○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
昨年十一月の新潟市への視察に私も参加をいたしました。副知事や関係の地元首長さんから、今もありましたように、口々に政府から何も情報がないという苦言が出されました。救う会新潟の方からも、被害者家族が高齢化し一刻の猶予もないことから、政府は北朝鮮と直接の交渉の場を設けると同時に、早期に日朝首脳会談を実現するしか解決の道はないものと考えられると、併せて目に見える形での成果を早期に実現することが要望されました。
岸田首相は、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意を繰り返すわけでありますが、この日朝首脳会談を実現をするために一体どのような外交努力をされているんでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 政府として、北朝鮮に対しましては様々な形で働きかけを行うなど、あらゆる努力を行ってきておりますが、これまでの具体的なやり取りの詳細、また今後の具体的な方針等につきまして明らかにいたしますと、今後の北朝鮮とのやり取りに支障を来すおそれがありますことから、お答えは差し控えたいと思います。
いずれにいたしましても、北朝鮮への対応につきましては、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決に向けて、あらゆる選択肢を排除せず、引き続き果断に行動してまいります。
○井上哲士君 そういう答弁が繰り返されるんですが、皆さん、詳細を求めているわけじゃないんですよ。一体何やっているかさっぱり分からないと、こういう苦言が出たわけですね。
新潟市議会は、昨年、拉致問題等啓発推進条例を制定をいたしました。拉致問題の積極的な啓発で市民に認識を深めてもらって、拉致問題を風化させないこと、全ての拉致被害者の帰国実現への意思表示をすることが、この拉致問題早期解決の後押しになると考えての条例制定だったということであります。
政府はどうかと。この間の施政方針や所信表明演説では、あらゆるチャンスを逃がすことなく全力で取り組む、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意と、これ同じフレーズがもう何回も何回も繰り返されております。
拉致問題の進展がない、外交努力が見えない、それだけじゃなくて、この総理が発するメッセージも同じものばっかりだと、こういう政府の姿勢に、私は、家族や自治体の首長の皆さんはいら立ちを覚えているんだと思うんですよ。その点、松野大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(松野博一君) お答えをさせていただきます。
拉致問題は重大な人権侵害であり、岸田内閣の最重要課題であります。この認識に変わりはありません。
岸田総理自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意を表明をしています。拉致被害者、御家族も御高齢となる中で、拉致問題は時間的制約のある人道問題であります。私自身、様々な機会に拉致被害者や御家族の皆様とお会いをし、拉致問題の一刻も早い解決を願う強い切迫した思いを直接お伺いをし、拉致問題の解決には一刻の猶予もないとの思いを共有しています。
政府として、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を、実現に向け、御家族の皆様に寄り添いながら、全力で果断に行動してまいります。
○井上哲士君 私は、その答弁では、関係首長の皆さんも、御家族の皆さんのいら立ちは解決されないと思うんですよね。一体何がどう前進しているのかさっぱり分からないという問題です。
さらに、この拉致という人権問題を起こしている北朝鮮の指導者と極めて密接な関係にあるのが統一協会であります。
創始者の文鮮明氏は、金日成氏と深い関係を持って、二〇一二年に文氏が死亡した直後には、金正恩氏自らが遺族に弔電を送っておりますし、弔問所に花輪も飾っています。去年も、文鮮明氏の死去から十年となるのを前に、遺族に弔電を送るなどの関係が両者続いているわけですね。
そこでお聞きしますけれども、今月の六日に公開された韓国外務省の外交文書で、この文氏が一九九二年に入国した際に、当時の金丸信自民党副総裁が便宜を図ったということが明らかになりました。
文鮮明氏は、過去に米国で所得税法違反の罪で服役をしておって、入管法の規定で入国禁止だったわけですね。外交文書によれば、法務省は当初、文氏の入国を拒否する方針だったが、金丸氏が身元を保証した上、外務省も特別意見をしなかったために、最終的に判断を変えたとされております。当時から、自民党有力者の力によって政府方針が変更されたということが国会でも問題になっていましたけども、これが外交文書で裏付けをされたというのが、この六日の文書であります。
法務省が方針を変更したこと、それを日本の外務省が韓国側に伝えていたということが初めて明らかになりました。事前に確認しましたけど、外務省、まだこの文書を入手されていないということでありますが、入手して内容を確認すべきではないでしょうか。林外務大臣。
○国務大臣(林芳正君) 御指摘の文書に関する報道については承知をしております。
その上で、他国の外交文書について外務省としてコメントする、コメントする立場にないということでございます。
○井上哲士君 日本の外務省や法務省のことが書かれているんですね。そんな人ごとのような話じゃないと思うんです。
それが一体どういうことを、事態を起こしたのかと。当時、非常にもう、既に統一協会の被害は広がっておりますけども、十三年ぶりの文鮮明氏の訪日によって、その被害を広げたということにつながっていっているんです。
松野大臣は、この文鮮明氏の訪日について、四月十日の衆議院の決算行政監視委員会で、当時の国会における答弁によりますと、入国目的が朝鮮半島と北東アジアの平和についての我が国国会議員との意見交換だったことなども考慮して、当時の法務大臣の判断としては適切なものだったと答弁をされております。しかし、当時には明らかになっていなかったこの法務省の方針変更という事実が韓国側で公文書で示されたわけでありますから、その文書も入手せずに問題はなかったなどと、私は到底言えないと思うんですね。
入国許可へ方針変更した経緯を調べて明らかにするべきだと思いますけども、いかがでしょうか。
○国務大臣(松野博一君) お答えをさせていただきます。
お尋ねの文鮮明氏は、入管法第十二条に規定されている法務大臣の裁量的処分である上陸特別許可を受けて入国したものと承知しています。上陸特別許可の許否判断に当たっては、個々の事案ごとに、上陸を希望する理由、該当する上陸拒否事由の内容、上陸拒否事由が発生してから経過した期間、内外の諸情勢、その他諸般の事情を総合的に考慮しています。
文氏の当時の入国状況についてはつまびらかではありませんが、当時の国会における答弁によりますと、当時、刑の確定後、既に七年が経過していたこと、入国目的が朝鮮半島及び北東アジアの平和の在り方について我が国の国会議員の会の方々と意見交換をすることにあったこと、一週間程度の短期間の滞在であり、布教活動はしないとの誓約がなされていたことなどの諸事情を総合的に考慮した結果、上陸を認めたものであります。
なお、他国の政府の文書の内容について、我が国としてお答えすることは差し控えますが、国会議員からの招聘だからといってその上陸を特別に許可するといったものではありません。
○井上哲士君 当時の答弁というのは、九二年の参議院予算委員会での当時の法務大臣の答弁だと思うんですね。だけど、その後、全然違うということはもう明らかになっているんですよ。
九八年の衆議院の法務委員会で我が党議員がただしておりますけども、三月二十六日に文氏は入国し、三十日に国会議員と会談するんです。その間に何やっていたかと。統一協会の歴史編纂委員会の文書が出ています。二十六日に信者の歓迎会出席、二十七日には東京の本部協会で千人の信者、四百人の職員への講義、二十八日には名古屋で信者に講義、二十九日、大阪の宝塚修練所で千人の信者に講義、それ以外にもハッピーワールドなどの霊感商法企業なども訪問しているんですよ。
ですから、国会議員との意見交換というのは、まさに名目で、いっぱいこういう数千人規模の講義などをやっているんですね。
ですから、目的も、当時これを、目的を考慮したと言っていますけれども、それ自体も違っていた、新しい経緯も出てきた。これはやはり、きちっと検証して明らかにするべきだと思いますけれども、松野大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(松野博一君) お答えをさせていただきます。
当時の状況については、先ほど申し上げましたとおり、つまびらかではありませんが、当時の国会における答弁によりますと、文氏は入国後、布教活動はしていないとされています。
いずれにしても、文氏の入国につきましては、先ほど述べたとおりの諸般、諸事情を総合的に考慮した結果、上陸を認めたものであり、文氏の上陸時の法務大臣の判断として適切なものであったと承知しており、改めて調査することは予定していません。
○井上哲士君 時間ですので終わりますが、今も申し上げたように、その後違う事実が明らかになっているんです。やはり、この問題は、私は拉致問題解決の障壁にもなると。しっかり調査をして、関係を絶つべきだということを改めて強く申し上げまして、質問を終わります。
拉致問題特別委員会(拉致問題解決への外交努力、統一協会と政府・与党の癒着関係)
2023年4月21日(金)