○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
松村大臣は防災担当大臣として能登半島の対応にも当たっておられます。昨日、党として申入れもいたしましたけど、是非よろしくお願いしたいと思います。
さて、法案は、交通反則切符制度の対象拡大、いわゆる青切符制度を自転車にも適用するものとなっております。有識者の検討会では、自転車が気軽な乗り物でなくなるなどの懸念が示されました。検討会事務局からは、自転車の交通違反に対する指導取締り方針が示されて、真に事故抑制に資する取締りを行う旨が表明をされております。
やっぱりこの恣意的取締りが行われますと、警察行政に対する国民の信頼が失われると思うんですね。この有識者会議で示された方針は法案に明記をされているわけではありませんけれども、こういう恣意的な取締りを防止をして、真に事故抑制に資する取締りが保障できるのか、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 井上委員御指摘のように、交通反則通告制度の対象となります自転車の反則行為の取締りにつきましては、真に交通事故抑止に資する取組、取締りがなされるよう、警察庁において基本的な考え方を改めて整理をいたしまして提示することといたしております。
〔委員長退席、理事磯崎仁彦君着席〕
具体的には、特に信号無視や指定場所での一時不停止などの重点的な取締りの対象となる違反について、どのような違反を行った場合に検挙の対象となるかを明確にすることがこれは必要であると考えております。
また、違反者の運転行動改善のために、取り締まる現場におきまして効果的な指導警告がなされるよう、留意すべきポイントを整理をいたしまして、現場取締りの、取締りの現場におきまして実践されるようにすることも重要であると考えているところでございます。
今申し上げたような指導取締りの基本的な考え方につきまして、改正法の施行までに十分な時間的余裕を持って整理をいたしまして、これに基づいて自転車の指導取締りが適正に行われるよう、警察を指導してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 警察行政の指導に、信頼に関わって、広島県警の空出張による不正受給事件についてお聞きいたします。
お手元の資料一にありますように、広島県警は十二月の八日に、福山市内の警察署の警備課に勤務していた元警部や警部補ら五人が、実態のない出張の書類を作成し、三十二回にわたって旅費や時間外手当を計約十六万七千円不正受給したとして、関係者を書類送検し、処分を行いました。
この本事件が警察行政に対する県民の信頼を著しく失墜させたということについて、国家公安委員長、いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 御指摘の件につきましては、広島県警におきまして警察署の警備課員が旅費及び時間外勤務手当を不正に受給していたことが明らかとなりまして、虚偽公文書作成、同行使、詐欺で関係者を送致するとともに、関係者に対する厳正な処分がなされたものと承知をいたしております。
〔理事磯崎仁彦君退席、委員長着席〕
このような事案は誠に遺憾であると思っております。同種事案の再発防止のため、関係部署による業務管理の徹底を行うよう、警察を指導してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 この問題では、二〇二一年の二月に県警に匿名の投書が寄せられておりますが、捜査の端緒となったのは、元巡査部長Aさんが、二〇二二年三月に広島県警本部の監察官室に公益通報、そして自らの違法行為の申告を行ったことになっています。Aさんは、この空出張で自ら不正に加担したことを見過ごせないと、半年以上眠れない日を続いた末に退職をされて、公益通報に踏み切ったんです。さらに、警察は子供のときから憧れだったと、その警察官が法を犯した時点でアウトと、警察官がそんなことをしたら誰が何を信じるのかと、二三年の十一月には告発を決断をされております。
この公益通報が、Aさんの公益通報の後に捜査が行われて関係者の送検と処分になったわけでありますが、ところが、関係者五人のうち送検されたのは三人だけなんですね。このAさんは送検されなかったんです。全件送致主義の下で極めて異例だと思うんですね。
なぜ、自ら不正行為を行ったことを認めて告発までしたAさんが送検されなかったんでしょうか。
○政府参考人(太刀川浩一君) 特定の方から警察への通報があったというお尋ねでありますが、警察におきましては、それが公益通報者保護法に規定する通報に該当するか否か、あるいは匿名でなされたものであるか否かを問わず、およそ通報者が特定されないよう細心の注意を払って調査やその後の公表に臨むべきところ、委員御指摘の方が公益通報を行った職員であることを前提としてお答えすることは適当でないと考えております。
そこで、その点を一旦差しおいて、今回の事件についての広島県警察における捜査について申し上げますと、関係者からの事情聴取や関係資料の入手などを含め、必要な捜査を尽くした上で、書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致したものであります。犯罪事実をどのように組み立て、被疑者をどのように特定するかについては、ひとえに収集された証拠により判断すべきところ、広島県警察では今回の事件において三名の職員を被疑者として特定し送致をしたものと報告を受けております。
○井上哲士君 Aさんについては裏付け取れなかったと言われているんですね。ところが、Aさんにも不正受給分の返還が求められているんです。つまり、Aさんもこの不正受給をしていたという事実は認定しているわけですよ、県警は。
ところが、しかも、資料二にありますように、Aさんは、この県警から求められている返還額は少な過ぎると、もっとあったと、ここまで言っているんですよ。それがなぜ送検されないんですか。大川原化工機事件では、裏が取れないどころか、捏造してまで送検したわけじゃないですか。それが、このAさんを送検しなかったのは不可解でありまして、何らかの理由があると思わざるを得ないわけであります。
そこで、配付資料三を御覧いただきたいんですが、この公益通報したAさんが県警の警察官室の対面調査のときに検察官に渡した説明メモであります。Aさんの代理人の弁護士から提供していただき、了解を得て配付をしております。
どのように上司から空出張を命じられて実行したのか、生々しく書かれているんですね。これはAさんだけにとどまらず、この不正行為全体や手口について具体的に示した重要な証拠だと思うんですけれども、このメモは検察に提出をされているんでしょうか。
○政府参考人(太刀川浩一君) 特定の方が警察に提出をしたというメモについてのお尋ねでありますが、捜査の過程で誰からどのような資料の提出を受けたのかの一つ一つについて言及することや、検察官に送致した証拠の一つ一つを取り上げて示すということは差し控えさせていただきますが、広島県警察においては、この端緒を含めた捜査経過について検察官に報告をしているということは言うまでもありませんで、また、関係者の供述調書や捜査の過程で入手した関係資料を含む必要な証拠物とともに事件を検察官に送致したとの報告を受けております。
○井上哲士君 事前のレクでは、送致をしていないのでこのメモを提出したかどうかは答えられないと、こういうことでありました。
結局、Aさんを送検すればこういうメモも検察に渡る、そして、Aさんが検察でこの不正受給の実態を詳しく説明することが困るということで、これだけのことがありながら送検をしなかったのではないかと疑わざるを得ないんですよ。しかも、検察に詳細な事実を知られたくないだけではなくて、最初から組織的な隠蔽が行われてきた疑いが強いんです。
Aさんの通報と申告の前の二〇二一年の二月に、広島県警本部の検察官室に空出張が行われていると告発する匿名の投書がありました。これは警察からも確認をしております。
資料三の②を見ていただきたいんですけれども、その月、二月のうちにAさんはこの空出張を命令していた主犯である警備課長に呼び出されているんですね。誰が例の件を、誰かが例の件を監察にチクった、投書をされた文章を見せられた、誰も言わなかったら絶対にばれない、絶対に話すな、警備課員が投書をしたということになったら本庁速報事案で大変な裏切りだ、監察への内部通報などどうにもできる、既に運転記録は会計課に処分させたので証拠はないとなどなどですね、箝口令をしかれたということであります。
つまり、検察官に対する匿名の告発がその当事者に見せられていたということですよ。そして、その当事者が隠蔽工作をこうやってやっているということをここでは述べているんですね。これ、私、もう警察、県警任せにしては駄目だと思うんですね。
検察庁は、北海道警の裏金事件の後の二〇〇五年の警察白書で、近年、警察の予算執行をめぐる不適正事案が相次いで判明したとして、国民の信頼回復に向けた取組の一つとして警察が行う監査の強化を挙げているんですね。これ、匿名の告発を当事者に見せて隠蔽工作をさせてしまうと、これ、全くこれに反すると思うんですね。
不正受給のあったときのこの今回の問題は、県警任せにせずに、この監察官室の対応に移して、警察庁としても掌握をしてただすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(太刀川浩一君) 警察においては、御指摘の投書といったものに対して、それが公益通報者保護法に規定される通報に該当するか否か、また、匿名でなされたものであるか否かを問わず、通報者が特定されないよう秘密保持及び個人情報保護に十分に留意しつつ、遅滞なく、必要かつ相当と認める方法で調査を行うこととしております。
その上で、匿名の文書を対象者に見せるというような行為については、その全てが禁止されるものではないと考えてはおりますが、今申し上げたような趣旨から、原則としてこれは控えるべきと考えております。
なお、これまでの本件に関する広島県警察の調査の結果、御指摘のような文書を対象者に見せたというような事実は確認できなかったとの報告を受けております。
○井上哲士君 本人が見せてもらったといって、呼び出してやっているんですよ。じゃ、何で分かるんですか、そんなことが。全く私は警察庁も隠蔽に加担をしていると言われても仕方がないと思うんですね。
しかも、問題はこの交通費や時間外手当の不正受給にとどまりません。捜査費には、張り込みや尾行などの経費に加えて、捜査に関する情報提供者や協力者に関する諸経費があると思うんですが、この捜査協力費というのは具体的にどのように使われているのか、それから、国費から支出されているということでよいか、また、この不正受給のあった二〇一九年の広島県警における国費の捜査費はどれだけの額になっているか、お答えください。
○政府参考人(太刀川浩一君) 警察では、犯罪の捜査等に従事する職員の活動のための諸経費及び捜査等に関する情報提供者、協力者等に対する諸経費で、緊急を要し又は秘密を要するため通常の契約等の支出手続によっては警察活動上支障を来すという場合に現金での取扱いを認めており、これが捜査費というものであります。その使途には、捜査員の捜査活動に係る交通費や食料費、捜査の過程における犯罪被害者等の支援に要する経費などがありますが、捜査協力者に対するものとしては、情報提供に対する謝礼や接触に係る交通費などがございます。
捜査費は、国庫支弁、すなわち国庫から支出するものと、都道府県支弁、すなわち都道府県から支出するものとがあります。警備活動に必要な経費は、警察法上、国庫支弁とされております。したがって、警備活動において職員が支出した捜査費とは、単に捜査費と表現しておりますが、これは国庫から出るものでございます。
広島県警察における二〇一九年度の国庫支弁の捜査費の執行額は、約三千四十六万円でございます。
○井上哲士君 高知県警のホームページ見ますとより詳しく書いておりまして、捜査協力者、情報提供者に対する現金、菓子折り、商品券等の謝礼と、ここまで書いてあるわけですね。それが国庫から出ていると。そして、広島県はその年は三千四十六万円あったということが今答弁がありました。
こうした協力金は本名の領収書はなかなか取りにくいと。そこで、報奨金、この協力金を手渡すためには、情報協力者と接触する際には、この資料三の一を見ていただきたいんですけれども、他の課員一名が別々に現場に行き、防衛措置をとると、こうなっているんですね。接触が開始すると本部へ連絡、電話をして状況を報告すると、こういうやり方が行われているんです。防衛のためもあるでしょうし、ちゃんと渡したかちゃんと見るということがあるんですね。令和元年五月頃までは全課員でローテーションしながら現場に行っていたが、それ以降は課長から、朝も早いし体制も弱くなるから現場には来なくてよい、エアでよいと、架空でいいと。本部報告用の実績は要るから出張願は出しておけ、出張願との整合性を出すためには時間外も付けておけと。府中署も同じ方法でやっていたから全く問題はないということを命じられて、課員は全員違法性に気付きながらも課長の指示に従ったということが書いてあるわけです。そして、実際、本部報告は、この接触の五分前に課長から電話が入って、現場付近の状況などを教えられて、言われたとおりに本部に報告したと。生々しい実態ですよ。こういうことが行われていたということであります。
そうしますと、結局、部下に空出張させて、これ課長一人で三十二回出張しているんですね。果たして、本当にこの協力金を渡したかどうか分からないんですよ。そういう仕組みにしてしまっているわけですね。この空出張の期間にこの福山の警察でどれだけの捜査協力費が申請、支出をされたのか、全額が情報協力者にきちっと渡されたかどうか、そのことを県警は捜査し、確認をしているんでしょうか。
○政府参考人(太刀川浩一君) 改めまして、特定の方から警察への通報があったという前提でのお答えは差し控えさせていただきますが、それは一旦置いて、この期間におけるある警察署における捜査費としての支出についてのお尋ねでありますけれども、特定のある警察署の特に警備課における捜査費の支出額等については、それを明らかにすることによってその所属の警備情報の収集の規模を含めた捜査活動の実態を示すこととなり、その後の業務運営にも支障を及ぼすおそれがありますので、その点についてはお答えを差し控えさせていただきます。
ただ、今回の事件において、広島県警察では、この期間、つまり不適正事案に係る出張において不正な経費の請求がなかったかどうか、これは当事者が本件期間中に執行した捜査費の使途を含めて、保存されている関係記録に基づいて捜査、調査を尽くしておりまして、その結果、この処分の対象となった者以外には、捜査費も含めて不正な経費の請求や受給は認められなかったとの報告を受けております。
○井上哲士君 肝腎なことは答えずにそこだけ明確に言われますけれども、およそ説得力ないと思うんですね。
一体どれだけのことが行われていたのか。そもそも、何でこういうことまでやって、三十二回、一人で出張していったのかと。この県警の発表や処分では、この交通費とか時間外はありますけど、この捜査協力費ということについては一言も触れていないんですよ。しかし、額はこっちの方がはるかに多くなる可能性もあるわけで、私、これでは県民からの疑いは晴れないと思うんですね。こういう報奨費の不正受給を隠蔽をするために空出張のこの交通費や、そして時間外だけの問題に済ませたんではないかと、こういう疑いがあるわけであります。
それで、私は、これは公安警察の事件だということで非常に問題だと思うんですね。公安が、都道府県の警備公安部門が警察庁の直轄指揮下にあるという下で、警察庁も一緒になって事態を隠蔽しようとしているんじゃないかと、そういう疑いの声も上がっているわけです。
そこで、最後、国家公安委員長、お聞きしますけれども、こういうままで本当に県民の信頼を回復できると思われるでしょうか。私は、この広島県警任せにせずに、警察庁としてちゃんとしっかり対応するということを指導するべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) まず、冒頭にも申し上げましたが、このような事案が発生したことは誠に遺憾であると思っております。
広島県警におきましては、関係者を措置するとともに厳正な処分に付したほか、関係部署による業務管理の徹底など再発防止を講じ、県民の信頼の回復に努めているものと承知をいたしております。
警察におきましては、平素から非違事案を認知した場合には捜査、調査を尽くし、行為の動機や態様及び結果、職員の職責等を踏まえて厳正に対処しているものと承知をいたしております。引き続き、各都道府県警におきましてそのような対処が図られるよう、警察庁を指導してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 資料の最後にありますように、二〇一五年以降も各県警でいろんな事件が起きているんですよ。本当にこれを大本から正すために、しっかりと警察を指導していただきたいと強く求めまして、終わります。
内閣委員会(道路交通法改定案等、広島県警カラ出張事件・捜査報償費の不正疑惑)
2024年5月16日(木)