国会質問議事録

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内閣委員会(食品安全委員会のPFAS評価書(案)について)

【配布資料】

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 全国で有機フッ素化合物、PFASによる深刻な汚染が広がって、規制を強めることを求める声が高まっております。現在、食品安全委員会がこのPFASについての食品健康影響評価を行っております。今日は、二月の六日に了承されたその評価書案について質問をいたします。
 まず、この食品安全委員会のリスク評価は、通常は主に企業とか省庁などのリスク管理機関からの要請を受けて行われますが、今回は安全委員会自身が自ら調査を行いました。その理由はどういうことだったんでしょうか。
○政府参考人(中裕伸君) お答え申し上げます。
 食品安全委員会は、食品安全基本法に基づき、先生おっしゃられたとおり、関係大臣から諮問があった場合のほか、自らの発意により食品健康影響評価を行うことができるとされております。二〇〇三年に食品安全委員会が設立されて以降、計十三件、これはPFASのものを除いたものでございますが、この自ら評価を行ってきております。
 自ら評価の対象となる案件につきましては、例年七月に一般から候補を募集した上で、企画等専門調査会という専門調査会ございます。こちらでその時々の科学的知見の充足状況等も勘案して案件を選定することとなっております。
 今回、有機フッ素化合物、PFASにつきまして、令和四年度に案件を募集した際に提案がございました。その後に開催した企画等専門調査会において、厚生労働省及び環境省が水質の目標値等の検討を開始したことから、両省に科学的な助言を行っていくべきとの御指摘を受け、自ら評価の案件として選定されたものでございます。
○井上哲士君 この安全委員会の文書などを見ますと、健康被害の発生が明確に確認されていないが、今後その発生のおそれがあるものなどが、で、必要性が高いと判断されることというようなことが書いてございます。つまり、各地での深刻な広がりや声の高まりの中で行われたということだと思うんですね。
 しかし、評価書案が出されましたが、この国民の期待とは程遠いものになっております。パブコメは一か月で三千九百五十二通、他の評価書案の場合は二ないし三桁ですから、文字どおり桁違いなんですね。寄せられた大半は批判的なもので、パブコメ一揆と書いたマスコミもありました。
 食品安全委員会の汚染物質調査専門部会で二〇一三年まで十年間専門委員をされていた遠山千春東大名誉教授はインタビュー記事でこう述べておられます。
 評価書案を読んでみて、このまま出たら国際的にも恥をかく、欧米ではPFASのうち九物質以上のリスク評価をしているのに三物質しか対象としないなど、最新の科学的知見に基づいてリスク評価をするという前提から外れています、人を対象とした疫学研究の結果を一貫性がないとして退けただけでなく、国際的に統一された評価モデルもないとしています、健康評価に、影響について世界中の研究者が一致するまで日本は何もしないというのでしょうかと、首をかしげざるを得ないという非常に厳しい評価をされております。
 具体的にお聞きしますが、まず、このPFAS、PFOAの発がん性を判断できないとしたことについてお聞きします。
 お手元の資料の一で評価書案を抜粋しておりますが、WHO傘下の国際がん研究機関、IARCは発がん性について四段階で評価をしております。昨年十二月に、PFOAについては、下から二番目の発がん性がある可能性があるから、最も高い、人に対して発がん性があるに引き上げられました。そして、PFOSについては、新たに、発がん性がある可能性があるに追加されたんですね。
 この議論には、世界各国から集まった五十人以上の研究者が行われておりますが、日本からも国立がん研究所の疫学研究部長と国立衛生研の客員研究員の二人が参加をされております。発がん性を判断できないとした今回の評価書案について、国際的な動向や知見に後れを取っているということで警告を鳴らしていらっしゃるんですね。
 日本は、このIARCによる、人に対して発がん性がある、ないしは発がん性がある可能性があるという判断を否定しているんでしょうか、食品安全委員長にお聞きいたします。
○政府参考人(山本茂貴君) お答えいたします。
 IARCによる発がん性分類は、様々な要因について人に対する発がんの原因となり得るかどうか、三つの要件、すなわち、人の疫学研究、動物試験、発がんの機序における発がん性の根拠の強さから、それについてハザードとして分類を示しております。
 これに対して、食品安全委員会のワーキンググループにおける調査審議では、発がん性があるかないかといった観点だけではなく、様々な文献やデータを分析し、人におけるPFASと発がんとの関連の可能性について、リスク評価の一部として証拠の確からしさの評価を行っております。
 御指摘いただいたような御意見は、パブリックコメントも多く寄せられております。評価結果を正しく御理解いただけるよう、ワーキンググループにおいて検討を進めてまいりたいと思っております。
○井上哲士君 実に分かりにくいんですが、つまり、このIARCが行ったハザード評価で発がん性とその可能性があるとしたこと自体は認めているということでよろしいですか。
○政府参考人(山本茂貴君) 危害要因と健康影響との関連があるかないかは必ずしも明確に判断できるものではございませんで、研究手法や結果の解釈も含めて、その情報の確からしさ、十分さについて専門家による調査審議を進めていただいております。
 発がん性に係る証拠につきましては、限定的若しくは不十分と判断したものであり、IARCの、人に対して発がん性がある、発がん性がある可能性があるとの判断を否定したものでも肯定したものでもありません。先ほど申し上げましたとおり、証拠の確からしさの評価をしたものでございます。
 以上です。
○井上哲士君 否定も肯定もしない、評価はしないとおっしゃるんですね。それがよく分からないというのが多くのパブコメの声なんですね。
 厚労省の定義見ますと、ハザードとは危険性又は有害性であり、リスクはそれによって生ずるおそれのあるけがや疾病の重篤度と発生する可能性の度合いとしているわけですね。つまり、ハザードがあるからリスク調査をするということのはずなんですよ。安全委員会のパンフを見ましても、ハザードについてリスク調査すると書いてあるんですね。
 ですから、リスク調査はしているけれども、ハザードについて判断をしないというのは、これは本当、私は矛盾をしていると思うんですね。なぜそうやってかたくなにこの発がん性の危険性ということを評価をしないという言葉で認めようとしないのかと。それで、私は、国民の健康や命守ることができるか、大変疑問に思います。
 手元資料の二枚目を見ていただきますと、各国のPFOS、PFOAの体重一キログラム当たりの一日に許容される摂取量の表を書いております。これ見ますと、各国は二〇一七年頃から規制を強めまして、特に欧米では、この間、更に厳しくしております。
 こういう国々、欧米の国々が、やはりこのIARCが示してきた発がん性の可能性、ハザード、これ認めて規制をしているんじゃないんですか。
○政府参考人(中裕伸君) こちらにつきましては、PFASの発がん性等も含めて、各国において評価が行われております。
 こちらのですね、その発がん性に着目して申しますと、欧州のEFSAにおいては、得られた知見からは、PFOS及びPFOAの人への発がん性に関する知見が限られているといった評価となっております。
 また、オーストラリア、ニュージーランドのFSANZというところがリスク評価を行っておりますが、PFOSは、疫学研究からは説得力のある証拠は示されていない、PFOSは、疫学研究では証拠には一貫性はなく不確かという表現で結論が示されております。
 カナダのヘルス・カナダにおきましては、PFOSは、疫学研究では明確な傾向を決定することはできなかった、PFOAは、疫学的な証拠は研究間で一貫性が見られないことから、因果関係とPODを判断することはできないとした上で、動物実験の結果から、発がん影響TDIとして、PFOSは千百ナノグラム・パー・キログラム体重、一日当たりですね、PFOAは千三百ナノグラム・キログラム体重というふうな形の結論を示しております。
 なお、遺伝毒性につきましては、EFSA、FSANZ、ヘルスカナダのほか、IARCですね、こちらも直接的な遺伝毒性の可能性は低い又はないとしており、遺伝毒性が否定し切れないと判断している評価機関が、については、我々が認知している限りにおきましては米国EPAのみということとなっております。
 以上でございます。
○井上哲士君 今そのリスク評価ということで述べられたわけですね。その可能性、危険性という、しかし、元々のこのハザード、危険性があるというIARCのことについての言葉がなかったと思うんですね。
 私は、リスク評価、いろいろ国によってありますが、やっぱり危険性というその可能性を認めた上で、この健康被害を未然に防ぐ立場でいかなることをやっているかというのが求められると思うんですよ。
 欧州ではこの許容一日摂取量の算出に使っていないと言いますけれども、様々な疫学調査などに基づいて大幅に厳しくしているということがある、ここの私は違いが問われていると思うんですね。
 もう一つは、この、そもそもの水準の問題でありますけれども、評価書案では、PFOSとPFOAのそれぞれについて、人の体重一キログラム当たりの一日の許容摂取量をそれぞれ二十ナノグラムとする指標値が示されました。体重五十キロでいいますと、これら二種類をそれぞれ毎日一千ナノグラム摂取しても摂取、問題ないと、こういうことなわけですね。
 小泉昭夫京大名誉教授がこの米国のEPAの基準で試算をいたしますと、この量を毎日摂取し続けると、血液一ミリリットル当たりの血中濃度が、PFOSは二百五十ナノグラム、PFOAは百四十三ナノグラムになると、こういうふうに言われております。一方、この全米科学工学医学アカデミーは、このPFASの血中濃度が一ミリリットル当たり二十ナノグラムを超えると健康への影響の可能性が懸念されるという勧告を出しているんですね。この二十ナノグラムと、この二百五十、百四十三といいますと、十数倍の差があるわけですよ。
 小泉名誉教授は、世界で健康が懸念されているレベルが日本では安全とされてしまうじゃないかと、こういう懸念を示されておりますけれども、この点はいかがでしょうか。
○政府参考人(中裕伸君) お答え申し上げます。
 食品安全委員会のワーキンググループにおけるこれまでの調査審議におきましては、食品健康影響評価として、PFOS及びPFOAの摂取量としての指標値を算出しております。
 評価書案におきましては、血中濃度については、測定された血中濃度からPFASを摂取、暴露した量、時期、期間を推測することは現時点の知見では困難であり、摂取量と血中濃度との関連については情報が不足していると評価しております。
 また、その同じ評価書案において、指標値のほか十分な評価を行うにはデータが不足していることを含め、科学的根拠が不十分であることを踏まえ、リスク管理機関に対してリスクの低減に向けた方策なども示しているというところでございます。
 なお、今御質問の中で出てきました米国科学・工学・医学アカデミーが二〇二〇年に公表したPFASばく露、検査、臨床経過観察に関するガイダンスにおきましては、暴露患者へのPFAS血液検査結果を伝える際の数値と健康影響の解釈に関する提言として、血中濃度が二十ナノミリグラム・パー・ミリリットルを超えた場合には健康影響のリスクが高まることを暴露患者へ伝えることを提言していると。その一方で、指標値を超過しても必ずしも健康影響を及ぼすものではないこと、超過が中程度であり、現病歴等に他のリスク要因がない場合には臨床的な生化学的検査の必要はないこと、また、必要に応じてモニタリングすることとしているものと承知しております。
 以上でございます。
○井上哲士君 長々と答弁をされましたけどね、いろんな困難であるとかデータが不足しているということを評価書案が言っていることを様々言われました。
 問題は、そういう中でも各国は国民の命や健康を守るために事前にそういうことがないようにということでいろんな努力をしている、その結果なんですよ。日本がいろんな調査、研究が遅れていることを持ってきて世界と全く違うような指標案を今回出すということが、今多くの皆さんが問われているんですね。
 さらに、私、欧米との違いは疫学調査の軽視だと思うんですけど、この配付した三枚目の資料を見ていただきたいんですが、このPFOSの血中濃度と新生児の体重減少の相関関係を示すデータであります。先ほど、この二枚目の、アメリカの低出生体重に対するPFOSの一日の摂取量を〇・一ナノグラムにしています。表の上から六番目でありますけれども、左側の。この根拠になっているのがこの表なんですね。このグラフ見ていただきますと、摂取量が七・三ナノグラム・パー・ミリリットルを下がるとどんどんどんどん体重が下がっていく、こういうことが示されております。
 国際的にも新生児の低体重への影響は確立した知見なわけでありますが、ところが、一月二十六日に評価書案が発表された後の説明会でワーキングチームの座長は、このPFASの暴露による影響に関して、北海道スタディという研究プロジェクトの論文について触れて、赤ちゃんの体重が少し、まあ少しとか僅かとか言っちゃいけないのかもしれないんですけれども、ある程度下がるというデータが出てくるんですが、それ以外の影響は余り一貫性のあるものは見られないと、こういうふうに述べられました。
 私ね、やっぱり、少しとか僅かとか、言葉のあやかもしれませんけど、このアメリカのやっているこの結果からこういう厳しい数値を出すことと比べたら、余りにも軽視していると思うんですね。アメリカと比べて、こういうデータに対する見方、軽視がひどいんじゃないですか。いかがですか。
○政府参考人(中裕伸君) お答え申し上げます。
 繰り返しになりますが、食品健康影響評価における疫学研究の結果については、危害要因と健康影響との関連があるかないかが必ずしも明確に判断できるものではなく、研究手法や結果の解釈も含め、その情報の確からしさ、十分さも含めて、専門家による調査、審議を進めていただいているところでございます。
 PFASの評価書案においては、人の生殖、発生に及ぼす影響について、ここ評価書の書きぶりでございますが、国内外の複数の疫学研究の結果から、母親の血中PFOS及びPFOA濃度を暴露指標とした場合、出生時体重に抑制的な影響があることを示す科学的文献があるものの、一貫性のある結果は得られておらず、また調査手法に様々な限界があり、明確な科学的根拠は得られていないとした上で、母体血を介した胎児期のPFOS及びPFOA暴露と出生時体重低下との関連は否定できないものの、出生後の成長に及ぼす影響についてはいまだ不明であると、こう判断せざるを得ないというところでございます。
 以上でございます。
○井上哲士君 まあ、いろいろ言われましたが、結局、よく分からないでいって、諸外国と比べますと大変緩い基準のままにしていると。それで命と安全守れるんですかということを私は繰り返し聞いているんです。
 時間なくなって委員長に聞けませんが、大臣に聞きますけど、私、政治の在り方問われていると思うんですよ。
 EUのPFAS規制強化案に対して、今年の三月現在で五千六百四十二件コメント付いているんですね。そのうち九百四十二件は日本の企業や業界団体なんですよ。経団連も、経産省の課長まで否定的なコメントをこの欧州の規制に対して出していると。他国の規制パブリックコメントに対して非常にまれな状況だとも報道されました。
 全国各地にPFASのいろんな製造メーカーや使用メーカーの工場ありますけど、そういうことに配慮してこんなことになっているんじゃないかと、こういう声も上がっているわけです。食品以外の分野でも、日本では、例えばアスベストの発がん性は世界的には一九六〇年の国際会議で指摘されましたけど、日本は七〇年代どんどんどんどん輸入したわけですよ、いろんな建設産業の要望に応えてね。それが被害を大きく広げたと。だから、そういう過去の教訓にしっかり立つことが今政治が求められていると思うんですね。
 そして、食品安全委員会の担当大臣として、健康被害を未然に防止するための予防原則の立場で、命と安全を守る食品安全行政に転換をしていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(自見はなこ君) お答えいたします。
 食品安全委員会では、食品安全基本法第三条に基づきまして、国民の健康の保護が最も重要であるという基本認識の下、入手困難な最新の科学的知見に基づきまして、それらが不十分な場合も含めまして、各分野の専門家により客観的かつ中立、失礼いたしました、入手可能な最新の科学的知見に基づきまして、それらが不十分な場合も含めまして、各分野の専門家により客観的かつ中立公正に評価を行っているところでございます。
 委員御指摘のいわゆる予防原則でございますが、国際的に合意された定義はないと承知していますが、我が国におきましては、食品安全基本法第五条におきまして、食品の安全性の確保については、そのために必要な措置が講じられることによって国民の健康への悪影響が未然に防止されることを旨として行わなくてはならないと規定をされてございます。
 この三条、五条、いずれも非常に重要だと考えてございます。
 こうした食品安全基本法の規定を前提とした上で、PFASの摂取による人の健康への影響につきましては、食品安全委員会のPFASワーキンググループが、専門家が現時点での科学的知見に基づいて七回にわたり議論を行い、本年一月に評価書案をまとめていただいたところでございます。また、現在は、おっしゃっていただいているとおり、パブリックコメントでいただいた御意見につきまして、更にPFASワーキンググループにて議論を行っていただいているところでございます。
 PFASの摂取による人の健康への影響につきまして、食品安全委員会としての結論が取りまとまり次第、これに基づき、環境省などのリスク管理機関に適切かつ迅速なリスク管理を進めるように働きかけてまいりたいと思ってございます。
 食品安全担当大臣といたしましては、国民の皆様が安心して食生活を送ることができるよう、科学的知見に基づく食品の安全確保にしっかりと取り組んでまいりたいと考えてございます。
○井上哲士君 時間で終わりますけれども、健康被害を未然に防止すると、その言葉どおりの行政をしっかりやっていただきたいと求めまして、終わります。

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