国会質問議事録

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内閣委員会(経済秘密保護法案)

【配付資料①】 【配付資料②】

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 朝の理事会で本日での質疑終結と討論、採決の提案がありました。しかし、この間、質問の中で求めてきた様々な運用基準等についての、具体的に明らかにされておりません。先日の参考人質疑でも、参考人からは、法案の肝ともいうべき重要な内容が具体的に示されず、運用基準や政令が決めていくという議会制民主主義を形骸化するものだと、人権に関わることは国会で決めるのが法治主義だと、こういう指摘もありました。こういう状況の下で採決は認められないということを冒頭申し上げておきます。
 その上で、適性評価についてお聞きをいたします。
 四月二十五日の質疑で、個人情報の収集や第三者への情報提供を日常業務として称している警察に対して評価対象者に関する照会を掛けることについて、様々な人権侵害を招くおそれがあるのではないかということをただしました。大臣は、本法案は警察に適性評価における調査権限を付与するものではない、仮に内閣府が警察に対して公務所照会をすることがあるとしても、警察が既に保有している情報の提供を求めるにとどまりまして、適性評価のために新たな調査を要求することはございませんと答弁をされました。
 今日、午前中にも参考人から同様の答弁があったわけですが、この照会先の警察や公安調査庁に対して適性評価のための新たな調査を禁じるような規定が、大臣、この法案のどこにあるんでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 御指摘の私の答弁ですが、本法案十二条六項に基づき内閣府から警察に照会することはあるとしても、警察に適性評価における調査権限を付与するものではないということを申し上げました。
 本法案十二条は、四項ただし書によりまして例外的に適性評価を実施する行政機関が自ら適性評価調査を行う場合を除いては、五項で内閣総理大臣が適性評価調査を行うものとしております。また、適性評価調査の具体的な手段について定める同条六項も、知人その他関係者への質問や公務所等照会などの主体を適性評価調査を行う内閣総理大臣又は行政機関の長としておりまして、照会を受けた機関に本法案に基づく新たな調査権限を付与することとはしておりません。
○井上哲士君 私聞いたのは、さらに、適性評価のために警察や公安調査庁が新たな調査を禁じる、そういう規定はあるのですかということも聞きましたが、どうでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 適性評価のための調査を行う主体を明確に定めております。
○井上哲士君 今日、午前中の質疑の中で、適性評価に関わって、例えばハニートラップの調査のために尾行などについて質問がありました。そうしたら、むやみに行うことはないという答弁だったんですね。むやみに行うことはないということは、行うことがあるということですよ。
 適性評価のために新たな調査を要求することはございませんという答弁と私明らかに矛盾していると思うんですが、要求はしなくても警察や公安庁が、公安調査庁が行うことはあるということを認めているということでよろしいですか。
○政府参考人(飯田陽一君) お答えいたします。
 この法律は、適性評価調査を行う権限を基本的には内閣府に与えるというのがこの法律の趣旨でございます。
 あくまでもこの法律に基づく適性評価調査を行うのは例外的な状況を除いては内閣府ということでございまして、午前中にありました答弁につきましても、その調査のために尾行をすることがあるのかと問われた場合の主体として私どもが想定しておりますのは内閣府ということでございます。
○井上哲士君 内閣府が直接尾行調査をするということですか。
○政府参考人(飯田陽一君) そのようなことは想定していないということを申し上げたところでございます。
○井上哲士君 むやみに行うことはないということは、行うことがあるというわけじゃないですか。
 ですから、内閣府の依頼に基づいて警察がやるということなんですかね、分かりやすく答弁してください。
○政府参考人(飯田陽一君) 適性評価の調査の権限は内閣府にこの法律によって付与されているものでございます。警察とは直接関係がございません。
○井上哲士君 そうすると、ハニートラップの調査のための尾行などについてむやみに行うことはない、つまり、むやみでなければ行うことはあるということでありますが、この調査は一体何なんですかね。
○政府参考人(品川高浩君) お答えいたします。
 午前中に私が答弁したラインについてのお尋ねでございますので、申し上げます。
 むやみに行うことがないといった対象は、尾行を行うことがないと申し上げたわけではなくて、重要経済基盤毀損活動との関係に関する事項としてこれを調査するということであって、こうした事情もない中でむやみに性的行動などを調査するというものではないと申し上げたところでございます。
○井上哲士君 だから調査するわけじゃないですか。全く理解できません。
 結局、照会に関して警察や公安調査庁が様々な調査をするということを認めていらっしゃるのに私は等しいと思うんですね。
 さらに聞きますけれども、午前中の審議で、大臣は、適性評価の対象者であることが捜査の端緒になることは考えられないという旨の答弁をされました。しかし、大臣は、四月二十五日の連合審査の際に、クリアランスホルダーとなった方について、現に重要経済安保情報を取り扱うことが見込まれる以上は、外国政府などによる諜報活動の標的となることも考えられると答弁をされました。今日の午前中も同様の答弁がありました。私、これも矛盾していると思うんですね。
 適性評価のために新たに調査を要求することはないといっても、適性評価をきっかけにその人物が、例えばハニートラップなどあるんじゃないか、外国政府などの諜報活動の標的となっているというふうに認定をされれば、情報漏えいの事実を把握する、あるいは通常業務と称する情報収集活動の一環として、クリアランスホルダーに対する警察の日常的な監視が行われるんじゃないかという危惧があるんですが、この点はどうでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 御指摘いただきました私の答弁、本法案の適性評価を受けて情報漏えいのおそれがないと認められた者は、現に重要経済安保情報を取り扱うことが見込まれる以上、外国政府等による諜報活動の標的となることも考えられると言及したものでございます。あわせて、その対策として、こうしたクリアランスが認められた者に対する意識喚起と教育、研修が重要であることも説明してまいりました。
 そのため、御指摘のような、この適性評価を受けて情報漏えいのおそれがないと認められた者に対して、この教育や研修により情報保全に対する意識向上や不審なアプローチへの注意喚起を促していくということを考えてはおりますけれども、警察による日常的な監視の対象にするといったようなことは全く考えておりません。
 そもそもこの法案は、適性評価の実施をするときにのみ基本的に内閣府を主体として調査を行うということにしております。適性評価の実施場面以外で国が継続的な調査を行うということを規定はいたしておりません。
○井上哲士君 国とか一般で言ってほしくないんですね。警察の捜査の端緒となることは考えられないという答弁だったんですよ。しかし、外国政府などによる諜報活動の標的となることは考えられるとおっしゃっているんですよ。
 だから、この人は外国の諜報活動の標的となっているんだから、実際に外国のいろんなものが接近するんじゃないかということで、まさに捜査の端緒として監視をするということはあり得るんじゃないんですか。否定されるんですか。
○国務大臣(高市早苗君) もう繰り返しになりますが、本法案は、警察を含む各行政機関に適性評価における調査権限を付与するものではございません。
○井上哲士君 擦れ違いにしないでほしいんですよ。捜査の端緒になることは考えられないと明言をされたから、しかし、大臣が、外国の諜報活動の標的となると、クリアランスホルダーは。そうしたら、そういう外国の例えば諜報機関の接近がないかとかということで、警察が、などが捜査の端緒として見るということはあり得るんじゃないですかと、それをなぜ否定できるんですかと申し上げているんです。
○国務大臣(高市早苗君) だから、要は、クリアランスホルダーの方はその外国の政府の諜報機関などからのこのターゲットにされやすいということから、そう認められた方に対しては、情報保全、注意すべきことについてもしっかりと教育、啓発をするということを申し上げているのみでございます。継続的に警察がその方を尾行するとか調査するというようなことは全く本法案で想定をしておりません。
○井上哲士君 法案に書かれていなくても、日常活動としてやっているわけですから、その危険が大きくなるということをこの間申し上げてまいりました。
 一昨日の参考人質疑で齋藤日弁連の参考人は、この法案の第十六条が重要経済安保情報の保護以外の目的での適性評価に関する個人情報の利用及び提供を制限する規定になっている、これでは目的外利用を禁止するたがが緩いというふうに述べられました。本来であれば、適性評価以外に適性評価の情報は使っていけない、例外はこれこれとすべきなのに、この重要経済安保情報の保護以外の目的に使ってはいけないとなっているので、まだ捜査の必要があるとしていつまでも情報を持っているとか、いろんな人の監視に使うとか、悪用をされるリスクは条文上も排除されていないと、こういうふうに述べられました。
 重要経済安保情報の保護を口実に個人情報が目的外利用される危険性を指摘されたわけでありますが、これについて、大臣、どう受け止められますか。
○国務大臣(高市早苗君) 齋藤参考人がどのような場面を念頭に、警察や公安調査庁が適性評価に関して得た情報を利用する旨をおっしゃったのか定かではございませんけれども、そもそも適性評価調査によって収集される個人情報は、調査を行う内閣府と内閣府に調査を依頼した適性評価の実施主体である行政機関以外には共有されません。
 よって、警察や公安調査庁がそうした個人情報に触れる場合というのは、警察や公安調査庁が自ら重要経済安保情報を保有していて、しかもこれを重要経済基盤の脆弱性の解消など安全保障の確保に資する活動を行っている適合事業者に利用させる必要があるというような場合に限られます。
 なお、そのような限られた場合におきましても、適性評価において収集された個人情報は適性評価の判定や再度の適性評価実施の判断といった重要経済安保情報の保護に関する目的以外に用いてはならず、重要経済安保情報の保護を口実にほかの調査などに流用することが許容されるものではございません。
○井上哲士君 では、参考人が言うように、適性評価以外にこの情報は使っていけないと、こういう条文にすべきではなかったんじゃないですか。なぜ重要経済安保情報の保護というふうに広げたのか、いかがでしょうか。
○政府参考人(飯田陽一君) 今大臣が答弁したとおりでございますけれども、まず、警察や公安調査庁がそうした個人情報に触れるのは、重要経済安保情報を保有し、それを民間事業者に提供する、利用させる場合が、必要がある場合というのに限られるというふうに申し上げたわけでございますが、その上で、全般として私ども想定しておりますのは、適性評価調査によって収集される個人情報というのは、内閣府と、それからその調査を依頼した適性評価実施主体である行政機関、これが基本でございますので、その中で、重要経済安保情報の保護の目的以外にはこれを利用してはならないというふうに法定させていただいたということでございますし、これはまた、先行する制度の特定秘密保護法なども参照しながらこうした整理とさせていただいたところでございます。
○井上哲士君 この間繰り返しておりますが、警察は一般活動として様々な情報収集や捜査をやっていると、そこで使われるんじゃないかということは、その危険性というのは今の答弁聞いても全く排除はされないわけですね。
 更に聞きますが、厚生労働省は、企業が従業員を採用する際の考え方として、公正な採用選考の基本というのを公表しております。ここでは、採用選考は応募者に基本的人権を尊重すること、応募者の適性、能力に基づいた基準により行うことを掲げておりまして、配慮事項として、本籍や出生地、家族に関すること、宗教や支持政党、思想や労働組合の加入歴等々、購読している新聞など、本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項を尋ねるのは就職差別につながると注意を呼びかけているわけですね。
 これは採用時だけではなくて採用後もそうなわけですが、この適性評価の調査を国が行おうとしているのは、こういう適合事業者が評価対象者に聞けないようなプライバシー情報を国が代わって調査するということにほかならないんじゃないか。私は、国家による明らかなプライバシー侵害、人権侵害になると思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 厚生労働省が出している資料のお話でございますが、雇用をめぐる問題については所管外でございます。
 あえて答弁させていただきますと、この御指摘の公正な採用選考の基本というのは、基本的な考え方とされておりますように、厚生労働省においてあくまで一般論として公正採用の観点から就職差別につながるおそれがある事項を挙げるなどしたものだと承知をしております。
 他方で、厚生労働大臣も答弁をしておられますとおり、厚生労働省は、雇用主が応募者からどのような事項を把握することが適当かは一概に整理できるものではなく、特別な職業上の必要が存在するなど雇用主が把握すべき内容について個別に合理性、必要性があるかどうかという観点で判断されるべきものとの見解を示していると承知しております。
 したがって、政府の重要情報の取扱いの業務に従事するといった特別の事情がある場合も含めて、一律にプライバシーに関する事項を尋ねることを禁止するものではないと理解をしております。本制度の適性評価は、安全保障上の観点から政府の重要情報の取扱いを認めるに当たり、政府が政府自身の必要性から政府の責任において必要な調査を行うものでありまして、また調査結果は通知しますが、調査を通じて取得した個人情報、事業者に提供することはございませんので、適合事業者が評価対象者には聞けないプライバシー情報を国が代わって調査するという制度でもございませんし、国家による明らかな人権侵害といった御批判も当たらないと考えております。
○井上哲士君 重要事項なのでプライバシー侵害に当たるようなこともあり得るというような趣旨の答弁がありまして、あったわけですね。
 先ほど紹介した厚労省の応募の問題は、この基本的人権を尊重するということを強調しているわけです。これは私は、この憲法の下であらゆるところに貫かれるべき問題だと思うんですね。
 大臣は、昨年九月に都内で行われたエコノセック・ジャパンにおける講演でこういうふうに述べておられます。思想、内心に関すること、尊敬する人物は誰かとか、どういう新聞を購読しているかとかを調査することは企業にとっては御負担が大きいことだから、調査の実施主体というのはしっかりと国に設けるべきだと、企業任せにしないと、このセキュリティークリアランスに関して講演をされております。
 つまり、従業員の人権侵害になるような思想、内心に関するような調査は国が責任を持って行うということを言っているに等しいと思うんですけども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) もう本法律案の中で調査事項七項目は法定させていただいております。思想、内心に係ることを調査するものではございません。
 なお、その私の講演でございますが、厚生労働省が出している内容を、これは事業者の方々がこの公正な採用、就職差別につながるおそれのある事項を挙げているものですね、こういった方に、こういったことに特に御注意されているということを前提にした上でお話をいたしました。例えば、今回のように、適性評価のための調査を行う機関をどこにするかというときに、それを民間事業者に丸投げしたら、これはもう事業者にとって大変な御負担ですし、これは労働法制上も厳しい。
 そしてまた、厚生労働省が出しているこの公正採用の観点から就職差別につながるおそれがある事項を挙げたもの、こういったものにも関わってくる、そういう御懸念があることも十分承知をいたしております。
 ですから、内閣府において一元的に責任を持ってこの評価のための調査をさせていただく旨、そういう予定にしているということでございます。
○井上哲士君 いや、大臣自身が、思想、内心に関することを調査することは企業にとって御負担が大きいから国がやりますと明言しているじゃないですか、この講演の中で。だから私は申し上げているんです。
 こういう形で、このまさに国民の基本的な人権を侵害するおそれがあるということを改めて指摘をしておきたいと思いますが。
 最後、マッチング事業についてお聞きいたします。
 お手元に資料も配っておりますが、国家安全保障戦略を踏まえて、総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議が発足いたしました。この同会議が各省庁の民生利用目的の研究で総合的な防衛体制の強化にも資する技術課題を重要技術課題として整理をし、その中から育成する価値がある事業をマッチング事業として今年度から認定をしております。
 お手元にありますように、百六十一件、一千八百五億円の予算となっているわけですが、これは、各省庁の既存の研究開発事業の中から軍事分野に応用可能なものを見付け出して防衛装備の開発に結び付けると、こういう趣旨ということでよろしいですか。
○政府参考人(高村泰夫君) お答え申し上げます。
 最先端の科学技術は加速度的に進展し、民生用と安全保障用の技術の区別が極めて困難となっており、民生用途でのイノベーションと防衛用途でのイノベーションが相互に影響し合う中で発展していくものとなっていることから、我が国の官民の高い技術力を安全保障分野にも積極的に活用することが重要であると考えられます。
 そのような認識の下、国家安全保障戦略を踏まえ、防衛省の意見を踏まえた研究開発ニーズと関係省庁が有する技術シーズを合致させることによって総合的な防衛体制の強化に資する科学技術の研究開発を推進できるよう、政府横断的な仕組みを創設したところでございます。
 このマッチングの仕組みを通じて、関係省庁の民生利用目的の研究の中で、今後、防衛省の研究開発に結び付く可能性が特に高いものを効率的に発掘、育成することができるものと考えております。
○井上哲士君 今答弁がありましたが、そうやってこの効率的に防衛省の研究開発に結び付く可能性が高いものを効率的に発掘、育成すると。
 そうしたこのマッチング事業の研究開発をいずれかの段階でその情報が重要経済安保情報の指定を受けるということがないということが断言できるんでしょうか。
○政府参考人(飯田陽一君) お答えをいたします。
 先ほど内閣官房から答弁がございましたとおり、マッチング事業は関係省庁の事業として予算が計上され、関係省庁において執行がされているものでございます。あくまでこの事業を実施する関係省庁が民生目的の研究で自主的、自律的に進められているものと承知をしております。
 他方、今御指摘のございました重要経済安保情報は、これまでも申し上げておるとおり、三つの要件に該当するものであるというのが本法案に明確に規定をされておりますし、その中の一つの要件である重要経済基盤保護情報につきましては、我が国にとって重要なインフラと重要な物資のサプライチェーンの二つを重要経済基盤と定義した上で、その保護に関わる四つの情報類型を例示して、対象を絞り込んでいるところでございます。
 行政機関はこのような重要経済安保情報の要件を満たす情報を指定することとなりますので、御指摘のようなマッチング事業の研究開発に関する情報をもって判断するものではございません。あくまでも、三つの要件あるいは四つの情報類型に沿って指定の要否を判断するということでございます。
 また、加えて申し上げますと、ここで指定対象となりますのはあくまでも政府が保有する情報でございまして、研究開発を行っている民間企業、研究機関、大学などが元々保有していた情報について指定することは想定しておりません。
○井上哲士君 先日、研究成果を公開するので本法案の対象にならないとされてきたKプロ案についても、QアンドAで非公開もあり得るとしていることを指摘をいたしました。その際の答弁で、研究の結果、思いも寄らぬ形で安全保障に影響を与えてしまうような成果が得られた場合に、関係者の合意も得て非公開とするとされたわけですね。
 このマッチング事業は、まさに防衛省の研究開発に結び付く可能性が高いものを効率的に発掘、育成をすることを目指すわけでありますから、まさに思いも寄らぬどころか思いどおりに、この安全保障に影響が掛かる成果が得られる可能性があるわけです。その際に、先ほど言われた要件に合致すればこのマッチング事業から得られたものが対象になるんじゃないか。
 そして、この間の参考人質疑でも齋藤参考人言われていましたけど、元々民間が持っていた情報を政府が受けて、それに一定のものを付け加えてまた返すことによって指定することも可能だというお話ありましたし、この事業は相当部分が国の研究機関ということにもなるわけですよ。ですから、いろんな要件を満たせば、それに合致をすれば可能だということではないんですか。
○政府参考人(飯田陽一君) お答えをいたします。
 Kプログラムであれマッチング事業であれ、基本的にここで行っている研究開発は、元々参加されている民間企業や大学、研究機関等が持ち寄った知的財産をベースとして研究開発を行っております。したがいまして、その成果については、様々な契約の形態によっても異なりますけれども、その研究開発を実施している機関に最終的には帰属をさせ、実際にその機関がその担い手となって社会実装をしていくというのが多くの研究開発事業の具体的な姿でございます。
 そういうことの中で、重要経済安保情報に指定される可能性があるとすれば、そもそも先ほど申し上げた三要件があるわけですけれども、国が委託等をする場合においては、この法律案において十条二項でお示ししているとおり、あらかじめ合意の上で調査、研究を行わせた上で、そこで生成する情報はあらかじめ重要経済安保情報ですということを研究を行っている適合事業者に通知した場合に限って重要経済安保情報となるわけでございまして、国が委託をしたからといって、その成果物が自動的に重要経済安保情報になるのは、とはならない。なぜならば、それは政府が保有する情報ではないということと、この法律においては十条二項がその重要経済安保情報に指定するための最大限の前提となっているということであるからでございます。
○井上哲士君 私は何も自動的に指定されるなんて一言も言っていませんよ。
 このマッチング事業のやっているところの相当数は国の研究機関だとお聞きをしているんですね。ですから、先ほど何か民間の情報だと言われますが、そうではないわけですよ。
 そして、先ほどから言っていますように、あらかじめそういう計画をしていなくても、この事業、研究を通じて、Kプログラムのように、思いも寄らぬ形で安全保障に影響を与えてしまうような成果が得られた場合などに、それをこういう形で秘密指定をしていくということは、指定できるんじゃないかと。できないという何か根拠がありますか。
○政府参考人(飯田陽一君) まず、これまでの審議でもございましたように、国の研究機関、大部分の研究開発独法は、政府ではなくて民間企業と同様の位置付けというのがこの法案の中での研究開発法人の位置付けでございます。これがまず一つ目でございます。
 それから、思いも寄らぬ結果と申し上げましたのは、それが例えば大量破壊兵器の技術として転用されるようなものであるとすれば、そこに参加しているアカデミアにとっても、それを自由に公開することは必ずしも参加されているアカデミアの本意でもないだろうということを前提にお話をしているわけでございまして、今回の重要経済安保情報は、大量破壊兵器ということではなく、あくまでも重要なインフラであったり重要物資のサプライチェーン、国民生活や経済活動を支えるものを想定しているものでございますので、今委員が御指摘のあったようなものとは直接関係がないものというふうに認識をしております。
○井上哲士君 時間なんで終わりますが、デュアルユースというのはそもそも軍事に結び付くかどうか分からないわけですが、それが研究を通じてその可能性が出てきたというときにどんどんどんどん秘密にしていくと、シームレスな運用をしていくと、そういう仕組みにあるんじゃないかということを私は指摘をしてまいりました。
 このマッチング事業の研究成果についても、指定はできないということは一言も言われなかったわけでありまして、そういう危険性が大変高いということを最後指摘しまして、質問を終わります。

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