それはそうではなくて、皆さん苦労してきたわけですから、コロナ禍の下で、入居者の、入所者の命と暮らしを守るために必死で取り組んできたんですよ。その中で、いろんな対応がまだできていないところもある。そこが五月以降申し込んだ場合には、もうそれは排除するということではなくて、ちゃんと認めると、これは少なくとも改善してほしいんですよ。いかがですか。
○副大臣(伊佐進一君) 我々、今、この高齢者の皆さんの安全を確保するという観点でこうした要件設けさせていただいております。従前からお願いしたことではありますが、四月までと、四月末までということになっておりますが、まずは四月末までしっかりと努力をしていただきたいというふうに思っております。
○井上哲士君 努力した上でできなくて、五月以降にできた場合は認めると、それちゃんと約束してくださいよ。
○副大臣(伊佐進一君) 今現場で、高齢者施設、最大限努力をしていただいているというふうに思っておりますので、その努力を引き続きしっかりと見守りながら、まずはその努力を継続していただきたいというふうに思っております。
○井上哲士君 目前なんですから、必死で努力しているんです。それでもできない場合には必ずそれは認めるということを改めて強く強く申し上げまして、時間ですので質問終わります。

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