○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は、三人の参考人、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
まず、原参考人にお聞きをいたします。
井原参考人の陳述の中で、有識者会議に報告された企業の声が紹介をされました。相手国の国防調達や関係ビジネスへの参入のためにこのセキュリティークリアランスが必要だという声でありますが、資料で配られた経団連の三月十九日の本案の早期成立を求める提言の冒頭でも、軍事転用可能な民生技術の獲得技術の激化や企業の国際共同研究開発等に参加する機会を拡大することに資するということで早期成立を求めていらっしゃるわけですね。
そこでお聞きしますけれども、経団連として、このセキュリティークリアランスが必要とされる国際的な共同研究、共同開発の中には軍事産業への参入ということも想定をされているということでよろしいでしょうか。
○参考人(原一郎君) 私どもは、特にどの分野においてという限定を置いておりません。また、企業から一定のヒアリングを行っておりますけれども、また有識者会議でもそういうヒアリングをやっていただきましたが、その中において、個別具体的な、こういう共同研究において今まで支障があったということでつまびらかにされてはおりませんので、我々としてはこの分野でという限定は特に置いておりませんので、そういう意味では今先生が御指摘の点も含まれ得るというふうに思います。
○井上哲士君 そうしますと、確認ですが、この有識者会議で報告をされた、例えば相手国のコクフショウ関係のビジネスは増加傾向であって、更なる業務獲得、円滑化のためにはクリアランスが必要だと、こういうような企業の声というのは本法案で生かされていると、こういう認識でよろしいでしょうか。
○参考人(原一郎君) そのように考えております。
法案のこの名称ですね、中に活用ということが書いてあるのと、目的の条項にも活用ということが書かれておりますので、それを念頭に置いた法律案だというふうに思っております。
○井上哲士君 続いて、井原参考人にお聞きいたしますが、今のこの本法案と軍需産業との関係ですが、政府は、本法案は軍事分野を念頭に置いたものではなく、武器輸出を進めるものではないと繰り返し答弁をしてきました。
参考人は、先日の日米の首脳の共同声明にも陳述で触れられましたけれども、参考資料として事前に配付をされた雑誌「経済」の昨年の論文では、二〇一一年の2プラス2以来、アメリカがこのセキュリティークリアランス制度を求められてきて、ずっとこの導入の圧力があったということを詳しく述べられておりますけれども、そこの流れとポイントを御説明いただけるでしょうか。
○参考人(井原聰君) ありがとうございます。
日本の政府あるいはメディアも、どちらかというと、やっぱりレピュテーションリスクというのが気になって軍事というのをなかなか表に出さない。そういう流れの中で、でも現実には、これ、特別重要技術というふうな、日本が指定しているような、二十項目あるんですよね。その二十項目は、今触れられたように、アメリカの国家戦略の中の、二〇二〇なんですが、これ毎年出てきます。でも、余り変わらないんです。何を軍事技術として、国家戦略としてこれ取り組んでいくかと。もちろん経済戦略も含まれるわけですけれども、内容的には軍事研究が基本になるような、そういう配置になっているんですね。
私は、その意味で、かなりこの日米共同研究開発というのは、非常に明確な形で軍事研究に日本の研究力を取り込もうと、もうここは非常にはっきりしているわけで、その意味で、何かただで持っていかれちゃう危険な、アメリカの場合には持っていかれちゃっていいんですかという話にもなるわけで、我々はかなりそこのところは注意しないといけないなと思うんです。
以上です。
○井上哲士君 ありがとうございます。
そこで、特定秘密保護法との関係なんですが、引き続き井原参考人にお聞きしますが、今回、政府は特定秘密保護法の運用基準を改定して本法案とのシームレスな運用を行うとしまして、重要経済安保情報に指定、秘密指定されたもののうち、この情報の機微度が上がった場合は特定秘密保護法の指定に移行していく場合があると、こういう答弁がされているわけですが、事実上、特定秘密の範囲を法改正をせずに拡大をしようとするやり方だと思うんですけれども、こういうやり方についての御見解をお願いしたいと思います。
○参考人(井原聰君) 特定秘密保護法のときにかなりこの問題議論されて、経済まで取り込まない形で決めたんですよね、四つの項目を。にもかかわらず、今回、コンフィデンシャルといいながら、大事なものはシームレスで特秘法と一緒に運用しよう、だから、外国から見たら全然問題ないんですよ。コンフィデンシャルでいいんですね、だって重要なときは特秘法が入っていますから。そういう意味では、余り外国は心配しないでこれ見ているだろうと。だから、アメリカなんかはもう喜んでいますね。
だから、その意味で、私は、何といいますかね、特秘法の中に経済分野を潜り込ませようと、特に入りやすいのは軍事のところで、大抵のものはそこに入っちゃうんですよね、読み替えると。だから、そういう危険が実は隠されているというふうに私は考えているんですね。
以上です。
○井上哲士君 ありがとうございます。
続いて、齋藤参考人にお聞きしますけど、今のとも関連をするんですが、特定秘密の範囲が法改正なしに拡大をしようということに加えて、本法案自身がどういう秘密が指定されるのかが非常に不明確で、今後、運用基準とか政省令ということで示されるといいますが、それ自身も極めて抽象的という場合もあるわけで、罪刑法定主義からこうしたことが問題だと繰り返し指摘されておりますが、具体的にどういう問題が起きていくというふうにお考えでしょうか。
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
秘密保護法について言いますと、別表形式になっていまして、かなりどういうものが秘密になるのかというのははっきりしていましたけれども、今回は別表がない。三要件ということをいいますけれども、三要件といってもかなり抽象的ですので、非常に何が秘密になるのかというのがつかみづらいものになっていると思います。
もう一つ、これ、先ほども言ったところですけど、非常に分かりにくいのが、秘密保護法と今回の法案で安全保障という言葉を使っていますけど、この安全保障という言葉の範囲が違うのにそこがよく分からないまま議論されているということだろうと思うんですね。
秘密保護法について言っている安全保障というのは、内閣府のホームページの注釈からすると、国民、国家と国民の安全が害される場合なんですけど、国民の安全に関して言うと、国民の生命が害される場合に安全保障の問題になって、国民の生活が害される場合というのは安全保障の問題ではないんですよね。というふうに政府の方は注釈しているわけです。
今回の法案は、政府の今までの説明を考えると、どう考えたってAIとか半導体とか生命には関わらないものも射程範囲に置いていると思うんですけど、そうすると、そこでいう安全保障というのは、国民の安全ということに関して言うと、国民の生命だけじゃなくて国民生活、国民経済も射程に置いているんだろうと思うんですよね。そうしますと、安全保障の概念が全然、全然とは言わないけれども、かなり違うわけですよね。かなり違うんだけど、そこの安全保障の、秘密保護法は一応政府のホームページで意味を明らかにしていますけど、今回の法律での安全保障という意味が何なのかというのが余りちゃんと書いていない。ちゃんと書いていないままに何となくそのまま進めようとしているので、ますます、どこまでの情報を射程範囲として、秘密として射程範囲に置いているのかというのが全く分からない状況になっているんだと思います。
そういう意味では、罪刑法定主義の重要な機能というのは予測可能性、何をすれば処罰されるのかというのが分かるということですけど、その予測可能性が著しく弱い法律で、非常に問題があるというふうに思っております。
○井上哲士君 ありがとうございました。
続いて、齋藤参考人に適性評価の問題についてお聞きいたします。
これ、本人からの、適性評価の対象になる本人からの調査票に基づいて役所が公務所に照会をする場合があって、そこには警察や公安調査庁も含まれているという答弁がありました。ただ、照会した内容も、照会したかどうかも本人には基本的に知らされないということになっているんですね。一方、警察は、治安維持のためとして、日常業務として様々な情報を収集しますし、それを第三者提供するということも行われてきております。ですから、その情報は廃棄をされないという場合もあるわけですね。
適性評価のために、本人が知らないうちに警察などへの照会が行われて、本人が知らないうちに情報収集がされて、言わば生涯監視の対象にもなりかねないというこの仕組みについてどのようにお考えでしょうか。
○参考人(齋藤裕君) ありがとうございます。
適性評価については目的外利用が禁止されているわけですけれども、そこでいう目的というのは経済安全保障の目的なんですよね。ということは、適性評価の目的じゃないので、例えば警察が、じゃ、この捜査は、こいつを監視するのは経済安全保障に資するのでこの情報を使っちゃえというのは、法律上は禁止されないということなんだろうと思うんですよね。
そういう意味では、非常に警察や公安調査庁が適性評価に関して得た情報を利用するたがが緩いと思います。本来であれば、適性評価以外に適性評価の情報は使ってはいけない、例外はこれこれというふうにすべきなんだけれども、経済安全保障の目的以外に使ってはいけないというふうになっているので、警察が結構自由に使えるのではないかと。
捜査ですから、本当ちょっとした疑いがある場合でも警察は捜査とか調査とかするわけですので、そういう意味では結構警察がいつまでも情報を持っているとか、まだ捜査の必要性があるよといっていつまでも情報を持っているとか、いろんな人の監視に使うとか、悪用されるリスクというのは条文上も排除されていない、非常に危険性は高いというふうに思っています。
○井上哲士君 ありがとうございました。
井原参考人に、研究、学術研究との関係でお聞きしますが、学術分野での秘密保持のために大学や研究機関が具体的、個別的なガイドラインを既に作っているということがお話がありました。それに対してこのセキュリティークリアランス制度が手を突っ込むことによって学術研究体制に大いに攪乱をもたらすのではないかという御指摘があったんですけど、今あるその具体的ガイドラインとの関係でどういうことが起こるのか、具体的にお願いします。
○参考人(井原聰君) ありがとうございます。
実態としてほとんど示されていないので推測を言う以外にないんですが、例えば秘密保持契約という、大学なんかで契約するときには非常にガイドラインなんかで定められていて、それに違反しないように契約するわけですけれども、それは、今ここでいう秘密保持契約というのは、セキュリティークリアランスを確保した人と政府との秘密保持契約、その秘密保持契約にどういうことが盛り込まれるかということと、大学で行っていることと整合が取れるんだろうかという、私はもう取れないというふうに踏んでいるわけですけれどもね。
それは私の考えですけれども、非常にそういう意味で、具体的対応が、大学の中で混乱が起きるだろうというふうに思って、それは一つの大学だけじゃなくて、大抵、先端分野の技術者があちこちにいて、リンク張って研究しているわけですから、あるいはグループつくってやっているわけですから、ほかの大学でもそういう問題が起きてくるわけで、その意味で、今ここでほとんどその内容について提起もされていないし、第一、そういう研究者をどうやって選ぶのという、ピックアップどうやってしているのということでいえば、これは多分、シンクタンクみたいなところで目利きを探してきて、その人たちが、ここの研究面白い、あの研究面白いよというのを国際的なレベルで調査するんだろうと思うんですが、そういう中でも取り組まれている過程で秘密保持契約みたいなことが利いてくるわけですから、それと、ここでいう秘密保持契約とはレベルがちょっと違っていれば整合的な対応ができなくなるので、非常な混乱があちこちで起きるんじゃないかというふうに私は見ているんですがね。
以上です。
○井上哲士君 ありがとうございました。終わります。
内閣委員会(経済秘密保護法案ー参考人質疑)
2024年5月 7日(火)