○井上哲士君 私は、日本共産党を代表し、いわゆる国土強靱化基本法の一部改正案に対する反対討論を行います。
反対理由の第一は、事前防災、首都機能の維持などの口実で大型の開発事業を推進するものだからです。
改正案は、新たに中期計画を新設することとしていますが、基本計画に盛り込まれた対策の中から重点的かつ集中的に取り組む対策として策定されるにすぎません。
中期計画の基になる次期基本計画の骨子案や素案には、国土形成計画と一体として推進するとして、リニア中央新幹線、新東名、新名神等により三大都市圏を結ぶ日本中央回廊の形成を新規に追加しています。政府が警鐘を鳴らす南海トラフ巨大地震などで深刻な被災が指摘されているリニア中央新幹線を始めとした大型の開発事業を防災・減災の名で進めることは許されません。
理由の第二は、国の策定する国際協力に資する対策が優先をされ、国民のための身近できめ細かい対策が後回しにされることです。
今回の能登の地震など、震度六や七クラスの地震は日本中どこでも起きると指摘されています。
養護施設や学校、高齢者施設、災害対策本部が設置される庁舎や指定避難所などが、津波や洪水、土砂災害など災害の危険が想定されている地域に多く立地されており、早急な対策が求められています。にもかかわらず、例えば介護施設で見ると、立地場所での耐震化や降水対策ではなくて、抜本的な対策である危険地域からの移転は、地方自治体が求めているにもかかわらず、強靱化対策の支援対象とはされません。国土強靱化の対象とされているのは、非常用自家発電施設の整備、耐震化、止水板の設置やブロック塀の補強対策など、国から示されている事業に限定をされております。
国民の命と暮らしを守る防災・減災対策は、地域で必要とされる対策を住民等の参加で計画し、実行することが不可欠です。必要なことは、国による上からの対策の押し付けを改めて、地域の住民や地方自治体が取り組もうとすることを国が寄り添って支援をすることであります。
このことを指摘し、反対討論とします。
災害対策特別委員会(国土強靱化基本法改定案に対する反対討論)
2023年6月 9日(金)