○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
私は、会派を代表して、国家公務員の一般職給与法等改正案に賛成、特別職給与法等改正案に反対の討論を行います。
激しい物価高騰に国民生活が深刻な打撃を受ける中、特別職給与法改正で岸田総理や大臣などの給与を引き上げることに国民の怒りの声が広がっています。
三十年に及ぶコストカット型経済を進め、非正規雇用を拡大し、日本を賃金の上がらない国にしてきた自民党政治の責任は重大です。岸田総理は、その反省もなく、国民が最も望む消費税減税には背を向けて、軍拡増税や社会保険料の負担増を押し付けようとしています。その一方で、賃上げの流れを止めないために必要だなどとして、首相自らの給料を引き上げるということなど、到底国民の理解は得られません。
国民の怒りが広がる中で、引上げ分は自主返納するとしていますが、余りにもこそくです。返納するならば、なぜ法案はそのままなのか、国民は納得しておりません。特別職の給与引上げの法案は廃案にすべきであります。
賃上げの流れを止めないためと言いますが、日本の賃上げは一体どうなっているのか。実質賃金は、一九九一年から二〇二二年の三十年間で、アメリカは一・四八倍、イギリスは一・四六倍、フランスは一・三三倍、ドイツは一・三〇倍です。ところが、日本は一・〇三倍にすぎません。この十年間だけで見ると、実質賃金は増えるどころか、年間二十四万円も減っています。世界でも特異な国になっています。
今年の春闘でも、民間の賃上げは物価上昇に追い付いていません。公務は民間の水準にも届いていません。その下で、七日に発表された勤労統計の九月速報値では、実質賃金は前年比でマイナス二・四%でした。十八か月連続でのマイナスです。今必要なのは、経済政策を抜本的に転換し、政治の責任で賃上げと待遇改善を進めることです。
一般職の給与法案は、給与を引き上げるものであり、賛成としますが、僅か一・一%の賃上げで、全く不十分な内容です。国家公務員の給与は、保育士の公定価格や地方公務員、民間企業の賃金に直接影響を与え、地域経済にも広く波及します。賃上げの流れを止めないと言うならば、公務から率先して物価高を上回る抜本的な賃上げを実施し、賃上げの流れをつくることこそ政治の責務であります。
ところが、実態はどうか。初任給は引き上げられますが、高卒初任給の時給は九百二十二円で、都市部の八都府県では地域別最低賃金を下回ったままです。地域手当の非支給地域では、大卒で七千円、高卒で三千円、民間より低いままです。民間の賃上げの足を引っ張りかねない事態です。直ちに改善が必要です。
全労連などの調査でも、最低生計費は全国どこでも同水準であることが明らかになっています。にもかかわらず、不合理な賃金格差を生じさせている地域手当も問題です。
埼玉県に自宅のある国交省の職員の方のお話を聞きました。地域手当一級地の東京の職場から地域手当非支給の栃木県の事務所へ異動となると、地域手当や超過勤務手当割増し分がカットされ、一年間の激変緩和措置後、同じ住まいから通勤しているにもかかわらず、月給はそれまでの四分の一を超える八万二千六百円も減ったとのことでありました。
そうした下で、職員の中では、地域手当不支給の地域の事務所は地域手当が出る地域の事務所よりも格下であるかのように感じさせて、人事異動への不公平感も生まれ、若手職員のやる気をそいでいるとも述べられておりました。
級地区分の大くくりや支給割合も含めて見直すとの答弁もありましたが、見直しでは格差をなくすことはできません。地方の低賃金構造を固定化し、地域間格差を拡大している地域手当は廃止をすべきです。
新設される在宅勤務等手当は、テレワークの実態に合わない低水準のもので、職員の自己負担は解消されません。政府は民間準拠と言いますが、在宅勤務に関わる費用は、民間であれ公務であれ使用者負担とすべきです。
定員合理化計画の下で、公務の職場は、長時間労働、超過勤務とサービス残業が蔓延しています。これが放置をされたままフレックスタイム制による労働時間の弾力化が進めば、行政サービスの停滞、職員負担の更なる増加になりかねません。人員体制の拡充、勤務時間の適正管理、努力義務にとどまらない勤務間インターバル制度を優先して実現することを求めます。
国家公務員の四分の一を占める非常勤職員の賃金は、常勤の半分と言われています。非常勤職員は、一年度限りの臨時的に置かれる官職とされているにもかかわらず、実際には、恒常的で専門的な業務も担っています。公務員定数削減の下で、人件費抑制のために労働者が使い捨てにされているんです。
一方、今年の人事院、公務員人事管理に関する報告では、近年、有効求人倍率が上昇し官民問わず人材獲得競争が熾烈になる中、非常勤職員の人材確保も厳しさを増しているとの意見が一部府省から寄せられている、本院は、各府省が引き続き行政サービスの提供を支える有為な人材を安定的に確保することができるような環境を整備することが重要と考えており、実態等を把握しつつ、非常勤職員制度の適切な在り方について検討を行っていくとしています。
この中でも大きな問題が、非常勤職員がどんなに知識と経験を持っていても三年目には公募に応じなければならないという、三年公募要件と呼ばれる運用ルールです。
厚労省のハローワークでは、労働相談員は全て非常勤の期間業務職員となっています。本来、常勤職員が担うべき恒常的な業務を担っています。ところが、このルールにより、失業された方の相談に当たるなどしている豊かな知識と経験を持つ非常勤職員が自らの雇い止めの不安の中で仕事を余儀なくされています。公募になれば、職場の同僚とも競わされることになって職場のチームワークに影響もあります。蓄積された経験や専門性を全く考慮せず、面接結果のみで採否が決まるとされています。これらのことから、メンタル罹患される方も少なくありません。
人事院総裁は質疑の中で、三年公募要件の在り方も検討してまいりたいと述べ、現場の職員からも直接意見を聞くことを答弁で約束されました。速やかに検討し、このような弊害を持つ三年公募要件は撤廃すべきです。
常勤職員と非常勤職員との間にある休暇制度や手当制度の格差解消を図り均等待遇を実現をすること、多くの省庁で民間よりも格差の大きい男女賃金格差の是正も急がれます。
公務・公共サービスを拡充し、公務の労働条件を改善をするために、定員合理化計画を撤回し、総人件費抑制政策を廃止することを強く求めて、討論とします。
本会議(国家公務員の一般職給与法改定案に賛成、特別職給与法改定案に反対の討論)
2023年11月17日(金)