○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
防衛力強化資金についてお聞きします。
先日の連合審査で鈴木大臣は、今年度に防衛力強化のために四・六兆円の税外収入を確保したとした上で、令和六年以降におきましても年平均〇・九兆円程度の財源を確保できるよう、今後も引き続き更なる税外収入の確保に努めていきたいと答弁をされております。
そこでお聞きしますが、来年度以降、防衛力強化資金に繰り入れる税外収入について、具体的にどのような見通しを持っておられるでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 税外収入でございますが、令和五年度予算におきましては四・六兆円、これを確保するとともに、防衛力強化資金を通じまして防衛力の整備に計画的、安定的に充てていくこととしております。
そして、お尋ねの令和六年度以降につきましては、防衛力強化資金への繰入れに充てることのできる税外収入につきましては、現時点で具体的に見込まれるものはないわけでありますが、令和五年度予算において、今後五年間の防衛力強化のための経費に充てられる税外収入四・六兆円を確保したことも踏まえまして、令和十年度以降においても、防衛力強化資金から年平均〇・九兆円程度の安定財源を確保できますように、今後も引き続き更なる税外収入の確保に努めていきたいと、前回御答弁したのと同じになって恐縮でございますが、そう考えております。
○井上哲士君 今、令和十年度以降と言われましたけど、令和六年度以降ということでよろしいですね。
○国務大臣(鈴木俊一君) 六年度以降ということで。
○井上哲士君 来年度以降の繰入れについて、現時点での具体的に見込まれるものはないということでありました。
一方で、昨年十二月の八日に政府与党政策懇談会が開かれて、席上、総理は、歳出改革や特別会計からの繰入れ、コロナ対策予算の不用分の返納、そして国有財産売却などの工夫を先行して始めるよう述べております。
この会議には財務大臣も参加をされているわけですが、この会議を受けて、国有財産の売却について各省庁とこれまでどのような協議をされてきたんでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 昨年末の政府与党政策懇談会において、岸田総理から、新たな防衛力整備計画の財源確保のため、歳出改革や特別会計からの受入れ、コロナ対策予算の不用分の返納、国有財産売却などの工夫を行うこと、これが示されたところでございます。
この会議を受けまして、国有財産の売却について各省庁と協議したわけではございませんが、総理から示された考え方の下で、財務省において売却可能でかつ防衛財源になり得る国有財産について精査をした結果、臨時に多額の売却収入が見込まれていた大手町プレイスの売却収入〇・四兆円について防衛力を強化するための財源として確保をすることとしたところであります。
○井上哲士君 財務省として精査をした結果、今年度は大手町プレイスを計上したということでありますが、一方、政府は今国会に株式会社商工中金法改正案を提出をされておりまして、衆議院から送付をされてきております。二年以内のできるだけ速やかに政府が保有する商工中金の株式を売却することなどを定めた法律であります。
商工中金は、預金、決済、貸付けのフルバンク機能を持つ唯一の政府系金融機関で、行政改革の一つだとして民営化がうたわれ、政府保有株の処分について、当初の期間は五年から七年と定められて、がめどとされておりました。しかし、二〇一五年改定時には、当分の間保有するとされて、当時の宮沢経産大臣は、民間による危機対応が十分に確保されるまでの当分の間、商工中金に危機対応業務を義務付け、政府が必要な株式を保有すると、その理由を答弁をされております。
じゃ、その状況は変わったのかと。衆議院の法案質疑では、危機対応業務に参入した民間金融機関は現在もなく、今後のめども立っていないと答弁をされました。つまり、状況は二〇一五年当時と基本的に変わっておりません。にもかかわらず、なぜ二年以内に政府保有株式の売却ということなんでしょうか。
○大臣政務官(里見隆治君) 御答弁申し上げます。
前回、二〇一五年の改正当時、民間金融機関が指定金融機関に参入しておらず、商工中金が危機対応業務を担う必要があり、またその的確な実施には、当時の財務状況を踏まえ、政府の株式保有による信用力向上を通じた安定的な資金調達が必要であることから、政府は当分の間、必要な株式を保有する旨が規定されたものでございます。この点、御指摘の、民間金融機関が指定金融機関に参入しておらず、商工中金が危機対応業務を行う、担う必要性は変わっておらず、今回の改正法案でも責任を、責務を課すこととしております。
しかしながら、他方で、不正事案後の経営改革の結果、商工中金の利益剰余金は二〇一五年の約二倍に増加をし、また政府の信用力を背景とする商工債による資金調達依存度も三割減少など、その財務状況が大きく改善をしております。こうしたことで、商工中金による危機対応業務の的確な実施との観点からは、二〇一五年改正時に比べ、政府による株式保有の意義が大きく低下をしていることも踏まえ、今回、政府保有株式の全部を処分をすることとしたものでございます。
今回の改革は、不正事案発覚後の二〇一七年から五年以上掛けて議論をし、全国中小企業団体中央会などの要望も踏まえて形にしたものでございます。特に、民間ゼロゼロ融資返済本格化により、再生支援のニーズが高まると見込まれる今だからこそ、商工中金の再生支援など、機能強化を図る改革が必要でございます。その際、機能、出資機能を銀行並びに拡充をし、支援の幅を広げるだけではなく、政府保有株式の全部売却により、意識改革により職員が一歩踏み込んだ支援を行うことで支援の質の向上を図ることも重要でございます。
また、民間金融機関によるイコールフッティングの懸念も踏まえ、業務制約の見直しと政府保有株式の全部売却を同じタイミングで実施することが必要でございます。
以上を踏まえまして、政府保有株式の全部処分を今行うべきと考えております。その上で、政府保有株式の売却方法の決定や手続など、一定期間が必要なものとなるため、過去の非上場株式の売却に要した期間も踏まえ、公布の日から二年以内に全部売却することを基本方針としております。
○井上哲士君 長々と答弁されましたけれども、民間の機関が参入していないという事態は全く変わっていないんです。五年間検討してこられたと言いましたけれども、その検討の中で、二〇一八年、第三者委員会として商工中金の経営及び危機対応業務に関する評価委員会が設置をされて、昨年八月に報告書出しているんですね。この報告書では、民間金融機関による指定金融機関への参入がない中、商工中金には引き続き危機対応業務の実施をする責務があると、ここまで言っているんですよ。それがあっという間に変わってしまったと。
財務大臣、お聞きしますけれども、この商工中金の政府保有株式の売却で得られた資金というのは防衛力強化資金に繰り入れることは可能ですか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 今、国会で御審議いただいております改正案が成立すれば、他の政府保有株式の売却事案と同じように、商工中金株式の売却に向けた手続、これは検討されることになるんだと承知をしております。
そして、この売却収入につきましては、法改正を行うことなく防衛力強化資金に繰り入れることはこれは可能ではありますが、実際の取扱いにつきましては、売却に向けた手続の進展と併せて予算編成過程において議論されることとなると、そのように考えております。
○井上哲士君 やっぱり可能であるということですよ。
なぜ、こういうこの法案が出されたかと。この法案は、昨年の十二月十六日以来七回開かれた新たなビジネスモデルを踏まえた商工中金の在り方検討会の報告書に基づいて、三月に閣議決定して出されました。しかし、この検討会の議事録を見ましても、議事概要を見ても、委員から二年以内に売却という議論はありません。ところが、七回目の検討会で取りまとめられた報告書では、いきなり二年以内に完全売却ということが盛り込まれるんですね。何でこういうことになったのかと。
衆議院の法務の、法案の質疑の中で、第六回目の検討会で、二年以内の売却というのを提案したのは検討会の委員ではなくて事務局、つまり中小企業庁だったということを認めました。しかも、驚くべきことに、このときの事務局提案については、提出資料は今も非公開になっているんですよ。公開できないような事情があるのかと思わざるを得ません。
先ほど紹介した十二月八日の政府与党政策懇談会での国有財産売却などの工夫を先行して始めるという総理の発言、次いで十二月十六日に安保三文書の閣議決定が行われて、この軍拡財源の確保法案を通常国会に出すという方針が明らかになりました。その同じ十二月十六日にこの第一回の検討会が開かれているんですね。そして、その後、僅か二か月の検討会で、二年以内売却という報告書が事務局提案に基づいて出されたと。
当初、経産省は、今国会にこの法案は検討中と言っていたんです。それが急に出されることになりました。こういう流れを見れば、四十三兆円の軍事費確保のために国有財産売却を成功する、先行すると、こういう総理の発言に沿ったものではないかと。現実に繰入れは可能だと、こう言われています。経産省、いかがですか。
○大臣政務官(里見隆治君) 商工中金法の改正案につきましては、今国会への提出予定案をお示しした本年一月十九日時点においては、商工中金改革を議論する政府の検討の場において議論が続いている状況であったため、検討中の法案としていたところでございます。
その後、商工中金に関する検討会において関係者の意見が集約をされ、本年二月十七日にコロナ禍からの立ち直りに向け商工中金がノウハウを有する経営改善、再生支援の強化の観点を踏まえ、今このタイミングで改革を実行するべきであるとする報告書が取りまとめられたことも踏まえまして、今国会に法案を提出したものでございます。
その上で、商工中金改革は、商工中金の経営改革を進める中、不正事案発覚後の二〇一七年から五年間、五年以上掛けて議論をし、全国中央会などの中小企業側からの要望も踏まえて改革案を形にしたものでありまして、政府保有株式の売却は防衛財源確保とは全く関係がございません。
○井上哲士君 時間なので終わりますが、先ほど言いましたように、評価委員会では引き続きこの危機業務を担うと言っていたものが、その後、僅か二か月間の検討会で、しかも事務局の提案でいきなり二年間で売却するということが盛り込まれたんですよ。これが明確な事実でありまして、私は、軍拡財源のために中小企業を支える予算や仕組みまで差し出すようなことは絶対あってはならないと、そのことを申し上げまして、時間ですので終わります。
財政金融委員会(軍拡財源確保法ー軍拡財源のための国有財産の売却について)
2023年6月 6日(火)