国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2023年・211通常国会 の中の 内閣委員会(フリーランス取引適正化法案)

内閣委員会(フリーランス取引適正化法案)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 本法案は、情報量や交渉力で立場の弱いフリーランスに係る取引の適正化を図るものですが、フリーランスの働き方の実態を見るならば、更に広く労働者性を認めて、労働法制を適用して保護することが必要だと考えます。
 本日は、参考人として、ユニオン出版ネットワーク副執行委員長の杉村和美さんに御出席をいただいております。
 まずお聞きしますが、この業界ではどのようなフリーランスの働き方が広がっているのか、御紹介いただきたいと思います。
○参考人(杉村和美君) 私たちの業界では、出版社やプロダクションに出社して社員と同じように働いている人がたくさんいます。契約は業務委託契約です。このような働き方をする人を私たちの業界では常駐フリーと呼んでいます。
 具体的には、出版社に自分のデスクがあり、パソコンも会社のものを使っています。勤務時間は、契約書には明記されていないことが多いですが、社員と同じ時間に出社しています。残業することもあり、週四十時間以上就業する人も多いです。必然的にその会社への専属性、経済的依存度は高くなります。
○井上哲士君 ありがとうございます。
 今御紹介いただいたこの常駐フリーと言われるような皆さんは正社員と変わらない働き方をされているわけですね。
 参考人、更に伺いますが、こうした方々が、この委託契約であるということで、正社員と比較してどのような不利益があるのか、御紹介いただきたいと思います。
○参考人(杉村和美君) どのような不利益があるかとの御質問ですけれども、まず、労働法が適用されないために有給休暇がなく、残業代も支払われませんし、産前産後休業もありません。また、労働保険や職場の健康保険、厚生年金保険にも入れません。私どもが取りました常駐フリーアンケート調査によれば、これらの保険に加入したいというニーズは非常に高いです。
 あと、解約規制がないために簡単に仕事を切られてしまいます。これを恐れて声を上げられないという不利益も被っています。
○井上哲士君 ありがとうございます。
 私の本会議の質問に対して後藤大臣は、フリーランスと呼ばれる方であっても、実態を勘案して総合的に判断した結果、労働者性があると判断されれば、労働基準関係法令に基づき労働者として必要な保護が図られると答弁をされました。
 しかし、実態どうなのか。杉村参考人が関わったこのフリーランスの労働者性に関わる相談事例ではどのような事例があったのか、御紹介いただきたいと思います。
○参考人(杉村和美君) 先ほど紹介しました常駐フリーのケースであっても、労基署等で労働者として認められるには三つの壁が立ちはだかっています。
 一つ目は、入口です。業務委託契約書を見せると、労働者ではないとして門前払いされるケースは依然として多いです。ここは労働者かどうかを判断するところではない、判断するのは裁判所だと言われた人も複数います。
 二つ目は、聞き取りの段階です。労働の実態を丁寧に調査するのではなく、形式的なところで判断されてしまうという壁です。例えば、源泉徴収をされているか、確定申告をしているか、労働保険に加入しているか、副業が禁止されているかなどが重視され、総合的に見て労働者ではないと判断されてしまうことがあります。
 三つ目は、判断の物差しである労働者性の判断基準が古く、出版業界の労働実態に合っていないためにはじかれてしまうという壁です。
○井上哲士君 労働者性の認定には労働基準監督署で三つの壁があるというお話でありました。
 今のを踏まえまして厚生労働省にお聞きしますが、この労働者性の認定に関わって労働政策研究・研修機構、JILPTの報告書があります。二〇二一年にまとめられた労働者性に係る監督復命書等の内容分析というものです。労働者性の判断を求めて監督署に寄せられた百二十二件について対応状況を分析しております。
 これによりますと、この判断状況について、労働者性あり、労働者性なし、労働者性の判断に至らずの三つに分類されておりますが、この労働者性の判断に至らずが労働基準監督署の定期監督の場合では三八・八%、労働者からの申告に基づく場合では実に六四・三%になっているんですね。
 先ほど、後藤大臣の答弁、本会議のときで、実態としては労働者性があると判断されれば保護させると答弁したわけでありますが、今紹介しましたように、労働者から申告があっても約三分の二はこれ労働者性があるかどうかの判断ができない、そこに至らないというのが示されているわけですね。これでは保護につながらないわけなんですね。
 こういうこの判断ができないということになっている背景には、私は監督官の体制の問題もあると思いますが、それ以外にはどういう要因があると厚労省はお考えでしょうか。
○政府参考人(青山桂子君) お答え申し上げます。
 御指摘の報告書は、労働政策研究・研修機構が厚生労働省から提供された監督復命書及び申告処理台帳を基に労働基準監督署において取り扱った労働者性に係る事案の分析を行ったものでございます。
 労働者性の判断につきましては、それぞれ個別事案における個別の実態を踏まえたものでございまして、判断に至らなかった理由は一概には申し上げられませんが、報告書におきましては、その労働者性の判断に至らずとされた事情として、例えば申告処理台帳の事案につきましては、本来、民事上の問題である賃金未払事案が大部分であり、その後、裁判所に労働者性の判断を求めて提訴する可能性も十分にある中で、乏しい情報下、情報の下で安易に労働者性の判断に踏み切れない事情が考えられるということや、一部の事業におきまして、請負労働者、雇用労働者、双方の働き方との混然一体的な働き方が広がっているようであるなどと記載されております。
 いずれにいたしましても、厚生労働省としましては、そのような状況下であったとしても、労働基準法等の施行をつかさどる労働基準監督署において必要な調査を尽くした上で労働基準法上の労働者性の判断を行うべきであると考えておりまして、労働者性の判断が適切になされるよう徹底してまいりたいと思います。
○井上哲士君 今、必要な調査を尽くした、尽くした上でと、こうおっしゃったわけですが、その前のところでは、裁判所で判断されるべき問題で、乏しい情報で判断するのはどうかということもありました。情報が乏しければ更に調査を求めればいいんですよ。それがやっぱりできていない。そして、この判断が、やはり三分の二はこの申告に基づく場合はされていないというのは、やっぱり大きな問題だと思うんですね。
 僕は、やっぱりここの根底には、現在の働き方に合わせて判断する基準が明確でないためにこの現場の労働基準監督官などが対応できていないというのが大きな問題だと私は思います。
 先ほど、参考人は、労働者性の判断基準が古くて出版業界の労働実態に合っていないと述べられましたけれども、もう少し具体的に御紹介いただけるでしょうか。
○参考人(杉村和美君) 御説明いたします。
 現在使われている判断基準は一九八五年に作られたものですが、この三十年間の情報通信技術の発展により出版業界の社員の働き方は様変わりしています。
 例えば、判断基準では場所的、時間的拘束があるかが問題になりますが、場所については社員にも在宅ワークが広がっています。時間についてもフレックスタイム制や裁量労働制が導入されている職場もあり、かなりフレキシブルな運用がされています。指揮命令の態様も多様化しており、在宅労働であってもスラックやチームズなどのチャットツールを使って指示や報告が出されています。
 そもそも編集や執筆、撮影、デザインなどの仕事では、業務の性質上、遂行方法や手順は本人の裁量に委ねられているという実態があります。社員がこのような働き方をしているのに、フリーランスは自宅で仕事をしているからとか、労働時間や仕事の仕方に裁量性が高いからという理由で労働者ではないとされてしまう実態があります。
○井上哲士君 社員の方の働き方が大きく変わってきているのに、フリーランスの方は一九八五年の基準のままになっていると。この基準が現場の実態に合っていないということを示す大変具体的なお話でありました。
 先ほど紹介したJILPTの報告書では、その冒頭で、近年の情報技術の急速な発展や人工知能やビッグデータ等の発展の中で、必ずしも使用者が指揮命令をしなくてもアルゴリズムに基づいて役務提供の態様をコントロールすることが容易となっているということなどを指摘をしております。そしてそこから、雇用契約が一般的だった分野に請負契約や委託契約が拡大し、これまでの指揮命令を中心とした労働者性判断基準では必ずしも労働者と判断し難いが、その就労の実態はこれまでの雇用契約に基づくものとほとんど変わらないような新たな就業形態の者をどう扱うべきかが、世界共通に大きな政策課題として持ち上がってきていると、このJILPTの報告自身が述べているわけですね。先ほどの参考人の指摘とも基本的に一致をするわけです。
 本会議でこの基準の見直しを求めたのに対して、厚生労働大臣は、フリーランスガイドラインで周知をしていると述べつつ、現行の労働者性の判断基準の枠組みが適切なものになっているか否かについて不断に確認してまいりますと答弁をされました。
 しかし、今の参考人のお話ありますように、これもう既に適切なものになっていないんですね。この、こういう現場の声、そして今紹介したJILPTの報告書の指摘も踏まえて、やはり基準の見直しを検討すべきだと思います。
 その際、例えば、出版フリーランスと美容師やエスティシャンとの働き方は違うわけですね。指揮命令の在り方も業界によって違うと。ですから、それぞれの業界の仕事の性質や労働実態に合った労働基準を、あっ、判断基準を作成をして労働基準監督官が判断しやすいようにするべきだと考えますけれども、この基準の見直しについて、厚生労働省、いかがでしょうか。
○政府参考人(青山桂子君) お答え申し上げます。
 労働基準法は、使用者に対し立場が弱い労働者が劣悪な環境で働くことがないように、労働基準法上、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者というように労働者を定義しまして、それに従いまして、事業に使用される者であるか否か、その対象として賃金が支払われるか否かについて、形式的な契約の形にかかわらず実態を勘案して総合的に判断しているものでございます。
 このように、労働者保護に即した判断基準でございまして、委員もおっしゃられましたとおり、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するガイドラインにより、できるだけ分かりやすく明確化をしているところでございまして、周知を図っております。
 監督署、労働基準監督署の話、先ほど来御指摘いただいていますけれども、ここでも労働者性の有無の判断を的確に行うべきことは論をまちませんが、それにつきましても、都道府県労働局を通じて徹底するよう指示していますが、引き続き取組を徹底してまいりたいと思います。
 その上で、今後、ガイドラインの運用状況や裁判例などの動向、今後の働き方の変化などの状況を注視しながら、現行の判断基準の枠組みが適切なものとなっているか否かについて不断に確認してまいりたいと思います。
○井上哲士君 先ほど言いましたように、労働基準監督署で、申告に基づいたものについて三分の二がこの判断に至らずという状況になっているわけですね。
 参考人からも、八五年の判断基準以降、正社員の働き方はうんと変わっているのにフリーランスの方については古い基準のままになっているというのが、私は既に適正なものになっていないと思うんですよ。
 例えば、芸能関係者についてとか建設業の手間請従業者については、一九九六年に労働基準法研究会の専門部会が判断基準作っていますよね。こういうことがやっているわけですから、更にこういう形で働き方を類型化をして、その類型ごとの判断基準の作成ということは急いでやるべきだと思いますけれども、重ねていかがでしょうか。
○政府参考人(青山桂子君) お答え申し上げます。
 おっしゃられたとおり、昭和六十年の労働基準法研究会の報告の後に一定の業種について考え方を示したこともございます。
 それに加えて、様々な裁判も出ていますので、我々については常日頃から裁判例等もウォッチしておりますけれども、今の基準を大きく見直すような裁判例等は承知していないところでございます。
 他方で、おっしゃるとおり、業種、業態によって実態は様々でございますので、労働者性の御相談、申告がありましたら、まず労使双方からよく実態、状況をお聞きするように監督署にも指示しておりますので、引き続き、細かな実態を把握しながら適切に判断してまいりたいと思います。
○井上哲士君 繰り返し言いますけど、やっぱり現場の監督官の方が判断できてない状況があるわけです。やっぱりそれを適切にやるように、例えば難しい事例は全部本部に、本庁に集めるとか、いろんなやり方あると思うんですね。急がれることですから、是非やってほしいと思いますが。
 加えてもう一本、内閣府にお聞きしますが、この本法案は、委託事業者という組織と受託事業者という個人の関係性に着目して取引関係を適正化しようというものであります。しかし、個人が組織と対等な契約関係を結ぶことはこの法案の仕組みをもってしてもやっぱり限界があると言わざるを得ません。
 そこで重要になるのが、同じ状況に置かれている個々のフリーランスが団結をして、優越的な立場にある業務委託事業者と団体交渉を通じて契約内容を適正化することだと思います。
 確認いたしますが、特定受託事業者は事業者とはいっても個人であって、労働組合法上の労働者性を排除するのではないと、こういう理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(青山桂子君) お答えいたします。
 今言いました団体交渉などを促進する労働組合法でございますが、労働組合法の労働者には、労働組合を組織し、集団的な交渉による保護が図られるべきものが幅広く含まれると解されておりまして、契約の形式のみにとらわれるものでなく、当事者の認識や契約の実際の運用を重視して判断することとされております。
 この法案の成立によりましてもこの労働組合法上の労働者性に係る考え方に変更はございませんで、労働組合法の労働者に該当するか否かは特定受託事業者でありましても個別の実態、事案に応じて判断していくこととなりまして、労働組合法上の労働者であると認められた場合には労働組合法上の保護が及ぶものでございます。
○井上哲士君 特定受託事業者になっても労働組合法上の労働者性が排除されるものではないということでありました。
 続いて、継続的業務委託における解約規制の問題についてお聞きします。
 参考人、お聞きしますけれども、法案に第十六条の解除の予告というのがありますが、この継続的業務委託に関する契約解除の予告と解除の事由を開示を規定しているわけでありますが、この条文についてどのように評価をされているでしょうか。
○参考人(杉村和美君) 第十六条についての御質問ですけれども、契約解除の予告と解除理由の開示だけでは不十分です。なぜなら、常駐フリーはもとより、一般のフリーランスであっても、継続的に業務を受けているケースは取引先への経済的依存度が高く、解除されるとたちまち生活が成り立たなくなってしまうからです。
 継続的業務委託の打切りは雇用労働者にとっての解雇と同じです。一か月前に通告があったからといって、すぐに次の仕事が見付かるわけではありません。それに、フリーランスには失業手当もなく、次の仕事が見付かるまでは貯金を切り崩して生活せざるを得ないのが実情です。
 実際に、契約解除、不更新の相談は、報酬不払、支払遅延に次いで多いです。契約解除の理由が開示されたとしても、それが納得できない理由であった場合、どのような救済方法があるのでしょうか。解約や不更新には、正当な理由が必要であることが定められていて初めて撤回を求める交渉等ができますし、安易で不合理な解約や不更新を防ぐものともなります。
 また、日本相撲協会事件や個人経営の新聞販売店の契約更新拒絶事件など、継続的契約の解消の制限についての裁判例が積み上げられてきています。
 ついては、継続的契約の解除や不更新には合理的な事由ないしやむを得ない事由等の正当な事由が必要であるということを盛り込んでいただきたいというふうに思います。
○井上哲士君 内閣府、お聞きしますが、今ありましたように、第十六条第二項は、単に契約解除の事由の開示を求めるだけにすぎません。これでは、どんな理由があっても開示さえすれば契約解除も自由にできるということになるわけで、これではフリーランスは保護されないというのが今の参考人の御意見でありました。
 参考人が述べたように、正当な事由を開示するということにするべきではありませんか。
○政府参考人(宮本悦子君) お答え申し上げます。
 フリーランスと発注事業者間の取引は事業者間取引でございまして、その契約関係の解消は取引自由の原則の中で契約当事者間に委ねられているものであることから、一般に取引法制において、解除事由によって解除を直接制限することは法制上の課題や発注控えのおそれなどの課題が多いと認識してございます。
 一方で、一定期間取引を継続することに伴いまして発注事業者への依存度が高まるが、こうした中で契約を突然解除などされた場合、フリーランスは次の契約先を探す必要が生じるなどの時間的、経済的損失を被ることから、中途解除等の事前予告の規制を設けることとしたところでございます。まずは本法案の適切な運用、定着を図ってまいりたいと考えてございます。
 なお、一方的な契約解除によりトラブルが生じた場合には、フリーランス・トラブル一一〇番に相談し、法律上取り得る対応等についてアドバイスを求められることについても周知などを図ってまいりたいというふうに考えてございます。
○井上哲士君 やっぱり非常に弱い立場にあるわけでありますから、一般の取引自由とまた違うことで対応すべきだと思うんですね。
 さらに、ハラスメント対策についてお聞きしますが、第十四条では特定業務委託事業者に対してハラスメント対策を求めておりますが、参考人にお聞きしますが、このフリーランスに特有のハラスメントとしてどのような実態があるのか、御紹介いただきたいと思います。
○参考人(杉村和美君) フリーランス特有のハラスメントとして、経済的嫌がらせというのがあります。経済的嫌がらせというのは、報酬を支払わなかったり値切ったりする行為や、これらの経済的不利益を与えると示唆することです。
 二〇一九年に私たちを含むフリーランス三団体が実施したフリーランス、芸能関係者へのハラスメント実態調査結果のハラスメント内容では、経済的嫌がらせが第三位となりました。出版、新聞、印刷、広告関連に限ると第一位となっています。具体例を三つ挙げます。一つ目、支払遅延について尋ねたら、お金のことについてあれこれ言うなら仕事を与えないと言われた。二つ目、新規案件をこちらが受ける意向を見せないと過去の報酬を支払わないような圧力を掛けられている。三つ目、仕事をした後で金額を値切られる、ほかにも仕事を振る相手はたくさんいますと含みを持って脅されるなどがあります。
○井上哲士君 非常に深刻な実態だと思うんですが、今参考人が述べられた経済的ハラスメントは、この第十四条第三号の取引の優越的な関係を背景とした言動に当たると思いますが、内閣府、いかがでしょうか。
○政府参考人(宮本悦子君) お答え申し上げます。
 本法案の第十四条第三号におきましては、発注事業者からフリーランスに対して行われるパワーハラスメントを規定し、発注事業者に対して対策を講ずることを義務付けてございます。パワーハラスメントに該当する発注事業者の行為につきましては、一、取引上の優越的な関係を背景とした業務についての言動であって、二、業務遂行上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、三、フリーランスの就業環境が害されるものといった要件を満たすものとすることを想定してございます。
 要件の詳細は、本法案の成立後、厚生労働大臣の定める指針において明確化する方針でございますが、これらの要件を満たせば、報酬等の取引条件の引下げに関する言動につきましてもパワーハラスメントに該当すると考えてございます。
○井上哲士君 該当し得るということでありますが、こうした経済的ハラスメントについて認める判決も出されたと聞いていますが、参考人、御紹介いただきたいと思います。
○参考人(杉村和美君) 御紹介します。
 二〇二二年五月二十五日に判決の出たフリーライターAさんのセクハラ、パワハラ、報酬不払事件、アムール事件といいますが、この裁判は、原告Aさんが書いた記事を被告会社のホームページにアップしておきながら、報酬支払の段になって、記事の質が低いとか、このくらいの仕事で報酬を要求するななどと叱責し、挙げ句の果てに報酬支払を拒否したという事案です。
 これについて東京地裁は、自己の指示の下に業務を履行させていたにもかかわらず、正当な理由なく報酬を支払わないことは経済的に不利益を課すパワハラ行為に当たるというふうに認定しました。
 以上です。
○井上哲士君 重要な判決だと思います。
 こうした判決も踏まえて、今後の指針作成の折には、この経済的嫌がらせをパワハラの類型に加えて、どういうものか周知するべきだと思いますが、内閣府、いかがでしょうか。
○政府参考人(宮本悦子君) お答え申し上げます。
 本法案におきましては、発注事業者の言動であってフリーランスの就業環境を害するものをハラスメントと、ハラスメント行為として類型化し、発注事業者に対してハラスメント対策を講ずることを義務付けてございます。
 ハラスメント対策につきましては、厚生労働大臣の定める指針などにおきまして、ハラスメントの定義や発注事業者が講ずべきハラスメント対策の具体例をお示しすることとしております。
 本法案が成立した場合には、関係者の御意見を伺い、フリーランス取引の実態を踏まえて指針などを策定していくこととしておりますけれども、その中で、御指摘のございましたような、報酬等の取引条件の引下げに関する言動であってもパワーハラスメントに該当し得る場合が存在するという点を明確化することにつきまして検討してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 是非明記していただきたいと思います。
 最後、後藤大臣にお聞きしますが、このフリーランスや芸能関係者のアンケート調査では、このハラスメント被害を相談しなかった理由として、どこに、誰に相談するのか分からなかったというのが三七・八%に上るんですね。
 派遣労働の場合は、モデル就業条件明示書において、派遣元が派遣労働者に出すこの就業条件明示書に苦情処理申出先として、対応する派遣元の担当者や連絡先を明記するようにしてあります、記入するようにしてあるんですね。
 こういうものも参考にして、この第三条の発注時の取引の明示の内容にこの契約上のトラブルでハラスメント被害に遭った場合の委託事業者の対応者や相談窓口を加えるべきではないか、また、そういうのがない場合はフリーランス・トラブル一一〇番やハラスメントに関する公的な相談窓口を明示させるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) 本法十四条に基づきまして、発注事業者はハラスメント被害等に遭った場合の発注事業者の対応者や相談窓口等を整備することが義務付けられております。
 そのような相談窓口等の情報については、例えばフリーランスへの発注時に周知することなどが考えられるわけでありますけれども、関係者の意見を聞き、発注事業者及びフリーランスの実情に即した周知方法を厚生労働大臣の定める指針等でお示しすることを検討してまいりたいというふうに思います。また、フリーランス・トラブル一一〇番を始めとした公的な相談窓口については、関係省庁のウェブサイトやSNSへの掲載、関係者への説明会における紹介など、様々な方法で広く国民に知っていただけるようにしっかりと周知行動を行ってまいりたいと思います。
 引き続き、様々な業種の取引実態を踏まえつつ、発注事業者の負担と取引適正化の両面でバランスを取りながら、関係者の意見をよく確認させていただいて、具体的な事項を定めることとしたいと思います。
○委員長(古賀友一郎君) 時間ですので、おまとめください。
○井上哲士君 終わりますが、労働者性の拡充とともにこの改正内容がきちっと執行されるような体制なども含めて強く求めまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

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