○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今回の銃刀法改正案は、その内容を検討するに当たって有識者会議などは設置されずに、警察庁の内部検討にとどまりました。昨年十二月に法案概要が判明すると、北海道猟友会から、今後狩猟者が急激に減少し、全道各地でエゾシカやヒグマの狩猟や有害鳥獣捕獲の担い手が不足する深刻な事態になると、ハーフライフル銃の所持規制に断固反対する緊急声明が出されました。主に北海道において、鳥獣、獣害防止等に悪影響を及ぼすという多くの懸念と反対の声が出されました。
先ほど、北海道に行って説明をしたという答弁もありましたけど、北海道新聞は、反発は警察庁の予想を超え、担当者が道内を行脚して反対の団体に直接理解を求めるという異例の対応(警察関係者)を取ることにと書きました。
もちろん銃規制強化は必要でありますけれども、やはり獣害対策の関係者などの意見を丁寧に聞き取って、理解と納得を得る形で検討すべきだったと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
今回の銃刀法改正案につきましては、銃砲を使用した凶悪事件が発生したことを受け、警察庁におきまして関係機関、団体の御意見を伺いながら検討を行ってきたものでありますが、その検討状況を公表した後、北海道猟友会を始めとする北海道の関係機関、団体から、銃刀法改正案のうち、ハーフライフル銃の規制強化に反対する旨表明されたところでございます。
これを受けまして、警察庁では、北海道の関係機関、団体の方々と直接意見交換も行い、ハーフライフル銃の所持許可に関する運用の方針について説明し、御懸念の払拭に努めてきたところであります。
銃刀法改正案を成立させていただいた後も、引き続き関係する方々の御意見を丁寧に伺いながら改正法の適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 今後はもちろんでありますけれども、法改正をする前にそういう皆さんの声をしっかり聞くということを是非教訓にしていただきたいなと思います。
次に、この猟銃等の保管についてお聞きします。
先ほど来、猟銃の所持者が長期にわたって自宅を不在にするなど、危険予防上望ましい場合には業者に保管を委託するよう働きかけると、そして危険防止上の必要性にかかわらず、保管を委託できることについて所持者に知らせると、こういう答弁が繰り返されておりますが、二〇〇七年の佐世保銃撃事件を受けた全国一斉調査の際の通達では、猟銃等、こういう長期不在などの条件を付けずに、猟銃等保管業者への保管委託を推奨することとしていたんですね。知らせるじゃない、推奨することとしていたんですよ。どうも答弁が私は後退しているように聞こえるんですね。
しかも、衆議院の質疑で、我が党の塩川議員への答弁で警察庁は、保管委託件数を把握すらしていないという答弁でありました。これではそもそも銃の所在、つまり自宅保管されているのか、別の場所に委託保管されているのかが把握できないということになるんじゃないかと思うんですね。委託保管を進めながらもきちっと把握できるような仕組みに改めるべきだと思いますけれども、国家公安委員長、いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 委員御指摘のとおり、警察におきましては、毎年の猟銃の検査におきまして猟銃の保管状況についても確認することとしておりますが、法令上、猟銃の所持許可を受けた者は、期間を問わず本人の意思で業者に保管を委託することができることから、その保管状況を即時に把握することとはしておりません。
猟銃所持者が自らその銃を保管しているか、あるいは保管委託をしているかという点につきましては、それを即時に把握すべきかどうかということについても、保管の不備により盗難や紛失といった問題が生じているかどうか、危害予防上有効であるか、逐一保管状況を報告しなければならない猟銃所持者の負担が大変大きい、こういったことを総合的に踏まえた上で慎重な検討を要する問題であると考えております。
○井上哲士君 年一回の検査のときに分かればいいということで私はないと思うんですね。やっぱり安全ということなどのことから、しっかりとした仕組みをつくっていただきたいということを改めて求めておきたいと思います。
その上で、レーシャルプロファイリングについてお聞きいたします。
国連の人権差別撤廃委員会の二〇二〇年の一般勧告では、このレーシャルプロファイリングとは、警察及びその他の法執行機関が、人を捜査活動の対象としたり、個人が犯罪活動に関与しているかどうかを判断するための根拠として、いかなる程度であれ、人種、肌の色、世系又は国若しくは民族的出自に依拠する慣行のことをいうとされております。
今年一月、そのような、この人種差別に関わるような職務質問を十数回、数十回、さらには一日に複数回数経験してきたという原告三人によって、「人種差別的な職務質問をやめさせよう!訴訟」というのが東京地裁に提起をされました。
まず、国家公安委員長、お聞きしますけれども、二二年三月の当委員会で当時の二之湯国家公安委員長は、職務質問を人種や国籍等の別を理由とした判断によって行うことは許されないと答弁をされておりますけれども、松村委員長も同様の認識でよろしいでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 井上議員の御指摘の答弁があることは承知をいたしております。
改めて申し上げますと、警察官による職務質問は、警察官職務執行法第二条に基づきまして、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、又は犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者に対して行われるものであり、人種や国籍等の別を理由として、理由とした判断によって行われるものではないと承知をいたしております。
○井上哲士君 明確な答弁であります。ところが、実態がどうかということなんですね。
お手元に東京弁護士会が二〇二二年の九月に発表したアンケート調査の結果を配っております。日本に在籍する外国にルーツを持つ方を対象に行ったものでありまして、回答者二千九十四人のうち六割以上が過去五年に職務質問を受けており、そのうち二回以上受けた方が七割を超えるというものであります。自由記載においても、失礼な態度、不快、不愉快、タメ口、高圧的、横柄などの記述が一定数ありまして、具体的な事実も寄せられております。
資料を見ていただきますと、見た目だけで薬などを持っているのではと疑われた、終始乱暴で失礼な態度で、いきなりズボンを脱がされ、下のものを見られた、侮辱的だし差別的、とても心が傷ついた、何も持っていないのを確認したら、謝りもせず、脱がせたまま立ち去っていったと、本当に失礼だし、警察官としてあり得ない。もう一つの方は、自宅のごみ捨て場で声を掛けられて、在留カードを所持していないことで交番まで連行されたと、学生証を見せて、在留カードは家にあるから家まで同行してもいいから見せますとお願いしたものの、扉を出る瞬間から在留カードを所持していないと犯罪と言われたと、そのまま警察署まで連行されたと、こういうような具体的な事例であります。
東京弁護士会は、こうしたアンケート結果から、職務質問におけるレーシャルプロファイリングが日本で広く行われていることを推測させるに十分であると、こういうふうに指摘をしておりますけれども、警察庁はこういう認識をお持ちでしょうか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
御指摘の調査が実施されたことは承知しておりますし、外部団体による調査でございますので、その結果につきましてはお答えする立場にはございません。
ただ、職務質問につきましては、警察官職務執行法第二条に基づいて行っているものであり、各都道府県警察においても適正に行われるよう指導されているところでございます。
○井上哲士君 適正に行われるよう指導されているというお話でありました。
二〇二二年十一月の衆議院の法務委員会で、警察は外国人等について、職務質問に関する調査を実施した結果、不適切、不用意な言動があった職務質問が令和三年中に六件あったと答弁をしております。逆に言えば六件しかなかったということでありますが。
この調査の調査対象とその件数、及びこの調査の実施方法はどのようなものなのか、またその後は調査をしていないのか、お答えください。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
御指摘の警察庁が行った調査につきましては、令和三年中に都道府県公安委員会等になされた苦情、相談等二百二十二万八百九十九件から、人種、国籍、容貌、服装といった対象者の特徴を要因として職務質問がなされたとする苦情、相談等を都道府県警察において抽出し、それらにつきまして警察庁において実際の職務質問の状況を精査して、職務質問の要因や相談等の原因となった言動等を確認したものでございます。
調査の結果、人種や国籍等への偏見に基づく差別的な意図は持っておりませんが、不適切、不用意な言動があった職務質問が六件あったことが判明しましたので、該当する都道府県警察に対して個別に指導を行ったほか、人種、国籍等に対する偏見や差別との誤解を受けることのないよう、職務質問の際における不適切、不用意な言動を厳に慎むよう指導を徹底することを全国警察に対しても指示したところでございます。
その後、同様の調査は行ってはおりません。
○井上哲士君 都道府県警から疑いがあるとして上がってきた件数は何件だったんですか。
○政府参考人(檜垣重臣君) 先ほどありました母数の約二百万のうち、都道府県警察の方から選別して上がってきたものにつきましては四十件というふうに残っております。
○井上哲士君 だから、東京弁護士会がやったアンケートと全く違うんですよ。
大体ね、そういう警察からそういう差別的な職質を受けた、不愉快な思いをした人が公安委員会や警察に相談するかと、私はほとんどないと思うんです。ましてや、日本語以外の言語の方はより困難になるんですよ。およそまともな調査とは言えない、これで適切にやっておるとは到底言えません。
そして、東京の弁護士会のアンケートに示されたように、実際は広く行われている。個々の警察官の問題ではないと思うんですね。
お手元の資料の二枚目に、愛知県警地域部が作っている執務資料、若手警察官のための現場対応必携というものがありますが、この二〇〇九年四月版が先ほど紹介した訴訟で証拠提出をされております。抜粋がここに書いてありますけれども、左のページですね、心構え、旅券を見せないだけで逮捕できる、外国人は入管法、薬物事犯、銃刀法等何でもあり、応援求め、追及、所持品検査を徹底しよう、一見して外国人と判明し、日本語を話さない者は、旅券不携帯、不法在留、不法残留、薬物所持、使用、拳銃、刀剣、ナイフ携帯等、必ず何かの不法行為があるとの固い信念を持ち、徹底した追及、所持品検査を行うと、こういうふうに書かれているんですね。
まさに、外国人というだけで犯罪行為何でもありと決め付けて、何らかの不法行為があると固い信念を持つことを若手警察官に求めているわけでありますが、この執務資料は、愛知県警、いつまで使われていたんでしょうか。
○政府参考人(檜垣重臣君) お答えいたします。
御指摘の資料につきまして愛知県警察に確認したところによりますと、法律の改正等があった場合や社会情勢の変化等、見直しが必要な都度更新している資料であり、更新日は確認できないという報告を受けております。
○井上哲士君 つまり更新されているということでありますが、つまり、こういうものが存在をしたということは愛知県警も認めているわけですよね。
実はこれだけじゃないんですよ。
例えば、警察官の昇進試験対策や実務能力向上のための情報が掲載される月刊誌、警察公論二〇〇七年十月、これでは、外国人を職務質問するに当たっての基本的な心構えとして、声を掛けてみないと日本人かどうか分からない場合もあり、それが外国人であれば不審点の始まりになることを想起する、こうしているんですね。
最近でも、これ二〇二二年の警察官昇任試験の対策雑誌「KOSUZO HYOGO」というのがあるんですが、外国人は護身用の刃物や違法薬物等の禁制品を所持していることが多いため、細部まで徹底した所持品検査等を実施するなどと記載をされております。
これ、警察内部の文書は一般公開されておりません。聞きますと、国会図書館にもありませんでした、この後ろのやつは。ですけど、極めて限られて入手できるものでさえこういう記載があるわけで、警察内部で外国人であることだけで職務質問をするという運用が教示、推奨されることが行われてきたんじゃないか。
私は、こういう資料について、過去のものも含めて使われなかったか、先ほどの国家公安委員長の答弁と反することになるわけですから、是非、委員長、お調べいただきたいと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(松村祥史君) 警察官による職務質問につきましては、警察官職務執行法第二条に基づき、警察庁から都道府県警察に対して指導してきたものと承知をいたしております。各都道府県警察におきましても、警察庁からの指示も踏まえつつ、警察官職務執行法第二条に基づく適正な職務質問の実施について指導教養が行われているものと承知をいたしております。
都道府県警察の執務資料の一つ一つについて確認する必要はないものと考えてございます。
○井上哲士君 いや、先ほどの答弁と違うことが現に行われているんですね。
今紹介をしたこの警察官の昇任試験の対策雑誌、これを出版している出版社は警察官昇任試験の問題集も発行しているんですよ。そして、二〇一九年には、十二道府県警の幹部二十一人が兼業の許可も申請もせずにその問題集の執筆をして、多額の報酬を受けたとして処分されているんですね。警察の深い関わりのある出版社ですよ。
つまり、こういう警察幹部が書いた、先ほどのような内容を書いたものを昇任試験のために勉強しているということですよ、現役警察官が。これ、何で調べなくていいんですか。現に行われている。二〇二二年ですよ、最近のやつは。これやっぱり、本当にちゃんとやられているか、警察を指導する立場から、国家公安委員長、しっかり対処していただきたいと思いますが、改めて、いかがでしょう。
○国務大臣(松村祥史君) 先ほども申し上げましたが、確認するか否かにつきましては、必要はないものと考えております。ただ、御指摘の点につきましては、私も重く受け止めたいと考えております。
○井上哲士君 指摘は重く受け止めるというお言葉でありますけれども、本当に職務質問におけるレーシャルプロファイリングを根絶、予防するためには、どういう行為が人種差別に該当し、許されないのかということが警察の組織内で共通認識にならなくちゃいけないと思うんですね。
人種に配慮した適正な職務質問になるように教育を繰り返し徹底していると言われますが、過去にこうした資料とか出版物を通じて研修や昇進のために勉強した警察官がいるということですよ。そして、現にその調査や証言を見れば、現場でそういうことが行われているということなんですね。
東京弁護士会の調査も重く受け止めていただきまして、幹部も含めて、ガイドラインの策定や人権の教育、研修などをきちっと行う必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 警察官によります職務質問につきましては、警察官職務執行法第二条に規定されており、職務質問の要件はこれに尽きているものと承知をいたしております。
また、新たに採用された警察職員や昇任をする警察職員に対しても警察学校において人権尊重に関する教育を実施をしているほか、警察署等の職場においても適正な職務質問の実施に関する研修等を行っているものと承知をいたしております。
引き続き、法に基づく適切かつ的確な職務質問の実施についてしっかりと教育や指導が行われるよう、警察を指導してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 それに反する昇任試験対策の雑誌などが現にあるわけです。警察幹部が執筆をしているんです。
国際基準と法律に反する職務質問が行われることが問われているわけでありますから、調査、そして教育、研修をしっかりやることを改めて求めまして、終わります。
内閣委員会(銃刀法改正案、レイシャルプロファイリングに基づく人種差別的な職務質問)
2024年6月 6日(木)