国会質問議事録

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内閣委員会(こども性暴力防止法案(日本版DBS法案))

【配付資料】

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 先日の本会議で、子供を対象とした性犯罪者に対する加害者更生の取組の現状や今後の強化方向について質問いたしました。法務大臣からは、刑事施設や保護観察所において認知行動療法の手法を取り入れた処遇プログラムを実施しており、一定の成果を上げているとの答弁がありました。
 この刑事施設や保護観察所それぞれについて、具体的にどのような取組が行われて、どのような成果が確認をされているんでしょうか。
○政府参考人(小山定明君) お答えいたします。
 法務省では、刑事施設や保護観察所におきまして、今御指摘のございました認知行動療法に基づきます性犯罪処遇プログラムを実施しております。具体的な内容といたしましては、職員などとのグループワークなどを通しまして、性犯罪の背景にあります自身の認知の偏りに気付かせ、問題行動を起こさせないように対処するための方法を身に付けさせるといったものでございまして、再び犯罪をしないための具体的な対処方法をまとめた再発防止計画を作成させております。
 このプログラムにつきましては、令和二年に効果検証を行いました結果、いずれのプログラムにつきましても一定の再犯抑止効果があることが統計的に認められましたものの、再犯抑止効果がより一層高まりますよう処遇プログラムの内容等を一部改訂し、令和四年度から実施しているところでございます。
 引き続き、時期を捉えて効果検証を行いつつ、このプログラムの更なる充実を図りたいと考えております。
○井上哲士君 刑事施設における指導については、お手元の資料なんですけど、この刑事施設における性犯罪防止指導の対象は、不同意わいせつや不同意性交などの処分の罪名に限られております。ところが、保護観察中の性犯罪の再犯防止プログラムが対象とする者は、こうした処分の罪名による者の以外に、罪名のいかんにかかわらず、犯罪の原因、動機が性的要求に基づく者、例えば罪名は窃盗罪でも、下着泥棒など性的要求に基づく犯罪も対象になっているんですね。
 なぜこういう差ができてくるのか。結局、警察、刑事施設にいるときには対象にならなかった人が、仮釈放になって保護観察で対象になりますと、なりますとこれ対象になるという、こういうちぐはぐが生まれるわけですね。これ、私は再犯防止を徹底する上でこのずれは解消すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(小山定明君) お答えいたします。
 まず、刑事施設におきましても必ずしも罪名によっているところではございませんで、全ての受刑者、入所した受刑者に対しまして、犯罪事実の内容や常習性のあるなし、性犯罪につながる問題性の大きさなどにつきましてスクリーニングを行いまして、詳細な専門的調査が必要だと判断された者につきましては、さらに再犯につながる問題性の大きさや性犯罪の原因となる認知の偏り、自己統制力の不足等を評価して選定してございます。
 刑事施設、それから保護観察所、それぞれの対象者につきましては、収容期間と保護観察の期間、それからプログラムの実施体制などが異なりますことから、対象者の選定方法に異なる面はございますものの、それぞれの機関におきまして性犯罪につながる問題性を有している者につきまして漏れがないようにしてプログラムを実施しているところでございます。
 これまでも、刑事施設と保護観察との間では一貫性のあるプログラムの作成に努めてきたところでございまして、刑事施設から仮釈放となる者につきましては刑事施設の中でのプログラム実施状況が保護観察所に引き継がれておりますが、委員御指摘の点も踏まえまして、引き続き取組の充実を図ってまいりたいと考えております。
○井上哲士君 今あったように、刑事施設でやれていればつながるわけですけど、そうでなくて、やっぱり保護観察所で初めて対象になる方もあるわけですよね。
 このずれを私は解消すべきだと思いますし、今日も今回の法案の対象の問題でいろいろ議論がありました。権利制限を伴う制度の対象にするには様々な検討が必要だと藤原参考人からお話があったわけでありますけど、現実に、今ありましたように、保護観察では罪名によらずにこの性的動機に基づく者はこういうプログラムの対象になっているわけですよね。
 こういうことも私は今後の検討では議論をされるべきだと思いますけれども、ちょっと追加の質問になりますが、藤原局長、いかがでしょうか。
○政府参考人(小山定明君) 必ずしもその対象者を選ぶ際に罪名によるということが適切でないということについては、そのとおりかと存じます。
 私どもといたしましても、それぞれの受刑者、特性をしっかりと把握いたしまして、しっかりと対象とすべき者については対象とするということでやらせていただいておるところでございますし、今後もそのようにしてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 じゃ、この法案の対象にするべきではないかと、するための検討の一つの項目ではないかということを申し上げましたが、時間もありませんので、是非一つの材料にしていただきたいと思います。
 刑事施設の退所後や保護観察終了後にも、必要な者は引き続き地域で医療が、治療が受けられるようにする必要がありますが、性犯罪加害者の治療に携わっている精神科の医師からは、どんなに常習性があって治療の必要性があっても、治療を受けない人は受けない、刑事手続の中で出所後の治療につながる動機付けが組み込まれる必要があると、こういう指摘もあります。
 刑事施設や保護観察所でのこの再発防止のプログラムの中に、こういう引き続き自ら治療を受ける動機付けをどのように盛り込まれているんでしょうか。
○政府参考人(中村功一君) お答え申し上げます。
 刑事施設や保護観察所におきましては性犯罪者処遇プログラムを実施しておりますけれども、そのプログラムの中で、出所後に地域の支援機関などから必要な支援を受けることの重要性について指導しているところでございます。また、保護観察所におきましては、治療等が必要な性犯罪者につきましては、矯正施設収容中から医療機関等との調整を行っていますほか、保護観察中も必要に応じて医療機関等との連携した処遇を行っております。
 今後も、性犯罪者の立ち直りのため、切れ目なく地域での必要な支援を受けられるよう、関係機関との連携を図ってまいりたいと考えております。
○井上哲士君 さらに、この刑事施設の退所後や保護観察終了後の支援についてお聞きします。
 警察庁は、法務省から出所情報の提供を受けて、子供対象暴力的性犯罪に係る出所者への再犯防止措置制度というのを実施しておりますけれども、これはどういった者を対象にどのような支援が行われているのでしょうか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
 警察では、十六歳未満の者を対象とした不同意わいせつなどの暴力的な性犯罪を犯して懲役又は禁錮の刑を執行された者につきまして、法務省から刑事施設からの出所情報の提供を受け、再犯防止に向けた取組を実施しております。
 具体的には、対象者の居住先を警察官が訪問して所在を継続して確認し、その同意が得られれば面談を行うほか、求めがあれば地方自治体が行う支援の窓口を紹介するなどしております。
 引き続き、関係機関、団体とも連携し、これらの者の再犯防止に向けた取組を推進してまいります。
○井上哲士君 是非、自治体とか様々な医療とのこのつながりを援助をするということを強めていただきたいんですが、これを踏まえまして加藤大臣に二つ提案があるんですが、四月二十五日の府省庁の合同会議でこども性暴力防止に向けた総合的な対策の推進が決められておりますけれども、更にここで検討していただきたいと。
 一つは、今ありました地域の支援体制です。警察による支援の答弁ありましたけれども、この刑事施設における性犯罪防止指導の中で、先ほどもこの再発防止計画、セルフ・マネジメント・プランを本人に作らせるということがありますけど、これを出所後も生かしていくと。これがしっかり履行されるように、地方自治体とも協力をしながら地域で継続的に支援をする体制をつくることが必要ではないか、これが一点。
 それからもう一点は、加害者治療の保険適用です。先日の参考人質疑で性障害専門医療センターの代表理事の福井参考人から指摘ありましたけど、性犯罪者の治療が医療として認められておらずに、保険医療の適用外とされていると。ですから、経済的困難で治療を受けられなくなるし、専門医も少数にとどまっているというんですね。この解消は非常に私は大事だと思っております。
 出所者の加害者治療の受皿を広げていくという上で重要な指摘だと思うんですが、この二点、是非、大臣主導して検討を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 子供たちを性暴力から守るためには、本法案に加え、本年四月に取りまとめた総合的な対策において新たに治療、更生に関する取組を一つの柱として位置付け、対策を進めていくとしたところでございます。
 こうした中で、委員御指摘の一つ目の再発防止計画、こちらの方は、法務省において刑事施設出所時に本人に携行させているほか、保護観察所におきましては、刑事施設から引き継がれた再発防止計画について社会内で実践するように指導をしているところでございます。
 また、同計画において性加害をしないための対処方法として関係機関への相談が記載されている場合は、必要に応じて、本人の意向を踏まえ関係機関との調整を実施するなど、本人が継続的に支援を受けられるよう取り組んでいるものと承知をしているところでございます。
 また、性嗜好障害については、その診断基準や治療方法等についてその実態が十分に把握されておらず、まだ、また確立されていないということから、現在、診療報酬において評価はなされていないものと承知をしてございます。厚生労働省において、昨年度、調査研究を実施し、現在、研究班において結果を取りまとめているところでございまして、まずは実態把握が進められていくものと承知をしております。
 引き続き、関係省庁の取組を後押しするなど連携を取っていきながら、総合的な対策を進めてまいります。
○井上哲士君 本人にとっても社会にとっても必要なことだと思うんですね。是非、積極的に検討していただきたいと思います。
 次に、生命の安全教育についてお聞きしますが、先日の本会議で生命の安全教育と性教育の関係について質問しますと、文科大臣は、この生命の安全教育と性に関する指導とは目的が異なるという答弁でありました。
 そもそも、生命の安全教育は、どのような経緯、議論を経て性加害防止の取組に位置付けられているのか、また、学校現場ではどのぐらい実践が広がっているのか、お答えください。
○政府参考人(淵上孝君) お答え申し上げます。
 まず、生命の安全教育の経緯でございますけれども、平成二十九年の性犯罪に関する刑法の一部改正が行われましたが、この一部改正法の附則におきまして、政府は、この法律の施行後三年を目途として、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることが求められておりました。
 これを踏まえまして、令和二年六月に、性犯罪・性暴力対策の強化の方針というものが関係府省会議において決定をされました。生命の安全教育は、この方針におきまして、子供たちが性暴力の加害者、被害者、傍観者のいずれにもならないようにするためのものとして推進することとされたものでございます。
 この方針を受けまして、文部科学省では、内閣府と協力をいたしまして、有識者の御意見も踏まえて、命の安全教育のための子供向けの教材と教師用の指導の手引きを作成いたしまして令和三年四月に公表するとともに、通知を発出して、各学校における本教材の活用を促したという経緯がございます。
 学校における実践の状況でございますけれども、文部科学省で実施をいたしました調査によりますと、直近のデータがこの教材を作成、通知したのと同じ令和三年度のものしかございませんけれども、令和三年度における性犯罪、性暴力のための教育の実施状況は、小学校で六千八百八十一校、中学校で五千百二十一校、高校で二千八百七十七校で実施をされているという状況でございます。
○井上哲士君 命の安全教育、非常に大事だと思うんですが、ただ、今目的とありました性犯罪の加害者、被害者、傍観者にならないため、そのためにやってはいけないことを教え込む内容にとどまっているんじゃないかと私は思うんですね。本当の意味でこれを実らせていく上で包括的性教育が必要だということは、私、本会議でも質問いたしました。
 お手元の資料三を見ていただきますと、これ、小学校低学年向けの命の安全教育の教材なんですね。水着で隠れるところは自分だけの大切なところだからだよと、こういうふうに示しております。
 しかし、なぜ水着で隠れるところが自分にとって大切なところなのかということは示されていないんですね。ここまでやっぱり学ばせる、学ばすという必要があると思うんですけども、いかがでしょうか。
○政府参考人(淵上孝君) お答え申し上げます。
 今委員御指摘ございましたように、命の安全教育は、子供たちを性犯罪、性暴力の加害者、被害者、傍観者のいずれにもさせないということを目的として行うものでございますけれども、この実際の指導に当たりましては、児童生徒の発達段階に応じて、また必要に応じて適切な教材などを用いて行われるものでございます。
 幼児期や小学校低学年における命の安全教育におきましては、その発達段階に照らしまして、自分と他人の大切なところを理解できるようにするということ、あるいは大切なところを守るルールを理解できるようにする、また、自分の体を見られたり触られたりして嫌な気持ちになる場面について考え、このような場面が起こったときの対応方法を身に付けることができるようにすると、こういうことを、こういうことなどを狙いとして指導するということになってございます。
 具体的には、まずは自分の体は全てが大切であるということを学んだ上で、日常生活の場面のイラストなどを用いまして自分や他人の大切なところを視覚的に理解できるようにしたり、自分の体を触れられてびっくりしたり嫌な気持ちになる場面について考えさせるということなどを通じた様々な指導上の工夫を通じまして、その狙いが達成されるよう取り組むこととしてございます。
 こうした発達段階に応じた指導を通じまして子供たちの理解を深め、適切な行動が取れるように、引き続き命の安全教育を推進してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 発達段階の理解に対応するというのは、それは必要だと思うんです。
 ただ、先日の参考人質疑で、浅井春夫参考人は、この命の安全教育の最大の問題は、体の学習をしないまま進めていることだという指摘をされました。
 資料の四、五は、ユネスコの国際セクシュアリティ教育ガイダンスの抜粋であります。以下、国際ガイダンスと申し上げますが、四にありますように、その八つの柱の六番目に人間の体と発達というキーコンセプトが示されています。この中で、性と生殖の解剖学と生理学について、五から八歳児に対して、内性器、外性器の重要な部分を明らかにし、それらの基本的な機能を説明する、性と生殖に関わる器官も含め、それらについて知りたいと思うことは自然なことであると認識すると、こういうふうにしております。
 浅井参考人が代表理事を務める"人間と性"教育研究協議会では、このガイダンスに基づいて具体的な授業例を、授業案を作成をしているんですね。この中では、このプライベートパート、プライベートパーツは、ほかの人には見えない、触れない、自分だけが見たり触ったりできるところで、下着を着けて守っているよと示していますが、私、大事だと思うのは、そこに至る前の段階で、この体の様々な部位、これは性器も含めてでありますが、その名前と働きを見付ける、体の中に続く穴を見付けようと子供たちに呼びかけているんですね。
 例えば、口は食べ物の入口で、胃や腸、肛門につながっていること、同時に、ごみやばい菌も入ってきて病気になったりもすること。同様に、性器、おしっこの出口、目、鼻、耳などについてその名称や機能を説明して、これらが命を支えるために大切な役割を持っていること、体の中に病気を引き起こすものが入らないように傷つけたりせずに清潔に保つことなどを子供たちに気付かせるように働きかけていると、こういうふうにしているんですね。
 こうした体の学習が土台にあってこそ、このプライベートパーツがなぜ自分だけの大切なところなのかが子供たちに理解できるのではないかと思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
○政府参考人(森孝之君) お答えを申し上げます。
 御指摘の体に関する学習についてでございますけれども、各学校においては、学習指導要領を踏まえまして、児童生徒の発達段階に応じた学習がなされているところでございます。例えば小学校では、四年生の理科において人の体のつくりと運動について学ぶということのほか、同じく四年生の体育科の保健領域では、思春期に表れる体の変化として初経、生理痛について学習をするということとされ、教科書では性器についても取り上げられているところでございまして、児童生徒が心身の成長、発達に応じまして適切に理解をし、いい行動ができるよう指導が行われているところでございます。
 この命の安全教育につきましても発達段階に応じて指導されるものでございますけれども、先ほど述べましたような体のつくり、そして思春期の成長、発達など、学習した内容を踏まえていくことで理解が深まっていくものというふうに考えているところでございます。
○井上哲士君 先ほどちょっと申し上げたような、いかにこの体の様々な、体の中に続く穴を見付けようということで具体的な授業例、案も紹介いたしましたけど、そういうことを発達段階を通じて分かるということまでやらないと、命の教育はこれ、あとは理科、保健と、こうばらばらでやっては私は駄目だと思うんですね。
 資料三の下は、これは中学生向けの教材なんですけれども、自分の心や体は自分だけのものですと書いています。これ、とても重要だと思うんです。だけど、他人との距離は自分自身で決めることができますと距離感の話に移っちゃうんですね。なぜ互いの心と体を尊重しなければならないのかという観点がやっぱりないと思うんです。
 資料五は、国際ガイダンスの四番目のキーコンセプトの暴力と安全なんですけど、ここでは、同意、プライバシー、体の保全として、五から八歳に対しては、誰もが自らの体に誰がどこにどのように触れることができるのかを決める権利を持っていると、この体の権利について説明するとしているんですね。中学生に該当する十二から十五歳に対しては、プライバシーと体の保全の権利を誰もが持っている、誰もが性的な行為をするかしないかをコントロールする権利を持ち、またパートナーに積極的に自分の意思を伝えて相手の同意を確認すべきであるとしているんです。ですから、この性は人権だという見地が明確に示されているんですね。こういう見地を子供たちが理解をして身に付けてこそ、この命の安全教育の言う距離感の意味もより深く子供たちに理解されていくと思うんですね。
 こういう、この性は人権であることの学習の重要性、いかがお考えでしょうか。
○政府参考人(淵上孝君) お答え申し上げます。
 命の安全教育は、先ほどから申し上げておりますように、子供たちを性犯罪、性暴力の加害者、被害者、傍観者にさせないということで、児童生徒の発達段階に応じて必要に応じた適切な教材を用いて行うものでございますけれども、中学校の段階の命の安全教育におきましては、その発達段階に照らしまして、心や体、心と体には距離感、それぞれの方との距離感がある、距離感が守られないときにはどういう行動を取るべきかということを理解する、また、性暴力の例や背景、これを理解して安全な意思決定ができるようにするということ、あるいはお互いの気持ちを尊重してより良い人間関係を構築しようとする態度を養うこと、こうしたことなどを狙いとして指導することにしてございます。
 具体的には、どのようなものが性暴力に当たるのか、デートDVやSNSを通じた被害例などの知識を学ぶとともに、より良い人間関係とはどういうものかを考えさせる、あるいは自分と相手との距離感は相手にとってどのように変化をするのかということを具体的に考えたり、あるいは性被害に遭ったときにどう対応すべきかを話し合わせるといったことなど、様々な指導上の工夫を講じながらその狙いの達成を目指すこととしておりまして、また、こうした指導は、実際には、各学校においては保健体育科、道徳、特別活動などの様々な指導内容、あるいは学校全体の方針に位置付けながら、効果的な学びとなるよう工夫がなされているというふうに考えております。
 こうした発達段階に応じた指導を通じて適切な理解、行動が取れるように、引き続き推進してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 お互いの距離感をしっかり保つことは、これ大事だと思うんです。しかし、なぜそれが必要なのか、先ほど申し上げましたけれども、プライバシーと体の保全の権利を誰もが持っているんだと、私も持っている、相手も持っていると、そのことを理解してこそこの距離感を保つことの重要性を私は理解できると思うんですけれども、どうもそこが抜けて、直ちに距離感の話になっているということを是非私は改善をしていただきたいと思います。
 そもそも、国際ガイダンスに示されているような権利として性を学ぶという性教育の実現は、日本に対する国際的な要請でもあるんですね。国連子どもの権利委員会が二〇一九年三月に、日本に対する総括所見の中で、思春期の児童の性と生殖に関する健康について包括的政策を取るとともに、早期妊婦及び性感染症の防止に特に焦点を当て、思春期の女子及び男子を対象とした性と生殖に関する教育が学校の必修カリキュラムの一部として一貫して実施されることを確保するということを要請をしております。
 本会議でも学習指導要領の性教育についての歯止め規定の見直しを求めたわけですが、改めて今日お聞きしたいと思うんですね。こういう国際的な要請から見ても、学習指導要領のこの歯止め規定は見直すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(橋場健君) お答えいたします。
 学校における性に関する指導については、学習指導要領に基づき、体育科、保健体育科や特別活動を始め、学校教育活動全体を通じて指導することとしております。
 具体的には、児童生徒が性に関して正しく理解し、適切な行動を取れるように、児童生徒の発達段階に応じて、初経、精通、異性への関心への芽生えなど、思春期の心と身体の発育、発達や生殖に関わる機能の成熟、異性の尊重、性情報への適切な対処など、身体的側面のみならず、性に関する適切な態度や行動の選択が必要となることが理解できるようにするなど様々な観点から学習が行われています。
 委員から御指摘がございました二〇一九年三月の国連児童の権利委員会の総括所見については、締約国に対して当該勧告の内容に従うことを義務付けているものではないと理解しておりますが、当該勧告で指摘されている妊娠や性感染症に関連する内容についても、受精、妊娠については中学校第一学年で、性感染症の予防については中学校第三学年で取り扱うこととしているところです。
 こうした中、全ての児童生徒に共通に指導する内容としては妊娠の経過は取り扱わないこととしていますが、子供たちが性に関して正しく理解し、適切な行動が取れるよう、個々の生徒の状況に応じた個別指導も交えながら、着実な指導に努めてまいります。
○井上哲士君 総括所見は義務ではないということが言われましたけど、そういう下で、先日も日本の性教育は三十年遅れていると、こういう指摘がありましたけれども、そういうことになっているということを是非正面から受け止めていただきたいと思います。
 本法案の犯罪事実確認の仕組みで対応できる範囲には限界があるわけで、だからこそ、この性犯罪者を生み出さない社会にする取組が問われております。
 イギリスは包括的性教育を必修化しており、DBSというこの法的措置とセットで進めているということが先日も参考人質疑で述べられました。
 本会議でもただしたんですけれども、それぞれの重要性はありましたけど、セットで一括してやることの必要性に大臣から言及がありませんでした。改めていかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 本法案だけで全ての子供への性被害を防げるわけではなく、子供の性被害対策には総合的な取組が必要であると考えております。
 子供や保護者が性暴力の防止等について理解を深めることは性暴力の被害防止のために重要であると考えており、本年四月に取りまとめた関係省庁で連携して取り組むべき総合的な対策の中でも、命の安全教育の普及展開など各種取組について盛り込んでいるところでございます。これらの総合的な対策を本制度と一体的に推進することで子供の性被害を防止をしてまいります。
○井上哲士君 包括的性教育の一体ということについても言及なかったわけでありますけど、これ、本当に是非進めていただきたいと思うんですね。
 そして最後に、我々も含めて大多数の大人は、体の学習を含めて、国際ガイダンスに示されているような権利として性を学ぶという性教育を受けないできました。私の小学校の頃はいわゆる純潔教育ですよ、という名前であったわけですね。
 この間、指導の中でも指摘しましたけど、性交を伴う性暴力被害の加害者で最も多いのが、学校や大学の関係者や教職員、クラブ活動の指導者、先輩や同級生と、こういう現実があるわけなんですね。浅井参考人も、子供たちだけではなくて、性暴力の背景にはジェンダーの認識による暴力というものがあるということを、学校の教員こそ学び考えることの必要性が指摘されました。
 法案第八条の教員等に対する研修について、児童対象性暴力等の防止に対する関心を高め、そのために取り組むべき事項への理解を深めるための研修というふうに言っておりますが、それにとどまらず、教員自身が国際セクシュアリティ教育ガイダンスに基づいた性教育を学ぶということが必要だと思いますけれども、その点いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 本法律案におきましては、学校設置者等が教員等に児童対象性暴力等の防止に対する関心を高めるとともに、そのために取り組むべき事項に関する理解を深めるための研修を教員等に受講させることを求めてございます。その具体的な内容につきましては、今後有識者や関係団体と協議の上定めることとしております。
 なお、現在、昨年度の補正予算を活用し、教育、保育業界における児童への性暴力防止の取組を横断的に促進するため、先進事例の把握に関する調査を開始したところであり、この調査においても、有識者等から必要な情報収集を行いたいと考えております。
 このように、現時点で研修の内容が決まっているわけではございませんが、いずれにいたしましても、それぞれの事業者において、子供に対する性暴力等を防止するために実効性のある研修を受講させることができるよう工夫をしてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 子供を性暴力から守るために、あらゆる分野で実効性ある取組を求めます。
 終わります。

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