国会質問議事録

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内閣委員会(こども性暴力防止法案(日本版DBS法案)ー参考人質疑)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、参考人の皆さん、ありがとうございます。
 まず、内田参考人にお聞きいたします。
 先ほども若干議論になりましたけれども、この児童対象性暴力等が行われるおそれの判断の問題でありますけれども、私は、これは本会議で、これ恣意的なことがないようにということで質問したんですが、答弁は、それぞれの具体的な内容や判断プロセス等などについて、恣意的、濫用的な運用がなされないよう、施行までに関係省庁、関係団体と協議しつつ、事業者向けのガイドライン等を作成し、しっかりと周知してまいりますと言うだけでありまして、もう中身は何もなかったんですね。
 先生、やっぱりこういうおそれの恣意的運用がされないために、そのやはり具体的内容や判断プロセス、まあ今後協議されるわけですけど、これは押さえなくちゃいけないというようなこの柱、具体的な中身について、お考えがあったらお聞きしたいと思います。
○参考人(内田貴君) 今、委員が挙げられたおそれというのは、具体的には六条で規定されている防止措置の契機となるおそれということかと思います。
 私は、最初の陳述の中で申し上げましたように、この法案の非常に大きな意義がこの児童に対する性暴力を防止するための措置を様々講じるということを義務付けた点にあると思います。つまり、生じた後の救済もさりながらやはり発生させないということが何よりも大事で、そのためのおそれというのは私は非常に早い段階から察知していいんじゃないかと思います。
 学校やこの認定を受けた事業者は、面談を通じて早い段階からコミュニケーションを取ることで、自発的にコミュニケーションを取ることで、兆候がないかどうかということを調べることが義務付けられています。その中で何らかの懸念が発生してくれば、やっぱりそれに対して対処していくべきだと。
 おそれでもって何か刑罰を科すとか、非常に厳しいサンクションを科すということになると、そんなおそれでサンクション科すのは恣意的であるという批判になると思いますけれども、これは予防のために様々な措置を講ずる、その措置には段階がいっぱいあると思いますので、初期的な段階からもっと重い段階まで様々なレベルの措置があって、早い段階の措置はもう軽微な懸念のところからやってもいいんだと思います。
 そういう意味では、ある程度おそれをもう恣意的に判断してでも、早い段階の措置を講じていくということは私は認めてよいのではないかと思います。ただ、その措置は、従業員に何か人権侵害に及ぶような制約を加えるというのではなくて、もう少し軽微な、軽いものだとは思いますけれども、しかし、とにかく予防ができるための措置というものは早い方がいいというふうに考えております。
○井上哲士君 ありがとうございました。
 次に、福井参考人にお聞きいたしますけれども、この行政と医療の連携の必要性ということを先ほど強調されました。先ほどの議論の中で、このストーカーと、そしてこの小児性暴力というのが重なる部分がかなりあるというお話がありました。
 今年の四月号の「世界」にストーカー加害治療は可能かという記事があって、その中で先生のインタビューが出されておりますが、これ見ますと、ストーカー規制法に基づく禁止命令を受けた加害者全員に対して、命令後も警察が定期的に連絡を取ったり、精神的な治療に効果があることを伝えたりする対応を十都道府県警察において試行をするということが出ておりまして、そのことも先生お話しになっていますが。
 これ、今後のやっぱり小児性被害にも関わってくることだと思うんですが、この試行的なものが、現状がどうなっていて、効果及び課題がどうなっているのか、特に子供たちの性被害にも関わっていく上でどういうことが必要か、お考え聞かせてください。
○参考人(福井裕輝君) そうですね、先ほどちょっとコメントをしようかなと思ったんですけど、先に言っておくと、医学上、ストーカーは性犯罪ではないんですね。病理も全く関係がない。性犯罪というのは基本的に性的欲求の充足を目的としているもので、ストーカーというのは相手に対する恨みの感情とかそういうものからの復讐とかというものが動機であるということで、扱いもまるで違うというのがありますね。
 ただ、可能である、その子供を守るという意味で、もし子供に対するストーカー行為ということがあったとするんであれば、それはストーカー規制法なりなんなり、ほかのことで検挙されるということは当然あり得ると思うので、その場合は、先ほどおっしゃられたように、これは警察庁管轄で、警察庁はそのストーカー加害者が再犯に至らないように予防するというようなことをやっているので、そういうことを組み合わせて、例えばこういう法案の中に入れるということは意義があるのではないかなというように思います。
○井上哲士君 先ほどの中でも、そういう性的ないろんなことを持っていることに対応する医療従事者が非常に少ないというお話がありました。
 先ほどのお話の中で、そもそもこの医療を、精神科を受診しても治療の対象ではありませんと門前払いをされるということで、そもそも受診者も少ないということもあると思うんですが、この「世界」の雑誌の中で、そもそもそういう人たちを扱う場合は、そういう加害者になり得る人が実際に加害をして被害者が出たという場合に、その言わば治療をしていた医者の責任も問われる場合があるということから、やはりもっと特殊なリスクを背負う部門としてのいろんな資格とか手当てとか、そもそも医療の対象にするべきだとか、いろいろ課題があると思うんですけれども、やっぱり、実際のやっぱり医療の充実をしていく上でのその辺のお考えをお聞かせください。
○参考人(福井裕輝君) おっしゃるとおりで、今日もそういうようなジレンマみたいなことが出ていると思いますけれども、何か起きたときに、例えば通報の義務と患者の守秘義務のどっちを優先するのかというのは、決まった答えのようなものが用意されているわけではなくて、毎回毎回それ悩まなきゃいけないわけですね。
 あと、実際上、事件化とかした場合には、言ってみると、警察、検察から過去のその診療録等を全部コピーして出せというような、照会書のようなのが来て、それに対してもどうやって対応するのかと。我々の機関はそういうことが日常的にあるので、顧問弁護士がいて、その都度どういう対応をすればいいかということを相談しながらやっていますけれども、急に、今の一般の医療の者に全部それを対応しろと言われたら、到底できないと。その辺の、ちゃんと、おっしゃられたように、責任も来るというところの、医療従事者のそういうことを守れるような何か法的な裏付けとかそういうものも要るようになると思いますね。
○井上哲士君 ありがとうございます。
 浅井参考人に性教育の問題でお聞きをしたいんですが、日本の性教育、そして命の安全教育のお話もありました。私、本会議でこの命の安全教育は性教育じゃないんですかとお聞きいたしますと、政府の答弁は、これは性犯罪の加害者や被害者、傍観者にならないことを目的とする安全教育であって、いわゆる性に関する指導とは目的を異にしておりますと、いわゆる性教育ではないんだという答弁でありました。
 一方、先ほどありましたように、学習指導要領では性教育の歯止め規定があるわけですね。特に、先生が先ほどの陳述の中で、いわゆる体の権利教育、体の教育でしたかね、これが日本の場合にないということをおっしゃっていました。そのことがどういう問題なのかと、今のやっぱり性教育、日本の学校における性教育の問題、そしてこの体、命の教育を発展させていく上でどういう課題があるかということをもう少し詳しくお願いしたいと思います。
○参考人(浅井春夫君) 命の安全教育というのを、私は、文科省のところでも、内閣府の男女共同参画局にも行って、別件で、議論もしながら、お聞きをしました。命という定義はそもそも何ですかというふうに聞いたときに、もう両方の部署が、調べますけどと、こう慌てたんですけれども、答えられないんですよ。これは、立憲民主党のところで文科省とのヒアリングで、私も意見を述べなさいということで機会いただいて、そのときにもお聞きしたんですけれども、答えられないんですよ。命の定義もないのに、それ、命の安全教育ってやるんですかということを聞いても答えられないと。これはもう大前提の問題、定義さえもないと。
 やっぱり大事なことは、やっぱり事実に即して何を学んでいくかということが今子供たちに必要な性教育、私は、やっぱり事実、現実、真実というこの三つの実を子供たちにちゃんと教えていくと、そのことをてこに伝えていくということを大事にしていくのが今性教育で問われている、包括的性教育で問われていることだと。
 同時に、残念ながら日本の国は性教育という言葉さえ使うことを許さない、しなかった国なんだと。それをある人が考えて、命の安全教育という形で、性教育の中身をやるんじゃない、今委員が言われたように、性教育の中身じゃないんですよ。率直に言うと、かなり命というキーワード使うことによって道徳教育と重なる部分が、要するに全部だということじゃなくて、重なる部分もあると。したがって、体というのはかなり事実に即した学び方が必要だと。例えば体の名称自体も知らない子供たちが少なくないという現実があります。そして、自分の権利自体は体でやっぱり体得したり学んだりするということもありますし、自分の体の外だけじゃなくて、内臓も含めた内部の体ということを知ることによって自分の、自身のアイデンティティーの重要な部分を獲得していく。そういうものとして、私は、性教育は体の権利教育を一つ柱としてやっていく必要があるんではないかという問題提起をしております。
○井上哲士君 ありがとうございました。
 学習指導要領でその歯止め規定を上げている理由として、これも本会議では、児童生徒間で発達の段階の差異が大きいので、一律じゃなくて個々にやる必要があるんだというんですけど、実際に個々にもやられていないというのが実態だと思うんですね。
 ですから、確かに児童生徒に発達の段階の差異があるのも事実だと思うんですが、そういうことを配慮した上でも、やる方法は幾らでも私はあると思うんですけれども、その辺、お考えがあったらお聞かせください。(発言する者あり)
○委員長(阿達雅志君) 浅井参考人、発言は指名の後でお願いをいたします。
○参考人(浅井春夫君) ありがとうございます。
 例えば算数だって英語だって、いろいろな理解はそれぞれ違うじゃないですか。じゃ、そのばらばらで個別指導なんてできないわけですよね。
 そういう一つ取ってもそうなんですけれども、性教育というのはやっぱり、例えば一九五二年に文科省が中高生の性教育の在り方というような用語を使って方針を出しているんですよ。それはもう明らかに、もう私たちが言う性教育というよりも、寝た子を起こすなというその観点で、抑制的な、性のことを、いろんなことを科学的にちゃんと教えたらいろいろな問題起こすじゃないかと、そういうことなんですよ。そして、個別的に、必要な子については個別指導すればいいじゃないかと、こういう通知が出ているんですね。これ、一貫してそのままなんですよ、残念ながら。
 個別指導をするといったって、誰を、例えば、言葉は悪いけど、例えばこの子をとかピックアップするのを、何かそれほど子供の性行動、性意識を教員が把握しているかというと、そうはならないと。そうであるとすれば、やっぱり全体の一斉的な共同の学習をすることによって、まだ不十分だなという、やり取りの中で、思われる子供について個別指導を必要であればすべきだというふうに思います。
 そもそも最初から、性教育というのは個別指導でやるべきだというのは全く事実、現実と違う対応の仕方なんだということを言わざるを得ないと思います。
○井上哲士君 ありがとうございました。
 イギリスのこの包括的性教育についても御紹介いただいていますけれども、具体的に、学校の中でどういう形で、どういう内容で行われているのか、御紹介いただきたいと思います。
○参考人(浅井春夫君) これは二〇〇〇年の、数年前なんですけれども、この方針が出まして、人間の教育、人間関係と性の教育及び健康教育というのが、これが出されました。これは法的拘束力を持つ方針だということでございます。
 これ、大臣による、日本でいう文科省の大臣、教育省の大臣です、今名前が教育省に変わりました、その方がその方針の序文に書いていることは、こういうことを言っているんですよ。今日の子供と若者は複雑性が増す世界に生きていると、オンラインとオフラインの境界がなくなった世界だと、刺激的ではあるが課題や危険もあると、このような環境の中で安全で健康でいる方法、学業生活、個人生活、社会生活を前向きに生きる方法を彼らは知らなければならないと、それを公費で運営している学校できちんと教えるというのがこの方針ですと。これも、そういう意味でいうと、義務化、必修化をしているということを進めています。
 その中には、このDBSとも関係あるんですけれども、柱の一つは、教育における子供の安全確保と、安全保持ということが方針の中に出ています。そういう具体的な柱を通して、そのDBSに必要な、子供たちにも、被害を受けることに対してできるだけ防御できる、そういう力というものをどう付けていくかと。あるいは、ジェンダーというものが、いかに暴力を容認することに近づいていくそのてこになっているかということを学んでいく。そういうことを、小学校のレベル、中等教育のレベルでもこれを必修あるいは義務化という形にしているということを、これはセットになっていると。あくまでも、教育とそういう法的な措置をセットにしてイギリスは進めているということは私たちは学ぶ必要はあるのではないかと。
 少なくとも、もう性教育ということに対してもう歯止め規定などというのは本当もう撤廃してください。もうこんなことで現場が性教育をやりにくくなっていることに対して、やっぱり本当に私は問題だというふうに思っております。
○井上哲士君 ありがとうございました。
 最後に、宮島参考人にお聞きいたしますが、先ほどの意見陳述の中で、子供にとってこの被害を開示することは極めて難しいことだというお話がありました。
 実際、学校などでいいますと、結構、先生に授業中に体を触られるとかいろんなことがありますが、結局学校に言ってもなかなか取り合ってもらえないということがあって、かなりハードルが高いと思うんですが、具体的に、その子供にとってこの性被害を開示する上で、どういう仕組みであるとかどういう配慮を強めることが必要か、お考えをお聞かせください。
○参考人(宮島清君) ありがとうございます。
 まず、年齢に合わせた対応が必要だと申し上げたいと思います。幼児さん、乳幼児、まず、乳児は自分では語れませんから、そういう泣き声か、あるいは、実際、これはどちらかというと家庭の虐待ですけれども、性器の異常よりは感染症とか、実際の事例でも、小学校の高学年の事例でしたけれども、被害を受けていて、性器の挿入まであったんですが、その子をその受診病院に連れていったところ、幼児のときにそういった受診歴があったと。そこと合わせてこれは虐待があったということを判断すべきだと。また、その子は陰毛が生えていなかった年齢なんですが、性器の中に大人の陰毛があったと。これは、その前の日に被害を受けたということを子供が開示した結果にそういう動きができたんですけれども、でも、その子がその被害を打ち明けられたのは、自分が受けている被害がこういうものかということが分かった後、二年たっていたと言っていました。担任の先生が男性、男性、女性になって、それで女性の担任の先生になって、あと保健の先生にも話せて、その連携の中でその子は被害を訴えることができたと。それで、これは刑事事件として児童相談所から告発しまして、そして実刑判決が出ました。そういうことができますね。まあ年齢、その子は、遭って、ずっと長い間遭っていたわけですけれども、発見とかは十年以上掛かっているということですね。
 あと、小学校の低学年とやっぱり高学年は違うというふうに思いますし、今度、中高生になれば中高生で、LINE相談とか、例えば今度、七月から性被害のLINE相談始めますよと神奈川県の方で告知しているネット記事読みましたけど、やはり、あなたの連絡はこのように扱われますよというようなこと、基本的には絶対にほかに話さないけれども、あなたの命を守るためには、こういうときにはこういう行動を取りますとか、あるいは本当に対策を進めていく上で、あなたからお聞きした内容をそのまま、あなたが特定されるようなことはないけれども、でも、対策を取る上で統計とかそういうものはちゃんと、あるいは事例についても特定されないように加工した上で使うことがありますというようなことをちゃんと書いて案内していますね。ああ、こういうふうにやっぱり考えながら、ネットの相談ということを促すのであればそうしなきゃいけないんだなというふうに、昨日かおととい見たんですけど、ありました。でも、それはやはり小学校低学年の子には無理であると。やっぱりそれぞれの年齢に沿った形で対応しなければならない。
 また、そこの子供が所属している、そこで被害を受けるということであれば、そこの事業所に合ったやり方等をやっぱり考えなきゃならないと。ガイドラインが必要だという議論がずっとされていますけれども、余り細かいものにしたらかえって私は難しいことも起こりかねないなというふうに、今のような多様性がある、非常に個別具体的に対応しなきゃならないものを、どうそのガイドラインを作っていくのか。児童虐待のことでいえば、法令、法律を見て、そして政令を見て、しかもその後の通知を見なきゃいけない。でも、ガイドラインが、これはガイドラインではなくてマニュアルのようになっていると。それに縛られて形式的な対応が広がると。
 やはり適切な対応というのは、法令を大事にすることは当然ですけど、理論に沿って対応するとか、職業倫理とか、倫理要綱なんかをきちんと持った支援者を育てていく、支援団体をつくっていく、そういう総合的なものが必要だと思いますので、そういう中での知見を集めて対応すべきだというふうに考えます。
○井上哲士君 ありがとうございました。

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