○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
孤独、孤立の問題は、原因や背景が多岐にわたり、また複雑に絡み合う場面が多いために、その対策を推進する上では、行政だけではなくて、支援に取り組むNPOを始めとする多様な関係団体、あるいは団体間の上下ではなくてフラットな連携があってこそ、その知見やノウハウを生かすことができると考えます。さらに、そうした対策を機能させていく上で、民間任せにするんではなくて、国や地方自治体が責任を持って支援していくことが欠かすことができません。今日は、こうした観点から本法案による孤独・孤立対策の推進の在り方について質問をいたします。
まず、法案の第十一条は、国及び地方公共団体が関係者相互間の連携と協働を促進するために必要な施策を講じるとしています。ここに言う必要な施策とは具体的に何を指すのか。また、第十五条の孤独・孤立対策地域協議会とその内容や役割はどのように異なるのか、まずお答えください。
○政府参考人(山本麻里君) お答えいたします。
本法案第十一条に基づく施策としては、官民連携のプラットフォームを想定しております。
この官民連携のプラットフォームは、孤独・孤立対策に関わる官民の幅広い関係機関等が参画し、それぞれが対等に相互につながる水平型連携の下で、孤独・孤立対策の効果的な施策を推進する基盤となるものです。
一方、本法案第十五条に基づく孤独・孤立対策地域協議会は、こうした関係機関等が連携して取り組む活動の中の一つであり、当事者等への支援に関係する機関等で構成され、当事者等への具体の支援内容に関する協議を行い、連携した支援を実施するものです。
この協議会における連携した支援のためには、関係者間の信頼関係が不可欠であると考えており、官民連携のプラットフォームで情報共有や意見交換を通じて、顔の見える関係を築く中で信頼関係を構築していただき、協議会における連携した支援へとつなげていただくことを想定しております。
○井上哲士君 第十一条、十五条の関係に答弁があったわけですが、では、この第十一条の当事者等への支援を行う者、地域住民その他の関係者や、この第十五条の当事者等に対する支援に関する機関及び団体とは、それぞれどのような人々や団体を想定をしているんでしょうか。
○政府参考人(山本麻里君) お答えいたします。
本法案第十一条で定めている連携、協働の主体となる当事者等への支援を行う者、地域住民その他の関係者としては、NPO、社会福祉協議会、社会福祉法人といった当事者等への支援に携わる関係者のほか、地域住民、民間企業も含め、幅広い分野の方々や団体を想定しております。
一方で、法案第十五条の孤独・孤立対策地域協議会は、こうした関係者が連携、協働して取り組む活動の中の一つであり、当事者等への具体の支援内容に関する協議を行い、連携した支援を実施するものです。このため、協議会を構成する関係者は、先ほど申し上げた法案第十一条の関係者より狭く、第十五条では、当事者等に対する支援に関係する機関及び団体などと規定しております。具体的には、第十一条で想定しているNPO等の関係者のうち、当事者等への具体の支援に関係する団体等を想定しております。
こうした考え方につきましては、地方自治体を始めとする関係者の御意見も聞きながら整理をし、法案成立後の法の施行までに通知等でお示しすることとしております。
○井上哲士君 そこで、この連携プラットフォームや孤独・孤立対策地域協議会を構成する団体等についてお聞きいたします。
各自治体には、例えば、子ども・若者支援地域協議会や障害者自立支援協議会、要保護児童対策地域協議会、あるいは一人親で困難を抱える女性支援のための地域協議会等々、様々な地域協議会や支援会議があります。これらは、支援対象の性質から、社会福祉協議会や社会福祉法人など福祉分野に関係する団体で構成されている場合が多く、また、こうした構成団体が行政からの事業委託を受けているというケースが非常に一般的ではないかと思われます。
そのため、この孤独・孤立対策に関するプラットフォームや協議会をつくるに当たって、行政との関わりが薄かったり、それから規模が小さい団体からは、自分たちには声が掛からないのではないかと、こういう心配の声も寄せられております。
一方、私の妻も、地域で老人福祉委員もやりながら、市民団体の様々な自主的な取組にも参加をしているんですね。独り暮らしのお年寄りの中には、ずっと仕事で地域になじみがなかったという方とか、行政に関係する団体にはちょっと距離を置く方々がいらっしゃいます。そういう人も市民の自主的な取組には参加をされている。また、その逆という方もいろいろいらっしゃるわけですね。
ですから、孤独・孤立対策が全ての国民を対象にするという点でも、つまり、行政に対しての距離感の違いとか、そういう方々も全て対象にするという点でも、多岐にわたる要因や背景を持っているという点でも、福祉などの特定の分野の団体に偏ったり、行政との関わりの濃淡や組織の規模で排除したりすることなく、地域の実情に応じた多様な団体が関与できる、そういう形にするべきだと考えますけれども、大臣のお考え、いかがでしょうか。
○国務大臣(小倉將信君) 孤独、孤立の問題は、複合的な要因を背景として多様な形やニーズが想定され、当事者等の状況に応じて多様なアプローチや手法による分野横断的な対応が求められていると思います。
こうした中、法案の目的や基本理念の規定で定めておりますとおり、孤独・孤立対策は、社会のあらゆる分野において推進することが重要であり、他の関係法律による施策と相まって、総合的な対策に関する施策を推進することとしております。このため、第十一条、第十五条、こういったことで規定されておりますそれぞれの主体につきましては、分野や組織形態などを問わず、幅広い主体に参画いただくことが重要であります。
したがいまして、委員が御懸念されるような、例えば福祉などの特定分野の団体に偏りましたり、行政との関わりの濃淡や規模の、組織の規模によって一部の団体が排除される、このような運用にならないことを気を付けなければいけないと思っております。
先ほど、参考人からもお話し申し上げたかもしれませんが、このような考え方については、地方自治体を始めとする関係者や有識者の意見も聞きながら整理し、法案成立後の法の施行までに通知等でお示しをしたいと思っております。
○井上哲士君 その上で、プラットフォームや協議会における行政と各団体の関係とか、さらには団体相互の関係についてもお聞きいたします。
先ほどの答弁で、プラットフォームというのは水平連携ということもありましたけど、従来、どうしても官民連携といいますと、行政が上位にあって、各団体の取組も行政が想定した範囲での連携にとどまっていたり、各団体の相互関係は希薄と、つまり、行政とのつながりの関係という、そんなパターンが多いということもお聞きをしております。
地域協議会の運営の在り方についても、官民対等な関係で、様々な分野の団体相互の連携も図られるような、そういう在り方が望ましいと考えますけれども、この点はどうでしょうか。
○国務大臣(小倉將信君) 令和四年二月に国が設立をしました官民連携プラットフォームにおいて、官民NPO等の関係者で政策立案の議論を行った中でも、委員御指摘のように、行政と民間団体の関係については対等なパートナーシップを構築するという基本的な考え方に立ち、広く多様な主体が参画し、つながりやすい関係となることを目指すことが提言されたところであります。
こうしたことを踏まえ、官民連携プラットフォームや地域協議会の運用においても、官民の幅広い主体が参画をし、それぞれが対等に、相互につながるいわゆる水平型連携の下で効果的な施策を推進していくことが何よりも重要と考えております。
こうした考えも、先ほど申し上げたような通知等でお示しをしたいと考えています。
○井上哲士君 先ほどちょっと申し上げましたけど、支援を受ける側からしても、そういういろんな方がいらっしゃって、行政との距離感との違いとかある中で、そういう点でも大事だと考えますけど、その点、大臣のお考え、いかがでしょう。
○国務大臣(小倉將信君) そういう意味では、孤独、孤立の問題というのは、先ほど申し上げたように、従来、一生懸命やってくださっている福祉分野以外の様々な多様な主体の皆様方に御参画をいただいて、様々なケースにおいて、孤独、孤立を予防し、あるいは解決をしなければいけないということを考えますと、行政のこれまで関わりが薄い方に対して、まさに人材育成の観点からもしっかり支援をしていくことが重要と考えております。
○井上哲士君 そこで、このNPO等の民間団体や地方自治体への取組の支援についてお聞きしますけれども、先日の私への答弁で、この法案によって内閣府に孤独・孤立対策の事務が移管されるために、こうしたNPO等の民間団体や地方自治体の取組への支援についても本格的な事業を行うと御答弁をされました。
内閣府が行うNPO等への支援には、NPOの運営やスタッフの人件費等に係る財政的支援も含まれるのかどうか。それから、この支援を行うNPO等から、現代の委託費の水準では人件費がごく僅かしか捻出できないと、こういう声も寄せられておりますけれども、まさにこの本格的な事業を行うという中でこうしたものに、こういう声にどのように応えていくのか、お答えください。
○国務大臣(小倉將信君) NPO等への財政的支援につきましては、本法案の第十三条に規定をさせていただいております。今、内閣官房が実施をしております地域における孤独・孤立対策に関するNPO等の取組モデル調査、あるいは孤独・孤立対策活動基盤整備モデル調査におきましては、NPO等が提案をする取組の実施に必要な人件費や事業費について支援の対象とさせていただいております。
当然、内閣府への事務移管後のNPO等への支援につきましては、これらのモデル調査の取組状況等も踏まえます。その上で、孤独・孤立対策に関するNPO等の諸活動への支援策の在り方について今後検討していきたいと思っております。
○井上哲士君 今年度は一定の予算組まれておりますが、じゃ、今後、そういうことも検討踏まえて様々なNPOへの支援も含めて拡充をしていく決意だということでよろしいでしょうか。
○国務大臣(小倉將信君) この法律の中に、先ほど申し上げた十三条に、財政的な支援、これについて言及をしていただいておりますので、当然、担当大臣といたしましては、孤独・孤立対策に取り組むNPOへの支援が更に充実をするように努めてまいりたいと考えています。
○井上哲士君 この支援の中で、孤独・孤立対策に関するNPO等が行う支援では、相談を受ける側の技術の向上であるとか担い手を育成をするということが求められていると思うんですね。法案の第十二条でも、当事者等への支援を行う人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講じるということが規定をされておりますけれども、こうした支援を行う人材の確保や養成、資質の向上、このことへの重要性の認識と、そして具体的にはどういうことがここで想定をされているのか、お答えください。
○国務大臣(小倉將信君) まず認識から答弁をさせていただきます。
孤独・孤立対策においては、孤独、孤立の問題を抱える当事者や家族等に対して、一人一人の相談時の心理的負担に留意しつつ、多様な状況に即して充実した相談支援を行えるよう、こうした相談支援に当たる人材の確保、育成及び資質の向上を図ることは大変重要と認識しております。したがいまして、本法案の第十二条では、当事者等への支援を行う人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるよう努める旨を規定をさせていただきました。また、当事者等への支援を行う人材としては、福祉や医療など、孤独、孤立の当事者等に関わり得る既存の様々な支援に当たる専門職のほか、家族や友人など、当事者の周りや身近にいる人などを想定をいたしております。
その上で、このような人材の確保、養成、資質の向上に必要な施策としましては、具体的には、当事者等の支援に当たる者が孤独、孤立に関する理解や知識を習得できるような工夫を行いますことですとか、家族や友人など、当事者の周りや身近にいる人が理解を深めて、当事者の状況に気付き、手助けできるようにするなど、声を上げやすい、声を掛けやすい環境整備に向けた取組、こうした取組などを想定をいたしております。
○井上哲士君 まさに現場で支援をされる方が必要な養成を受けて取組をすると同時に、それをしっかり、連携もするし、行政が支援をしていくという重層的な取組で是非この孤独・孤立対策が前進をしていくように強く求めまして、質問を終わります。
内閣委員会(孤立・孤独対策法案とNPOへの支援等について)
2023年5月30日(火)