国会質問議事録

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内閣委員会(子ども子育て支援法改定案ー岸田首相出席の質疑)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 総理は、支援金制度について、社会保障負担率は上がらないので国民に新たな負担を求めるものでないと繰り返し答弁され、今日も何度も同じことを答弁をされております。
 一方、先日、私の質問に政府参考人は、社会保障負担率の計算の分子は社会保険料のみが対象なので、社会保障の歳出改革として、例えば、介護保険の利用料の負担や医療費の窓口負担が増えても社会保障負担率は上がらないということを認められました。
 しかし、一人一人の国民にとっての負担増というのは社会保険料だけじゃないんですね。介護利用料であるとか医療の窓口負担はいずれも重い負担になるわけです。
 一方で歳出改革の徹底をしてこの介護や医療の負担増を進めながら、社会保障負担率というごまかしの数字を使って国民に新たな負担を求めないという説明は、国民は納得していません。もはや破綻をしているんじゃないですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘のように、先ほど来、この国民の負担が増えないことのメルクマール、具体的なメルクマールとして社会保障負担率というこの数字を利用させていただいている、こういったことを申し上げているわけですが、その分母と分子の関係について、この社会保障分野における歳出改革の具体的な内容については、昨年末閣議決定した改革工程において具体的な内容、これを幅広く示させていただいています。
 そして、医療・介護費の決定的要因として提供体制の影響は大きく、実際に歳出改革の取組を検討、実施するに当たっては、これら幅広い改革工程のメニューの中から必要な保障が欠けることがないよう見直しを行っていく、こうした生じる影響を考慮しながら丁寧に検討していく、これを毎年度、予算編成過程において議論をし、公費節減の効果を積み上げていく、こうした姿勢が重要であると考えています。
○井上哲士君 介護利用料や医療の窓口負担が、これが一人一人の国民にとって負担増になるということについては今全く触れられませんでした。ずっと同じ答弁が繰り返されているんですよ。
 私、三月の予算委員会でもこの問題質問しました。総理は、丁寧に引き続き説明していきたいと答弁されました。しかし、五月の共同通信の世論調査でも、総理の説明に納得できないというのは実に八二・五%なんですよ。国民の理解力がないのか、国民が悪いのかと。そうじゃないと思うんですね。政府の説明のごまかしを国民が見抜いているからこの数字が出ていると思うんですね。
 私は、ごまかしの説明で負担増を求めるんではなくて、大軍拡の中止であるとか、資産家や大企業への優遇税制の是正などをこそ行うべきだということを申し上げておきたいと思います。
 その上で、負担増は社会保障だけではありません。
 今、国立、私立問わずに大学の学費値上げの動きが大きく広がっていることを二十三日の当委員会でも取り上げました。こども未来戦略で高等教育費の負担軽減は喫緊の課題だとしていることを示して、学費値上げは岸田政権の少子化対策に逆行する事態ではないかとただしましたけれども、加藤大臣は所管の文科省が適切に対応するという答弁でありました。
 総理にはしっかり答弁していただきたいんですね。大学の学費値上げの動きというのは、こども未来戦略で示した政府の対策に逆行しているんじゃないですか。政府として、どのように対応するんですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 大学の授業料については、学生の教育環境の充実等のため、関係法令等に基づき各大学の設置者においてこれまでも適切に設定いただいていると認識をしています。
 そして、文部科学省において、今年度から、こども未来戦略に基づき給付型奨学金等の拡大を行うに当たり、支援拡充の趣旨に反するような学費値上げが行われることがないよう、各大学に通知をしたと承知をしています。その上で、家庭の更なる負担軽減のため、令和七年度からは、子供三人以上を扶養している場合、国が定めた一定の額まで大学等の授業料、入学料を無償とすることとしております。
 国としては、こども未来戦略に基づき高等教育費の負担軽減を着実に進めるとともに、その際にも、学費について支援拡充の趣旨に反することがないよう適切に対応をしてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 ごくごく部分的な支援しか行われてないんですね。そして、そもそも政府は、高校、大学までの段階的な無償化を定めた国際人権A規約の適用の留保を二〇一二年に撤回しているんです。高等教育の漸進的無償化は、これ政府の国際公約なんですね。
 ところが、自民党の教育・人材力強化調査会が十六日に、質の高い教育のアクセスに向けた人への投資の拡充と題する提言をまとめております。この提言は、国立大学について負担軽減いいながら、教育コストの増加等を踏まえ適正な授業料の設定を求めて、東大などの学費値上げを検討している大学を後押しをしているんですね。さらに、授業料のいわゆる完全無償化は、捉え方によっては授業料を家計負担から公費負担としているにすぎず、と述べて、高等教育の無償化に背を向けているわけですよ。
 これ、高等教育費の漸進的、漸進的無償化という政府の国際公約に反しているんじゃないですか。総理も、この自民党の調査会の提言と同じ考えですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 社会権規約の高等教育費における無償教育の漸進的導入に係る規定については、二〇一二年に留保を撤回したと承知をしています。これによって、我が国として効力が生じているということ、この認識をしております。
 ただ、この漸進的無償化に向けた具体的な方法については、これ各国に委ねられているものであると承知しております。各国の事情をしっかり踏まえた上でこうした大きな方向性に向けて努力をしていく、これが条約の趣旨に沿うものであると考えております。
○井上哲士君 今の事態は漸進的無償化という国際公約に反している、学費値上げが起こっていることについては何の触れられませんでした。
 大学が学費値上げになぜ踏み切ろうとするのかと、運営費の五割を目指すとされてきた私学助成が一割を切る水準まで削減をされています。今年で法人化後二十年となる国立大学は、運営費交付金が千六百三十一億円も削減をされてきたんですね。
 内閣として、高等教育費の負担軽減は喫緊の課題だとしているわけですよ。そうであれば、これまでのこうした高等教育費の削減政策を改めて、漸進的無償化の実現に向けて高等教育予算を大幅に拡充する、これこそが政府に求められているんじゃないですか。それこそが具体的な方向じゃないですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 我が国においては、これまでもその高等教育の負担軽減について着実に取組を進めてきました。
 これまで、低所得世帯を対象に、授業料等の減免と給付型奨学金の支給を併せて実施してきましたし、令和六年度からはこの給付型奨学金等の中間層への拡大を図る、そして、令和七年度からは、子供三人以上を扶養している場合、国が定めた一定額まで大学等の授業料、入学料を無償とする、こうした取組を進めてきたところであります。
 このように、この負担軽減着実に進め、そしてその状況、実施状況の効果等を検証し、引き続き教育費の負担軽減に取り組んでまいりたいと考えています。
 これが、御指摘の条約における漸進的な導入、無償教育の漸進的導入という規定にも沿う考え方であると思っております。
○井上哲士君 国民の声や運動に応えて、一定の様々な負担軽減が導入をされてきました。しかし、この漸進的、求められているのは無償化なんです。
 こども未来戦略では、教育費の負担が理想の子供の数を持てない大きな理由の一つになっているという声があるとして、高等教育の負担軽減は喫緊の課題だとしてきたわけですね。ですから、今、現に大学の学費が上がっていることについてまともな手を打たないということはこういう思いに反するものだと思います。
 漸進的無償化実現に真剣に取り組むということを強く求めて、質問を終わります。

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