○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は、四人の参考人の皆さん、貴重な御意見をありがとうございます。
まず、今回のいわゆる裏金事件をどう見るかについて、まず西田参考人にお聞きいたします。過去のロッキードとかリクルートなどの金権事件と比較をして、今回はスケールが小さいという議論もあります。ただ、西田参考人は年末の読売のコメントで、むしろ今回は悪質性が高いということを言われておりました。その趣旨をまず御説明いただきたいと思います。
○参考人(西田亮介君) 今、与野党関係見てみると、与党の自民党というのは大変強い時期というのを長く過ごしているという点が一点です。それから、恐らくは筆頭派閥であった安倍派を中心にしながら随分長らく組織的なこの裏金作りが行われていたのではないかということが指摘されておるところで、そのことをもって悪質性が高いというふうにコメントさせていただいた記憶がございます。
以上です。
○井上哲士君 私たちも、過去の特定の政治家が利権に絡んだだけではなくて、今回はまさに派閥ぐるみで、組織的、系統的にやっていたという点で悪質性が高いというふうに思っておるんですけれども、同じ点で、飯尾参考人、大山参考人にも御意見をお聞きしたいと思います。
○参考人(飯尾潤君) 私自身からすると、この問題はやはり政治資金規正法上の問題で汚職事件ではないので、やはり派閥の皆さんが汚職をしていたというとこれはもっと悪質だということですけれども、それに比べて悪質性は私は低いというふうに思っています。
ただ、むしろ、やはり集めてきたお金を派閥のお金として管理すれば済むことをわざわざ帳簿に出ないようなことをしてしまうという、大変不思議でございまして、そういう点でいうと理解が難しい案件で、その背景にはやはりもっと政治構造上の難しい問題があるのではないかと、そのことはちょっとよく考える必要があるというふうに思っております。
○参考人(大山礼子君) お二人の参考人のおっしゃったことそれぞれ一理あると思うんですけれども、悪質というのをどこを捉えて悪質というかということだと思います。確かに、手続的な問題ですよね、ですから、賄賂を取ったとかそういう話ではないので、そういう意味では悪質性が低いとも言えますけれども、個人の逸脱行為ではなくてシステマティックにみんながやっていたという意味では悪質性が高いというふうに考えてもよろしいのではないかと思います。
○井上哲士君 ありがとうございます。
次に、企業・団体献金についてお聞きをいたします。
それぞれから、禁止ないしは制限というお話がありました。現状ではまずいというのは共通の認識なんだろうと思うんですが、私どもは企業・団体献金は全面禁止の法案も出しておりますが、総理などは過去の最高裁判決を持ち出して、企業も社会的な存在であり政治活動の自由があるんだということで合理化をされるわけでありますけれども、やはり大きな財政力を持つ、しかし投票権は持たない企業がお金を出して影響を与えることは、非常に政治をゆがめますし、国民の参政権を侵すのではないかと私たちは考えておりますけれども、飯尾参考人、そして大山参考人、中北参考人、それぞれお聞きしたいと思います。
○参考人(飯尾潤君) 私自身は、企業・団体献金自体は大きな額で影響を与えようとしない限りそれほど問題はないと思っておりまして、企業自体も社会的責任を果たすということもしておりますので、そういう点でいうと、これ自体を禁ずべきだというふうには考えておりません。
ただし、国民の中には企業から献金を受けた政党は嫌だという方もおられるでしょうから、それはきちんと公開して国民の審判を仰ぐということが基本になるというふうに思っております。
○参考人(大山礼子君) 冒頭の意見陳述でも申し上げましたけれども、やはり附則に書いてあることですので、そのまま素通りにするというのはやはりよろしくないということが一点でございます。
そして、確かに、企業・団体献金を禁止しても、先ほど中北参考人のおっしゃったPACという、ポリティカル・アクション・コミッティーというのがアメリカでございますけれども、企業の要するに幹部の方たちが個人の名前でもって集金して、団体つくって献金するというようなことは防げないわけです。ですけれども、やはり、今のように企業が直接献金するのと何かそういうものをつくって献金するというのは、大分やっぱり変わってくると思います。ですので、私はそちらの方向に行く方がよろしいのではないかと考えております。
○参考人(中北浩爾君) この献金の問題、なかなか私は複雑だと思っております。
企業であっても、かなり積極的な見返りを期待してお金を出しているところと、あるいはいわゆるみかじめ料的な消極的な理由で出しているところ、見返りを全く求めない応援。例えば、企業というのは必ず見返りを求めているわけではございません。例えば、被災地に寄附したり、大学に寄附したり、こういうこともやっております。社会貢献もやっているので、必ず見返りを求めているという言い方は正しくない。
ただ、その可能性も十分にあるということでしょうし、例えば、自民党を応援している団体でも、小泉改革で、あの最大の応援団、全特、これの反対を押し切って郵政民営化をやりましたし、第二次安倍政権でも、応援団の非常に有力な農協、JAの改革をやりましたので、応援して献金していれば完全に安全かというと、そういうことでもないということを考えても、献金が必ず政治をゆがめるというところまで言えないし、ただ、ゆがめる可能性もあることも否定できないというところではないかと思いますし、あと、政治献金だけではなくて、選挙ボランティア、これは統一教会の問題で議論になった部分でございますけれども。あと、機関紙への事業、広告であるとか、政治団体を経由した寄附と、いろんな形でございますので、企業・団体献金だけやめれば事態が改善されるかというと、やや疑問もあると。
ただ、企業・団体献金について言うと、個人の自発性という観点から余り望ましくないことは事実かと、こういうふうに理解しております。
○井上哲士君 ありがとうございます。
次に、政策活動費についてお聞きをいたします。
役職者に支出をすればその先は非公開ということで、自民党の中でやられてきました。幹事長などは年間十億円と言われておりますが、これも元々政治資金規正法には一切明記されていなかった。あれを今度、いや、そういう点では脱法的な使い方だと思いますが、今回明記をするわけですね。
この間の議論の中でいいますと、なぜ非公開にするのかと、この戦略的な運動方針が明らかになるのはまずいとか、行き付けの会合場所が明らかになって取材が来たりすると困るとか、これ本当に私は政党の都合だと思うんです。
政治資金規正法は、常に、不断の監視と、国民の不断の監視と批判の下に置くということの趣旨からいえば、これは全くに反するんじゃないかと思っておりますけれども、十年後まで領収書を出さないことも含めて、それぞれからこの問題での御意見をお聞きしたいと思います。
○参考人(飯尾潤君) この問題は、これまで申し上げませんでしたが、政策活動費と言われているものはやはり問題のある支出であったと、脱法的だと言われたのはそのとおりだと思います。今回それを、襟を正すということは確かでございます。
じゃ、これを一挙にやめるのか何か別の形で縮小するのかということで、縮小したいというのが今回の案だというふうに思っていますが、ただ、残念なのは、実は公開という、十年後の公開しか手段がなくて、やはり先ほどから議論を出ている監督機関、第三者機関が、それは公開しなくてもよいかどうかということはきちんとやはり監督すべきで、それで公開しなくてもよいということになったら公開しない部分があってもよいけれども、これも記録はきちんと残る。これは税金と同じでございまして、税務申告はきちんとしないといけないし、正しいかどうかはチェックを受けますが、公開されるとは限らない。
現在は、やっぱり監督機関が弱いためにこの手の費用がきちんと処理されなかったというふうに考えていますので、体制の整備をもってもう少しきちんと規制していくべきだというふうに思っております。
○参考人(大山礼子君) ただいまの飯尾参考人のお話にほとんど付け加えること私もございませんけれども、やはり十年後では余り意味がないので、そしてまた、これ全部国民の浄財ですので、税金もかなりの部分が入っているということですから、何に使ったか分からないということでは許されないわけでございます。ですので、第三者機関にチェックをしてもらって、情報公開法のような運用でもって公開すべきは公開していくということかと思います。
○参考人(西田亮介君) 選挙運動の自由、政治活動の自由等々の観点から、政活費的なものというのが、ある程度在り方としては合法的に実施するということも不可能ではないのではないかという認識持っております。規制を掛けていく中で透明化を求めていく、これ重要だろうと考えます。
と同時に、既に政活費やっていらっしゃる政党とやっていらっしゃらない政党というのに分かれているわけです。これまでやっていらっしゃった政党においても、政党自ら、政治家自ら積極的に公開いただくということを、別に法が施行される前からやっていただくということがあってもいいわけで、これこそまさに襟を正すということにつながっていくのではないか。そのようなことをやっていらっしゃる政党もあるわけですから、是非やっていらっしゃらない政党においてもお考えいただくということ重要ではないかと思います。
以上です。
○参考人(中北浩爾君) 政策活動費というのは、一種の政党の機密費でございます。受領者のプライバシー、外国勢力に見られない、政党の戦略、これを秘匿したいと、三つぐらいの理由があるかと思います。
それには一定の合理性はあるかと思いますけれども、しかし、一つは、やはり十年後とはいえ、第三者機関にきちんと毎年報告をしてそこのチェックを受ける体制を、公開は十年後であっても、毎年きちんと報告をしてチェックを受けて、場合によっては是正を勧告されるという状況をどうやってつくるのか。もう一つは、上限を、今のようにもう年間十億円とかそれを超えるような額というのは認めず、五千万ぐらいとか、かなり低いところに設定をし、更に問題があれば改革をしていくということが、これが現時点では必要ではないかと、こういうふうに考えております。
以上です。
○井上哲士君 政治資金規正法は、先ほども言いました、不断に国民の監視と批判の下に置くということから考えれば、私はやっぱり支出というものは全て明らかにする、戦略的運動方針が明らかになるといいますが、それも含めて国民が判断をできるようにするのが筋だと思うんですね。
その下でも、第三者機関ということのお話もあったわけでありますが、それをつくるとしても、例えば今監査をやっていますけれども、政治資金収支報告書、相当抜けているというのも指摘をされているわけです。そういうことで言いますと、やっぱり国民の監視がまずあって、それを補強するものとして第三者機関もあり得ると私は思うんです。
その点で、先ほど情報公開のこともお話がありましたけど、この間の答弁でいいますと、例えば、十年なる前にいろんな問題が、疑惑が出てきた際に情報公開の対象になるのかといえば、そうなっていないというのが答弁なわけですが、そういう情報公開の、十年間は対象にもならないということについて、飯尾参考人、大山参考人、それぞれどうお考えでしょうか。
○参考人(飯尾潤君) 私の意見からすると、十年間の公開だけではやはり不十分ですので、その間にやはり第三者機関がきちんと監査して、内容を精査して、しかも、実は今の話は、今の委員のお話は公開が先というお話でしたが、公開の方法をやはりきちんと定めていくということがやっぱり大切で、その途中でどうしたことか特別の事件があれば、保存しているものをどのように扱うかというのは今後ちょっともう少し議論をすべきものだというふうに思っております。
○参考人(大山礼子君) 先ほど情報公開ということを申し上げましたけれども、そもそも国会は情報公開法の対象になってないわけですね。国会こそ、やはり国民から選ばれている国民代表機関ですので、自らの情報をきちんと公開して、国民と情報を共有していくということが実は重要なのではないかと以前から思っています。もちろん、秘密にしなければならないこともあるわけですけれども、それはしかるべく手続を踏んで、当面公開をしないということはできるわけですので、是非、国会情報の公開についてもお考えいただければと思います。
○井上哲士君 最後に、政党助成金について大山参考人にお聞きしますが、私ども事前にいただいた資料の中で、この政党助成金が民主主義のコストとして政党の育成に役立てるはずだったが、かえって政党の発展を阻害しているのではないかということを書かれておりますけれども、この趣旨についてお話しいただきたいと思います。
○参考人(大山礼子君) そうですね、これもほかの参考人の方々からも御指摘があったと思うんですけれども、政党はやはりもっと国民に近い立場にいなくてはいけないと思うんですけれども、国庫補助頼みになりますと、自らその献金を集める努力もしなくなる。本当に、政治家の方々に伺うと、個人で献金してくれる人なんかいませんよっていうような開き直りのようなことをおっしゃる方が多いんですけれども、それは、やはりそれは、卵と鶏じゃないですけれども、集める必要がないから工夫がないというような悪循環になっているような気がどうもいたします。ですから、助成金頼みではなくて、どうやったら国民の浄財を集めて国民とつながっていくのかということを考えていただくのが重要ではないかと思います。
○井上哲士君 ありがとうございました。
終わります。
政治改革特別委員会(政治資金規正法改定案等ー参考人質疑)
2024年6月14日(金)