○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は、参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございます。
まず、保育問題に関わって、まず池本参考人にお聞きいたします。
ヨーロッパなどとの違いについてお話しいただきまして、大変参考になりました。イギリスやニュージーランドで行われている第三者評価制度ですけれども、全ての保育施設を国が手のひら乗せるのはなかなか大変だと思うんですけど、具体的にどういうふうにやられていて、どういう中身でやられて改善につながっているのかということが一点。
もう一点は、保育士の配置の件ですけれども、ヨーロッパでは例えば三から五歳児の場合は十対一が推奨されているというのもお話がありました。日本はやっと七十六年ぶりに変わりましたけど、四、五歳児で三十対一が二十五対一にやっと変わったわけですよね。ここにある、何というか、政治の姿勢というんでしょうか、この保育に対する立場に、どこに違いがあるのか。その中で、私も何度かいろいろ質問もしたことありますが、やっぱり保育士の専門性ということに対する評価が、日本の場合は子育てなんて誰でもできるんじゃないかというようなことも言う人もいるわけで、その辺がどういう違いがあるのか、お願いしたいと思います。
○参考人(池本美香君) まず、評価制度については、イギリスもニュージーランドも、国が、その保育だけではなくて学校施設も含め、あとイギリスの場合ですと、児童養護施設とか子供が利用している施設の質全般を管理する、管理というか評価するOFSTEDという機関がありまして、そこは結構、元校長でしたか、そういうかなりプロフェッショナルな人たちがそれなりの所得を得て、各施設を定期的に、三年とかの頻度ですけれども、行って、そこを訪問して、評価基準も全部国の方で決まっていまして、それも、例えば、子供の教育の質から、労働者、保育者の働く環境ですとか、子供の能力がきちんと伸ばせているかとか、あと障害などがある子供が取り残されていないかといった福祉的な面なども全部評価基準が定まっていまして、それで、どこまでできていれば、何か五段階、イギリスは四段階の一番上なのか一番下なのかといったことも全部定められていて、それで、評価にいって、評価レポート、その評価者が書いたものが全部ウェブで公開されているというような仕組みになっています。
ですから、保護者は、自分の近所の保育園というのを検索して、その評価レポートを全部、過去のものも含めて読むことができますので、それで保育園選びが行われるということですので、かなり施設の側には質をきちんとしようというインセンティブにもなりますし、あと、保育者がやっぱり保育園、どこに就職するかといった際にも、どういう、単に評価だけではなくて、どういう特徴のある園なのかといった情報なども開示されていますので、自分の保育のやり方と合うか合わないかとか、どのぐらいの人数がいてとか、どういう外国人とかの言語でやっているかといったことなんかの情報も書かれていたりしますので、そういう何か情報がまず開示される、そして、定期的に外部から専門家が入って、そういう虐待とかのことも含め教育の質とか、そういったことも全部評価する仕組みになっています。
それで、あと、もう二つ目の御質問の保育の配置基準とか専門性の問題については、まず、一番びっくりしましたのは、海外では学校教員と保育者の給与格差がほとんどないということです。要は、同じ子供の教育に関わる専門家なので、子供が五歳か六歳かでそんなに先生の給与が格差が付くということは、まあよくよく考えたら海外のやり方がそうだなと思ったわけですが。
子供にとってどういう教育がいいかというのを突き詰めていきますと、そういう配置基準でもありますし、あと、やっぱりさっき申し上げたように、そういう発達に課題がある子供でしたりとか、あと子供の興味、関心にそれぞれ寄り添って伸ばしていくということになると、そういう配置基準ですとか専門性ということが必要になってくるということですね。
日本の場合は、学校もどちらかというとそういう感じですが、一斉に同じことを子供はやらなきゃ、ことを目指している教育で、幼稚園とか保育園も、昔はそうやって何かみんな一緒に同じレベルにしていくという保育だったので、ある程度、三十五人ぐらい幼稚園では見れるという設定だったんですけれども、今は、例えばもっと子供に、例えばちょっとチャレンジする、海外なんかですと保育園でものこぎり使って切るとか、そんなことも大人の手があれば子供はチャレンジできるんですけど、そういうのも全然、今、日本のような場合ですと、そういう子供がチャレンジしたりとか外に出かけるとかということが全部制限されてしまっているというところがありますので、そこまで保育の質を海外は今目指しているという、そこの違いは大きいかなというふうに思っております。
○井上哲士君 ありがとうございます。
誰でも保育制度について、奥山参考人と池本参考人にお聞きいたしますが、子供も保護者も、この家族以外の人や保育専門家と交流しながら子育てできる制度の整備は大事だと思いますし、多くの保護者の皆さんも求めていらっしゃると思うんですね。
ただ、今政府が示しているこの制度には、やっぱり様々な問題が指摘をされております。奥山参考人が子育てひろばの中で一時預かりをされているお話が先ほどありました。非常に慣れた環境で、毎週曜日を決めるという、あのお話聞いていますと、確かに保護者にも子供たちにも職員にもいいなと思って聞いたんですけど、ちょっと今政府が言っているのはこれ似て非なるものだと思うんですね。一時預かりは保護者都合だが、この誰でも保育制度は子供の立場と政府は言いますが、私はちょっと違和感があって、むしろ預けやすさが優先されているんじゃないかと思うんです。
ちょっと具体的にお聞きしますが、例えば今、試行的事業でいいますと、自治体を通さずにアプリで全国どこの事業所とも直接やり取りをできるようになっていますし、市町村が事業を確認するが基準は低い、それから保育従事者のうち保育士は半分程度でいい、場所も駅前のにぎやかな場所とか空き店舗とかも可能。そういう、ですから、公費は出すけれども、自治体の責任がむしろ後退をするんじゃないかというのが一点と、それが子供に何をもたらすかといいますと、大体、保育施設で事故の約三割は一か月に、入所一か月後に集中されるという統計がありますけど、いわゆる慣らし保育もなしに、いきなり新しい場所に行って全体の保育の中に一人、一人だけ預けられると、非常にストレスがたまるんじゃないか。で、保育所の側から見ても、発達状況が十分に分からない中で、果たして安全な保育がきちっと確保できるのかとか様々な指摘がされておりますけれども、今試行的事業でやられている幾つかの項目について、これはどうかと、変えた方がいいんじゃないかと思う項目があるかどうか、それから、実際やる上でこういうことはきちっと改善、拡充をするべきだという点、それぞれお願いしたいと思います。
○参考人(奥山千鶴子君) ありがとうございます。
昨年の試行的実施に関しては、まだこども誰でも通園を、内容に即した内容にはなっていないんだと思うんですね。ですけれども、保育園の空きスペース、空いている枠を活用して実施してみるということだったと思うんですね。
幾つかやはり報告とかもありましたけれども、保育園の方と、それから保育園に併設されているような支援センターですね、私たちがやっている地域子育て支援。ここで連携をして、支援センターに慣れているお子さんの中で、保育者も支援センターと行ったり来たりしながら顔見知りになりつつ、保育園の方で誰でも通園的な預かりをするというふうに、いろいろ現場では創意工夫をして、子供さんにとっても安心できるような保育の模索というのをなさっていらっしゃいました。
ですから、まだ、今回、百自治体ぐらい今年取り組むというふうに聞いておりますけれども、その中で検証をされていくんだというふうに思うんですけれども、多くのところが保育園等での実施というふうに、これからどういうふうになるか分からないんですけれども、検証しながら進めていくことになるのではないかなというふうに思います。
やはり、定期的に預かるということというのは、かなりお子さんに負担が少ないと思うんですね。ですから、そういったところを中心として、例えば、私たちもそうしていたんですが、定期的に預かりつつ、例えば月曜日預かっているお子さんだとしたら、場所に慣れているので、緊急のことがあって木曜日も預けたいといってもそれを受け入れることができるんですね、いつも月曜日預かっているので慣れていらっしゃるお子さんだから。
そういう意味での一時預かりという形での受入れもできるというふうに思っていますので、おっしゃるとおり、子供さんへの負担、それから現場の配慮ということを丁寧にしながら実施の体制をつくっていくということが大事だというふうに認識しております。
○参考人(池本美香君) 私も、子供にとっての負担というところでは相当配慮が必要だなと思っておりまして、何か自由利用ということで、どこでも行けるというようなことも一応制度的には入っていると思うんですけれども、やはり望ましいのは、定期的に同じ場所で慣れていくとか、あと、親とか、親子が所属する場所という、自分たちの居場所というものを持つということがすごく重要なところだと思いますので、そういう、自由というよりは定期的に行くというところが重要ではないかと思いますし、あと、少し親子通園、登園みたいなことも少し出てきているんだと思うんですが、先ほど紹介したニュージーランドのようなものは、親子で行くということをもう前提にしているような保育というものも、それは、親が子供の、どういうふうに関わったらいいかということを親が学ぶ場としても保育の施設が活用されているということですので、何かそういう、預けて親子を分離するというところが必要な場合もありますけど、一緒に通う、一緒に学びながらという、そういったやり方も、誰でも通園の中で試行的にできないかなということは思っているところです。
○井上哲士君 ありがとうございました。
今の問題、池本参考人、重ねて聞きますが、要するに、アプリで全国どこでも事業所と直接契約ができるようという仕組みが考えられているわけですよね。多分、帰省したときとか旅行中でもぱっと預けれるようにするんだと思うんですけど、私は、これはいろんな先ほど述べたような懸念からいっていかがかなと思っているんですけど、率直な御意見あればお願いしたいと思います。
○参考人(池本美香君) どうしても、親の目線、親目線というか親の便利さというところで何か制度設計がされてしまうというのはやっぱり良くないというふうに思いまして、あとは、誰でも通園のその場所の質が、やっぱりほかの一般の通常の園も質が全然評価されていないということですので、そこの質を本当に上げていくこと、あと、そこの受入れ側の保育者の方のやっぱり負担ということも相当に配慮する必要があるというふうに思っております。
○井上哲士君 ありがとうございました。
財源と支援金のことについて、まず権丈参考人にお聞きいたしますけど、先ほどもありましたように、このそもそも支援金という制度については様々な意見もあるし、私たちも社会保険料に上乗せすることは反対なんですけどね。
ただ、それにとどまらず、やっぱり岸田政権、岸田総理の説明に対して疑問を持っている方も非常に多いわけです。先ほどありましたように、その負担は増えないんだと、新たな負担は求めないんだと総理は言うわけですけど、支援金自身がかぶるという問題と、それから、社会保障負担率というのを使って社会保険料を国民の総所得で割った、これは変わらない。
つまり、今後賃上げなどがされて所得が増えれば負担率変わらないから負担は増えないんだと、こういう説明をされるわけですけど。賃金自身がこの間実質は減っているわけで、増える保証は何もないということがあるのと、あと、社会保障の分子の方はこれ保険料だけで、例えばいわゆる歳出改革で窓口負担とか介護保険の利用料なんかが増えてもこれは社会保障負担とは見ないということになっていて、私、分母も分子もごまかしたと思っているんですけど、こういうことを使ってやっぱりこの負担が増えないという説明をしていることが国民的には分かりにくいし、非常に不信を招いているんじゃないかなと思うんですけど、そういうこの負担は増えないという今の政府の言い方についてどのように思われるでしょうか。
○参考人(権丈英子君) ありがとうございます。
社会保障の制度ってやはり難しいところがあるんだろうなというふうには思います。そうしたところですので、やはり丁寧に説明するということは必要なんだろうと思います。
その上で、では、社会保障負担率に注目するのはどうかということなんですが、これは一つの目安として、国民所得に占める社会保障保険料の割合を社会保障負担率というふうに呼んで、呼んで比較したりしますので、そのこと自体を、使うことには特に問題は感じておりません。これを実質的な国民全体の所得のうちにどの程度社会保障に回っていくのかということですので、それは一つの実質的な負担の指標として、取り方としてはおかしくないというふうに考えております。
これは個人的な意見なんですが、社会保険は助け合いの仕組みなので、本来であれば、これを社会保障負担率と呼ぶよりは、社会保障連帯率とでも呼びますと、連帯とか助け合いの仕組みであるということの意識が高まるように思います。そうなれば、じゃ、どの程度の社会保障連帯率にしたいのかということをまたみんなで議論していくということもできるかなと思いますが、最後の方は個人的な見解でございます。
ありがとうございます。
○井上哲士君 ありがとうございました。
私は、むしろ社会保険料負担率と率直に言った方が分かりやすいのかなと思っているんですけど。
八代参考人にお聞きいたします。
先ほど、今の社会保障について、孫のお年玉を取っているみたいな言い方をされたんですね。私、ちょうどおとついもこの問題でちょっと質問したんですけど、むしろ、高齢者にお金を掛け過ぎたというよりも、子供たちにお金を掛けなさ過ぎてきたんじゃないかということだと思うんですね。
この間、いわゆる例えば企業でも一定の役職にあるような方が介護離職をするということもありますし、それからいわゆるヤングケアラーということも大変問題になってきたわけですね。私も、母は九十一歳で広島でサービス付き高齢者住宅に入っているんですけど、もしそういうことがなければ本当に自分がどういうふうに対応できるかと、母はやっぱりふるさとにおりたいということを考えますとね。非常にやっぱり高齢者に対する社会保障というのは現役世代にとっても大事なことだと思っているんです。それを削減することによって、親の介護の負担とか、自分自身の将来不安があることがやっぱり世代に影響を与えて、むしろそれは結婚とか子育てに影響を与えるんじゃないか。
この間、学生とちょっと懇談をする機会があったんですけど、今学生の間で結婚して子供を持つことはぜいたくだという話があると聞いて、ちょっとびっくりしたんですよ。そういうことをやっぱり親とか自分の祖父母のことを見ると考えざるを得ないような状況をやっぱり考えますと、何かやっぱり高齢者への社会保障給付が問題だというのは少し違うんじゃないかと私は思うんですけど、そこはいかがでしょうか。
○参考人(八代尚宏君) ありがとうございました。
ヤングケアラーとかの介護離職というのは、そういうことを防ぐために介護保険ができたわけで、なぜそういう問題が起こるかというのは、これは介護保険の運用というかそれの自体の問題であって、そこはもう早急にやらなければいけないと思います。
あと、もう高齢者というのを一くくりに考えることはやめるべきだと思うんですよね。高齢者というのは物すごく所得格差の大きな集団であって、だから、一般的に見れば貧しい高齢者もいて、だから高齢者に余り負担を掛けられない、しかし豊かな高齢者は物すごく豊かなわけで、私は本来、高齢者の間の所得再分配というのをもっと強化すべきで、後の世代にはできるだけ負担を掛けるべきではないと思います。
それは、例えば、年金の所得税でいえば、年金所得控除が余りにも大き過ぎると。勤労所得控除とほとんど変わらないわけですが、勤労所得控除というのは働くための経費を一括に落としているという考え方で、それに対して、公的年金控除というのは働かない高齢者の何を落としているのかという、それはあくまでもやっぱり高所得の高齢者を優遇する非常に政治的な仕組みであって、こういうのをやっぱりなくすことによって、豊かな高齢者が貧しい高齢者をきちっと、何というか、カバーするという、そういう仕組みをやっぱり税制上もつくる必要があって、やはり、何というか、孫のお年玉を取り上げるというのは失礼な言い方かもしれませんが、私が言いたいのは、高齢者は絶対そんなことをしたくないと思っているはずなんですよね。だけど、社会保障制度がそういうふうになっている、それを高齢者が認識していない、あるいは政府がそれを隠してきたわけなんですよね。例えば、年金でいえば、百年安心年金というのはうそをついているわけです。まさに百年安心年金じゃないからこそ年金制度の改革が必要なのに、それをしないためにいまだにそれにこだわっているというか。だから、そういうことは政府の責任であって、高齢者の責任ではないんですよね。
だから、私は、やっぱりきちっとした、今回の法も、負担がないからやりましょうというのは間違いで、あらゆる政策には必ずコスト・アンド・ベネフィット・アナリシスが必要で、少子化対策をするためには負担が生じると。だけど、これは必要だから是非やるべきだというふうに国民を説得すべきだと思いますし、議員がおっしゃったように、いろんな、何というか、ごまかしがあるということは事実だと思います。
○井上哲士君 ありがとうございました。終わります。ありがとうございました。
内閣委員会(子ども・子育て支援法改定案ー参考人質疑)
2024年5月23日(木)