○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
私は、会派を代表して、新型インフルエンザ等特措法及び内閣法の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。
本法案は、次の感染症危機に対する政府の体制づくりとして、一元的に感染対策を指揮する司令塔組織である内閣感染症危機管理統括庁を設置するものであります。
庁の名前は付いていますが、行政組織的にも人的にも、現行の内閣官房コロナ対策推進室と実質的に変わりがありません。次の感染症危機に備えるために必要なことは、形だけの組織いじりではなくて、これまでの政府の取組についての徹底した検証と科学的知見に基づく対策の強化ですが、審議を通じて必要な反省や改善がないことが明らかになりました。
昨年の有識者会議報告書でも、専門家との意思決定プロセスや科学的知見に基づく評価、分析に問題がなかったと言えないと指摘をされました。
濃厚接触者の待機期間の短縮について、後藤大臣も、分科会での報告が事後になったということは誠に申し訳なかったと答弁されましたが、結果についての根本的な反省が政府にはありません。しかも、法案には、専門家の知見を生かす担保がありません。
次の感染危機に備える上で、第六波以降の感染者の急増、とりわけ高齢者施設での施設内療養者の死亡事案が多数生じた事態の検証と対策強化は不可欠です。参考人からは、原則施設内療養だったという実態が指摘をされました。質疑において、国の責任で全国の施設での実態や亡くなった方の詳細を調査し、検証するよう求めましたが、調査について総理からも明確な答弁はありませんでした。
こうした事態の背景には、医師や看護・介護人材の絶対数が不足して、平時の医療体制に余裕がなく、緊急時の対応ができなかったことがあります。ところが、総理は、医療機関の役割分担、連携、医療従事者の弾力配置を述べるのみで、人員体制を強化、増員することについては言及がありませんでした。これでは、幾ら司令塔を強化すると言っても、現場での危機への対応はできません。
また、次に備える点でも、施設内療養を受け入れた高齢者施設への支援も欠かせません。審議の中で、こうした施設の減収に対する支援が全くないことが明らかになりました。必要な支援をするべきであります。
以上、これまでの感染症対策に反省も改善もないままに、形だけの組織いじりにすぎない本法案に反対を表明し、討論とします。
内閣委員会(インフル特措法改定案に対する反対討論)
2023年4月20日(木)