○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
まず、犯罪被害者給付制度についてお聞きいたします。
その在り方について、現在、犯罪被害者給付制度の抜本的強化に関する有識者検討会で議論が行われております。二月五日の第七回検討会には、最低額を引き上げるなどのこの犯罪被害給付制度の見直し骨子が提案をされ、議論をされております。
この見直し骨子は、あくまでも現行制度の枠の中で可能な改善策を取りまとめたものであって、これが犯罪被害給付制度見直しの最終的な結論ではないということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(江口有隣君) お答えをいたします。
警察庁において、昨年八月から犯罪被害給付制度の抜本的強化に関する有識者検討会を開催し、給付水準の引上げに向けた検討がなされているところでございます。
本検討会におきましては、まずは犯罪被害給付制度について、現行制度の性格を前提として、早期に見直すべき事柄について御議論をいただいた後、犯罪被害給付制度にとらわれることなく、制度の性格も含めて御議論いただいているところでございます。
御指摘をいただきました犯罪被害給付制度の見直し骨子につきましては、改正制度をできるだけ早期に施行するべく、前者の議論を踏まえて取りまとめたものでございます。
有識者検討会の議論の方向性について予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じますが、本年五月中までの取りまとめに向けまして、引き続き有識者検討会における議論は続けられているところでございます。
○井上哲士君 そこで国家公安委員長、お聞きしますが、昨年六月六日の犯罪被害者等施策推進会議決定では、この犯罪被害給付制度の抜本的強化については、民事訴訟における損害賠償額を見据えてとしております。これを踏まえるならば、求められているのは現行制度の給付額の算定方法の枠を超えること、すなわち遺失利益を考慮した民事訴訟の損害賠償の算定を基礎に置く制度へと抜本的な見直しが求められていると思うんですね。
二月二十一日に犯罪被害補償を求める会の皆さんが院内集会を開かれました。被害者の方や遺族の方が自らのつらい経験を語りながら、本当に切々とこうした遺失利益の考慮であるとか立替払制度など、抜本的この改定の必要性を訴えられたわけであります。この集会には、警察庁や法務省の担当の方も来られて、最後まで話を聞いておられました。
この有識者の検討会の取りまとめに向けて、そうした内容を徹底的に議論をして、抜本的な強化にふさわしい見直しの方向性を打ち出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 委員御指摘の点につきましては、今江口審議官がお答えしましたとおり、有識者検討会で議論をいただいているところでございますが、その検討会の議論の中で、被害者、犯罪被害者への給付の支給水準については、民事訴訟における損害賠償があるべき姿ではないかといった意見があった一方で、犯罪被害については第一義的に責任を負うのは加害者である中で、国が民事上の損害額を支払う法的根拠をどのように考えるか、こういった意見もいただくなど、幅広い議論をいただいているところでございます。
いずれにいたしましても、現在有識者検討会で御議論いただいているところであり、本年五月中までの取りまとめに向けて現在御議論いただいておりますので、しっかりその議論の推移を見守ってまいりたいと考えております。
○井上哲士君 先ほど紹介した集会に参加もされていますから、是非その報告もしっかり聞いていただいて、現場の声に基づいて抜本的な見直しを強く求めたいと思います。
国家公安委員長、警察の方、これで結構です。
○委員長(阿達雅志君) では、松村国家委員会委員長、警察庁長官官房江口審議官は退席いただいて結構です。
○井上哲士君 今日は朝から様々子育て支援についていろんな角度で議論されておりますが、私、学童保育についてお聞きしたいと思います。
学童保育は、一九五〇年代に、我が子が保育園を卒園した後も引き続き子育てをしながら安心して働き続けたいと、こういう願いを原点にして父母たちによる就学後の児童の自主的な共同保育の取組として始まりました。その後、全国に広がって、関係者の長年の運動によって一九九七年に放課後児童健全育成事業として児童福祉法に位置付けられて、放課後児童クラブとも呼ばれております。さらに、二〇一四年以降に、従うべき基準として、不十分ながらも職員の配置基準や資格要件が定められました。ところが、その後の法改正でこれが参酌基準に後退をさせられた。そして、昨年の十二月にこども未来戦略に至っているわけですね。
放課後児童健全育成事業は、児童福祉法で、小学校に通うお子さんを持つ働く親の就労を支援するとともに、放課後の子供たちにとっての適切な遊びと生活の場を保障する大切な役割を担っております。また、子供たちと関わる指導員には、異なる年齢で構成される学童保育の子供たちの個々の発達段階を踏まえた適切な働きかけや子育てに悩む親へのケア等、大変専門性が要求をされております。
大臣、お聞きしますけども、こういう学童保育の目的や役割、指導員の専門性についてはどのように認識をされているでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
放課後児童クラブは、児童福祉法において、保護者が昼間家庭にいない小学生に適切な遊び及び生活の場を与え、その健全な育成を図る事業として規定されております。共働き世帯等の保護者の就労を支えるとともに、放課後に年齢や発達状況の異なる子供が共に過ごす場として重要な役割を担っていると認識しております。
そうした子供たちが安全に過ごすことができる環境を整え、適切な育成支援を行うために、放課後児童クラブで働く職員は専門的な知識や技能を持って職務に当たっていただく必要があると考えております。
○井上哲士君 学童保育の重要な役割、そして職員の皆さんのこの専門性について必要だという御答弁でありました。
この間、政府はこの放課後児童対策として、様々な施策に取り組んでおります。
二〇一九年から取り組んできた新・放課後子ども総合プランは今年度末が期限となっております。昨年十二月には、こども未来戦略が策定をされて、放課後児童対策パッケージも出されております。この三つはどういう関係になっているのか、御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
平成三十年九月に公表されました新・放課後子ども総合プランでございますが、放課後児童クラブについて待機児童の解消を目指し、今年度末までに追加で計約三十万人分の受皿を整備し、全体で約百五十二万人受皿拡大を図るということを目標といたしまして設定をし、放課後児童対策の取組をまとめてきたところでございます。
これに基づき、取組を進めてきたわけでございますが、昨年の五月一日時点で、放課後児童クラブを利用している児童数約百四十六万人と、前年に比べて六万五千人の増加ということが実現できた一方で、待機児童数も約一万六千人と増加をしており、今年度末までにこの本プランで掲げる百五十二万人分の整備目標を達成することが厳しい状況にございます。
こうした状況を踏まえまして、令和五年十二月二十二日に閣議決定いただきましたこども未来戦略では、新プランで掲げた受皿の拡大、百五十二万人分への拡大でございますけれども、これを加速化プランの期間中、二〇二六年度までのできるだけ早期に達成できるように取り組むことが明記をされました。
さらに、放課後児童対策の一層の強化を図るため、同じく昨年の十二月二十五日でございますが、こども家庭庁と文科省が連携をいたしまして、予算面、運用面両面から令和五年度、六年度に集中的に取り組むべき対策をまとめた放課後児童対策パッケージを取りまとめたところでございます。
こういったことから、引き続き、早期に待機児童の解消ができるようにしっかり取り組んでまいります。
○井上哲士君 要するに、新・放課後子ども総合プランで掲げながら達成していない目標を早期に達成していくということがこの三つの共通のわけでありますが、ただそれだけでいいのかということを私言いたいと思うんですね。
保育所に通っていた子供たちの約八割が学童保育にも入所をしていると言われております。その希望者は年々増加傾向にありまして、その下で、入所したくてもできない待機児童が一・六万人もいるという現状は一刻も早く解消しなければなりません。
しかし、この放課後児童対策パッケージを見ますと、待機児童の解消のためとして、学校施設内のプレハブ施設の整備、それから特別教室等の一時的な利用、いわゆるタイムシェア、それから在籍している小学校から離れた放課後児童クラブへの送迎を行うことにより空き定員を有効活用等々が挙げられております。つまり、学童保育専用の施設を増やすのではなくて、学校施設の間借りや学校施設内へのプレハブ建設など、安上がりで、とにかくこの待機児童数さえ減ればいいと言わんばかりに聞こえるわけですね。
そもそも、学童保育は、長年、施設や整備運営に関する基準もありません。お金もないという下で、住宅を間借りしたりプレハブの施設を建設したりして親のニーズに応えてきました。ですから、狭かったり庭がなかったりトイレの数が限られているという施設も多いわけですね。待機児童の解消だけにとどまらず、こういう学校外にある既存の学童保育も基準に見合う施設に改修するなどの手厚い支援が必要だと思います。
そもそも、新・放課後子ども総合プランでは、この放課後児童クラブを新たに開設する場合はその八〇%を小学校内で実施する、既に小学校外で実施している場合も小学校の余裕教室等を活用することが望ましいとして、学童保育専用の施設を学校外に新たに建設することに否定的な方向性を示しておりましたけれども、今回のパッケージも同様の考えなんでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
放課後児童クラブにつきましては、開設する場の確保として、これまで児童の安全、安心の観点から、余裕教室などの学校施設の活用を推進をしてまいりました。そうした中、待機児童の解消が喫緊の課題である一方で、小学校をめぐりましては、三十五人学級の推進などに伴いまして、余裕教室の十分な活用が見込めないような学校も多々ある、そういった地域の実情もございます。
そのようなことを踏まえまして、昨年十二月に取りまとめましたパッケージにおいて、学校施設内での場の確保ができない場合には学校外での施設整備の必要性について示したところであり、令和五年度の補正予算や六年度の予算案においても、待機児童が発生している自治体における施設整備費の補助率のかさ上げですとか、学校の敷地外において地域の子供と交流する場を一体的に整備する場合の補助基準額の引上げや、待機児童が発生している場合の送迎支援の補助基準額の引上げなどを計上しているところでございます。
こういった取組を活用しながら、地域の実情を踏まえた受皿の整備が促進されるように放課後児童クラブの取組を進めてまいります。
○井上哲士君 学校施設外でも支援をしていくことでありますが、実際には学校施設内でが推進をされてきました。
実態どうなっているのかと、現場の指導員の皆さんにこの間お話伺いました。小学校に隣接するある学童保育では、入所者が増えたために小学校の理科室をタイムシェアをしていますとか、使える時間が十五時四十五分から十六時半までなので四十五分しかないんですね。土曜日や学校の閉庁日は使えません。理科室にはいろんな薬品や実験道具も置かれているので、子供たちが触らないように大変気を遣うと。基本的に原状復帰を求められるので、遊び道具やおやつも学校に隣接する学童保育から毎日運び入れて持ち帰らなければならないと。
ですから、こういうタイムシェアの実態に、学校の先生から、やる意味があるんですかと言われているというんですよね。こういう実態があるということを是非しっかり見詰めてほしいと思うんですね。
そこで、加藤大臣、お聞きしますが、放課後児童クラブの運営指針は、子供が安心、安全に、安全に安心して過ごし、体調の悪いとき等に静養することができる生活の場としての機能と、遊び等の活動拠点としての機能を備えた専用区画が必要としております。待機児童解消のために、こうした基準を満たす学童保育専用施設を計画的に建設していくことこそ進めるべきではないでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
放課後児童クラブの整備に当たっては、市町村において五年ごとに子ども・子育て支援事業計画を策定して計画的な整備を進めることとしており、策定の際、地域の保護者のニーズを踏まえて事業の量の見込みを算出することとしています。
その上で、実際の整備に当たりましては、学校内にプレハブを設置したり学校外の児童館を活用したりといった専用施設によるほか、地域の実情に応じて、学校の空き教室や家庭科室などの特別教室などを活用して専用施設によらない形態としても整備が進められていると承知をしてございます。
このように専用施設によらない場合であっても、必要な専用区画を設けつつ、地域の実情に応じ対応いただいているところであり、国としては、子ども・子育て支援事業計画に基づく施設整備に対して財政支援を行っているところです。こうした対応を含め、引き続き適切かつ計画的な受皿整備が行われるよう取り組んでまいります。
○井上哲士君 是非子供たちの声を聞いてほしいと思うんですね。
全日本建設交運一般労働組合の全国学童保育部会の皆さんが子供たちからたくさん声聞いているんです。もっと学童を広くしてほしい。大行列ができるのでトイレを増やしてほしい。男女別のトイレが欲しい。休む場所が欲しい。勉強する部屋、遊ぶ部屋など用途別の部屋が欲しい。女子専用の部屋が欲しい。もうどれももっともな要望だと私は思うんですね。
プレハブの学童保育に通う子供たちからは、夏は暑いし冬は寒いと。エアコンが付いている状態で掃除機を二台使うとブレーカーが落ちると。歩くと床が振動して、文字を書いているとずれたりしてとても困っていると。やっぱり子供たちが望んでいるのは、学校の空き教室やタイムシェアでもプレハブでもないと思うんですよ。
安易な場所の確保を推奨するんではなくて、基準を満たす学童保育専用施設を計画的に建設していくことで待機児童解消を図るべきだと、しっかり子供たちや保護者の声を聞いていただきたいということを重ねて求めたいと思います。
その上で、学童保育の指導員にその専門性にふさわしい処遇を確保することも重要な課題であります。
政府の二〇二一年度の調査では、月給で支払われている学童保育指導員の給与の平均は、常勤者が手当、一時金込みで年収二百八十五・七万円、非常勤で百四十六・一万円。今年一月に発表された全国学童保育連絡協議会の調査によりますと、年収百五十万円未満が四八・四%なんですね。この低賃金が専門職にふさわしい水準なのかと問われていると思うんです。
こうした現状がありますから、指導員募集してもなかなかなり手がないと。常に人手不足状況で、幾ら募集しても集まらないのでシルバー人材センターから職員を確保せざるを得ないと、こういう状況もありまして、先ほど紹介した子供たちの声でいいますと、鬼ごっこが思いっ切りできる若い先生に来てほしいと、もっと先生がたくさんいて、話を聞いてくれたり遊んでくれたりしてほしい、若いお兄さん、お姉さんが先生で来てほしいと、こんな声であふれております。
若い人たちが働きたくても生活考えたら選択できないような低賃金職場になっているのが実態なんですね。
こども家庭庁としては、こういう現状をどう認識をして、指導員の処遇改善についてどのような対策を講じているんでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
放課後児童クラブの職員の処遇改善、重要な課題であると認識をしております。具体的には、十八時半を超えて開所する放課後児童クラブの職員の賃金改善に必要な経費の補助、あるいは勤続年数や研修実績に応じた処遇改善事業の実施、また賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として収入を三%程度引き上げるための処遇改善事業、こういった事業を継続して行っているところでございます。
加えて、今般、昨年十二月に決定をされましたこども未来戦略を踏まえまして、令和六年度予算案では、放課後児童クラブの安定的な運営を図る観点から、クラブの運営費といたしまして、常勤職員二名以上を配置した場合に補助基準額を引き上げる内容を計上しているところでございます。
こうした取組を通じまして、放課後児童クラブの職員の処遇改善が実施されるように、引き続き自治体にこの事業の活用を働きかけてまいります。
○井上哲士君 今幾つか事業を挙げられましたけれども、例えば放課後児童支援員等処遇改善事業ですね、これは採択実績は全国千六百二十七市町村、育成事業を実施しているその市町村のうち、二三%にすぎません。放課後児童支援員キャリアアップ処遇改善事業は三〇%ということにとどまっているわけですね。自治体からは、扶養を外れると困るなど賃上げを求めない声も現場からあるんだというお話もあるわけですが、裏を返しますと、現状のこの学童の職場、指導員の給与水準がそういう家計補助的な働き方しかできないという実態にとどまっているということがあると思うんです。
来年度予算に計上されているこの常勤を二名以上配置した場合の補助の引上げは大切な対応だと思います。ただ、学童保育はあくまでも事業を支援する仕組みになっていて、この常勤二名以上配置への支援も、人件費の直接引上げではなくて、運営費の増額なんですね。保育所のように保育士一人当たりに対する給与水準を公定価格で算定しているのと違うことになっております。
そこでお聞きしますけれども、このこども家庭庁の言う常勤というのは、世間一般で言われているフルタイムの正規職員ということでよろしいんでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) 今御指摘いただきました常勤職員配置の改善でございますけれども、まずこの目的は、支援員の方が支援に当たる、同じ支援員の方が支援に当たることによってクラブを利用する子供の生活が安定するといったことを目指すものでございます。そういった観点から、この目的を踏まえまして、実は昨日、案として地方自治体にこの常勤の考え方をお示しをいたしました。その中では、法定労働時間の範囲内において、原則として放課後児童健全育成事業所ごとに定める運営規程に記載される開所している日と時間の全てを年間を通じて専ら支援の業務に従事している職員というふうにお知らせをさせていただきました。
こうした定義ですとか、そもそもの改善の趣旨、目的を自治体の方に周知をし、この常勤職員の配置が進むように取り組んでいきたいというふうに考えております。
○井上哲士君 放課後児童クラブの運営指針では、「勤務時間については、子どもの受入れ準備や打合せ、育成支援の記録作成等、開所時間の前後に必要となる時間を前提として設定されることが求められる。」としておりますけれども、今のお話聞いておりましても、結局この施設で定めた勤務時間の枠になってしまうわけですよね。そうしますと、この受入れ準備や打合せの時間が考慮されないのではないかと思います。
この施設で定めた勤務時間などに、現場に丸投げするのではなくて、社会保険の加入や退職金制度の整備など、専門職にふさわしい処遇が保障されるような常勤職の基準を私は示すべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
放課後児童クラブの開所日数や開所時間につきましては、国において基準を設定してございます。具体的には、開所日数については年間二百五十日以上、開所時間については平日は三時間以上、休日は八時間以上を基準として、開所時間に応じた運営費の補助を行っております。これに加え、十八時半を超えて開所した場合の処遇改善の補助を行うなど、地域の実情を踏まえた開所時間に対応した支援を行ってございます。さらに、今般、常勤職員を配置した場合の補助の拡充について、来年度予算案に盛り込んだところでございます。
こども家庭庁としましては、こうした趣旨について引き続き自治体に周知を図り、現場で支援に当たる放課後児童支援員の処遇の改善に努めてまいります。
○井上哲士君 まあちょっと先ほどの答弁のなぞったようなお話であっておりましたけど、私はもっと抜本的な、しっかりとしたやっぱり常勤という基準を示して人件費補助を行うべきだと申し上げたいと思います。
二〇一五年に示された基準では、当初、放課後児童支援員の専門職としての資格要件と人員配置は従うべき基準とされておりました。それ以外は参酌基準となっていたんですね。
ところが、二〇一九年の第百九十八回国会の法改正で、これらが全て参酌基準に緩和をされました。そのときの国会では、あくまでも従うべき基準の堅持を求めた請願が採択されたのに法改正がされたんですね。そして、三年後の見直し規定がありました。その前年に、この百九十八国会での請願の具体化を盛り込んだ請願が採択されたにもかかわらず、結局政府は引き続き参酌すべき基準とするという結論を出しました。利用者の声にも国会での請願採択にも反して基準を後退をさせてきたということなんですね。
大臣、最初の答弁で、この放課後児童支援員は専門性が求められるという答弁をされました。ところが、実際には国がこうやって基準を、専門性としての基準を下げていることになっているんじゃないでしょうか。逆行しているんじゃないでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
委員御指摘の点につきましては、地方からの要望を踏まえて、全国一律ではなく自治体の責任と判断により、質の確保を図った上で、地域の実情に応じて事業運営を行うことを可能とするために行われたものでございます。
こども家庭庁といたしましては、各自治体の責任の下、質を確保しつつ、地域の多様性を踏まえた運営がなされているものと認識してございますが、引き続き実施状況を注視するとともに質の確保に向けて必要な支援を行ってまいります。
○井上哲士君 質の確保をするのなら、守るべき基準にするべきなんですね。
実際には、これまで、放課後児童支援員の資格を保育資格や教員免許などを取得していることに加えて、都道府県や市町村の行う研修を修了した者でなければならないとしておりましたけれども、昨年四月の通知で、放課後児童支援員としての業務に従事することになってから二年以内に研修を修了することを予定している者も含むと、ここまで基準を緩和したんですよね。こうしますと、もう本当に指導員は誰でもいいということになりかねないわけでありまして、本当にしっかりとした専門性、質を確保していくという点で、しっかりした基準をやはり示していくことが必要だと思います。
何でこんなことになってしまうのか、最後でありますけど、お手元に、やはり、配っておりますように、学童保育の法的位置付けの問題があると思うんですね。児童福祉法上、保育所には市町村の保育の実施義務が定められておりますが、学童保育、放課後児童クラブはこの放課後児童健全育成事業としか位置付けられておりません。市町村には地域の実情に応じて同事業を推進する努力義務が定められているにすぎないわけですね。こうした法的な違いがこの保育所であるという問題に加えて、先ほど来述べていますように、この政府が基準を緩和してきたということが学童保育をめぐるいろんな問題の背景にあると思うんですね。
学童保育をしっかりと児童福祉施設に位置付けて、保育所と同様に市町村に実施義務を課すなど、学童保育に対する公的責任を明確にするべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
放課後児童クラブにつきましては、児童福祉法に基づき市町村に事業実施の努力義務が課せられております。現在、ほぼ全ての市区町村で事業が実施されており、自治体、社会福祉法人、NPO、民間事業者、地域の保護者会や運営委員会など、地域の実情に応じて様々な方に運営を担っていただいております。また、市区町村条例で定められている基準を踏まえつつ、小学校や児童館、その他の地域の施設等の様々な場所で、地域の実情に応じた運営がなされているものと認識してございます。
このように、放課後児童クラブにつきましては、実施主体や実施場所など運営の実態が多様であることを踏まえ、事業の実施方法について地域の創意工夫を生かせるよう、児童福祉法の事業として実施をしているところでございます。
○井上哲士君 二〇二〇年にコロナ禍で全国一斉休校が行われた際に、保育所と学童保育は開所することを要請されたんですよね。つまり、保育所も学童保育も、小学校に通う子供を持つ親にとって学童保育は保育所と同様になくてはならない施設だということを政府自身も認めていたわけですよ。ですから、働く親を支えて子供たちの健やかな成長発達する権利を保障する本来の意義に立脚して、しっかりとした法的位置付けにするべきだということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。
ありがとうございました。
内閣委員会(犯罪被害者給付制度、学童保育の待機児解消、指導員の処遇改善)
2024年3月12日(火)