○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
金権腐敗政治の根を絶つ根本的改革を実現するためには、その必要性の契機となった自民党の裏金事件の全容を徹底解明することが不可欠です。同時に、三十年前に行われた政治改革にどのような抜け穴があったのかなどの総括が必要です。
国民的怒りが広がっている裏金事件は、自民党の主要派閥が、政治資金パーティーを通じて、組織的かつ大規模に長期間にわたり収支報告書の不記載、虚偽記載という政治資金規正法違反の犯罪行為を行っていたものです。
政治資金規正法は、政治資金の収支を国民の不断の監視と批判の下に置くことによって、政治活動の公明と公正を確保し、民主政治の健全な発達に寄与するとしています。収支報告書の不記載は法の根幹に触れる悪質なものであり、国民に対する背信行為であり、民主主義を大本から脅かすものです。
ところが、自民党は真相解明に背を向け、衆参の政治倫理審査会に出席した派閥幹部からは、誰がいつからどれだけの裏金を作り、何に使ったのか、肝腎な点を明らかにしませんでした。安倍派は参議院選挙の年には全額キックバックしていますが、裏金が選挙に使われたのではないかという疑惑に何も答えていません。当選が無効となった河井案里氏の買収に使われた党本部からの資金の原資は何だったのかという疑惑もあります。これらの解明は、参議院でこそ行わなければなりません。にもかかわらず、自民党は極めて甘い党内処分と派閥解消で幕引きをしようとしています。真相解明に蓋をすることは断じて許されません。
この自民党の姿勢に、先日の衆議院の三つの補選で厳しい審判が下りました。毎日の世論調査でも、自民党の派閥幹部を証人喚問すべきという声が八〇%に上っています。安倍派における裏金作りについて、岸田総理は電話で森元総理に聴取したと述べましたが、裏金作りについては何も聞かれなかったと森氏がインタビューで答えています。森元総理や関与した全ての国会議員の証人喚問を行って疑惑を徹底解明し、その責任を明らかにすることは、国会の責務であり、本委員会の重要な課題です。
三十年前、リクルート事件を始め相次ぐ金権腐敗政治に国民の厳しい批判が広がりました。その中で、一九九三年八月、細川総理は、企業・団体献金については廃止の方向に踏み切ると述べました。ところが、政治改革と称して行われたのは、政治と金の問題を選挙制度の問題にすり替えて小選挙区制を導入し、企業・団体献金は政党支部への献金、政治資金パーティー券の購入という二つの抜け穴をつくって温存して、政党助成金との二重取りを認めることでした。我が党は、この重大問題を当時から指摘し、いわゆる政治改革四法案には反対してきました。
裏金で問題となっている自民党の派閥の政治資金パーティーの収入は、派閥への企業・団体献金を禁止した一九九〇年の、九九年の法改正時に前年比三・六倍と急増しました。献金からパーティー券購入にシフトしたことは、このことからも明らかです。まさにパーティー券は形を変えた企業・団体献金であり、購入者の大半も企業・団体献金となっています。自民党と財界、大企業が企業・団体献金にしがみついてきたことの害悪は明らかです。
経団連は、一九九三年に献金あっせんを中止しましたが、二〇〇三年に露骨な政策買収である政党通信簿方式の企業献金促進策を打ち出し、金も出せば口も出すと企業献金を続け、政治をゆがめています。
その下で法人税減税が進められて、大企業が巨額の内部留保をため込む一方、実質賃金の減少と消費税の増税、社会保障削減により内需は引っ込み、冷え込み、日本経済は成長できない失われた三十年となりました。これと重なる三十年前の政治改革の失敗は明らかです。
この認識を土台とした改革が今求められています。
第一に、裏金事件の温床にもなった企業・団体献金の全面禁止です。
朝日の世論調査では、企業・団体献金が利益誘導につながりかねないから、認めない方がよいは七九%に上りました。これこそ国民の求めている政治改革です。
日本共産党は、一貫して企業・団体献金を受け取らず、その禁止の法案を提出し続けてきました。今国会でも、パーティー券購入を含む企業・団体献金を全面禁止する法案を既に参議院に提出しております。
国民が自ら支持する政党に寄附することは、主権者として政治に参加する権利そのものです。一方、営利を目的とした企業の政治献金は見返りを求めるものであり、本質的に政治を買収する賄賂です。大企業や業界は選挙権を持ちませんが、個人の力をはるかに超える巨大な財力を持っています。その力で政治を左右するのは国民主権と相入れず、国民の参政権を侵害するものです。
政治のゆがみを正し、国民主権を貫くためにも、今度こそ抜け穴は完全に塞ぎ、企業・団体献金を全面禁止することが必要不可欠です。
第二に、政策活動費の廃止です。
我が党の法案では、政党から政治家個人への政治活動に関する寄附の禁止措置を盛り込んでおり、いわゆる政策活動費は禁止します。政党から政策活動費と称して政治家個人に支出された巨額の資金は、支出内容が全く不明瞭であり、収支を全て明らかにするという政治資金規正法の趣旨に反するものです。公開できない金を政策活動費というブラックボックスにまとめているのですから、これを廃止することは政治資金の全面公開となります。
第三に、政治家の責任逃れを許さない仕組みの導入です。
今回の裏金事件で自民党の派閥幹部らは、秘書、事務方がやった、自分は知らなかったという言い逃れに終始しています。これを許さず、責任を厳しく問う具体的な仕組みが必要です。
我が党の法案は、全ての政治団体の代表者に監督責任を明記し、代表者がこの義務に相当の注意を怠ったときは、会計責任者が違反行為を行った際に代表者にも同等の刑に処するという具体的仕組み、いわゆる連座制を盛り込んでいます。さらに、公民権停止期間を延長し、罰則を強化するとしています。
加えて、金権腐敗政治を根絶するには、企業・団体献金の全面禁止と政党助成金の廃止を一体として行うことが必要と考えます。日本共産党は、政党助成金を一貫して受け取らず、その廃止法案を今国会にも提出しております。
政治資金の拠出は国民の政治参加の権利そのものです。これに反するのが政党助成金制度であり、自分の払った税金が支持していない政党に交付されることは、思想、信条の自由や政党支持の自由を脅かすものであり、憲法に反する制度です。
法施行後、約九千二百五十億円が我が党以外の政党に交付され、企業団体献金との二重取りが続いています。政治資金のバランスという発言もありましたけれども、政党は、国民の中で活動し、国民の支持を得て、国民から浄財を集め活動資金をつくることが基本です。その努力を怠り政党の運営資金の大半を政党助成金に依存する官営政党になることは、金への感覚を麻痺させ、腐敗政治をつくり出す根源の一つとなっています。政党助成金は廃止すべきです。
昨日の与党の取りまとめは、肝腎要の企業団体献金の廃止には触れず、政策活動費も温存しつつ、その公開の中身も不明なものであり、およそ抜本的な政治改革には値しません。
最後に、議員の処遇の問題です。
調査研究広報滞在費、旧文通費について我が党は、使途を公開、返納のルールを作るよう主張してきました。議院運営委員会において各党間の協議を行って、実施に向けた結論を出すことが必要です。
以上、意見表明とします。
ありがとうございました。
政治改革特別委員会(政治資金規正法改正についての意見表明)
2024年5月10日(金)