国会質問議事録

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内閣委員会・経済産業委員会連合審査会(経済秘密保護法案)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 先日の内閣委員会で、重要経済安保情報を取り扱える適合事業者の基準について議論になりました。大臣、政府からは、特定秘密保護法と同様に、重要経済安保情報を取り扱う場所への立入り及び機器の持込みの制限や、従業員に対する重要経済安保情報の保護に関する教育といった措置を求める旨の答弁がありました。
 重要経済安保情報の提供を受けた研究や研究開発の結果、重要経済安保情報を得ると見込まれ指定された研究では、この当該研究開発に携わる人を限定するだけではなくて、人の出入りを規制し、情報漏えい対策の施された部屋や施設での研究をすることが法的な義務になるということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(品川高浩君) お答えいたします。
 本法案におきましては、漏えいすれば我が国の安全保障に支障を与える情報を行政機関から提供するに当たりまして、その情報について厳格な管理体制を取っていただくこと、また情報の取扱者を漏えいのおそれがないと認められた者に限定することなどを定めております。
○井上哲士君 ちゃんとこれ、質問に答えていただきたいんですが。
 つまり、そういう場所への人の出入りを規制をする、そして漏えい対策の施された部屋や施設での研究をするということが義務付けられるということなんでしょうか。
○政府参考人(品川高浩君) お答えいたします。
 お尋ねに関しまして、本法案が指定することとしておりますのは、研究ではございませんで、あくまで情報、政府が保有する情報でございます。
 研究に従事する方々が本制度に関わる場面といたしましては、この所属先が適合事業者として契約に基づき行政機関から重要経済安保情報の提供を受ける場合であって、かつその重要経済安保情報を取り扱うことが見込まれるとして研究に従事される方々が自ら同意して適性評価を受けるなどの情報を保護する措置をとると、この本法案に基づいて保護する措置をとる場合であるというふうにこの本法案ではしております。
○井上哲士君 いや、分かりやすく答えてほしいんですが。
 この間の答弁では、重要経済安保情報を取り扱う場所への立入りの制限と言われたわけですよ。これは人の出入りを規制するということなんですかと聞いているんです。
○政府参考人(品川高浩君) 本法案十条三項におきまして、この適合事業者が行政機関と契約する際の契約に定める事項を掲げております。その中には、一つは、取扱いの業務を行うことができることとされる者のうち、当該適合事業者が指名して重要経済安保情報の取扱いの業務を行わせる者の範囲を決めるですとか、あるいは業務を管理する者の指名に関する事項ですとか、重要経済安保情報の保護のために必要な施設設備の設置に関する事項、またこの重要経済安保情報の保護のために必要な施設設備の設置に関する事項等を定めているところでございます。
○井上哲士君 いや、政府がこの間取り扱う場所への立入りの制限というふうに言われたから私は確認しているだけなのに、何でかえって訳の分からぬ答弁をしたのか、よく分かりません。
 もう一点確認しますが、重要経済安保情報に指定された研究の成果は自由に発表することができるのか。いかなる制約があるんでしょうか。
○政府参考人(品川高浩君) お答えいたします。
 繰り返しになりますが、本法案により指定されるのは、研究ではございませんで、情報でございます。政府が保有する重要経済基盤の保護に関する情報となります。
 そして、この本法案の先ほども申し上げたました第十条二項は、行政機関が適合事業者の同意を得て当該事業者に行わせる調査研究等において、重要経済安保情報の要件を満たす情報が生成されることが見込まれる場合に、あらかじめこれを重要経済安保情報として指定をし、当該事業者との契約に基づいて指定に係る生成情報を重要経済安保情報として保有させるという規定であります。
 このような前提の下で生成された重要経済安保情報につきましては、あくまで本法律案に規定される保護措置をとる必要がありますところ、これを発表いただくといった性質のものではないと言えます。
 こうした取扱いにつきましては、適合事業者の同意、行政機関と適合事業者の契約が前提でありまして、実際に研究に従事される方々があらかじめ了解している場合のものであると考えております。
○井上哲士君 いや、本当にわざと分かりにくく答弁されているのかと思うぐらいですけども、要するに発表というものではないということがありました。様々な制約があるわけですね、幾ら合意をしているといってもですよ。
 そこで、大臣にお聞きしますが、昨年、新型コロナウイルス対策で注目されたmRNAワクチンの開発でノーベル生理学・医学賞を受賞したカリコ・カタリン教授とドリュー・ワイスマン教授が、記者会見で受賞につながった研究のきっかけ語っているんですね。こういうふうに言っています。大学内のコピー機を使うための列に並んでいたときに、働いている部署も建物も違ったけども、持ち時間で話す中、お互いの担当分野を組み合わせた研究ができると気付いたと、こう言われているんですね。つまり、担当分野を超えた自由な交流ということが革新的な研究に非常に重要だということを示していると思います。
 一方で、クリアランスを必要とする研究を行っている米国の大学では、外から見られないよう窓に張り紙をしている研究室とか、外国人立入禁止と書かれた部屋で交流をシャットアウトして研究が進められているという実態もあります。
 重要経済安保情報に指定された研究では、このような革新的な研究開発につながった研究者同士の交流ができなくなって、むしろ研究の発展の阻害要因になるのではないかと思いますけども、いかがでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 十条二項によりまして重要経済安保情報に指定された研究に従事する研究者というのは、本法案に基づく適性評価を受けて、重要経済安保情報がその過程で出現するような研究に従事する方をいうことになります。
 この場合において、この研究者に対しては、当該研究の過程で出現した重要経済安保情報に対する守秘義務は掛かります。掛からなければ情報保全ができません。しかし、他の研究者との交流を含めた研究活動の自由の制限が課されるものではございません。
○井上哲士君 先ほどアメリカの例も述べましたけども、外から見られないように窓を張り紙しているような研究室とか、そういうこと現にあるわけですね。研究結果を広く共有して相互批判を可能にすることで科学は進歩をしてきたと思うんですね、デュアルユース事業であっても技術であっても同じだと思いますが。
 ところが、この重要経済安保情報に指定されれば、携われる研究者に様々な制限が掛かりますし、やはり科学者同士の交流にも様々な制限があります。そして、論文発表にも制限があると。私は、これでは研究の自由やその発表の自由を侵すものとなるんじゃないかと。
 第三回の有識者会議では、セキュリティークリアランスを受けることに同意して、国立の研究機関や民間企業に移籍していただくことになる先端技術研究者の方には、その報酬、研究費、必要となる施設などの面で十分に処遇する必要があると、特に、研究論文を公表して世に問うことが大きな目標であった方々に、機密情報に関わる論文は公表できないという制約を課すことになると、こういう発言もありました。そういう制度になっているということを指摘をしなくてはなりません。
 その上で更に聞きますが、この法案の第十条第二項では、国が行わせる調査又は研究とありますが、この行わせるとは、国が直接委託を行う以外に具体的にどのようなケースがあるのか。経済安全保障重要技術育成プログラム、Kプログラムのように、独立行政法人に造成した基金から資金を提供して委託研究をするケースも対象になるのか。Kプログラムの研究成果を重要経済安保情報に指定して保有させるということを想定しているんではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 本法案十条第二項の適合事業者に行わせる調査又は研究その他の活動につきましては、国が適合事業者と委託契約を締結して重要経済安保情報として成果の保護を要するような調査研究を依頼する場合を典型的な場合として想定しております。
 委託契約のほかに、じゃ、どんなものがあるのかということですが、現時点で具体的な例を挙げるのは難しいのですが、委託契約という形によらずとも、行政機関と事業者の関係性や資金負担、調査研究内容への関与などから国が主体的に行わせると言えるものであれば同様に取り扱うこととし、条文上は、行政機関の長がその同意を得て適合事業者に行わせる調査又は研究などと規定をしております。もっとも、独立行政法人の場合を含め、成果の秘匿を要するような研究開発を行わせるのであれば、一般的には、秘密保持契約だけではなく委託契約などを締結するのが通常でございます。
 御指摘いただきましたいわゆるKプログラムにつきましては、これは成果の公開を基本として実施しているものでございますので、これは、行わせるに該当するか否かを問わず、その成果を重要経済安保情報として指定するということは予定いたしておりません。
○井上哲士君 Kプログラムは、研究成果の公開が基本のために、その研究成果が重要経済安保情報として指定されることはないと。これはまあ衆議院からも繰り返しの答弁なんですね。
 ところが、内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局と内閣府大臣官房経済安全保障推進室が作成した昨年四月のKプログラムに関するQアンドAというのがあるんですけど、これ見ますと、こう書いてあるんですね。Kプログラムの研究成果について公開を基本とすることになっていますが、国から例外的に非公式として扱うべきとの要請が行われる場合に関して教えてくださいと。こういう問いに対して、例えば、海外での懸念用途への転用が明確、影響が甚大であるなどの非常に限られたケースとしつつも、協議会構成員の全員の同意があれば、対象となる研究成果は非公開の扱いになりますと、こういう回答なんですね。
 研究成果が非公開になれば、この指定が可能になるんじゃないですか。Kプログラムは指定されることはないというのはちょっと虚偽答弁になると思いますが、いかがですか。
○政府参考人(飯田陽一君) お答えいたします。
 御指摘のありましたQアンドAは、このKプログラムの運用を進めるに当たって、アカデミアの方から研究成果の取扱いについて特に強い関心が寄せられました。その上で、私ども、このKプログラムの成果については公開することを前提にアカデミアの方たちと調整をしてきているわけですけれども、QアンドAにございますのは、その中であっても、研究の結果、思いも寄らぬ形で安全保障に影響を与えてしまうような成果が得られた場合、これはアカデミアの、参加されているアカデミアの方にとっても、それを不用意に公開することは本意ではないだろうという考え方の下に、ただし、それが安全保障に、あるいは軍事用途に転用できるかどうかということはアカデミアの方は分からないわけでございますので、その場合は、政府の方からこういう可能性がありますということを申し上げた上で、それが本当に妥当なものであるかどうかということについては、協議会に参加をしている研究者、実際に研究に従事されている方々や、あるいは他の政府の職員、あるいは民間企業も参加しておりますので、その皆様方の合意を得た上で意思決定をしていこうということを書いたものでございまして、例外があることを前提に、あるいは公開しないことを前提に議論しているというものではございません。
○井上哲士君 いや、今事務方がそういう例外があるということを認められたわけですよね。しかし、大臣は、先ほど来ありますように、Kプログラムは公開が基本のために指定されることはないと、何の条件も付けずに明確にこの間答弁をされているわけですね。
 こういう、今あったような例外があるということは大臣は知らされてなかったんですかね。非公開扱いになる場合があるということは御承知されてなかったんですか。
○国務大臣(高市早苗君) 特定重要技術の研究開発の促進及びその成果の適切な活用に関する基本指針というのは、委員も御承知のとおりだと思いますが、第四節、協議会の運営に、研究開発の内容及び成果の取扱い、本法の枠組みにおいては、制約的要素は必要最小限度としつつ、研究成果は公開を基本とすると明記をいたしております。
 なお、この重要経済安保情報に、本法案で規定する重要経済安保情報に該当するか否かということになりますと、これはもうこの法案で、三要件、そして四つの類型をお示ししておりますので、それに該当しない場合は、決して該当しないということでございます。
 Kプログラムも研究成果の公開が基本であるということは繰り返して申し上げているとおりでございます。
○井上哲士君 基本であるけれども、例外はあるんだと、そのことは一言も触れられていないんですよ。そして、基本がそうなのだから指定されることはないと、こういう答弁しかされてこなかったんですね。なぜ、こういう重大な問題を明らかにしてこなかったのかと。
 先ほどの紹介したQアンドAで言う、海外での懸念用途への転用が明確、影響が甚大であると、こういうものはまさに重要経済安保情報になってくると思うんですよね。これに当たるからとして非公開の例外的扱いをKプログラムでもしていくということになりますと、どんどんどんどん広がっていくという可能性があると思うんですね。
 このKプログラムは、運用・評価指針で、研究成果は、民生利用のみならず、成果の活用が見込まれる関係府省、機関において公的利用につなげていくことを指向し、国主導による研究開発成果の社会実装や市場の誘導につなげていくことを、視点を重視するとしています。
 ここで言う公的利用には軍事利用も含まれるわけで、例えばNEDOが研究推進法人になっている高感度小型多波長赤外線センサー技術、これに関する研究開発構想は、この多波長赤外線センサーを構成する重要要素技術である赤外線検出器は、その熱源探知能力から弾道ミサイルや高速飛翔体の発射検知及び追尾又は暗視センサーとして安全保障用途で使用することができると、こう明記をしております。
 昨年十一月の経済安全保障法制に関する有識者会議に出された資料で、この事業を含めて、このKプログラムの指定基金協議会が三十一掲げられていますけども、そのうち一つを除いて三十には、この関係行政機関に防衛施設庁が加わっているわけですね。ですから、このKプログラムの研究成果を軍事転用することを可能とするために、公開が基本と言いながら、それを非公開の扱いにして、そして本法案による秘密指定を行うということが可能なんじゃないですか。それが目的ではありませんか。
○国務大臣(高市早苗君) 今おっしゃったKプログラムの個別例でございますが、委員はとても詳しく内容を御承知でございました。重要経済安保情報の指定の要件という中に、それが非公知のものであるということが入っております。公開された情報を含むものに関しては、これは重要経済安保情報として指定することはできません。
○井上哲士君 最初はそうやって研究やってきたら、途中から海外への懸念用途への転用が明確、影響が甚大だということになって、公開基本のものを非公開にするとさっきも言ったじゃないですか。その可能性、否定しますか。
○政府参考人(飯田陽一君) お答えをいたします。
 まず、Kプログラムについては公開することが基本ということは変わりはございません。
 それから、重要経済安保情報につきましては、政府が保有する情報ということでございますので、今委員が御指摘のKプログラムが、これが政府が行わせる研究に当たるかどうかという論点はあるにしても、実際にそれが、調査研究を行わせる場合というのが十条二項でございますけれども、そこで、あらかじめ政府が、重要経済安保情報が出現するということでそれをあらかじめ指定したときにおいてのみ、それに加えて、参加をされている方と契約をした上で重要経済安保情報を保有させるということになっておりますので、Kプログラムにおいてはそのような契約を結んでおりませんし、指定もしておりませんので、それが重要経済安保情報になるということは我々としては想定しておりません。
○井上哲士君 想定せずに始めても、研究してみたら海外での懸念用途への転用が明確、影響が甚大であると、そういうことになったら非公開にするんでしょう。そしたら指定の対象になるじゃないですか。そうやって、何か小さく見せて、実際には例外をどんどんどんどん広げていくというやり方はあってはならないということを強く申し上げまして、質問を終わります。

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