○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
政府の支援策が、予算も含めて、これ、実態やニーズに合っているのかどうか、今日はそれを聞きたいと思うんですね。
こども未来戦略では、教育費の負担が理想の子供数を持てない大きな理由の一つとなっているとの声があるとして、高等教育費の負担軽減は喫緊の課題だとしております。決して十分な内容とは言えませんけれども、加速化プランでは高等教育費の負担軽減を掲げて、貸与型奨学金の減額返済制度の年収上限の引上げや、給付型奨学金の対象拡大等を掲げております。
ところが、今、過去最高を記録してきた大学の学費の値上げが国立、私立を問わず広がっております。我が党、しんぶん赤旗の調べでは、この四月から学生数一万人以上の大規模私立大学の三五%が授業料の値上げを行いました。それから、国立大学でも、東京大学が学費値上げを検討していると報道もあり、他大学でも懸念がですね、上がるんじゃないかという懸念が広がっているわけですね。
これ、物価高騰もありますけれども、やっぱり背景には国の予算の問題があります。運営費の五割を目指すとされてきた私学助成はもう一割を切る水準になっている。そして、国立大学の運営費交付金が、今年で法人化後二十年になりますけれども、千六百三十一億円も削減をされてきたと、これが大きく影響していると思うんですね。
このまま学費値上げが進みますと、加速化プランで言っている高等教育費の負担軽減などはもう水の泡になってしまうと思うんですよ。これは岸田政権が最大の危機と取り組んでいる少子化対策に逆行する事態なわけでありまして、これはやはり担当大臣として、この大学の学費値上げの現状を黙って見過ごしてはいけないと思うんですね。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
委員お尋ねの大学の学費値上げにつきましては、文部科学省が所管でございますが、国会において文部科学大臣がこのように答弁していると承知しています。大学の学費は、基本的に各大学がそれぞれの教育や研究環境を勘案しながら適切に定めるべきものと認識しております、国の制度の拡充を理由とした学費の値上げについては、合理的な範囲を超えたものとならないよう、各大学において説明責任を果たしていただくことが重要と考えておりますが、今回の制度の拡充の趣旨に反するような学費の値上げが行われることのないよう、制度の趣旨の周知に努めてまいりたいと考えております。このように答弁があったと承知をしてございます。
教育費の負担が理想の子供の数を持てない大きな理由の一つになっているという声がありまして、それは委員の御指摘のとおりでございまして、特に高等教育については負担軽減が喫緊の課題であると承知しておりますし、加速化プランにもしっかりと明記をしているところでございます。引き続き、文部科学省において適切な対応がなされるものと考えておりますが、こども家庭庁としましても、この課題意識をしっかりと共有しながら、文部科学省と連携を図ってまいります。
○井上哲士君 明らかに負担軽減ということと逆行する事態が進行しているわけですから、私は、もっとはっきりと言ってもらわないと、本気度が問われるという事態だと思うんですよ。
さらに、こども未来戦略では、自分がこれから先子供の生活を保障できるほどのお金を稼げる自信がないなどの若者の声を紹介して、若い世代が結婚や子供を産み育てることへの希望を持ちながらも、所得や雇用等への不安等から将来展望を描けない状況に陥っていると指摘をしております。
この若い世代の重い経済負担になっているのは、この高等教育費だけではありません。家賃の負担も非常に大きいわけですね。総務省の全国消費実態調査によりますと、可処分所得に占める家賃の割合は、四十歳未満の男性、単身男性で、一九八九年の一二・四%から二〇一四年の二〇・一%、四十歳未満の単身女性では、一九八九年の一九・〇%から二〇一四年の二三・五%へと大きく増加していますし、これ、今拍車掛けていると思うんですね。
こういう若い世代の住まいに対する経済的負担の軽減について、加速化プランはどのように答えているんでしょうか。
○政府参考人(宿本尚吾君) お答えをいたします。
昨年十二月に閣議決定をされましたこども未来戦略におきまして、子ども・子育て支援加速化プランにおいて実施をする具体的な施策として、子育て世帯に対する住宅支援の強化が位置付けられております。
具体的には、子育て世帯などが、公営住宅を始めとした公的賃貸住宅に優先的に入居できる仕組みの導入、普及、空き家について改修、サブリースを促進するとともに、子育て世帯向けのセーフティーネット住宅として登録することの促進、子育て世帯などが良質な住宅を取得する際に、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローン、フラット35につきまして、子供の人数に応じて金利を引き下げるなどの施策を盛り込むことが位置付けられております。
○井上哲士君 子育て世帯に対する一定の支援が盛り込まれました。
先ほどありましたように、自分がその将来そういう子供を産み育てることへの希望が持てないという状況に、今現に若者がなっているという事態の中で、今の答弁された支援は、子育て中の世帯に限定をされているんですね。私は、経済的負担の大きさ、今の生活から、そもそも結婚や出産を諦めている若い世代に希望を指し示すものには不十分だと思うんですね。
なぜ、加速化プランやこの法案の中で、子育て中の世帯だけではなくて若い世代全体を対象にした具体的な家賃支援が盛り込まれなかったのか。これ必要だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) 加速化プランにおきましては、理想の子供数を持てない理由としまして、若い世代を中心に家が狭いからが挙げられていることなどから、子育て世帯に対する住宅支援の強化の施策を盛り込んだところでございます。
一方、未婚の方も含め、若い世代に対しては、こども未来戦略におきまして、若い世代の所得を増やす、このことを基本理念の一つとして掲げ、賃上げや三位一体の労働市場改革、非正規雇用の方々の正規化など、若い世代の所得を増やすための取組を進めることとしてございます。
また、こども家庭庁におきましては、地域少子化対策重点推進交付金を活用した結婚新生活支援事業を実施をしておりまして、自治体が行う新婚世帯に対して、住宅賃借費用などを補助する取組も支援をしてございます。引き続き、関係省庁と連携をしながら、若い世代の経済的基盤の安定に向けてしっかりと取り組んでまいります。
○井上哲士君 所得の拡充は必要でありますけれども、実際には、実質は減っているという現状もありますし、やっぱり現に希望を持って生活できていない若い世代への直接の支援が必要だということを更に求めておきたいと思います。
この加速化プランのこの共働き、共育ての推進の具体化として、本法案には、両親が共に育児休業を取得する場合に、育児休業給付の給付率を手取りで十割相当まで引き上げる出生後休業支援給付や、男女共に時短勤務を選択しやすくなるように、子供が二歳未満の期間に時短勤務を選択した場合に、時短勤務の賃金の一〇%を支給する育児時短就業給付を創設するとしております。
これらの制度を検討した厚生労働省の雇用保険部会の報告を見ますと、出生後休業支援給付を創設する目的は、両親共に育児休業を取得することを促進するためとして、育児時短就業給付については、共働き、共育ての推進、片親に育児負担が偏る結果、雇用継続が困難になっていることを防ぐ、この出生育児休業後の早期職場復帰と、育児とキャリア形成の両立支援のためとして、雇用保険法を改正して創設されるということになっております。
ということは、これら二つの制度は既存の育児休業制度の拡充であると、こういう理解でよろしいでしょうか。
○政府参考人(石垣健彦君) お答え申し上げます。
本法案におきましては、委員御指摘のとおり、両親共に働き育児を行う共働き、共育てを推進する観点から、出生後休業支援給付、それから育児時短就業給付を創設することとしております。これらの給付につきましては、少子化対策の観点に加えまして、労働者の雇用と生活の安定という観点から、夫婦の片方に育児の負担が偏ることを防ぎ、育児とキャリア形成の両立を支援し、雇用の継続を図るものでもあるため、既存の育児休業給付とは異なる給付として新たに創設するものでございますが、雇用保険の被保険者に対する給付として位置付けるものでございます。
厚生労働省としましては、この新たな給付をできるだけ多くの方に御活用いただき、既存の育児休業給付と相まって男女共に仕事と育児の両立が可能となるように丁寧に周知し、円滑な施行に向けて取り組んでまいりたいと思っております。
○井上哲士君 育児休業制度とは別であるということでありますが、実態でいえば拡充版と言えるとも思うんですね。
ただ、雇用保険に加入できない自営業者やフリーランスはこの制度は使えないということになるんじゃないですか。
○政府参考人(石垣健彦君) お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、今般創設する出生後休業支援給付と育児時短就業給付は雇用保険制度の給付でございますので、雇用保険の被保険者となっていないような自営業者等の方々には給付の対象とはならないということになっております。
なお、本法案におきましては、雇用保険の適用対象とならない自営業者やフリーランスなどの方に対する育児期間中の経済的な給付に相当する支援としまして、国民年金第一号被保険者について、その子が一歳になるまでの期間の国民年金保険料を免除する措置を創設することとしているところでございます。
○井上哲士君 育児休業期間中の保険料免除措置は厚生年金保険にもあるわけですから、給付に相当する措置とはとても言えないと思うんですね。
そもそも、全世代型社会保障構築会議の報告書を見ますと、自営業やフリーランス、ギグワーカー等に対する育児期間中の給付の創設についても、子育て期の就労に関する機会損失への対応という観点から、検討を進めるべきとされていたんですね、二〇二二年十二月の報告でありますが、それがないと。
しかも、この出生後休業支援給付も育児時短就業給付もその財源には支援金が充てられます。フリーランスの方は、フリーランスの方は、支援金は取られるけれども、制度は対象外ということになるんですよ。これ、私おかしいと思うんですね。コロナ対策のときにもフリーランス、十分な支援がありませんでした。フリーランスの皆さんへの育児期間中の支援を直ちに具体化すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
多様な働き方と子育ての両立支援が求められる中、雇用保険の適用を受けず育児休業給付の対象とならない自営業やフリーランスの方々等も含め、親の就業形態にかかわらず、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく経済的に支援すること、これは重要だと考えております。
こうした点も踏まえまして、年金制度において、自営業、フリーランス等の育児期間中の経済的な給付に、育児期間中の経済的な給付に相当する支援措置としまして、国民年金の第一号被保険者について、育児期間に係る保険料免除を創設することなどを今回の法案に盛り込んでいるところでございます。
また、全ての子供、子育て家庭を支援する観点から、児童手当の抜本的拡充、出産・子育て応援交付金や伴走型相談支援の制度化、こども誰でも通園制度の創設なども、これも自営業やフリーランス等の方々にも当てはまると思いますが、こういったことも本法案に盛り込んでいるところでございます。
こうした施策の早期実現を図ることによって、フリーランスの方も含めて、若い世代が子供を持ち、安心して子育てができるように支援を推進してまいります。
○井上哲士君 免除措置は先ほど言いましたようにもう厚生年金保険にありますから、給付に相当する措置とは言えませんし、今いろいろ挙げられましたけど、これみんな使えるんですよ。フリーランスの人はこれが使えないと、しかも支援金は取られていると、これはおかしいじゃないかと言っているんです。是非改善をしていただきたいと思います。
最後に、保育所や認定こども園等の改築や改修費を国が二分の一補助するこども家庭庁の就学前教育・保育施設整備交付金があります。各自治体から例年一月末から五回ほど国と申請協議を行っています。ところが、今年、石川県の金沢市では、一回目の申請を二月に行って、三月に交付金の内示があって、幼稚園や保育園の三か所の改築改修費として、七億九千八十万円の予算を計上をいたしました。ところが、三月末に国から、二回目以降はもう協議はありませんと突然言われたということなんですね。もう市の課長は、二回目以降の交付申請を九施設予定していたので大変困惑していると、何とか交付金の確保をお願いしたいと訴えております。
五月十五日に金沢市長が古賀政務官に予算確保を緊急に要望しておりますし、山口県もそういう要望をされております。何でこんな事態が起きたのか、今後どのように対応するのか。いかがでしょうか。
○大臣政務官(古賀友一郎君) お答え申し上げます。
この保育所等のその施設整備については、これまで累次の取組を行ってきておりまして、待機児童数、大幅に減少しているという状況にはございます。
そういった中で、この令和六年度につきましても、令和五年度補正予算と合わせて所要の予算額を確保はしておりましたけれども、本年は第一次募集におきまして想定を上回る申請がありましたことから、整備によって受入れ定数が増えるものであったり、あるいは特に早期着工が必要なものなど、一定の基準を満たすものに絞って採択をせざるを得ない、こういった状況になったわけでございます。
しかしながら、先ほどございましたその金沢市の例もございまして、私も承りました。改めて調査をいたしました結果、その一次協議で漏れたもの、あるいは二次募集以降で予定されていたものの中にも早期着工が必要な案件が確認をされましたために、特に優先すべき一定の案件を対象として、予算執行残額の範囲内ではございますけれども、先週、第二次の協議をさせていただく旨、自治体に通知をさせていただいたところであります。
こども家庭庁としては、今年の一次募集が想定を上回った背景などを今後よく分析した上で、今回内示できなかった不足額も含めて、今後の予算確保に全力で取り組んでまいる所存でございます。
○井上哲士君 所要の予算を確保していたと言われましたけれども、補正と当初を合わせますと、今年度分の予算は前年度から比べますと約九十億円減っていたんじゃないですか。これ、所要の予算が確保できていなかったからこそ、つまり、各自治体の実態、ニーズを把握できていなかった、それがこういう結果になっているんじゃないですか。いかがですか。
○大臣政務官(古賀友一郎君) 先ほど答弁申し上げたとおり、これまでのその取組によってその待機児童数自体は減ってきている、そういったその状況の変化も踏まえながら我々としてはその所要の予算額を確保してきたつもりであります。しかし、そういった、よくよく調べてみますと、やはりそういった新たな需要もあると、こういうことが先ほどの金沢市のその御要望なども踏まえまして分かってまいりました。
そういったことを踏まえて、今後の対応としては、今申し上げたとおり、そういった今回の状況になったことも、状況も踏まえながら、しっかりと予算の確保に努めていきたいと、こう考えているところであります。
○井上哲士君 今年度のこの事業対象を見ますと、交付金の、こども誰でも通園制度の試行的事業実施事業者整備事業、これも盛り込まれているわけですよ。ですから、この子育て支援のプランに沿ったものも新しく組み込まれていると。そのときに予算を減らしてしまって、結果として、例年は五回協議しているのに一回目で打ち切りますと言われたと。大変な混乱が起きているわけですよ、自治体で。これ、責任は大きいと思うんですね。
この異次元の少子化対策を始めるといったこの初年度からこういう地方に大きな混乱を招いている責任、そして、各自治体がこれによって予定していた事業を断念をしたり先延ばしをしたりと、絶対あってはならないと思うんですけれども、そういうことが起きないようにどうしていくのか。大臣、お答えいただきたいと思います。
○国務大臣(加藤鮎子君) 就学前教育・保育施設整備交付金の交付につきましては、先ほども答弁がありましたように、一次協議を行い、その結果、予算が余っている場合に二次協議以降を行うこととしておりましたが、今回、一次協議で申請あった金額をほぼ予算に相当する金額となって、その後協議を行わないこととしていました。そして、それが、しかし、それが、これまでは二次協議以降も行われることが通常であったということを踏まえますと、今回二次協議の募集が行われなかったことによって見通しが、ちょっと期待していたことと違ったということで混乱する自治体が出てしまったことにつきましては、実務的な進め方として反省すべき点もあったというふうに思ってございます。
当該の交付金につきましては、できる限りの運用上の工夫を検討をしまして、五月十七日に第二回の追加協議を行う旨、各自治体に通知をしたところでございます。これによって、早期の着工が必要な整備事業については、当初の予算から大きく変更されることなく事業を開始できるものと考えております。
今後、今回の反省点をしっかり生かし、このように、自治体の皆さんにとって見通しの付きやすい進め方にしていくようにしっかりと対応するとともに、協議額のうち、今回内示できない不足額や次年度以降に必要な施設整備費につきましては、こども家庭庁としても必要な予算の確保に向けてしっかりと全力で取り組んでまいります。
○井上哲士君 自治体が必要な事業ができるようにしっかり取り組んでいただきたいと重ねて申し上げて、質問を終わります。
内閣委員会(子ども・子育て支援法改定案)
2024年5月23日(木)