国会質問議事録

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内閣委員会(同性パートナーも犯罪被害者遺族給付金の対象とする最高裁判決を受けた対応、女性相談支援員の処遇改善)

【配付資料】

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 最高裁は、三月二十六日に、同性パートナーが犯罪被害者等給付金の支給対象となる遺族に含まれるという判断を示しました。同性カップルの権利保障に踏み出した重要な判断であります。
 この判決は、二十年以上連れ添った同性パートナーを殺害された名古屋市の男性が、遺族給付金を不支給とした愛知県公安委員会の裁定の取消しを求めたものであります。犯給法は、この給付対象である犯罪被害者の配偶者について、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む、すなわち事実婚を含むとしております。最高裁判決は、この中に同性パートナーも含む、つまり支給の対象になるという判断を初めて示したわけです。
 国家公安委員長来ていただいていますが、この判決をどのように受け止めて、警察庁はどのような対応を行っているでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 井上委員御指摘のとおり、最高裁判所において、亡くなった犯罪被害者と事実上婚姻関係と同様の事情にあった者には、異性の者だけでなく、同性の者も含まれ得るとの判断が示された上、名古屋高等裁判所に差戻しがなされたところでございます。今後、愛知県において差戻し審に適切に対応するものと承知をいたしております。
 その上で、警察庁におきましては、犯罪被害者等給付金の裁定事務を担う各都道府県警察に対しまして、最高裁判所の判決内容を周知するとともに、死亡した犯罪被害者と同性であったことのみを理由に不支給裁定とすることのないように文書を発出したところでございます。
 引き続き、犯罪被害者給付制度に関しまして、事案に即して適正な運用が行われるよう、警察を指導してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 同性パートナーであっても、この遺族給付金の支給対象になるという連絡がされたということであります。
 私は、この判決に至る過程が重要だと思うんですね。二〇二〇年の一審判決と二二年の二審判決は、いずれも同性パートナーを遺族として認めませんでした。その理由として、同性カップルを民法上、婚姻の届出ができる関係である異性カップルと同様に見る社会通念、社会的意識が醸成されていないということを挙げたわけですね。一方、今回の最高裁判決ではこの理由には触れておりません。そして、同性パートナーも遺族と認めたわけです。ですから、同性カップルを異性カップルと同様に保障すべきだという社会通念や社会的意識の前向きな変化が今回の判決になったということだと思うんです。
 実際、同性カップルの権利を認めてほしいと、差別や偏見のある下でも声を上げた当事者の訴えが急速に社会意識を変えてまいりました。市民団体の調査では、同性カップルを公的に承認するパートナーシップ制度は、二〇一五年の東京渋谷区を皮切りに、瞬く間に全国に広がっております。今年四月一日現在で、同様の条例を持つ自治体に住む人は、実に総人口の八五%までなっているわけですね。私、最高裁判決を受けて、行政にも、そして私たち立法府にも求められているのは、こうした社会通念や社会的意識の前向きな変化をしっかりと捉えて、この憲法に定められた国民の権利を実現をするために常に制度を見直すことだと思うんです。
 警察庁には同様の制度があります。警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律、ここでも、災害や犯罪捜査等で警察に協力して亡くなった方の遺族給付金を受けることができる遺族に事実婚を含むと政令で示しております。犯罪や警察への協力の中で不慮の死を遂げた遺族への支援の必要性は、私は犯給金と同じだと思うんですね。
 この制度でも、同性パートナーも対象になるように見直すべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 今般の判決は、犯罪被害者給付制度の趣旨、目的を前提に示されたものであることでございますので、警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律につきましては、直ちに最高裁判決の解釈が当てはまるものではないと考えてはおります。
 同法に基づく協力援助者災害給付制度の給付の範囲といった事項につきましては国家公務員災害補償法の規定を参酌して定めるとされていることから、関係省庁とも連携しつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 この相手を失った打撃というのは、私、この犯罪被害の場合であっても警察に協力して亡くなったという場合でも、遺族にしたら全く一緒だと思うんですね。これを区別する理由は私はないと思います。しっかり見直しを求めたいと思うんですね。
 その上で、加藤大臣にお聞きいたしますが、共生社会を担当する大臣というのは岸田政権で初めて設けられました。岸田総理は、今年二月に開かれた共生社会と人権に関するシンポジウムで、誰一人取り残されないとのSDGsの達成に向けた取組の一つでもある共生社会の実現は我々の果たすべき重要な使命ですと、こう述べて、性的マイノリティーの人々などへの不当な差別的取扱いは許されないと挨拶をされました。これはまさに共生社会を担当する加藤大臣に求められていることだと思うんですね。
 今回の判決を、共生社会実現を果たす重要な使命を持つ大臣としてどのように受け止められているでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、三月二十六日、最高裁において、犯罪被害者等給付金の受給対象に同性カップルが含まれるとの判断が示されたことは承知をしてございます。
 犯罪被害者等給付金につきましては、警察庁の所管であり、また本件は係争中ですのでコメントは差し控えますが、いずれにしましても、内閣府としましては、引き続き、先ほど委員御指摘の使命がございますので、多様性が尊重され、マイノリティーの方もマジョリティーの方も全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、安心して暮らせる社会、自分らしい人生を送れるような社会の実現に向けてしっかりと取り組んでまいります。
○井上哲士君 犯給法と同様に、事実婚と法律婚を同様の取扱いをしている法律がどれだけあるのか、参議院法制局に聞きますと、事実上と婚姻関係を同時に用いているもの、事実上夫婦を用いているものの合計で、法律で九十件、政令で四十六件となっております。主なものを男女共同参画局がまとめたものが配付した表なんですね。
 しかし、これらの制度でも、異性の事実婚は対象だけども、同性カップルは外されてきたわけです。当事者の声をLGBT法連合会の困難リストで紹介していますが、例えばここにもあります労働災害の遺族補償について、パートナーが業務上の理由で死亡して、使用者に対して遺族補償の給付を申し込もうとしたけども、遺族ではないことを理由に拒否されたと、こういう声が寄せられております。
 このように、異性の事実婚は対象となるのに、同性の事実婚では対象とならないという制度が多くあります。私は、誰一人取り残さない共生社会の実現に向けて解決すべき問題だと思うんですね。
 今回の判決を受けて、これまで諦めてきた人たちが、ほかの制度でも同性パートナーの適用を求める申請が広がることも予想されると思うんですね。その際にも、一つ一つ裁判を強いるのではなくて、むしろ、行政の側で積極的に見直しをするということが必要だと思うんです。
 共生社会を実現をする使命を持つ大臣として、是非イニシアチブを発揮をして、所管するそれぞれの省庁と協力をして、これらの制度を一つ一つ検討して、同性パートナーも対象となる制度を広げていただきたいと思うんですけども、加藤大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受できる、誰一人取り残さない社会の実現、これは大変重要なものであると認識をしてございます。
 本件判決、これを受けました各制度における同性カップルの取扱いにつきましては、それぞれの制度を所管する各府省庁において、本件判決の趣旨等を踏まえ、また各制度の趣旨、目的等に照らして精査されるものと承知をしてございます。
 いずれにしましても、先ほど申し上げた誰一人取り残さない社会の実現に向けまして、関係省庁としっかり連携を図りながら取り組んでまいりたいと考えております。
○井上哲士君 是非、この使命を持った大臣としてイニシアチブを発揮をしていただきたいと思うんですね。
 日弁連も、二〇二一年の二月に、この事実婚にも、婚姻関係と同様に適用される法令等については、性的指向又は性別によって異なる取扱いをすることに強い正当化事由が見当たらない限り、当事者の法令上の性別に関わりなく適用があるべきだと、こういう意見書も出されております。こういうものも踏まえながら、各省庁としっかり協力をして、共生社会に向けたイニシアチブを発揮をしていただきたいと思います。
 今、婚姻の平等を求める裁判も全国で起こされまして、三月の札幌高裁は、憲法は同性間の結婚について異性間と同じように保障しているということもしました。共生社会実現へ同性カップルの権利の保障や結婚平等の法整備を急がれているという中でありますから、繰り返しになりますが、加藤大臣のその点でのイニシアチブを強く求めたいと思います。
 ここまでで国家公安委員長と参考人は終わりますので、これで結構です。
○委員長(阿達雅志君) では、松村国家公安委員会委員長は御退席いただいて結構です。あと、では、警察庁長官官房谷総括審議官も御退席いただいて結構です。
○井上哲士君 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律が今月一日に施行されました。この法律ができる前の売春防止法に基づく婦人保護事業とこの法律に基づく女性支援事業では、その目的や役割はどのように変わったんでしょうか。
○政府参考人(斎須朋之君) お答え申し上げます。
 売春防止法におきましては、売春を行うおそれのある女子の保護更生を目的としておりましたが、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律におきましては、困難な問題を抱える女性の福祉の増進を図ることを目的といたしまして、女性の状況等に応じた最適な支援を行うことを基本理念として掲げております。これに基づきまして、国といたしましては、困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針を策定いたしまして、支援の基本的な考え方をお示ししているところでございます。
 新法におきましては、民間団体との協働という視点も取り入れた新たな支援の枠組みを構築いたしまして、官民の関係機関が連携、協働して一人一人のニーズに応じた包括的な支援を提供できるよう取り組んでいくこととしております。
○井上哲士君 法律の目的、役割が発展をさせられたわけであります。
 この女性支援事業で現場を直接支えるのが女性相談支援員です。売春防止法の下では婦人相談員と呼ばれてきました。政府の基本方針で示されているように、この女性相談支援員は、支援対象者との継続的な信頼関係を構築することとともに高い専門性が要求をされます。責任も極めて重くて、正規職員として処遇されるのが当然な仕事だと思うんですね。
 ところが、実態はどうかと。厚生労働省の資料によりますと、昨年四月一日時点で、都道府県と市を合わせた女性、全女性相談支援員、千五百九十六人のうち常勤は一七・七%にすぎません。また、四四%が家庭相談員や母子自立支援員など他の職務との兼務となっております。
 安定して働き続けることができて初めて、様々な経験を積み重ねながら、継続した支援の質も向上させていくことができるわけで、現状の処遇の低さがそれを困難にしているのではないかと思うんですね。
 専門職に見合った賃金を始めとする労働条件の底上げ、さらに非常勤職員の常勤化を促進する支援が必要かと思いますが、現状認識及び支援の必要性について、厚労省、いかがでしょうか。
○政府参考人(斎須朋之君) お答え申し上げます。
 女性相談支援員は、各都道府県の女性相談支援センター等におきまして、困難な問題を抱える女性にとっての最初の窓口として相談に応じ、女性の状況等に応じた必要な支援のコーディネートを行うなど、女性支援において重要な役割を担うものでございます。その任用や労働条件につきましては、女性相談支援員は地方公務員でありますので、自治体において判断されることになりますが、その職務を行うために必要な能力でありますとか専門的な知識、経験を有する人材の登用、それから職務に見合った処遇に御配慮いただければというふうに考えております。
 こうした考え方の下で、厚労省におきましては女性相談支援員活動強化事業に取り組んでいるところでございまして、経験年数ですとか職務に応じた各種の加算制度を設けております。また、令和六年度予算におきましては勤勉手当の新設などを行ったところでございます。
○井上哲士君 一定の改善が進められてきたわけでありますけれども、更に支援が求められると思うんですね。
 お手元に資料として、東大の大学院の小川真理子特任准教授らの研究会による婦人相談員に関する調査報告書についての最近の報道を配付しております。全国婦人相談員を対象とした初めての実態調査で、昨年の三月に発表をされました。その中で、業務に見合った報酬を受けているか、と思うかという問いに五五・三%が思わないと回答しておりますし、業務を行う際に困難を感じることとして多かったのが、社会資源、施設等の不足、支援のための制度の不足、不備、被害者の重篤な相談への心理的負担等でありました。特に注目したのは、この業務の影響による心身の不調を訴える方が五〇・六%と半数もいるんですね。相談支援の中での心理的負担に対するケアも求められていると。
 こういう現状についてどのように厚労省として認識をされて、こうしたことに対応するための方策はどのように考えているか、お願いします。
○政府参考人(斎須朋之君) 今先生御指摘ございました調査報告に加えまして、厚労省が行いました令和五年度の調査研究事業におきましても、女性相談支援員が、人の命や健康を扱うという職責の重さを感じたときでありますとか、相談者とのコミュニケーションで困難を感じたときなどにバーンアウトしてしまうような気持ちになるという回答を得ているところでございます。
 こうした中で、厚労省といたしましては、困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針におきまして、女性相談支援員が孤立することのないよう、自治体において個々の業務を十分にサポートすることなどを求めております。また、女性相談支援員向けの研修の実施ですとか、女性支援のための特設サイト等を通じまして、支援に必要な知識や情報を提供するとともに、他の支援者とのつながりをつくる機会を設けているところでございます。
 引き続き、こうした取組等を通じまして、女性相談支援員が期待される役割を果たすことができる職場環境の整備を推進してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 大きな役割が期待されていますので、しっかり支援をしていただきたいと思うんですが。
 一定の支援の拡充もされてきたわけですが、一方で、これまで婦人相談員、女性相談支援員を配置していない市は約半数になります。配置している市でも、五割近くが兼務で、八割は非常勤なんですね。厚労省が行っているこの配置した自治体への財政支援の拡大は重要ですが、同時にやっぱり、専従常勤の支援員を配置する必要性、これを地方自治体にしっかり徹底をして、この配置する市町村を広げるということが重要だと思うんです。非常に全国的にばらつきがある。
 昨年の四月の六日に、この当委員会のDV防止法改正案の質疑の中で、婦人相談員の無期雇用の常勤職であるとか原則異動のない専門職としての処遇改善、体制強化を求めました。当時の小倉男女共同参画担当大臣は、被害者の保護を図る上で大変重要な役割を果たしていると述べられて、所管は厚労省だが内閣府としても連携して適切な処遇の改善に努めると、こう答弁をされました。
 この間、男女共同参画担当大臣として、この女性相談支援員の処遇改善にどのように努めてこられたのか、そして今後、一層の処遇改善とともに、特に配置するその自治体を広げる、このことに役割を果たすべきだと思うんですが、その点での対応はいかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 小倉前大臣の答弁を御紹介いただきましたが、私としましても、女性相談支援員の皆様方には、各地域において被害者の相談窓口となり、また関係機関との連携も図りながら継続的な支援を行うといった大変重要な役割を果たしていただいているものと認識をしてございます。
 女性相談支援員の皆さんの適正な配置等を含む体制強化、これにつきましては、昨年の通常国会におけるDV防止法の一部改正法案の審議の際に、この委員会の附帯決議としても御指摘をいただいているものと承知をしてございます。
 内閣府としましては、その御趣旨も踏まえながら、昨年九月、厚生労働省等とともに取りまとめた新たな基本方針において、相談員の待遇や女性相談支援員の配置について、相談、女性相談支援員が設置されていない市町村においては、その設置について不断に検討するよう努めることが必要などの記載を盛り込み、都道府県や市町村の基本計画の指針としてお示しをしたところでございます。
 所管する厚生労働省におきましても、女性相談支援員に係る取組等を進めておられるものと承知をしておりまして、引き続き厚生労働省とよく連携をして取り組んでまいります。
○井上哲士君 一層の処遇改善と専従常勤の支援員の配置を広げるための支援を重ねて強く求めまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。

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