国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2024年・213通常国会 の中の 政治改革特別委員会(政治資金規正法改定案等ー岸田首相出席の質疑)

政治改革特別委員会(政治資金規正法改定案等ー岸田首相出席の質疑)

【配付資料】

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 総理は、維新、公明と修正した自民党の法案について、国民の信頼回復のためだと繰り返し述べてこられました。しかし、今朝報道の世論調査では、本法案の再発防止効果について、効果ないは実に七七%に上っております。どう受け止めていらっしゃいますか。こういうような法案を数を頼んで成立させることは一層の国民の政治不信を招くことになると思いますが、いかがですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) もちろん、世論調査の声、これについては真摯に受け止めていきたいと思いますが、しかし、今回の法改正については、一連の事案に対するこの再発防止、改善策として、なおかつこの国会において議論された政策活動費を始めとする政治資金の信頼性の確保という観点から、具体的な思い切った案をこの法律として提出したと認識をしております。
 こうした大きな一歩を踏み出すことによって国民の信頼回復につなげていきたいと思っております。
○井上哲士君 その認識と国民の認識が全くずれているわけですね。
 裏金問題への岸田総理の対応についても世論調査出しておりますが、これ、評価しないが八三%ですよ。結局、真相解明もしないと、そういう下で、自民党案が、肝腎要の企業・団体献金がすっぽり抜け落ちているわけであります。
 さらに、政策活動費の問題です。政治資金規正法の脱法行為として行われてきました、役職者に渡せば使途を非公開とするこの政策活動費を、この法案で法定化をして堂々とできるようにしています。修正で十年後に公開するといたしましたけれども、黒塗りもあると。そもそも十年間は非公開ということなんですね。これについて、衆議院での維新の発議者は、政治家が国会の外で会合を行う場合によく使う場所が外に出れば、その党の動きが分かってしまうし、メディアなどの取材もあると、でも十年たてばそんなものはもう気にならないと、こういう答弁もしております。
 総理は、維新の代表と修正に関する合意文書にサインをされています。先ほどは、建設的提案を取り入れたと、こうおっしゃいました。つまり、こういう行き付けのお店などが明らかになったら困ると、こういう理由も、十年間は領収書も公開しない、そういうことになっているということでよろしいですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、政策活動費については、現在、この政治資金規正法の制度上何ら位置付けられておらず、国民の監視の目が不十分になっていると指摘があり、そのような認識に基づいて今回の改正案を用意したということであります。毎年の報告と、そして十年後の公開制度と第三者機関による監査、これを相互に補完し合う形で政策活動費の適時適切なチェックを確実にすることが可能であると思っています。
 そして、その内容についてですが、御指摘のように、これは、政策活動費の公開についてはこの国会においても様々な議論が行われました。個人のプライバシー、あるいは政党の戦略的な運営方針、これらにも配慮するべきである、こういった議論も行われた、それと国民の知る権利とのバランスを考えなければいけない、こういった議論の中で、今御示ししていただいているような法律を用意した次第であります。
 政治資金の、政治資金に対する国民の不断の監視、これを実効ならしめるためにも、この信頼確保のためにも、こうした政治資金規正法の改正、これは重要であると考えております。
○井上哲士君 行き付けの店が分かったら困るなんて、およそ国民に理解されませんよ。
 総理が言うこの戦略的方針が明らかになると困るというのも、これ結局、政党の都合なんですね。政治資金規正法の目的である政治資金を公開して国民の不断の監視の下に置くということから全く反することですよ。これを法定化していくというのが今回の法案です。
 さらに、裏金の原資になったパーティー券の問題について聞きますが、この大半は企業、団体によるものであります。実態がどうなっているのかと。お手元に稲田朋美衆議院議員の政治資金管理団体のともみ組が開催した二〇一七年の政治資金パーティーの購入状況を政治資金収支報告書から明らかにしたものを配付しております。
 稲田議員は、防衛大臣に就任したことで、予定していたパーティーを中止して購入者に返金しました。それは政治団体の支出と取り扱いますので、一万円以上の支出が全部報告書に記載されたんですね。それによって購入者の実態が明らかになってしまったんですよ。総額は千五百三十一万円で、うち企業は二百五十八団体、千百九十七万円、七八・二%を占めます。
 これを見ても、政治資金パーティーの収入は形を変えた企業・団体献金になっているのではありませんか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 政治資金パーティーに係る収入、これは、政治資金規正法のこの法律上、当該パーティーへの参加の対価として支払われるものであって、これ寄附とは性質が異なるものと認識をしております。
 その上で、形を変えた企業・団体献金ではないかということでありますが、企業・団体献金については、企業は憲法上の政治活動の自由の一環として政治資金の寄附の自由を有するとの最高裁判決もある中で、政党等がその受取を行うこと自体が不適切なものであるとは考えておりません。
○井上哲士君 寄附でなくて対価だといって、公開基準も違うという中で不透明になってきたわけですね。
 さらに、パーティー券が別の意味でも抜け道になっているという実態も浮かび上がります。この資料を見ますと、全国十一の電力会社のうち、東京と沖縄を除く九社が稲田氏のパーティー券を購入しております。電力業界は、電力供給の地域独占が認められている公益企業にそぐわないとして、業界として献金を自粛しています。ところが、実際には、表に出ない形でこうやってパーティー券を購入しているということなんですよ。
 それだけではありません。談合で公共入札への参加が禁じられている企業などが自民党の政治献金を行ったことがしばしば問題になってきましたけれども、これパーティー券を購入になれば、そういう企業も名前出ないんですよ。
 さらに、派閥は企業・団体献金を受け取ることができませんが、パーティー券代の形で受け取ることは可能で、これが裏金の原資になってきました。
 このように、パーティー券の購入が表では献金できない企業の裏献金としての抜け道になっているという実態、否定できますか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、政治資金規正法上、御指摘のような、談合で公共入札への参加が禁じられている企業による政治資金パーティーの対価の支払を制限する規定はないものと承知をしております。
 その上で、先ほども申し上げたように、政治資金パーティーに係る収入、これは法律上、当該パーティーへの参加の対価として支払われるものであり、寄附とは性質が異なると認識をしております。御指摘のような抜け穴の実態があるとは承知しておりません。
 いずれにせよ、我が党の改正案ではパーティー券の購入者の公開基準を五万円超に引き下げることとしており、政治資金パーティーの透明性の向上に資するものであると考えております。
○井上哲士君 今認められていましたよね。対価ということで、公共入札への参加が禁じられているような企業が買うことも何の制限もないわけですよ。
 今、公開基準を下げたとおっしゃいました。しかし、パーティーの開催回数を増やせば、これまでどおりの額を非公開のまま売ること可能じゃありませんか。網の目を細かくしても、ざるには変わりないんじゃないですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、御指摘のようなこと、これは現行の政治資金規正法の下でも生じ得るものであります。
 そして、これ、この政治資金パーティーですが、実態を考えた場合に、この開催に当たっての事務負担、金銭的負担、これは当然生じるものであります。また、参加者も毎回この予定の確保をする、こういった参加者側の協力もいただかなければなりません。こういったことを考えますと、開催回数、これ大きく増やすということは現実的には難しいと考えております。
 いずれにせよ、この公開基準の引下げにより透明性が高まること、これは明らかであり、意義ある改正であると考えております。
○井上哲士君 開催を増やすのは困難と言われましたけど、いろんな抜け道もう既にやられているんですよ。ほとんど会場に人が来ないようなところでもやったり、やっているんですよ。
 しかも、これだけじゃないんですね。下請名義に分散して購入して企業名を隠すということもやられてまいりました。
 しんぶん赤旗の取材に、自民党派閥のパーティー券を購入していたある準大手ゼネコンの元幹部が証言をしております。派閥の領袖の秘書が持ってきたパーティー券を二十万円以上買ったけれども、下請の協力会社に二十万円ずつ購入してもらったと、そして、工事を発注するときにパーティー券代を上乗せして払ったと、こう言っているんですね。つまり、実際には元請企業が二十万円を大きく超えて購入しながら、名義を分散して企業名が出ないようにしていたということです。
 稲田さんのこの資料を見ていただきますと、関西電力、福井の方ですからね、関西電力が二十万円買っておりますけれども、三つの関連会社も購入して、合計五十万円になっているんですよ。こういう下請分散によって企業名を出さないようにしながらパーティー券購入を通じた事実上の企業・団体献金というやり方は、公開基準下げても続くと思いますよ。
 こうした企業名を隠すための分散購入を許さないと、こういう対策は取られるんですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) いわゆるこの下請企業と業務の発注会社はあくまでも異なる法人であり、それぞれ独立して政治資金パーティー券の購入を含む経済活動、これを行っているものと認識をしております。
 その中で、委員が御指摘のような措置、これを講ずるということになった場合、これ、何をもって企業名を隠すための分断購入と判断するか、あるいは、複数の異なる企業がパーティー券を購入した場合であっても同一企業が購入したとみなされるような画一的な条件は何なのか、こうした点について、これ推測に基づく恣意的なものであってはならないわけでありますから、この今言った点について十分議論する必要があると考えております。
○井上哲士君 結局、だから対策打てないというわけでしょう。今の企業が何ぼでも買えるという仕組みを残している限り、これなくならないんですよ。
 さらに、しんぶん赤旗日曜版が、井野元防衛副大臣の事務所が作成した二〇二一年分の派閥パーティー券の販売先リストを入手して、五月十九日で報道いたしました。このリストの中には、パーティー券の配付は一枚なのに入金が二十万円になっていると、こういうケースも複数あるんですね。つまり、不参加が前提の支出と見られます。
 総理は先ほど来、パーティー券は対価であって寄附とは異なると説明してきたけれども、実際には不参加が前提で、対価ではない寄附そのものになっているんじゃありませんか。総理の二〇二二年に行った収入一千万円を超える六回の政治資金パーティーも収益率九割ですよ。対価などなっていないじゃないですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 政治資金パーティーに係る収入については、これはあくまでも当該パーティーへの参加の対価として支払われるものであり、寄附とは性質が異なるものと認識しており、他の政治団体の事業収入との均衡も踏まえた議論が必要だと認識をしています。
 また、一般論として申し上げるならば、パーティー券の購入については、購入者が友人に配る場合、あるいは法人等の団体がその役職員、構成員に出席させることを予定して購入する場合など様々なケースが考えられます。結果的に何らかの事情で当該パーティーに参加できない、これは当然想定されるものであります。欠席者がいたから直ちに寄附、こうしたものにはならないと考えております。
○井上哲士君 実態違うんですよ。
 朝日新聞のデジタル版の二月十八日付けの企業に対するアンケート調査では、パーティー券を購入したその出席割合について、五割以上の参加は百七十八社中七十七社で四三%なんです。一方、五割未満は計九十七社で五四%、そのうち一割未満は実に六十社、三〇%ですよ。買った分の一割未満が三〇%ですよ。およそ対価だという総理の認識とは全く違う実態があるわけであります。結局こういうことは全部野放しになるんですね。
 茂木自民党幹事長は、衆議院での法案修正があった際に、必ず成立させ、全く新しい自民党に生まれ変わる決意だと、こう述べられました。しかし、国民どう思っているか。最初に紹介した今朝の世論調査は、自民党は政治と金の問題を繰り返してきた体質を変えられると思いますかとの問いに、八四%が変えられないと答えているんですよ。これが国民の声ですよ。
 本当に変わる決意があるんなら、このような法案を数に頼んで成立させるのではなくて、政治改革の要である企業・団体献金の禁止にこそ踏み込むべきだと、このことを申し上げて、終わります。

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