○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
能登半島地震についてお聞きします。
困難な条件の下で、現場の本当に懸命な努力が続いております。しかし、被災から二か月たった時点で、避難所の改善や生活再建、復旧復興の現状はこれまでの大災害と比べても遅れていると指摘をされております。災害関連死を生まないための避難生活の改善が急務です。同時に、被災者の多くが口にするのが先が見えないという言葉なんですね。住み慣れた地域に戻りたいという願い、被災者に暮らしとなりわい再建への希望が見えるような一層の国の支援強化が必要だと思います。
まず、避難所の問題ですが、発災後のかなりの期間、温かい食事も、段ボールベッド、間仕切りもない状況でした。避難、今も厳しい避難生活が続いております。(資料提示)
内閣府は、この災害救助事務取扱要領で、この避難所の炊き出しなどが長期化したときには、できる限りメニューの多様化、適温食の提供、栄養バランスの確保、高齢者や病弱者に対する配慮等、質の確保について配慮するとともに、状況に応じて管理栄養士等の専門職の活用についても検討すると、ここまで書いているんですね。それから、取組指針では、在宅避難者等についてもサービスの提供が行き届くような必要な措置を講ずることと、ここまで書いておりまして、今の避難所の実態とは相当の格差がありますし、輪島市は三月から自主避難所への物資の配送を取りやめました。避難所は災害救助法に基づいて国の予算で設置をされているわけでありますから、内閣府が示したこの内容の実行に政府が責任を持つべきだと思うんですね。
現状をどう把握しているのか、この中身の徹底も含めて、実行への取組はどうなっているでしょうか。いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) まず、食事の提供についてでございますが、平時から、委員御指摘の取扱要綱や指針におきまして、避難生活が長期化した場合に、メニューの多様化や温かい食事の提供など、質の確保に取組を促しているところでございます。
今回の能登半島地震においても、実際に、スープ、レトルトの親子丼、カレー、魚の煮物など、温めて食べられる食事をプッシュ型支援でお届けをしております。また、自衛隊や民間団体による炊き出しや、栄養士の助言によるメニューの提供などが行われているところでございます。
また、在宅避難者の方についても、発災当初はいろんな混乱がありまして、現場にも徹底をしたところでございますけれども、炊き出しの対象としたり、避難所等において水や食料などの必要な物資を配布することとしてございます。
これはなかなかリエゾンを通してでも入ってこなかった情報だったので、初動時に、友人の御家族の方がお友達が能登半島にいらっしゃるということでいろいろお尋ねをして、やはりそういう事実は確かにございました。これは、現場で一生懸命頑張っていただいているんですが、そういう事例もあったということは把握をいたしております。その上で、こういったことも是非避難所外の避難の方々にも対応いただきたいという、またそのプッシュ型支援も強化をしてまいったところでございます。
今後も、市町の関係者ともしっかりと連携をしながら、被災者の方々の食事の質の向上に取り組んでまいりたいと考えております。
○井上哲士君 避難所から聞こえてくる声は、本当にまだまだこの食事何とかしてほしいという声、たくさん聞いておりますし、先ほど申し上げましたこの輪島市は、自主避難所への支援物資の配送を三月から取りやめたと。この理由は、今後応援の職員が減るからだと、こう言っているわけですよ。ですから、きちっとこういうものに基づいて避難所ができるように、物的にも、そして人的な支援も更に強化することが必要だと、それ是非求めたいと思うんです。
その上で、この遅れている道路や上下水道などインフラの整備や仮設住宅の建設が急がれます。住宅再建に関わって、液状化対策についてお聞きします。
石川、富山、新潟、福井の四県で被害が発生をしまして、特に新潟県では約九千五百、富山県で二千、石川県で三千五百、合計一万五千件に及ぶ甚大な宅地被害が起きておりますし、さらに未掌握のものもあると。
石川県内灘町の被災地、私も視察をしましたけど、過去の災害と同様の道路や宅地の隆起がありますが、先ほども答弁ありましたように、地表が横ずれするというこの側方流動を伴う甚大な被害が起きたというのが今回の特徴なわけですね。住民の皆さんは困惑をされておりましたけれども、こういう特徴に即した支援が必要だと思います。
総理は、今日も答弁ありましたけど、二月二十四日の会見で、この液状化について、今回の被害の実情に対応し、道路等とその隣接住宅地を含めて、エリア一体的に対策を講ずる支援措置の強化を国としても速やかに具体化していきたいと述べられました。
二週間たっているわけでありますが、どのように具体化がされたんでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、能登半島地震によって広範囲で液状化による甚大な被害発生しております。二月十六日の復興・復旧本部において、道路等のその隣接地を含めて、エリア一体的に対策を講ずる支援措置を強化するよう指示をしたところでありますが、現在、国土交通省を中心に、各県の被害状況を調査し、そして、これは対策には高度な技術力も必要となるところから、今この調整を続けているところです。
三月中旬、間もなくでありますが、復旧・復興本部を開催することを予定しておりますが、三月中旬に予定している復旧・復興本部において成案を得るべく、今この取組を進めております。
○井上哲士君 まさに、今回の特性に合わせた対策を本当にきちっと出してほしいんですね。
二〇一六年の熊本地震の話が出ていますが、あれは国の宅地液状化防止事業で、自治体による公共施設と宅地の一体的な液状化防止事業が行われました。これ、被災者に費用負担を求めない形で行われました。
しかし、この住宅の被害認定にばらつきがある、そういう事情から、これどうしようか迷う方もあって、合意がなかなか時間が掛かる。そういう中で、この地盤改良を待たずに、待ち切れずに再建した家も出てくると。そうなりますと、これエリア一体にこの液状化防止事業をするということの合意自身が非常に困難になると。
熊本では、実際、十か所で協議をしたけれども、熊本市での実施は二か所にとどまっているんですね。こういう過去のやっぱり経験を踏まえて、今回、私取り組む必要があると思うんです。
そのためには、例えば、液状化した宅地と被害を受けた住宅を一体的に見て、そして損なわれたこの住宅としての機能を反映したそういうこの被害判定をする必要がある。それから、まずはジャッキアップなど、当面住めるようにするこの傾きを直す工事と、合意に時間掛かるけれども面的に再発防止をする液状化対策、これを組み合わせる一体化したような対策をしないとうまくいかないと思うんですね。
こういうことをやるためには、国の制度とともに、特別交付金などで裏打ちをすると同時に、熊本のときのように、地方自治体が実態に合わせて柔軟な対策ができる基金が必要だと思うんですね。
先日、松本総務大臣は、住宅再建に向けて石川県が実施する利子助成事業について、復興基金の検討も含めて特別交付税措置を検討すると述べられました。つまり、県が特性に合わせて独自に対策を打つには基金が必要だということを事実上認められたと思うんですよ。
私はもう、これ是非、総理、この復興のための基金をこの能登半島でもつくるということをもう決断をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 液状化被害を受けた住宅については、まずは基礎の破壊状況や傾きなどにより被害を判定し、そして被害状況に応じた住宅の応急修理を迅速に行うことが必要で、必要となります。あわせて、再度災害防止の観点から、道路等と隣接宅地等の一体的な液状化対策など各種施策について地域の方々の合意形成を図りつつ着実に実行していく、こういったことが求められます。
こうしたこの各被災自治体が行う液状化対策を総合的に支援するため、国庫補助を含め、国による支援策、これを具体化するべく進めているところですが、御指摘の復興基金に対する財政措置については、極めて大きな災害が発生し、復興に相当の期間を要すると見込まれ、そして毎年度の措置では対応が難しい場合に個別の国庫補助を補い、国の制度の隙間の事業について対応する例外な措置として実施してきたものであります。
よって、これは、まずはこれ国による支援策、これをスピード感を持って実施することが大事であると考えます。それを踏まえて復興基金の必要性について判断をいたします。
○井上哲士君 既に、この被害の特性に合わせた支援をするためには現行の国の制度だけでは限界があること、もう明確になっていると思うんですよ。だからこそ、自治体が柔軟な対応ができるように、もう急いで私はこの基金をつくることを決断をいただきたいと重ねて求めたいと思います。
住まいの確保が進んで、避難者の皆さんが二次避難先から帰って、戻ってくるためには、これ医療や介護の受皿が不可欠なんですね。輪島市の介護施設は、上下水道の復旧がまだの中、全て閉鎖されています。入所者全員が金沢などの施設に避難入所をしていると。施設の建物にも被害が出て使えない施設もありますし、職員は子育てができないと転居をするという方もいらっしゃると。
政府として、この石川県の被災地の介護施設の被害やこうした職員の現状について、どのように把握をして支援をしているんでしょうか。
○国務大臣(武見敬三君) 介護施設の被害状況については、災害時情報共有システムや、県、市町村、関係団体からの情報等を通じて把握するとともに、被災前後の職員の状況については、現在、県や市町村と協力して調査を行っております。三月十九日が締切りとなっております。加えて、事業所の復旧や職員の確保を含めたサービス提供機能の回復に向けて、能登の各市町、県、国と介護事業所が連絡会議を行いまして、その中で施設の状況や支援ニーズを共有しております。
こうした中で、介護施設等に対して災害復旧に対する財政支援を行うこととしているほか、人手が不足している介護施設に対しては、介護職員等のニーズを現場の自治体等を通じて丁寧に把握した上で、関係団体等と連携をし、全国からの応援職員の派遣を取り組んでおり、これまで、障害者施設などを含めて五十四施設に四百十八人の応援派遣による支援を行っております。
引き続き、被災地の自治体、介護事業所と対話をしながら、こうした必要な支援にしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○井上哲士君 今必要な対応が求められているわけでありますが、同時に、例えば、能登半島の高齢者施設から広域避難された要介護者が約一千人、そのうち三割は県外だそうですが、こういう皆さんが帰ってくるときにどうするのか、それが明確にならないと帰ってこれないということにもなるわけですね。
今後の復興を見据えた職員の確保、それから入所者全員が避難した施設への支援、多くの施設が被災した下での再建計画など、今後の再建、人々が能登に帰ってくるためのこの介護、医療への支援、これが必要だと思うんですが、これ、是非示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今回の震災では、この多くの医療機関や介護施設に被害が生じ、医療・介護従事者も被災者となった状況の中で、人材の確保、医療・介護施設への支援、これが重要となっています。
このため、今回の震災対応では、医療や介護の再建につなげていくため、施設整備などの財政支援を行うとともに、保健、医療、介護、福祉の専門チームが被災地に入り、多職種で連携して医療・介護施設の機能維持や被災者の方々の福祉的支援に取り組んでいる次第ですが、現在、石川県において、創造的復興に向けて復旧・復興本部を立ち上げ、病院、介護施設の今後の機能や必要な人材の確保など、奥能登における医療、福祉提供体制の在り方、これを検討しています。
この石川県の検討している全体のデザイン、これを政府としてもしっかり実行していかなければならないと思います。石川県のこういった取組とともに、政府としても、医療、介護の基盤を含めた地域の復旧復興に取り組んでまいります。
○井上哲士君 医療や介護の施設は、どんだけの人が帰ってくるか分からないと経営的にどうかという心配はされると思うんです。だけど、こういう医療や介護をちゃんとつくるんだということを示してこそ多くの皆さんが帰ってくるわけですから、そういう希望あるものをしっかり示していただきたいと思います。
次に、最初申し上げた避難所の劣悪な環境を長引かせてきた一つが備蓄の不足でありまして、支援活動されている皆さんの話聞きますと、二〇〇七年の能登半島地震の際には、避難所の仮設トイレや調理用テントもあったと。今回、こんだけの大きな地震の中で、行政も被災もする、インフラも破壊をされると、もう県単独でできる範囲を超えたという下で様々な問題があり、自治体任せの限界を露呈したと強調されております。
水や食料とともに、トイレや段ボールベッド、パーテーションなども不足したわけですが、段ボールベッド、先ほどもありましたが、国としてはどれだけ備蓄をして、今回の発災後どれだけ発注をし、現地に送ったんでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 今般の能登半島地震における段ボールベッドの物資支援につきましては、震災直後からこれまで約七千個を石川県における物資の一時拠点に搬送をしているところでございます。いわゆる七千個調達をしたと。このうち、約五千五百個が石川県の物資拠点から被災地、市町村へ、市町に搬送されて使っていただいております。
調達につきましては、国の備蓄は二千個でございますが、民間調達が二千六百個、また、二千四百個を知事会から御支援をいただいたものでございます。
この段ボールベッドにつきましては、市場の流通在庫が比較的少なくございまして、受注生産となる可能性が高いため、生産が追い付くまでの期間に最低限必要な量として、国において約二千個を備蓄をしていたところでございます。この量は、被災地における物資拠点の物理的なスペースの制約でありますとか、被災地からの物資要請の優先度を踏まえ、過去の災害の実績をも勘案をして決めているところでございます。
ちなみに、熊本地震のときが千二百個でございましたので、その倍以上の、まあ約倍の数は在庫として持っておりました。
○井上哲士君 二週間後の避難者が一万九千でありますから、全然数足りなかったんですね。
先ほど、まず命守ることが大事で、その次に段ボールベッドというような趣旨の答弁が、総理、ありましたけど、床に雑魚寝するというのは、床に近いほど細菌やウイルスに感染することがありますし、エコノミー症候群もあるし、腰も痛めると。命守るためにすぐに段ボールベッド必要だというのがこの間の教訓なんですよ。それができていないと。
イタリアやアメリカでは、災害専門庁が国土を二十四時間監視をして、災害発生してすぐに判断をして国が主導します。イタリアでは、大規模分散備蓄がありまして、二十州全てに二千五百人分の備蓄が義務化されて、さらに国が三か所、大規模な備蓄倉庫を準備しております。
医師や研究者による避難所・避難生活学会は、このイタリアを参考に、TKB48というのを提唱しているんですね。まず、清潔で洋式のトイレ、温かい食事を提供できるキッチン、冷たくてほこり吸うような床に寝るんじゃなくてベッド、段ボール等、これを四十八時間以内に避難所に整えると。これ、大事な提案だと思うんですよね。こういうのも生かして、各自治体での備蓄の強化とともに、国として大規模な分散備蓄ということも必要じゃないでしょうか、総理。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 災害時のこの応急支援物資は、住民から最も近い自治体において備蓄することを原則とし、その備蓄では応急対応が滞ると見込まれる場合には国が市場から調達する、こういった役割分担を基本としています。そして、先ほど防災大臣からお答えしたように、段ボールベッド等については、市場の流通在庫が比較的少ないために、この生産が追い付くまでの期間に必要な量を国において備蓄をしている、こういった実情もあります。
今回の能登半島地震の実績も加味した上で、国がプッシュ型支援をするに当たって最適な支援物資の備蓄量あるいは保管方法、これについては検討をし、必要であれば適切に見直しを行ってまいりたいと思います。
○委員長(櫻井充君) 時間が参っております。
○井上哲士君 今回の地震で、やっぱり自治体の備蓄では足りないというのはもう非常にはっきりしたと思うんですね。しかも、自治体は今回のを受けて今年度の予算で様々備蓄強化やっているところが、もう予算化しているところがあるんです。国がどうするか問われているわけでありまして、今回の教訓しっかり見て、国としての責任を持った備蓄、そして被災者対策、強めていただきたい。訴えまして、終わります。
ありがとうございました。
予算委員会(能登半島地震ー避難所提供食事の質向上、液状化被害対策、復興をみすえた医療・介護への支援、大規模分散備蓄体制の検討)
2024年3月 8日(金)