国会質問議事録

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災害対策特別委員会(能登半島地震 ― 輪島塗産業の復興支援)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 私も改めて被災者の皆さんにお悔やみとお見舞いを申し上げます。
 一月三日に続きまして、先週八日に輪島市と和倉温泉のある七尾市に行ってまいりました。まだまだ道は本当に復旧途上でありますし、倒壊した建物はほとんど手付かずという状況で、困難な避難所生活も続いております。災害関連死を防ぐということを全力を挙げながら、この暮らしとなりわいの再建に希望を示していくということが本当に必要だと思うんですね。
 輪島塗は、事業者の七割から八割が工房兼自宅が倒壊するなどの大きな被害を受けております。輪島漆器商工業協同組合で日南理事長からお話を聞きました。輪島塗の特性は、この塗師屋を中心にして、企画から始まって、木地、下地、中塗り、上塗り、そしてまき絵、沈金などの加飾という百二十以上の工程になっていて、それぞれを専門とする多くの職人の分業で成り立っているということにあると。その一つでも欠ければ製品ができないんだということなんですね。
 理事長さんが文書でこの輪島塗の支援への募金の呼びかけをされています。こう言われています。混乱の今は食事などで生きるのに必死ですが、そのうち今後の生活に不安を持って絶望することは目に見えています。その結果、輪島を離れる又は離職する事業者や職人が増え、輪島で培った漆芸技術も消えてしまいますと述べた上で、だけど、どんなに厳しくても注文に応えようとするのが塗師屋魂であり、職人魂なんだと、これが失われないうちに再建につなぎたいとされておりました。本当にこれに応えた支援が必要だと思います。
 そこで、この輪島塗の支援に関係して、経産副大臣来ていただいておりますが、中小企業基盤整備機構の仮設施設整備支援事業を使ってこの仮設工房を市が建てた場合に全額助成する、大変歓迎の声が上がっておりました。ただ、本当に産地の再建に役立てるためには、これ、従来は商店街の店舗の再建などに使われてきたこの制度を先ほど申し上げたような輪島塗の特性に合わせたものにする必要があります。
 この助成事業の能登半島震災支援の要件や対象を示した概要のチラシをいただきましたけれども、まだ未定稿になっているんですね。今、店舗と違って輪島塗の工房には何が必要かということを聞き取りをされていて、来週にも市や組合との話合いをされるというふうに聞いておりますが、しっかり声を聞いていただいて、この輪島塗の特性に合った仮設工房を整備できるように柔軟に対応していただきたいと思うんですけれども、まず基本的な姿勢についてお聞きします。
○副大臣(上月良祐君) 御質問いただいてありがとうございます。
 御指摘の仮設施設整備支援事業は、被災中小企業が入居する集合型仮設施設を市町村が整備する場合に支援をいたすものであります。過去の大規模災害でも様々な被災事業者に施設を活用いただいておりまして、今回も同様の支援措置を講じているところであります。
 御指摘の輪島塗など、被災地の伝統産業の再生と復興を支援していくことは大変重要であると考えております。
 この仮設施設整備支援事業のほかに、事業に不可欠な施設設備の復旧に活用いただけるなりわい補助金や、事業再開に必要となる道具や原材料の確保を支援する伝統的工芸品産業支援補助金などを組み合わせていく、そういった支援によりまして、仮設工房の整備を含め、引き続き、関係者の意見にしっかりと耳を傾けながらきめ細かく対応していきたいと考えております。
○井上哲士君 しっかり耳を傾けてきめ細かく対応していくというお話でありました。
 やっぱり輪島塗というのは能登の復興に欠かせないわけですね。漆器は英語でジャパンと言いますが、まさに日本を代表する伝統産業でありますし、その中でも輪島塗は六百年以上の長い歴史を持っております。七七年には漆器産地で初めて重要無形文化財にも指定をされていると。あの理事長さんがおっしゃっていましたけれども、日本漆器協同組合連合会が、この輪島漆器が駄目になれば日本の漆器産業全体が駄目になると、こう言って支援を申し出てくださったと言われておりました。ここで終わらせるわけにいかないと、こういう強いお気持ちも聞いたわけで、本当にこれに応えることが必要だと思うんです。
 そこで、具体的にお聞きしますけれども、職人の皆さんの強い要望の一つは、この職住一体という輪島塗の特性に合った工房なんですね。お手元の資料の左側がこの一体の写真なんですけど、後ろに障子とかふすまが見えますように、住宅の一部を工房にして作業をしているという職人が少なくありません。例えば、漆を塗る場合は頻繁にその状況を確認をする必要があると。ですから、工房と住居が離れていると仕事にならないとおっしゃるわけです。
 ですから、仮設工房に生活スペースを設けることを可能にしたり、仮設住宅を隣接させるとか、こういうことができない、是非やってほしいと、こういうことでありますけれども、これはいかがでしょうか。
○副大臣(上月良祐君) 現在、自治体や輪島漆器商工業協同組合など、地元の関係者の皆様が事業を行う仮設施設と仮設住宅の距離が適切かどうか、そして集積のためのまとまった土地がどう確保できるのかどうか、そういった観点を勘案して最適となる仮設敷地と仮設住宅の立地を検討されているというふうに承知をいたしております。
 引き続き、伝統的工芸品産業を守るという気持ちを持って、経産省としても、地元の皆様からの声をしっかりと受け止めながら、必要な支援をきめ細かくやっていきたいと考えております。
○井上哲士君 本当にやっぱり特性に合ったものを造らなければ、せっかく造っても生かされないわけですよね。
 是非柔軟な対応をお願いしたいんですが、いただいたこれまでの仮設施設整備支援事業の仕様を見ますと、このプレハブ工法又はユニット工法ということになっております。これも、プレハブだったらこの漆塗りに必要な湿度管理が困難だということもお聞きをいたしました。こういう特性に合わせて木造で建てるということも可能にするべきだと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
○副大臣(上月良祐君) 仮設施設の整備支援事業は本格復旧までの間、いち早く事業を再開していただくための措置でもありまして、その観点から仮設施設に適切な工法を採用をしているところであります。例えばプレハブ工法は、一般に、一般的に工期が短く品質が安定しているということから、被災地でも速やかに設置できるというメリットがあります。
 一方で、委員御指摘のとおり、漆器の製造には完成までに本当に多くの工程がありまして、その過程では様々な材料や道具が使われ、また温度管理、湿度管理、そういったことが必要であるということも認識をいたしております。
 こうした点を含めて、先ほど来申し上げておりますように、引き続き地元の関係者の皆様の意見に耳を傾けながら、地元自治体ともよく協力して、様々な施策を組み合わせてきめ細かく対応していきたいと考えております。
○井上哲士君 是非よろしくお願いします。
 さらに、いろんな制度の組合せということがありますが、塗った漆を蒸すことによって固めるという工程が必要なんですね。お手元の資料の右っ側にそのための漆器専用の塗師風呂というのが自宅兼工房に設置をされております。その中には、作る製品によって大小がありますけれども、一番下などは、このいわゆる回転風呂と言われる、この蓋などが乗っていますが、回転をさせてこの湿気で固めていくという様々な形態があるんですね。
 塗師風呂とか回転風呂といいますが、人間が入るものではないわけですが、住居が無事でもこの塗師風呂の設備が損傷して、再建する場合に、必ずしもそれまでは住居と税務上が区別されていないなど、資産計上されていなくても輪島塗のための設備だという実態があればなりわい再建支援補助金の対象になるということでよろしいでしょうか。
○副大臣(上月良祐君) ありがとうございます。
 先ほどから御答弁させていただいておりますが、輪島塗の再生と復興に向けましては様々な事業を組み合わせて使っていく、工夫をしていくということが大切だと思っております。
 このうちでなりわい補助金についてでございますけれども、これは事業に不可欠な施設や設備の復旧に活用するということになっているわけでありますが、原則としては資産計上されている施設や設備を補助対象としているわけでありますが、御指摘がありました、まあ塗師風呂ともいうようでありますが、乾かすその施設でありますけれども、資産計上をされていない施設や設備でありましても、災害前から所有をしており、業務用として使用していたことなどが客観的に証明できれば補助対象となり得るものであると、そういうふうな対応をしていくということで考えております。
 被災事業者にとにかく寄り添った対応、それによってこの事業を支えていくと、そういう姿勢でやってまいりたいと考えております。
○井上哲士君 職人の方からは、この住居の、住宅の一部なので産業再生のための制度は使えないと、こう行政から言われたというお話も聞いたんです。ですから、制度の柔軟な適用とともに、やっぱり現場にしっかり趣旨が伝わるように周知もやってほしいと思うんですね。
 それから、いわゆる必要な整備、機器などの購入費や原材料の購入費や型等の試作、製作費を一千万円まで、四分の三補助するという伝統的工芸品産業支援補助金ですが、これも喜ばれているんですけど、何と申請が今日までですね、期日が十六日までと。
 輪島の状況からいえば、まだ壊れた店舗や工房の片付けもままならない中で、こんな状態でもう申請が打ち切られるというのはどういうことやということがあるわけで、これ引き続きちゃんと募集が行えるようにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○副大臣(上月良祐君) 御指摘の事業につきましてですけれども、被災地の早期復興を支援するというために令和五年度予算で措置したものでありまして、適正な審査期間とその後の事業実施期間を確保して年度内に終わらせる必要があるということから、公募は二月十六日までとしたところであります。
 しかしながら、今後の対応につきましては、引き続き、被災された事業者の方々の声をしっかり伺いながら、令和六年度予算に計上している事業を活用することも検討いたしております。その場合、これ現時点で確定したものではございませんけれども、来年度においても、今回の令和六年能登地震発災後、令和五年度に取得した道具や原材料等も対象にするなど、今回の申請期間に申請できなかった事業者に寄り添えるような形にすることも考えております。
 また、経産省としましては、補助金の申請に当たりまして一般財団法人の伝統的工芸品産業振興協会と連携しまして、補助金の申請ってなかなか難しいところがありまして、特に被災した方々にとっては大変な中でまた申請手続ということもありますので、申請手続のサポートを行っておりますが、今後とも御相談を継続的に受け付けるなどしまして、安心して再建の道を歩んでいただけるようにきめ細やかに対応してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 予算執行の行政の都合ではなくて、本当に被災者に寄り添って使えるようにしていただきたいと思います。
 最後に、大臣、お聞きしますけど、総理も繰り返し、被災地、被災者の立場に立って、できることは全てやる、柔軟に対応すると、こう述べられております。今日は輪島塗工房の問題を聞きましたけれども、全てにおいてこの言葉どおりやっていただきたいと思うんですね。
 今申し上げた二つの補助金はいずれも四分の一自己負担がありますが、借入れは困難だし、被災自治体も上乗せするの、なかなか困難ということがあるわけです。こういうことも鑑みながら、やっぱり災害はそれぞれいろんな特殊性があります。従来の制度にこの被害を当てはめるんではなくて、被害の実態に制度を柔軟に適用するし、なければつくると、こういう姿勢で全てをやっていただきたいと思いますけれども、最後、大臣の御決意をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(松村祥史君) 御指摘の、能登半島に合わせたような支援策をしっかりと対応しろということでございましょう。
 私も地震と水害を体験をいたしまして、例えば今経産省がお話しになったなりわい再生補助金、地震で借金を持ちながら水害でまた被災をしたと、こういうときに、運用の中で、十分の十補助みたいなものも新たに運用の中で検討をいただきましたし、やはり、なりわいを営む上で被害の最小化、いわゆる財政負担の最小化を図っていただく、こういったことも必要であろうと思います。
 やれることは全てやれと総理からも指示を受けております。法の立て付けの中でできるもの、またそこに埋もれてしまうものもございますが、そういったものを運用でどうにかできないのか。いろんな工夫をしながら、知恵を出して、やはり現場の被災した皆様方が明日に希望を持てるように、心折れることなく復旧復興頑張ろうと思っていただくようなまずは支援パッケージ、しっかりと進めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 よろしくお願いします。
 終わります。

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