○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
総理は、四月十七日の本会議の答弁で、本法案の保護対象は重要なインフラや重要物資のサプライチェーンなど重要経済基盤の保護に関する情報であるとして、あたかも本法案は軍事分野とは無関係であるかのような答弁をされました。
ところが、一昨日の参考人質疑で、このセキュリティークリアランスが必要とされる国際的な共同研究開発とは軍需産業への参入を想定しているのかという私の質問に、日本経団連の参考人は御指摘の点も含まれると明確に答弁をされました。
本法案は軍事分野とは無関係どころか、こういう分野でもうけを上げたい産業界の要求に応えるものになっているのではありませんか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘の点についてはこれまでも答弁させていただいておりますように、本法案が保護の対象とするのは、我が国の国民生活や経済活動にとって重要なインフラや重要物資のサプライチェーンといった重要経済基盤の保護に関する情報であり、防衛産業協力を想定して法案を策定、提出したものではありません。
重要経済基盤に関するいわゆるデュアルユース技術などが本法案に定める重要経済安保情報として指定される可能性、これは否定するものではありませんが、これは本法案は、この防衛産業協力、例えば防衛装備品の開発などを目的として策定、提出したものではない、これは従来から説明しておりますとおりであります。
○井上哲士君 目的としたものではないと繰り返されるわけでありますが、しかし、日本経団連の参考人が軍需産業への参入も想定をしていると言っている以上、無関係ではないということは認めるべきではありませんか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほども申し上げましたが、いわゆるデュアルユース技術などがこの法案の定める重要経済安保情報として指定される可能性、これは否定するものではありませんが、この法案の目的、趣旨は先ほど申し上げたとおりであります。
○井上哲士君 デュアルユースを広く指定をして、更にこの特定秘密までしていくという仕組みではないかということを私は指摘をしてまいりました。
さらに、総理は、AUKUSとの先端技術、軍事技術での協力に対応するためにセキュリティークリアランスが必要になるんじゃないかという本会議での私の質問に、防衛装備に係る諸外国との技術協力への対応を想定したものではないとも答弁をされました。しかし、四月八日のAUKUSの共同声明は、連携国にセキュリティークリアランスを含む情報保全を求めております。
AUKUSだけではありません。次世代の戦闘機の共同開発プログラム、GCAPに関してジュリア・ロングボトム駐日英大使は、セキュリティークリアランス制度は機密技術の共同開発を促進するために欠かせないと述べております。
防衛装備は特定秘密保護法の世界の話であって、本法案と関係ないというんであれば、日本は既に条件を満たしているということになると思うんですよ。なぜ各国は防衛装備の共同研究開発に対して日本にセキュリティークリアランスを求めているんでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘のAUKUSの共同声明ですとか、あるいはロングボトム大使の発言、この趣旨を、私の立場でお答えする、私はお答えする立場にはない、このように考えておりますが、本法案では、この国民の生存に不可欠な、また広く我が国の国民生活や経済活動が依拠する重要な物資のサプライチェーンに関する情報を重要経済安保情報として指定して、そして保全するものであります。
特定の防衛産業協力、これを想定したもの、想定したものではない、これは従来から説明させていただいているとおりであります。
○井上哲士君 ですから、なぜ諸外国が日本と防衛装備の共同研究開発をするために日本にセキュリティークリアランスを求めているのかということについては今御答弁がありませんでした。あの二〇一一年の日米安全保障協議委員会での情報保全についての、アメリカからこのセキュリティークリアランスの導入が求められて以降、一貫して要求をされてきたことだと思うんですね。
この間の参考人質疑で、参考人からは、憲法に戦争権限が定められた軍隊を持つアメリカで発達してきた軍事制度の一部とも言えるセキュリティークリアランス制度を、日本では軍事に関係ないと殊更に強調されるので、警戒心を持たざるを得ないという研究者の言葉がありました。私、これ是非受け止めていただきたいと思うんですね。
そこで、どういう秘密保全体制をつくり上げていくのか。先ほどの質疑で、国家安全保障戦略を踏まえたマッチング事業についてただしました。この事業は、関係省庁と防衛省とでコミュニケーションを行い、防衛省の研究開発に結び付く可能性が高いものを効率的に発掘、育成することを目指すと明確に述べております。この成果が要件を満たせば本法案の秘密指定の対象となることは否定されませんでした。マッチング事業であるとかKプログラムなどデュアルユースについて基礎研究の段階から広く国が推進をして、その研究成果が防衛装備に転用できる可能性が出た段階で要件を満たす形で重要経済安保情報に指定し、更に情報の機微度が上がれば特定秘密に指定すると。
まさに、この効率的に発掘、育成をしながら秘密指定し、装備品まで結び付けるということを可能にしているのがこの法案の制度ではありませんか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、本法案は、政府が保有する我が国の国民生活や経済活動にとって重要なインフラや重要物資のサプライチェーンの保護に関する情報に対する保全制度の創設、これを目的とするものです。これ、研究開発一般を含め民間が保有する情報を対象にしたものではない、これは従来から説明しているとおりであります。
その上で、例えば、基幹インフラへのサイバー攻撃の防止に係る革新的技術に関する情報などは重要経済安保情報に該当する可能性があり、さらに、それが特定秘密の別表にも該当するような場合には、当該情報が特定秘密として指定されることもあり得るのではないかと考えます。
○井上哲士君 特定秘密保護法と今回の法案のシームレスな運用についての今答弁だったと思うんですが、更に広く基礎研究の段階から国が推進をしてこの特定秘密まで機微度が上がったものを指定をしていくと、こういう仕組みをつくったものだということを私は繰り返し指摘をしてまいりました。
そして、この法案と特定秘密保護法をシームレスに運用するための運用基準の改定の具体的な内容も結局示されておりません。それでは国会審議の形骸化は免れないとして提示を求めてきたわけですが、いまだに示されておりません。さらに、適合事業者に求められる要件の具体的な内容、罰則がない下での第十六条の適性評価に関する個人情報の利用、提供の目的外利用をどのように規制していくのか。報道や取材の自由の保障もことごとく法案成立後に有識者の意見を聴いて検討するとの答弁に終始をしているわけですね。先ほど細目とか一部という話でありましたけど、基本的な問題がやはり先送りになっていると思うんですね。肝腎なことを国会に示さずに法案成立後に先送りし政府に丸投げをするようなことは、参考人質疑でも厳しい指摘が出されました。
もうこういうやり方は国会審議を形骸化させるものと思いますが、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、特定秘密保護法の運用基準の見直しについては、経済安全保障に関わる重要技術が特定秘密に該当するかどうかを各行政機関の長が的確に判断できるようにするためにより明確にすべき箇所や補足すべき箇所がないか、法の授権の範囲内で見直すことを検討しているものであり、これ、国会の立法権を形骸化させるものではないと考えております。
そして、今度は、この本法案についてですが、先ほども答弁させていただきましたが、重要経済安保情報の指定要件の一つである重要経済安保保護情報については、特定秘密保護法と同程度の詳細さで本法案にこれ規定を明記しております。その一部、政令に委任したり、これ運用基準に定める、こういった部分についてこの国会審議を形骸化させるのではないか、こういった指摘があるわけでありますが、この本法案の中に重要部分を特定秘密保護法と同程度の詳細さで規定しているということを考えましても、国会審議の形骸化という指摘は当たらないと考えております。
○井上哲士君 先ほど来各党からも、そして参考人質疑からも、こういうやり方はやっぱりおかしいと、特に人権に関するものはやっぱり国会できちっと法律で定めるべきだという厳しい指摘もありました。そのことをしっかり受け止めてもらう必要がありますし、そういう点でいえば、内容もやり方も民主主義を壊すものだということを指摘しまして、質問を終わります。
内閣委員会(経済秘密保護法案ー岸田首相出席の質疑)
2024年5月 9日(木)