○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
私も委員派遣に参加をいたしまして、珠洲市や能登町の被災現場へ行き、また、珠洲市長を始め多くの皆さんから御苦労や要望をお聞きをいたしました。被災者の支援と復旧への懸命な努力に改めて敬意を表します。
私は、一月の三日に輪島市に行きまして以来、様々被災地に足を運んできましたが、三か月半以上たっても、倒壊した建物がもう本当にそのままという現場が少なくありません。
一方、珠洲市では下水道の復旧が進んでおり、奮闘された名古屋市の職員の方からも直接お話を聞きました。インフラの復旧が進む中で、二次避難をされている被災者の方も一時的に戻って、そして住宅の再建などに取り組み始めているという局面だと思うんですね。珠洲市の災害廃棄物の仮置場にも行きましたけど、被災者が前に進むための足かせになっているのがこの災害廃棄物の問題であります。
瓦れきなど災害ごみの処理のスピードは生活となりわいの再建に決定的でありますけれども、これが進んでおりません。特に、自治体が被災者に対して、指定された集積所や遠く離れた仮置場まで持ち込むことを求めているということが大きな負担になっているんですね。特に、車を失った被災者、それから高齢者の方には大きな負担であります。
過去の災害を見ますと、この災害ごみをそれぞれ玄関先とか道路脇に出せば、市町村が収集、運搬して回るということが取り組まれてきました。大臣の御地元の二〇一六年のあの熊本地震でも、熊本市の場合は、特別収集体制を取って、一般ごみ収集に加えて災害ごみの収集も行いました。平時のごみの集積所に加えて、自治会などが取り決めた駐車場であるとか公園等を仮置場として収集を行いました。大型ごみは事前申込制で戸別収集を行いましたが、二次避難所や他地域に避難をしていた被災者とか、長期入院等のやむを得ない事情で災害ごみが排出できなかった方がいるということで、これはその年の十二月までこういう戸別の収集を行ったわけですよね。
こういうやっぱり過去の経験をしっかり生かすことが必要だと思います。
環境副大臣に来ていただいておりますが、能登半島の地震でも、災害ごみを玄関先であるとか道路脇などに出しておけば市や町が収集運搬するように取り組むことは制度上可能だと考えますが、いかがでしょうか。そして、同時に、そうやって行った収集運搬事業は、国の災害等廃棄物処理事業費補助金制度の対象になるということでよろしいでしょうか。
○副大臣(八木哲也君) ありがとうございます。
御指摘のとおりでございまして、災害時には片付けごみを迅速に仮置場に搬入することが重要であると思います。
今御指摘なとおりでございまして、地域の実情に応じまして、仮置場に搬入できない住民の皆さんへの対応などとして戸別収集を行う場合もございます。
環境省では、災害廃棄物の収集運搬及び処分に対しまして、災害等廃棄物処理事業費補助金により市町村に財政支援を行っておりまして、市町村が災害廃棄物の戸別収集運搬を行った費用についても支援の対象としておりますので、よろしくお願いします。
○井上哲士君 この災害ごみを仮置場に持ち込む際に、自治体によっては約十種類もの分別が必要になっていまして、これも大変被災者にとって大きな負担なんですね。これが遅れの一つの要因になっております。もちろん災害ごみであっても分別は必要ですけれども、これ全部、被災者に全て負わすというのは違うと思うんですね。
これも、二〇一八年の西日本豪雨災害の最大被災地の一つである倉敷市の真備地域の場合、被災者が分別する負担を減らすために県が引き受けて支援をしております。可燃混合ごみ、不燃混合ごみ、特定家電、金属、危険物、この五種類の分別をお願いしましたけれども、倉敷市が一次仮置場に収集した災害ごみを岡山県が一括して二次仮置場に運び入れると。さらに、機械で破砕選別処理する中間処理施設も整備をして、リサイクル、焼却処分、最終処分所へと運搬、処理をすると、こういうふうに県が責任を負ったわけであります。
能登半島地震においても、こういうふうに市や町自身が、あるいは市や町が県に委託するなどとして二次仮置場を確保したり、瓦れきや災害ごみを分別するために破砕選別処理をする中間処理施設を新たに整備をして、災害ごみを分別する負担を減らす取組を行うことは可能でしょうか。そして、この事業も先ほどの国の災害等廃棄物処理事業費補助金制度の対象になるかどうか、お聞きしたいと思います。
○副大臣(八木哲也君) 御指摘のように、一番大切なことは、被災に遭われた方々が無理なくスムーズにやれるということが私は一番大事だと、こういうふうに思っておりまして、被災者の皆さんの一番利便性は何があるのかという観点から物事は進めていかなければいけないと、こういうふうに思っておりまして、今回の能登半島地震では、被災市町が処理の主体となって災害廃棄物の処理を行っておりまして、県においては事業者団体や他県との広域的な連携調整、県内の災害廃棄物処理全体の進捗管理などを行っております。
御質問の件につきましても、災害廃棄物の処理に関する事務を必要に応じて市町が県に委託することは、地方自治法上可能であります。
いずれにしましても、災害廃棄物の処理が円滑、迅速に進むよう、市町と県が適切な役割分担の下で連携して対応することが重要であると考えます。
また、市町が災害廃棄物の処理に要した費用につきまして、災害廃棄物処理事業費補助金による支援の対象としておりまして、県に委託した場合でも支援の対象となります。
災害廃棄物処理が円滑かつ迅速に行われるよう、引き続き、被災市町や県に対して財政支援や技術的、人的支援を環境省として行っていきたいと考えております。
○井上哲士君 一番大切なことは、被災者が無理なくスムーズにできることだと答弁いただきましたけど、本当にこれが大事だと思うんですよね。過去の様々な教訓や経験の積み上げをしっかり生かしていくということを是非徹底もしていただきたいし、支援もいただきたいと思います。
その上で、公費解体の問題についてお聞きします。
石川県での住家被害は七万八千二十六棟、このうち全壊判定は八千二百十七棟。石川県は二万二千棟が公費解体になるのではないかと推計をしておりますが、現在のこの公費解体の申請件数、発注数、解体完了の数はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(角倉一郎君) お答え申し上げます。
石川県内における公費による解体の実施状況でございますけれども、四月二十二日時点で、申請は八千五百二十八棟、解体に着手しておりますのは二百四十四棟、このうち解体が完了いたしましたのは八十八棟となっております。今後、五百から六百班の解体事業者が順次現地に入り、解体工事を更に加速化してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 いろいろ御苦労をされているんですが、まだ完了八十八棟ということでありまして、緒に就いたばかりだという状況だと思います。
この公費解体の遅れの理由の一つが、所有者全員の同意が必要だという問題なんですね。住宅の解体は財産の処分になるために、公費解体には所有者全員の同意を書面で提出することが求められております。しかし、相続や代替わりの際に建物の名義変更をしておらずに、相続の権利を持っている親族がたくさんいて、全員の同意を得ることが難しいケースが多数あるということであります。そのために、公費解体の申請すらできないということが起きているわけですね。
環境省は、解決策として、東日本大震災の際に仙台市が行った、相続権を持つ人が多数に上り全員が取れないなどやむを得ない場合は、所有権に関する問題が生じても申請者が責任を持って対応するという内容の宣誓書を提出するということで公費解体を行えるという対応策を示していると承知をしておりますが、この宣誓書を提出するという環境省が示した方法に、現在、この能登半島地震で対応、活用しているのはどんだけになっているでしょうか。
○政府参考人(角倉一郎君) お答え申し上げます。
御指摘のように、公費による解体において、所有者全員の解体の意向が確認できない場合であっても、確認ができない事情や家屋の状況を勘案してやむを得ないと各自治体において御判断されるときは、事後に所有権に関する問題が発生しても解体申請者が責任を持って対応する旨の宣誓書などの提出を受けることにより解体申請を受け付けるという対応も考えられるところでございます。
それで、先ほどお答え申し上げました家屋の解体の約八千五百件の申請について、この宣誓書の活用を含め、それぞれどのような方法で所有者に意向を確認したかは把握をしておりませんけれども、所有者の意向確認方法につきましては、民法の所有者不明建物管理制度や宣誓書の活用も含め、各自治体において検討、活用していただくようマニュアルでも記載をし、周知を行うとともに、現地に駐在する環境省職員による伴走支援に努めているところでございます。
なお、宣誓書の活用につきましては、過去の災害においても活用した事例ございまして、先ほど御指摘ございましたが、東日本大震災での仙台市や平成二十八年熊本地震での熊本市、そして平成三十年七月豪雨での倉敷市においてこのような宣誓書などの提出を受けて解体を行った事例があると承知をしております。
環境省が作成をいたしました公費解体・撤去マニュアルにおきましても、このような考え方や具体例について記載をしているところでございまして、各自治体に対して引き続き周知徹底を行うとともに、しっかりと伴走支援に努めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 お聞きしますと、県内で採用、そういう方法を採用している自治体の方が少ないということを聞いているんですね。やっぱり自治体はトラブルが起きるんじゃないかということを大変懸念をされておりまして、十分に進んでいないと聞いています。
公費解体に関する相談窓口を請け負っている石川県の司法書士会が、一月以降に取り組んだ困り事無料相談では、電話相談の八割はこの家屋の公費解体に関するものだということなんですね。やっぱりこれがこの足かせになっております。本当に、普通の相続の場合でも何年も掛かる場合もあるわけですけど、本当にこれが出発の足かせになるということを何とかしなくちゃいけないと思うんですね。
今後の復旧復興の大きな障害になりかねないということで、先ほど言いましたように、自治体はトラブルを心配しているという実態もあるわけで、やはり国としても、更に実態をつかんで、過去の様々な取組の例も示しながら、知恵を出し合い、相談をして、人的支援であるとか実務上の支援も含めて自治体を支援をすることが必要かと思いますけれども、これ、大臣いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 委員御指摘の課題というのは、今環境省から答弁がございましたが、被災者の方々に宣誓書の御紹介であったり、司法書士の方々の活動で相談窓口であったり、いろんなことをやっていただいておりますが、まず公費解体、解体はやはり復興の第一歩だと思っておりますし、これが滞るようなことがあってはなりませんし、御指摘の課題については、環境省や関連する省庁と緊密に連携を取りながら、どんな支援ができるのか、しっかりと検討してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 公費解体は復興の第一歩だという御答弁ありました。是非その立場でしっかり支援をいただきたいと思うんです。
その公費解体でもう一つ被災者から苦情が出ているのが、公費解体の前に自宅の家財を運び出すように市や町から要請されているという問題なんですね。
石川県のホームページ見ましても、公費解体を要望される方へのお願いとして呼びかけが載っております。家財が大量に残置されることで大幅に解体日数が長くなる可能性があります、公費解体を希望される方におかれましては、安全に十分配慮した上で、ボランティアと連携いただくなどによる、できるだけ家財を回収しておくことが迅速な解体につながりますので、何とぞ御協力をお願いいたしますと、こう書いてあります。
協力の呼びかけなんですが、実際の現場に行きますと、条件のような形になっている場合もあると。被災者からは、危険判定で赤になっていると、そこにボランティアだって入れないと、どうやって家財を運び出せばいいのかと、危ないという声も上がっておりますし、家財を運び出しても保管場所ないんだと、こういう声もあるんですね。どうしろというのかと、こういう悲痛な声が上がっているわけですね。
これ、公費解体の場合に、家財の運び出しが困難な場合はしなくてもよいということだと思うんですけれども、これ確認をしたいと思います。
○副大臣(八木哲也君) 公費による解体を行う家屋等に残置された家具や家電などの撤去処分につきましては、私有財産の保護の観点や持ち出し作業の危険性などの被害の実情を踏まえまして、被災者に寄り添った対応が重要であるというふうに考えております。倒壊のおそれのある場合などは、解体前に家財等の運び出しを行わなくてもよいと考えております。
このため、環境省が策定いたしました公費解体・撤去マニュアルの質疑応答集におきまして、災害により損傷し、不要なものとして処分せざるを得ない家財等を災害廃棄物とみなし、家屋の解体と併せて撤去する場合は補助対象となると、こういうふうにしておりまして、柔軟な運用に努めて、努めるとともに、被災市町村に対し周知を行っているところであります。
引き続き、こうした内容の周知が十分図られますよう、災害廃棄物処理の知見、経験を有する環境省職員等が技術的助言を行うなどによりまして、県及び市町村とも連携して被災者に寄り添った支援を行ってまいりたいと思います。
○井上哲士君 過去の災害のときにいろんな要望を受けてどんどん柔軟な対応を積み重ねてきたと思うんですね。この公費解体・撤去マニュアルも持っておりますが、もう今第四版までなっているとお聞きしています。
問題は、せっかくそういうことが現場の職員の方に伝わっていない、で、機械的な対応が行われているということなんで、是非これをしっかり徹底をしていただきたいと思うんですが、もう一点、公費解体に加えて、関係で、西日本の豪雨災害の際などは、公費解体の際に被害がない部分等、などは、建物の一部を残して解体する部分解体ということが行われて、これも大変喜ばれました。これ、自費解体の費用償還でも同じような扱いがされたわけですね。
この能登半島地震でも当然部分解体は可能だと思いますが、確認をしたいのと、それはどういう場合なのか、いかがでしょうか。
○副大臣(八木哲也君) 前例もたくさんあるわけでありますけれども、今回の場合におきましても、被災地における家屋等の解体につきましては、能登半島地震が特定非常災害に指定されたことを踏まえまして、半壊以上の家屋などについて、災害等廃棄物処理事業費補助金によりまして、市町村が行う公費による解体に対する財政支援を行っているところであります。
公費による解体に当たっては、原則といたしまして、市町村が必要と判断した明らかに廃棄物とみなせる半壊以上の家屋などの一棟全てを解体撤去する場合は補助の対象としております。ただし、例えば母屋に新たに増築した家屋であって家屋全体が半壊以上と判定された場合には、登記上で別棟であるとき又は構造上別棟であると判断できるときは、被害が大きい棟のみの解体撤去も過去の災害において補助対象としております。今般の能登半島地震においても対象となるわけであります。
また、倒壊家屋などを所有者が自費で解体撤去し、市町村が所有者にその費用を償還する場合につきましても国の財政支援の対象としております。被害が大きい棟のみの解体撤去のケースについても支援対象であります。
よろしくお願いします。
○委員長(竹内真二君) 時間が来ておりますので、おまとめください。
○井上哲士君 是非、現場にしっかり徹底していただきたいと思います。
先日の対策本部で、総理が復興基金の創設を指示をされたと報道されております。私も繰り返し求めてまいります。是非早く創設していただきたいということを最後申し上げまして、終わります。
ありがとうございました。
災害対策特別委員会(能登半島地震:災害廃棄物処理、被災家屋の公費解体)
2024年4月26日(金)